SF/ファンタジー

2017年4月28日 (金)

私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback? (森博嗣)

私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback? (講談社タイガ)
私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback? 』はWシリーズ第5弾。人間は生植機能を失い、人口は減る一方。そこで見た目は人間と区別がつかないウォーカロンを開発。人間とウォーカロンを識別する装置を開発したハギリ博士が、護衛のウグイとアカバネを連れて、ウォーカロンの集落や、人間の赤ん坊のいる場所を調査してまわっているのです。

今回はアフリカ南端の通称「富の谷」。そこへ行って帰ってきた者はおらず、警察も近づかない場所。案内人に連れられてたどりついた先でハギリが見たものは…?

ハギリ博士って、いかにも大学の先生っていう感じで、おっとり、のんびりタイプ。気が小さいくせに自分の身の危険はあまり真剣に考えない。これでは護衛もたいへんです。

あの、それは罠でしょ。っていうところに護衛がいっしょに嵌ってどうするの? そういうラノベもありましたっけ。

生命とはなにか。生きるとはどういうことなのか。なかなか愉快なSFです。

お勧め度:★★★☆☆

2017年3月 1日 (水)

ハリー・ポッターと呪いの子 (J.K.ローリング他)

【Amazon.co.jp限定】 ホグワーツMAP付き ハリー・ポッターと呪いの子 第一部、第二部 特別リハーサル版 (ハリー・ポッターシリーズ)
ハリー・ポッターと呪いの子 第一部、第二部 特別リハーサル版 』は「ハリー・ポッター」シリーズの後日談かと思ったら、2016年7月30日、ロンドンのパレス・シアターで初演された演劇の脚本でした。小説を期待していたので、ちょっとがっかり。

でも、読み始めたらハリーたちとヴォルデモートとの闘いが思い出されて懐かしい。あれから19年、ハリーは魔法省で働き、ハーマイオニーはロンと結婚し、一女ローズをもうけ、なんと魔法大臣に収まっています。ちなみにロンは悪戯グッズショップのオーナー。ハリーの伴侶はジニーです。ジニーで誰だっけ? と、ググってしまいました。

さて、今回の主人公はハリーの次男アルバス。魔法界の英雄を父にもつプレッシャーに加え、父との折り合いが悪く、ホグワーツにも入学したくありません。彼が出会ったのは、ドラコの息子スコーピウス。ヴォルデモートの子ではないかという悪い噂があるのですが、ふたりは仲良くなっていきます。

そこまではよいのですが問題は、ハリーのせいでヴォルデモートに殺されたセドリックを取り戻そうとアルバスが考えたこと。スコーピウスと協力して、魔法省に隠されているらしい逆転時計を盗み出します。過去に戻ってセドリックを救おうという作戦です。

しかし、歴史を改変しようとしてもたいていロクなことになりません。

さて、一体どうなることやら? 続きは読んでのお楽しみ!

お勧め度:★★★☆☆

2017年2月17日 (金)

紐結びの魔導師 (乾石智子)

紐結びの魔道師 (創元推理文庫)
紐結びの魔道師 』は『オーリエラントの魔道師たち 』の第1話をそのまま引き継いで「紐結びワールド」を一冊にまとめたもの。オーリエラントの魔導師たちのなかでは、わたしは今作の主人公リクエンシスがいちばん好きです。魔導師らしくないのが魅力かな。

1. 紐結びの魔道師
2. 冬の孤島
3. 形見
4. 水分け
5. 子孫
6. 魔道士の憂鬱

「冬の孤島」はファイフラウとブロンハという地下に潜む化け物退治。リクエンシスは度胸だけはあるのですが、紐結びの魔法の効果は当てが外れることもあって、ピンチに陥ることもしばしば。それがまた愉快なのです。

「水分け」は相棒といえるリコが死にかけているのをなんとか救おうと奔走する話。「子孫」「魔導師の憂鬱」では踊り子ニーナに懐かれ、どこまでもついてきます。「俺は見た目より年を食ってるぞ」。もっと若い奴を探せといっても聞く耳を持たないニーナ。で、リクエンシスの年齢を聞いてビックリ。

リコが書き残した羊皮紙を製本し、写本をつくるためにパドゥキアを目指すふたりの行く末に幸あれと祈ります。

巻末に「オーリエラントの魔道士」シリーズの年表が載っています。発行順に読んでも時代が前後に飛ぶのでわけがわかりません。この年表はありがたい。

また「紐結び」のパドゥキア編を待ってます!

