SF/ファンタジー

2017年7月20日 (木)

空棺の烏ー八咫烏シリーズ 4 (阿部知里)

空棺の烏 八咫烏シリーズ 4 (文春文庫)
空棺の烏 』はシリーズ第4弾。今回は、若宮の近習も勤めた雪哉が、山猿と戦う力を身につけるために武官養成学校「勁草院」に入学します。毎回、物語を異なる角度から語って見せてくれます。

1. 茂丸
2. 明留
3. 千早
4. 雪哉

上記目次のように、今回は4人の主要メンバーの語りで進んでいきます。本書のタイトル『空棺の烏』というのは、先代の金烏の亡骸が収められているはずの棺が空のままだという意味。これは由々しき事態なのですが、若宮にはどこを探せばよいのかわかりません。

この八咫烏たちの世界は何かがおかしい。というか、おかしくなってきている。それはわかるのだけれど、どこがどうおかしいのか。若宮も雪哉もその謎を解き、平和をもたらすために奔走するのです。

それを捻った展開で飛んでくるものだからびっくりさせられますが、一巻ずつ読み進むにつれて、謎の糸がつながり、世界観が伝わってくる、その感覚がおもしろいのです。細かい表現がどうとか、そういうことは気にする必要はないでしょう。

お勧め度:★★★☆☆

2017年7月16日 (日)

黄金の烏ー八咫烏シリーズ 3 (阿部知里)

黄金の烏 八咫烏シリーズ 3 (文春文庫)
黄金の烏 』は八咫烏の国で「仙人蓋」という薬(麻薬?)の被害を追ううちに、世継ぎの若宮と雪哉は大猿に襲われ壊滅した村を発見します。大猿は一体どこから侵入したのか。これは国の存亡に関わる大事。若宮は調査を開始するのですが…。

壊滅した村で唯一の生き残り、小梅という娘を保護したのが雪哉の実家。小梅の父の行方が知れないというのに彼女は慌てる素振りを見せないことに雪哉は不審を抱きます。「彼女はなにかを隠している」。

この八咫烏シリーズを読んでいて、思い出すのは小野不由美の『十二国記』シリーズ。雰囲気が似ているのです。だとすると、これもホラーファンタジーだから、八咫烏たちが大猿に殺され喰われ、食料として甕に詰められるといった残酷な描写も不思議ではない、と。ほんとはホラーは苦手なのですが、物語の展開が気になると読んでしまうのです。そういう意味では、いちばん怪しいのは小梅です。本シリーズでは、無邪気な少女は怪しいのです。

お勧め度:★★★☆☆

2017年7月10日 (月)

烏は主を選ばないー八咫烏シリーズ 2 (阿部知里)

烏は主を選ばない (文春文庫)
烏は主を選ばない 』は第1巻『烏に単は似合わない 』とおなじ時間軸で若宮側から見た物語。前巻で、姫たちのまえに一向に現れない若宮は一体なにをしていたのかが語られます。つまり、1巻と2巻で1セットなのです。2巻のタイトルもまた意味深であります。

若宮というのが変わり者でして、広大な宮に護衛を一名、側仕えを一名きりしか置かないのです。側仕え候補がすぐにやめてしまうところに送り込まれたのが、北家の「ぼんくら次男坊」の雪哉です。

いきなり庭に連れ出され「ここに同じ植物を2つずつ植えてあるから、一方には井戸の水、もう一方には滝の水を遣ること」と言いつけられます。井戸は近いからよいけれど、滝は遠い。烏に転身して飛んでいけばよいのですから便利ですが、それにしても他にも山のように用事を言いつけられたので急がないと間に合いません。最初から諦めるのは悔しい雪哉は意地になってやり遂げるのでした。なぜ別の場所の水を遣るのでしょうか。不穏な空気を感じます。

貴族の若者であれば、若宮の側仕えになることは名誉らしいのですが、庶民の雪哉は名誉など要らないから側仕えなど勘弁してほしいというのが本音。若宮に対してもぞんざいな態度でタメ口です。その後、雪哉は若宮に散々な目に遭わされます。なんの説明もないのだから雪哉も怒るわけですが、それでも逃げ出さないのはたいしたもの。読んでて楽しいです。

ただ、一巻同様、誰が味方で誰が敵か、なにが善でなにが悪なのかは隠されています。突然ひっくり返ってびっくりする羽目になるのでお楽しみに!

