SF/ファンタジー

2017年9月 7日 (木)

ふわふわの泉 (野尻抱介)

ふわふわの泉
ふわふわの泉 』 は、高校の化学部部長・浅倉泉が偶然、ダイヤモンドより固く、空気より軽い物質を作り出した。彼女はそれを「ふわふわ」と名付け、科学部の後輩・保科昶と共に、大々的に売り出しにかかったのです。どこで失敗するのかと思っていると、あれよあれよという間に規模が大きくなって…。

化学オタクの小説を読んだのは初めてで新鮮でした。ふわふわが様々な物に応用され、空を飛び、果ては宇宙にまで飛び出そうとする、壮大なSF小説です。荒唐無稽とも見えますが、いまのわたしには判断できません。数万光年の宇宙を旅するには人間の肉体がお荷物になるため情報化が必要だとか。いわば長門有希の親分ですね。つまり、人類にとって「シンギュラリティ」(人類が人工知能と融合し、生物学的な思考速度の限界を超越すること)は不可避だというのです。

ちょっと毛色の変わったSFを読んでみたい方にお勧めします。

お勧め度:★★★★☆

2017年8月30日 (水)

弥栄の烏 (阿部知里)

弥栄の烏 八咫烏シリーズ6
弥栄の烏 八咫烏シリーズ6 』 は八咫烏シリーズ第1部完結編。

1. 烏に単は似合わない
2. 烏は主を選ばない
3. 黄金の烏
4. 空棺の烏
5. 玉依姫
6. 弥栄の烏

1巻と2巻が同じ時と場所を、異なる登場人物の視点から描いた作品であったように、5巻と6巻もそうです。5巻は山神の「母」となる志帆が、6巻は若宮たちが、主人公です。ガールズサイドとボーイズサイドですね。

今回、初めてKindle版を買いました。iPhoneSEの4インチ画面で読む気はしなかったので、以前買ったKindle Fireを指定し、途中まで読んで3日ほど忘れていたら、持ち出したもののバッテリー切れで読めず。次回、朝100%充電して持ち出したにもかかわらず、昼休みに電源が入りません。帰宅後、すったもんだして、立ち上げ直して、なんとか読み終えましたが、Kindle Fireは信用できません。

バッテリーが切れたら読めないのは困るのと、Kindle Fireは重くて持ちにくい。滑りやすく落としたら壊れるという不安もあります。わたしはやっぱり紙の本がいい。単行本1,680円がKindle1,200円というのは他に比べれば安いほうですが、まだまだ高い。1,000円以下にすべき。Kindle Fireがだめなら iPhoneで読めないのかとKindleアプリを立ち上げてみたら、ちゃんと読めるじゃないですか。画面が小さいとはいえ、小説ならば読めないわけではないので、こっちで読めばよかった。

というわけで、今作は疲れました。(なんのこっちゃ?)

お勧め度:★★★★☆

2017年8月27日 (日)

神様の御用人 6 (浅場なつ)

神様の御用人 (6) (メディアワークス文庫)
神様の御用人 (6) 』はシリーズ第6弾。

1. 東国の武者
2. 神様と兄と妹と
3. 親愛なる姉上へ

なにやら企んでいる幸太郎に「旅費は出すから」と言われ、ホイホイと東京までついてきた良彦(と黄金)。そこで平将門に出会い、自分を裏切った藤原氏の末裔に仕返しをしたいと御用を頼まれてしまいます。その末裔とは…。良彦のまえに突然現れる大国主神が可笑しい。

3話目は、いま話題の九州は沖ノ島。宗像三女神に呼び出されます。東へ西へと御用人も忙しい。

お勧め度:★★★☆☆

2017年8月24日 (木)

神様の御用人 5 (浅葉なつ)

神様の御用人 (5) (メディアワークス文庫)
神様の御用人 (5)』も5冊目。久しぶりです。能を観るようになって古事記に登場する神様が身近になったので『古事記 』を読もうとしたのですがダメ。退屈で読めないのです。そこで思い出したのが本書。そうだ、続きを読もう!