お勧め度:★★★★★

2017年1月29日 (日)

ヤーンの虜ーグイン・サーガ140 (宵野ゆめ)

ヤーンの虜 (グイン・サーガ140巻)
ヤーンの虜 』はグイン・サーガの140巻目。1巻が刊行された1979年から38年も経つんですね。外伝も含めて全巻読んできました。栗本薫が亡くなって、どうなることかと思ったけれど、後継者が出てきて今も続いているのは素晴らしいことだと思います。

しかし、お調子者だけど一本筋が通っていたマリウスはふらふらと頼りない吟遊詩人になってしまったし、グインもどことなく軽くなってしまいました。変わってしまうのは仕方ないことだとわかっていますし、決して批判するつもりはありません。でも、さびしい。今作を読み終えて、グイン・サーガから心が離れていることに気がつきました。しばらく離れて、また気が向いたら戻ってきます。

お勧め度:★★★☆☆

2017年1月16日 (月)

神仙の告白 旅路の果てにー僕僕先生 10 (仁木 英之)

神仙の告白 僕僕先生: 旅路の果てに
神仙の告白 僕僕先生: 旅路の果てに 』は僕僕先生シリーズ第10弾。新シリーズ「僕僕先生 零」もスタートしていますが、わたしはこのオリジナルシリーズのほうが好きです。零の僕僕先生のほうが可愛いけれど、オリジナルのほうが謎があって面白いのです。永遠の時を生きる神仙がなにを想うのか。それを知りたくて仕方がない王弁も可哀想な男なのです。

今回、王弁はいきなり眠ってしまって出番がほとんどありません。いわゆる過労ですね。王弁を救うため、僕僕は反魂丹という秘薬の材料を求めて旅立ちます。そこへ僕僕を捕えようとする一派が現れ、それがなぜか王弁をも捕えて、なにかに利用しようと企んでいる様子。孫悟空、猪八戒、沙悟浄、関羽まで出てきて大騒ぎです。一体なにがどうなってるんだ?

で、いよいよクライマックスというところで「つづく」って、ひどい!

お勧め度:★★★★☆

2017年1月12日 (木)

テンペスト (池上永一)

テンペスト 第一巻 春雷 (角川文庫)
テンペスト 』では、19世紀の琉球王朝を舞台に、13歳の少女・真鶴が(性別を偽り宦官の孫寧温として)科試を突破し首里城の評定所筆者として王府の改革に挑みます。厳しい父親から逃げ出した兄との再会。宦官に対する嫌悪から、容赦ない改革に対する反感、嫉妬、憎悪。伏魔殿と化した王宮で生き残ることはできるのか?

単行本2冊が文庫本4冊になって出ています。文庫1巻は「なんて面白い小説なんだ。今年ベスト1だ」。高田郁の『澪つくし料理帖』『あきない世傳』シリーズのように、健気な少女が運命に抗いながら成長していく物語として楽しめました。

が、2巻になると希望と絶望が表裏の木の葉が激流に弄ばれる落差についていけなくなりました。意思の強さに畏れさえ感じさせたかと思うと、政敵の脅迫に幾度もあっさり膝を追って自らの主張を曲げてしまいます。情けない。倒錯した性も同様。女を捨てて男として生きると決めたから恋が成就することはない。そうはわかっていても自分のなかの女を殺しきれない。この小説の行き方にはわたしはついていけません。

琉球の本格時代小説に見えますが、時々、作者の「軽口」が出ます。13歳の少女が、王の側室の衣装代を節約するのに「どうせすぐに脱ぐのだから不要。過剰包装です」なんて言いますか? 愉快ではありますが、場の雰囲気が壊れます。

身も心も(作者に)ボロボロにされた寧温が後半戦をどう戦うのか。清国と薩摩藩との微妙な政治力学のなかで琉球をどう生かすのか。竜の導きと父親の遺言が伏線になっているはずなので、紆余曲折の末たどりつく先は見えるような気がします。

・・・・・

後半戦も主人公の女「真鶴」と男「寧温」がトグルスイッチのように切り替わります。まるで映画『ミセス・ダウト』。真鶴といっしょに側室(あごむしられ)になった真美那は聡明な美人なのですが天然系破天荒「お嬢様爆弾」。真鶴/寧温が至極まっとうな神経の持ち主だけに好対照で、なかなか愉快なキャラです。

日本に開国を迫ったアメリカの黒船が、先に琉球に足がかりを求めてやってきます。したたかなペリー提督に対抗できるのは寧温しかいない。しかし、寧温は八重山に流罪にされ、真鶴は王の側室になっています。琉球危うし!

と、シリアスな展開も天変地異のように突如巻き起こるコメディパートによって崩れ去るのです。面白いけど疲れます。竜と遺言はどこ行ったぁ!?

