SF/ファンタジー

2018年4月15日 (日)

パーマネント神喜劇 (万城目学)

パーマネント神喜劇
パーマネント神喜劇 』は万城目学の新作。神様が主人公のユーモア小説です。取材されているという設定で始まったのですが...。

1. はじめの一歩
2. 当たり屋
3. トシ&シュン
4. パーマネント神喜劇

神様の世界も世知辛いようで、出世のためには信者を増やし、手柄を立てなければならないようです。そうしないと左遷されてしまう!

さて、この神様の運命や如何に?

お勧め度:★★★☆☆

2018年4月11日 (水)

無限の書 (G・ウィロー・ウィルソン)

無限の書 (創元海外SF叢書)
無限の書』は、サイバーパンクとアラビアンナイトが融合したSFファンタジー小説。たしか日経夕刊の文化面でも紹介されてたと思います。23歳の反体制派ハッカー・アリフが、ネットとリアルと幽精(ジン)の世界を股にかけて悪戦苦闘するさまが面白いのです。

中東の専制国家で弾圧されてきたアリフは、アラビア人とインド人の混血のため、まっとうな職業にもつけず、ネットで抑圧された人々を守ってきました。上流階級の恋人が父親が決めた婚約者にもっていかれ、入れ替わりに渡された一冊の本がジンの言葉を綴った、本物の『千一日物語』だったので、これが騒動の始まりだったのです。果たして、その本は歴史的価値以上になにかあるのでしょうか?

ジンは人間に忘れられた都市に好んで住むらしく「最近はデトロイトが人気だ」とか、ジンといえば思い出すのが「アラジンと魔法のランプ」だったり、あちこちに散りばめられたユーモアが効いてます。アリフの言動にいらいらしていると、彼の幼馴染のダイナが「あんたは信念をもってるんじゃない。状況に流されてるだけよ」と一刀両断。スッとしました。

ジンが登場しなくても、本書はわたしにとって異世界小説。砂漠と宗教、金と強権に囲まれた国のありようは想像を超えていました。また、絶体絶命のピンチに陥ったアリフと仲間たちは一体どうなるのか。終盤は目が離せませんでした。

文句なしに面白い!
読み応えのあるエンタメ小説をお探しの方にお勧めします。

お勧め度:★★★★★

2018年4月 4日 (水)

図書館島 (ソフィア・サマター)

図書館島 (海外文学セレクション)
図書館島』は、紅茶諸島の富農の家に生まれたジェヴィックが、家庭教師ルンレの影響で首都ベインへ赴き、運命に翻弄される物語。2段組で350ページの長編小説は読み応えがあります。語り伝える声を重んじ、文字を持たない紅茶諸島から、文字を本(ヴァロン)として残し伝える文化を持つ国への旅は、ジェヴィックにとって大きなギャップだと思うのですが、彼は憑かれたように(危険さえ顧みずに)突き進んでいくのです。

作者の筆は、登場人物の様子や内面はもちろん、その土地の自然、文化、風俗、習慣、言い伝え、信仰など、事細かに書き込んでいきます。ただ、細かいだけに「槍をつくって魚とウナギを捕る」なんて書いてあると「槍でウナギは無理じゃない?」とツッコミたくなることもあります。

そうして情報の波に翻弄されていると、さりげなくストーリーが先に進んでて慌てる、のくりかえし。これは一度読んだだけでは消化しきれません。

ジェヴィック人生最大の出会いが、ベインへの船上でであった少女ジサヴェト。彼女は不治の病に冒され、一縷の望みをつないでベインの東の果てまで母親と旅しているのです。彼女と再会したとき、ジェヴィックは…。

「図書館島」というタイトルから『図書館の魔女 』のような展開を期待したのですが、図書館が舞台の物語ではありませんでした。原題は"A STRANGER IN OLONDRIA"。「オロンドリアの旅人」とでもいうのでしょうか。そのほうがしっくりきます。

お勧め度:★★★★☆

2018年3月26日 (月)

肺都 アイアマンガー三部作 3 (エドワード・ケアリー)

肺都(アイアマンガー三部作3) (アイアマンガー三部作 3)
肺都』はアイアマンガー三部作の完結編。LONDONではなくLUNGDONなので「肺都」と漢字を充てたようです。アイアマンガー一族は「ロンドン」ではなく「ランドン」と呼んで恨んでいます。それというのも、人が物に変わってしまう疫病(?)が拡がったため、ロンドンは、ヴィクトリア女王は穢れの町を住民ごと焼き払ったのです。命からがら逃げ出したアイアマンガーたちはハイドパーク近くの屋敷に潜伏するのですが...。