お勧め度:★★★★☆

2017年7月 6日 (木)

烏に単は似合わないー八咫烏シリーズ 1 (阿部知里)

烏に単は似合わない (文春文庫)
烏に単は似合わない 』は、ふだんは人の形をとっている八咫烏一族が治める国における、世継ぎの若宮のお后選びを描く、和風ファンタジーです。東西南北四家から送り込まれたお后候補の姫たちが主人公なのに『烏に単は似合わない 』とはまた、意味深なタイトルではありませんか。

東家からは長女の代わりに急遽妹姫が送り込まれることになり、物見遊山に出かけるようにはしゃぐ姫がかわいい。しかし「玉の輿」に乗ることができるかどうか。四家の思惑が絡み合い、陰謀が渦巻くなか、果たして誰が若宮をゲットするのか、目が離せません。

平安王朝風ファンタジーの世界を能天気に楽しんでいたのですが、最後にまさかのどんでん返し。これ、単なるファンタジーではなくミステリーだったのね。つまり、読者にとって、登場人物の当初の設定は意味がなく、あるとき突然本性を現すので要注意です。

能天気に楽しみたかった気もするけれど、そういうことであれば、こちらもそのつもりで続巻を読ませていただきます。

お勧め度:★★★★☆

2017年4月28日 (金)

私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback? (森博嗣)

私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback? (講談社タイガ)
私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback? 』はWシリーズ第5弾。人間は生植機能を失い、人口は減る一方。そこで見た目は人間と区別がつかないウォーカロンを開発。人間とウォーカロンを識別する装置を開発したハギリ博士が、護衛のウグイとアカバネを連れて、ウォーカロンの集落や、人間の赤ん坊のいる場所を調査してまわっているのです。

今回はアフリカ南端の通称「富の谷」。そこへ行って帰ってきた者はおらず、警察も近づかない場所。案内人に連れられてたどりついた先でハギリが見たものは…?

ハギリ博士って、いかにも大学の先生っていう感じで、おっとり、のんびりタイプ。気が小さいくせに自分の身の危険はあまり真剣に考えない。これでは護衛もたいへんです。

あの、それは罠でしょ。っていうところに護衛がいっしょに嵌ってどうするの? そういうラノベもありましたっけ。

生命とはなにか。生きるとはどういうことなのか。なかなか愉快なSFです。

お勧め度:★★★☆☆

2017年3月 1日 (水)

ハリー・ポッターと呪いの子 (J.K.ローリング他)

【Amazon.co.jp限定】 ホグワーツMAP付き ハリー・ポッターと呪いの子 第一部、第二部 特別リハーサル版 (ハリー・ポッターシリーズ)
ハリー・ポッターと呪いの子 第一部、第二部 特別リハーサル版 』は「ハリー・ポッター」シリーズの後日談かと思ったら、2016年7月30日、ロンドンのパレス・シアターで初演された演劇の脚本でした。小説を期待していたので、ちょっとがっかり。

でも、読み始めたらハリーたちとヴォルデモートとの闘いが思い出されて懐かしい。あれから19年、ハリーは魔法省で働き、ハーマイオニーはロンと結婚し、一女ローズをもうけ、なんと魔法大臣に収まっています。ちなみにロンは悪戯グッズショップのオーナー。ハリーの伴侶はジニーです。ジニーで誰だっけ? と、ググってしまいました。

さて、今回の主人公はハリーの次男アルバス。魔法界の英雄を父にもつプレッシャーに加え、父との折り合いが悪く、ホグワーツにも入学したくありません。彼が出会ったのは、ドラコの息子スコーピウス。ヴォルデモートの子ではないかという悪い噂があるのですが、ふたりは仲良くなっていきます。

そこまではよいのですが問題は、ハリーのせいでヴォルデモートに殺されたセドリックを取り戻そうとアルバスが考えたこと。スコーピウスと協力して、魔法省に隠されているらしい逆転時計を盗み出します。過去に戻ってセドリックを救おうという作戦です。

しかし、歴史を改変しようとしてもたいていロクなことになりません。

さて、一体どうなることやら? 続きは読んでのお楽しみ!

お勧め度:★★★☆☆

2017年2月17日 (金)

紐結びの魔導師 (乾石智子)

紐結びの魔道師 (創元推理文庫)
紐結びの魔道師 』は『オーリエラントの魔道師たち 』の第1話をそのまま引き継いで「紐結びワールド」を一冊にまとめたもの。オーリエラントの魔導師たちのなかでは、わたしは今作の主人公リクエンシスがいちばん好きです。魔導師らしくないのが魅力かな。

1. 紐結びの魔道師
2. 冬の孤島
3. 形見
4. 水分け
5. 子孫
6. 魔道士の憂鬱

「冬の孤島」はファイフラウとブロンハという地下に潜む化け物退治。リクエンシスは度胸だけはあるのですが、紐結びの魔法の効果は当てが外れることもあって、ピンチに陥ることもしばしば。それがまた愉快なのです。

「水分け」は相棒といえるリコが死にかけているのをなんとか救おうと奔走する話。「子孫」「魔導師の憂鬱」では踊り子ニーナに懐かれ、どこまでもついてきます。「俺は見た目より年を食ってるぞ」。もっと若い奴を探せといっても聞く耳を持たないニーナ。で、リクエンシスの年齢を聞いてビックリ。

リコが書き残した羊皮紙を製本し、写本をつくるためにパドゥキアを目指すふたりの行く末に幸あれと祈ります。

巻末に「オーリエラントの魔道士」シリーズの年表が載っています。発行順に読んでも時代が前後に飛ぶのでわけがわかりません。この年表はありがたい。

また「紐結び」のパドゥキア編を待ってます!