1. 天孫の鏡
2. 英雄、鳥を好む
3. 大地主神の恋わずらい?
4. えべっさんの草鞋

この本は神様の御用を承る係に任命された25歳フリーターの萩原良彦が主人公。方位神の黄金(狐)がお供というかお目付役で、大主神社の宮司の娘・吉田穂乃香(女子高生)が神様が見えるので時々良彦を手伝っています。

御用の多くは、人の信仰心を失い、力を削がれた神様に対する助力なのですが、良彦が黄金はもちろん、初対面の神様に対してもタメ口なのが可笑しい。そういえば、良彦は文庫版の古事記を持っていて、それで神様のことを調べています。どの文庫だろう?

1話目に「途端に態度を軟化させ始める黄金を、良彦は能面のような顔で見つめた」という下りがあるのですが、ここでいう「能面」とは無表情とか無感情という意味なのでしょうね。でも、わたしもまだ勉強中ですけど、能面っていろいろあるんです。

そういえば、彼らが暮らすのは京都・出町柳周辺。吉田穂乃香ということは、彼女の父親が宮司を務める神社は吉田神社がモデルでしょうか。4話では、穂乃香が出町(枡形)商店街の時計店に出かける様子が描かれています。

そのとき良彦は西宮にいて、出町柳まで戻るのは「意外と面倒くさい」。スマホアプリ「Y!乗換案内」によると、阪神線で梅田へ出て、大阪駅から環状線で京橋へ。京阪に乗り換えて出町柳まで約1時間半。森見登美彦の描く京都は「あぁ、あのあたりだな」と、すぐ眼に浮かぶのですが、本シリーズはなぜか風景が浮かびにくい。だから自分で想像を膨らませる必要があるのがちょっと寂しい。

お勧め度:★★★☆☆

2017年8月16日 (水)

青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? (森博嗣)

青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? Wシリーズ (講談社タイガ)
青白く輝く月を見たか?』は「Wシリーズ」の第6弾。

今回ハギリ博士がウグイと共に向かうのは北極です。海底5,000mに沈む潜水艦でいまも稼働するスーパーコンピュータ「オーロラ」の様子がおかしい。このままでは暴走するかもしれないから「説得」するか「停止」させたい。マガタ博士も登場します。

量子コンピュータが人工知能を加速する 』を読んだからか、急にAIが現実味を帯びて感じられるようになってきました。地球における人類の歴史、学問、文化、芸術のすべてを習得したAIが「考える」ことってなんだろう? 興味があります。

結局ハギリ博士は案内役。護衛のウグイもすこしずつハギリの冗談にも反応するようになってきました。人間、ウォーカロン、AIの区別があいまいになるというか、区別がなくなる世界が(SF的には)いつか来るのかもしれません。人類の人口減少傾向は事実ですし、未来社会を支えるのは「彼ら」なのかもしれません。

一方、今回は全体に割とほのぼのした展開で、のんびり楽しむことができました。ハギリ博士のまわりには「人間でない仲間」が増えつつあって、どこにでも現れるデボラに、オーロラが加わったようです。そんななかウグイは…?

お勧め度:★★★★☆

2017年7月20日 (木)

玉依姫ー八咫烏シリーズ 5 (阿部知里)

玉依姫 八咫烏シリーズ 5
玉依姫 』は現代日本から見た八咫烏シリーズの一冊。『十二国記』における『魔性の子』にあたります。

1. 雨宿り
2. 荒魂
3. 過去夢
4. 糺す
5. 神名
6. 落花
7. 帰還

高校生の志帆は、いっしょに暮らす祖母の反対を押し切って、母親が嫁いだ山内村の叔父を訪ねます。祖母が母を連れて村から逃げ出した理由が知りたかったからです。読者からすると、トラブルに巻き込まれにいく前に祖母からちゃんと話を聞くべきだと思うわけですが、こちらの心の声などお構いなしに志帆は生贄にされてしまいます。

だからどうした?と思うわけですが、問題の元凶である山神に仕えるのが八咫烏と猿なのです。

荒ぶる神を鎮めるために、若い娘を人身御供に出すという風習がその村には残っていたわけです。現代の日本で行方不明者を隠すのは容易ではないと思うのですが、警察もぐるだというのですからお手上げです。さて、志帆の運命はいかに!?