本書の紹介文に「物語はいかなる想像も凌駕する驚天動地の結末を迎える」とありますが「驚天動地」なのは読者ではなくロンドンです。アイアマンガーたちは新たな居場所を獲得するためにロンドンとの決戦に臨みます。

ロンドンの警察はアイアマンガーを逮捕するより射殺したいらしい。大混乱のなか、クロッドとルーシーはまたも離れ離れになり、読者はやきもきします。アイアマンガー一族の非道を止め、静かな暮らしを求めるクロッドを凶弾が襲います。

さて、一体どうなってしまうのでしょうか? あとは読んでのお楽しみ!

お勧め度:★★★★☆

2018年3月22日 (木)

穢れの町 アイアマンガー三部作2

穢れの町 (アイアマンガー三部作2) (アイアマンガー三部作 2)
穢れの町 』はアイアマンガー三部作の2巻目。3巻まで刊行されてから本シリーズを知って読み始めたことに感謝しています。続きがはやく読みたくて仕方ないから、待たずに済むのはしあわせなこと。

離れ離れになってしまったクロッドとルーシーが互いを探し求めて東奔西走。今回の舞台は、堆塵館のあったゴミ山と壁を隔てた「穢れの町」。ここは以前フィルチングと呼ばれていて、ルーシーが生まれ育った町です。この町の反対側にロンドンが広がっています。つまり、ゴミ山との緩衝地帯のような場所です。

しかし、ゴミ山の崩壊が始まり、穢れの町は大混乱に陥ります。さぁ、クロッドとルーシーは生き延びることができるのでしょうか?

お勧め度:★★★★★

2018年3月18日 (日)

堆塵館 アイアマンガー三部作1(エドワード・ケアリー)

堆塵館 (アイアマンガー三部作1) (アイアマンガー三部作 1)
堆塵館 (アイアマンガー三部作1) 』は、全3部作の1巻目。表紙絵がちょっと薄気味悪いので躊躇したのですが、読んでみたら面白いのです。

19世紀末のイギリス、ロンドンの外れに広大なゴミ捨て場があり、その中心に堆塵館(たいじんかん)という屋敷を建て、アイアマンガー一族が住んでいました。彼らは生まれると「誕生の品」を与えられ、それを一生つねに持っていることが掟なのです。

ちなみに、主人公クロッドの誕生の品は、浴槽のゴム栓。鎖がついているので懐中時計のようにして持ち歩いています。彼には「物」の声が聞こえるという特殊能力があり、誕生の品たちは自分の名前をしゃべるのですが、なにも言わない物もあります。

ちょっと「ハリー・ポッター」に似ています。主人公は不健康そうで虐められやすいのだけれど、意志はつよく、すごい能力を秘めています。

クロッドは16歳になると成人として結婚することになっています。そこへ召使いとして連れてこられたルーシー・ペナントと出会って恋に落ちてしまい(婚約者は決まっているのに)おもしろくなっ、じゃなくて大変です!

堆塵館は小ぎれいな部屋もあるのですが、なにせゴミ捨て場に囲まれているので、暗く、じめじめして、腐臭が漂うところ。そんな話を読みたくはなかったのですが、誕生の品の秘密がわかってくると、俄然おもしろくなって、一気に読み終えました。

クロッドとルーシーはそれぞれ追われて逃げるのに必死。なんとかしてふたりで脱出しようとするのですが、とんでもない状態で1巻が終わります。はやく2巻が読みたい!

お勧め度:★★★★★

2018年2月19日 (月)

コルヌトピア (津久井 五月)

コルヌトピア
コルヌトピア 』は、日経新聞夕刊の書評欄で紹介されていて興味を持ちました。植物群を計算資源化するというのです。それってコンピュータですよね。植物計算機(フロラ)とは、俄かに想像しがたいものだけに「おもしろそう」!

一方「コルヌトピア」とは、ギリシア神話に出て来る「豊饒の角」のこと。ヤギの角のような小型アンテナ(ウムヴェルト)をうなじに取り付けて、フロラと通信できるらしいのです。余談ですが、人間がハックされそうで怖い。

フロラ開発設計企業の調査官・砂山淵彦(すなやま・ふちひこ)は、二子玉川近くのグリーンベルトで起きた火災事故を調査するため出向いた先で、天才植物学者・折口鶲(おりくち・ひたき)と出会いますが、彼女との作業中に突然意識を失い倒れてしまいます。

SFなのですが、文学的表現が多く、最初は戸惑います。淵彦の友人・藤袴嗣実(ふじばかま・つぐみ)との出会いの場面で「源氏物語の藤袴、藤田嗣治の嗣に」と名前を説明するのです。好きな人にはたまらないのでは?