お勧め度:★★★★★

2017年1月29日 (日)

ヤーンの虜ーグイン・サーガ140 (宵野ゆめ)

ヤーンの虜 (グイン・サーガ140巻)
ヤーンの虜 』はグイン・サーガの140巻目。1巻が刊行された1979年から38年も経つんですね。外伝も含めて全巻読んできました。栗本薫が亡くなって、どうなることかと思ったけれど、後継者が出てきて今も続いているのは素晴らしいことだと思います。

しかし、お調子者だけど一本筋が通っていたマリウスはふらふらと頼りない吟遊詩人になってしまったし、グインもどことなく軽くなってしまいました。変わってしまうのは仕方ないことだとわかっていますし、決して批判するつもりはありません。でも、さびしい。今作を読み終えて、グイン・サーガから心が離れていることに気がつきました。しばらく離れて、また気が向いたら戻ってきます。

お勧め度:★★★☆☆

2017年1月16日 (月)

神仙の告白 旅路の果てにー僕僕先生 10 (仁木 英之)

神仙の告白 僕僕先生: 旅路の果てに
神仙の告白 僕僕先生: 旅路の果てに 』は僕僕先生シリーズ第10弾。新シリーズ「僕僕先生 零」もスタートしていますが、わたしはこのオリジナルシリーズのほうが好きです。零の僕僕先生のほうが可愛いけれど、オリジナルのほうが謎があって面白いのです。永遠の時を生きる神仙がなにを想うのか。それを知りたくて仕方がない王弁も可哀想な男なのです。

今回、王弁はいきなり眠ってしまって出番がほとんどありません。いわゆる過労ですね。王弁を救うため、僕僕は反魂丹という秘薬の材料を求めて旅立ちます。そこへ僕僕を捕えようとする一派が現れ、それがなぜか王弁をも捕えて、なにかに利用しようと企んでいる様子。孫悟空、猪八戒、沙悟浄、関羽まで出てきて大騒ぎです。一体なにがどうなってるんだ?

で、いよいよクライマックスというところで「つづく」って、ひどい!

お勧め度:★★★★☆

2017年1月12日 (木)

テンペスト (池上永一)

テンペスト 第一巻 春雷 (角川文庫)
テンペスト 』では、19世紀の琉球王朝を舞台に、13歳の少女・真鶴が(性別を偽り宦官の孫寧温として)科試を突破し首里城の評定所筆者として王府の改革に挑みます。厳しい父親から逃げ出した兄との再会。宦官に対する嫌悪から、容赦ない改革に対する反感、嫉妬、憎悪。伏魔殿と化した王宮で生き残ることはできるのか?

単行本2冊が文庫本4冊になって出ています。文庫1巻は「なんて面白い小説なんだ。今年ベスト1だ」。高田郁の『澪つくし料理帖』『あきない世傳』シリーズのように、健気な少女が運命に抗いながら成長していく物語として楽しめました。

が、2巻になると希望と絶望が表裏の木の葉が激流に弄ばれる落差についていけなくなりました。意思の強さに畏れさえ感じさせたかと思うと、政敵の脅迫に幾度もあっさり膝を追って自らの主張を曲げてしまいます。情けない。倒錯した性も同様。女を捨てて男として生きると決めたから恋が成就することはない。そうはわかっていても自分のなかの女を殺しきれない。この小説の行き方にはわたしはついていけません。

琉球の本格時代小説に見えますが、時々、作者の「軽口」が出ます。13歳の少女が、王の側室の衣装代を節約するのに「どうせすぐに脱ぐのだから不要。過剰包装です」なんて言いますか? 愉快ではありますが、場の雰囲気が壊れます。

身も心も(作者に)ボロボロにされた寧温が後半戦をどう戦うのか。清国と薩摩藩との微妙な政治力学のなかで琉球をどう生かすのか。竜の導きと父親の遺言が伏線になっているはずなので、紆余曲折の末たどりつく先は見えるような気がします。

・・・・・

後半戦も主人公の女「真鶴」と男「寧温」がトグルスイッチのように切り替わります。まるで映画『ミセス・ダウト』。真鶴といっしょに側室(あごむしられ)になった真美那は聡明な美人なのですが天然系破天荒「お嬢様爆弾」。真鶴/寧温が至極まっとうな神経の持ち主だけに好対照で、なかなか愉快なキャラです。

日本に開国を迫ったアメリカの黒船が、先に琉球に足がかりを求めてやってきます。したたかなペリー提督に対抗できるのは寧温しかいない。しかし、寧温は八重山に流罪にされ、真鶴は王の側室になっています。琉球危うし!

と、シリアスな展開も天変地異のように突如巻き起こるコメディパートによって崩れ去るのです。面白いけど疲れます。竜と遺言はどこ行ったぁ!?

お勧め度:★★☆☆☆

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