お勧め度:★★☆☆☆

2016年12月25日 (日)

自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 〈外伝2〉黒神の大祭典編 (柳井たくみ)

ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 外伝〈2〉黒神の大祭典編
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 外伝〈2〉黒神の大祭典編 』は本編5作、外伝5作中の外伝第2弾。外伝を1作読んだところで止まっていたのを思い出して手に取った次第。

「ゲート」が封鎖されて10カ月。富田二曹と元帝国騎士ボーゼスの間に生まれた娘の誕生祝いというか七五三というか「ナッシダ」という祭事と合わせて結婚式をしようという話が持ち上がり、その司祭を黒ゴス亜神ロォリィが引き受けることになりました。ところが、ロォリィがこの世の亜神すべての4柱を招くと言い出して、帝都を巻き込む大祭典になってしまったのです。「お祭り騒ぎ編」ですね。

興味深いのは、ロォリィの過去が語られること。彼女はそもそもふつうの人間だったのが、どのようにして亜神となったのかがわかります。

中国を舞台にした仙人ロードノベル『僕僕先生』の主人公は美少女仙人で「人間が仙人になれるか」というのがひとつのテーマ。おなじファンタジーでも西洋風と中華風は(料理のように)味わいがちがっておもしろい。

お勧め度:★★★★☆

2016年12月24日 (土)

暁と黄昏の狭間〈2〉薬王樹の書 (西魚リツコ)

暁と黄昏の狭間〈2〉薬王樹の書 (トクマ・ノベルズEdge)
暁と黄昏の狭間〈2〉薬王樹の書 』はシリーズ第2弾。「暁と黄昏の狭間」って「昼間のことじゃないか」。扉には「人が生まれたから死ぬまでの一生も、同じように短く輝かしいことを表しています。若い主人公たちが必死に生きて、魂の成長と再生を遂げていくさまを書いていきたい」とあります。

1. 虜囚
2. サーダーキニ一族
3. 逃亡者
4. 白トカゲ
5. 塩の沼
6. 白い森
7. オ・メラルン
8. 薬王樹

ヘン=ジャックの呪いに苦しんでいるセフルは魔術大国オラの都へ送られ、ギルダン・レイはオラの皇子アシュラーフ・サンダーキニと幼いドムオイ王女の婚約を押し進めるカザン大使と対立して国を追われます。生命魔術の神・薬王樹を祀るサンダーキニ家の謎に迫ることはできるのでしょうか。

「若い主人公たちが必死に生きて」というか、そうじゃないとあっさり死んでしまうような目に何度も遭うもので、読んでいて非常にくたびれます。たとえ神でも、ここまで非情な試練を与えないのではないと思うのですが、作者は神を超える存在のようです。

お勧め度:★★★★☆

2016年12月23日 (金)

暁と黄昏の狭間〈1〉竜魚の書 (西魚リツコ)

暁と黄昏の狭間〈1〉竜魚の書
暁と黄昏の狭間〈1〉竜魚の書』は、家族からも村人からも疎んじられ、いつか村を出ることを夢見ている少女セフルの冒険譚。村を出て鍛治職として細々とでも食べていければと思っていただけで、冒険に巻き込まれる予定はなかったのですが…。

ある日、ドムオイの城からの使者が8歳から18歳までの若者を集め、フーレ神の化身である竜魚の入った器に手をつけるように言ったところ、竜魚がセフルの指に噛み付いたため、城に上がることに。城での説明によると、病気のメヒトルド王子に、自らのワントを割り、王子にワンを献上する秘法を受ける「生贄になれ」ということだったのです。村から出ることができるのはうれしいけれど、死んでしまっては意味がありません。セフルは悩みます。

表紙絵が少女漫画風なのでどうかと思ったのですが、読み始めると止まりません。これはアタリです。新書サイズだけど二段組みなので読み応えがあります。

セフルは次々にとんでもない事件に巻き込まれて、誰を信じていいのかわからなくなるものの、立ちすくんでいては死を待つようなもの。自分の心を信じて走ります。片腕の男イデは正体不明だし、クールな近衛騎士ギルダン・レイに頼ろうにも近づきがたい。

セフルに感情移入して読み進めるのが楽しい正統派ファンタジーです。4冊シリーズなので最後まで読んでみるつもりです。

お勧め度:★★★★★

2016年12月17日 (土)

恋せよ魂魄ー僕僕先生 9 (仁木英之)

恋せよ魂魄 僕僕先生
恋せよ魂魄』はシリーズ第9弾。唐のスパイ組織胡蝶の頭に追われる劉欣が「いい男」だと言われることが納得できない王弁。劉欣は両親が連れ去られた長安へ向かい、王弁は不治の病にかかった少女タシを診察するのですが、王弁が近くにいれば回復し、離れると悪化するのは、なぜ?

1. 名薬師・王弁
2. 蝶の歌声
3. 経絡の池
4. 賽を振れ
5. 光の子、再び
6. 死而不失

僕僕と王弁、そして劉欣は胡蝶に狙われているので騒動に巻き込まれるのは仕方ありませんが、胡蝶以外にも、敵か味方かわからない、やっかいな連中が集まってきます。

王弁たちの旅も佳境に差し掛かり、ワクワクしてきました。

お勧め度:★★★★☆

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