ひたきの研究には、フロラに適さない植物について、また植物と昆虫の関わりについてなど、なかなか興味深いものがあります。そもそも未解明の部分が大きいフロラを都市のインフラに取り込むとは大胆です。それ以前にウムヴェルトを着けている背景説明がないのが、わたしとしては怖い。

東京よりも赤道付近のジャングルをフロラ化したほうが効率がいいはず。逆に緯度が高い地域は「量子コンピュータを利用している」らしい。50年後、現実はどうなっているでしょう?

お勧め度:★★★☆☆

2018年2月 6日 (火)

たったひとつの冴えたやりかた (ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)
たったひとつの冴えたやりかた 』は三浦しをんの『本屋さんで待ち合わせ 』で紹介されていたので読んでみました。

16歳の少女コーティは宇宙の冒険に出たくて仕方がありません。両親からプレゼントされた小型宇宙艇に思い切り燃料を積んで向かったのは辺境の基地。行方不明の宇宙船を探すうち、脳内にイーアというエイリアンが入り込んでしまって、さぁ、たいへん!

だと私は思うのですが、本人は意外に冷静。イーアに悪意も害意もないことがわかると、ともに探検に乗り出していくのですが...。

切ない物語でした。

お勧め度:★★★★☆

2018年1月25日 (木)

ペガサスの解は虚栄か?Did Pegasus Answer the Vanity? (森博嗣)

ペガサスの解は虚栄か? Did Pegasus Answer the Vanity? (講談社タイガ)
ペガサスの解は虚栄か?』はWシリーズ第7弾。今回、ハギリ博士が向かうのはインドの富豪宅。パリ万博会場から逃亡したウォーカロンが逃げ込んだ可能性が高いというのです。護衛はウグイに代わってキガタと、アネバネ。せっかくウグイに慣れて来たのに残念です。と思ったら最後にちらっと登場します。お楽しみに!

毎回地球を飛び回るハギリですが、スーパーコンピュータやデボラのようなトランスファもネットを通じて瞬時に世界を一周するわけで「電脳社会」というのが文字通り実現しています。人間が生殖能力を失い、ウォーカロンに受胎能力を持つものがいるという噂もある中、クローンは違法だけどウォーカロンならOKという、いかにもありそうな法律。ここで描かれる社会の未来像はすでに見えているのに、それをいまさらどうしようというのでしょうか。

もはや惰性で読んでいます。そろそろ意表を突いてくれないと退屈です。

お勧め度:★★☆☆☆

2017年10月20日 (金)

書架の探偵 (ジーン・ウルフ)

書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
書架の探偵』は「図書館に収められているミステリー作家のリクローンが探偵として活躍する」という紹介文と、古い図書館の書棚を描いた表紙を見て、一冊の本の中にAIとして作家の記憶を封じ込めてあって、彼と対話しながら、知恵を借りて事件を解決していく物語だと思ったのです。

が、予想は見事に裏切られました。その書架は、ワンルームマンションの出入口側の壁を取り払ってあり、蔵書ならぬ「蔵者」はそこで人間のように暮らしているのです。図書館の開館時間中は自分の部屋にいなければならず、閲覧や貸し出しの希望者がいたら要求に応えねばなりません。もしも長年、閲覧希望すらない状態が続くと最後には焼却処分が待っているとか。そう、蔵者は人間ではなく「物」扱いなのです。クローンに人権はないみたい。

父親につづいて兄も亡くしたコレット・コールドブルック嬢は、兄を殺した犯人の手がかりになりそうな一冊の本『火星の殺人』の著者であるE・A・スミスのリクローンを一週間借り出したのです。正体不明の敵に襲われ、攫われ、暴行され、散々な目に遭いながらも、スミスは丁寧な口調を崩すことなく、淡々と自分が果たすべき役割をこなしていきます。

途中、話がどこへ転がっていくのかわからず戸惑いましたが、最後はビックリ、どんでん返し。スミス氏が100年以上前に本物の人間だったときにどんな小説を書いてきたのかわかりませんが、この『書架の探偵』がいちばん面白いことは間違いないでしょう。

あ、蔵者には文章を書くことは禁じられていたのでした。もし駄文を書いたりすると作家としての価値が下がるからという図書館の都合で。でも、価値が上がるなら問題ないはず、ですよね?

お勧め度:★★★☆☆

より以前の記事一覧