お勧め度:★★★☆☆

2017年7月19日 (水)

空棺の烏ー八咫烏シリーズ 4 (阿部知里)

空棺の烏 八咫烏シリーズ 4 (文春文庫)
空棺の烏 』はシリーズ第4弾。今回は、若宮の近習も勤めた雪哉が、山猿と戦う力を身につけるために武官養成学校「勁草院」に入学します。毎回、物語を異なる角度から語って見せてくれます。

1. 茂丸
2. 明留
3. 千早
4. 雪哉

上記目次のように、今回は4人の主要メンバーの語りで進んでいきます。本書のタイトル『空棺の烏』というのは、先代の金烏の亡骸が収められているはずの棺が空のままだという意味。これは由々しき事態なのですが、若宮にはどこを探せばよいのかわかりません。

この八咫烏たちの世界は何かがおかしい。というか、おかしくなってきている。それはわかるのだけれど、どこがどうおかしいのか。若宮も雪哉もその謎を解き、平和をもたらすために奔走するのです。

それを捻った展開で飛んでくるものだからびっくりさせられますが、一巻ずつ読み進むにつれて、謎の糸がつながり、世界観が伝わってくる、その感覚がおもしろいのです。細かい表現がどうとか、そういうことは気にする必要はないでしょう。

お勧め度:★★★☆☆

2017年7月16日 (日)

黄金の烏ー八咫烏シリーズ 3 (阿部知里)

黄金の烏 八咫烏シリーズ 3 (文春文庫)
黄金の烏 』は八咫烏の国で「仙人蓋」という薬(麻薬?)の被害を追ううちに、世継ぎの若宮と雪哉は大猿に襲われ壊滅した村を発見します。大猿は一体どこから侵入したのか。これは国の存亡に関わる大事。若宮は調査を開始するのですが…。

壊滅した村で唯一の生き残り、小梅という娘を保護したのが雪哉の実家。小梅の父の行方が知れないというのに彼女は慌てる素振りを見せないことに雪哉は不審を抱きます。「彼女はなにかを隠している」。

この八咫烏シリーズを読んでいて、思い出すのは小野不由美の『十二国記』シリーズ。雰囲気が似ているのです。だとすると、これもホラーファンタジーだから、八咫烏たちが大猿に殺され喰われ、食料として甕に詰められるといった残酷な描写も不思議ではない、と。ほんとはホラーは苦手なのですが、物語の展開が気になると読んでしまうのです。そういう意味では、いちばん怪しいのは小梅です。本シリーズでは、無邪気な少女は怪しいのです。

お勧め度:★★★☆☆

2017年7月10日 (月)

烏は主を選ばないー八咫烏シリーズ 2 (阿部知里)

烏は主を選ばない (文春文庫)
烏は主を選ばない 』は第1巻『烏に単は似合わない 』とおなじ時間軸で若宮側から見た物語。前巻で、姫たちのまえに一向に現れない若宮は一体なにをしていたのかが語られます。つまり、1巻と2巻で1セットなのです。2巻のタイトルもまた意味深であります。

若宮というのが変わり者でして、広大な宮に護衛を一名、側仕えを一名きりしか置かないのです。側仕え候補がすぐにやめてしまうところに送り込まれたのが、北家の「ぼんくら次男坊」の雪哉です。

いきなり庭に連れ出され「ここに同じ植物を2つずつ植えてあるから、一方には井戸の水、もう一方には滝の水を遣ること」と言いつけられます。井戸は近いからよいけれど、滝は遠い。烏に転身して飛んでいけばよいのですから便利ですが、それにしても他にも山のように用事を言いつけられたので急がないと間に合いません。最初から諦めるのは悔しい雪哉は意地になってやり遂げるのでした。なぜ別の場所の水を遣るのでしょうか。不穏な空気を感じます。

貴族の若者であれば、若宮の側仕えになることは名誉らしいのですが、庶民の雪哉は名誉など要らないから側仕えなど勘弁してほしいというのが本音。若宮に対してもぞんざいな態度でタメ口です。その後、雪哉は若宮に散々な目に遭わされます。なんの説明もないのだから雪哉も怒るわけですが、それでも逃げ出さないのはたいしたもの。読んでて楽しいです。

ただ、一巻同様、誰が味方で誰が敵か、なにが善でなにが悪なのかは隠されています。突然ひっくり返ってびっくりする羽目になるのでお楽しみに!

お勧め度:★★★★☆

2017年7月 6日 (木)

烏に単は似合わないー八咫烏シリーズ 1 (阿部知里)

烏に単は似合わない (文春文庫)
烏に単は似合わない 』は、ふだんは人の形をとっている八咫烏一族が治める国における、世継ぎの若宮のお后選びを描く、和風ファンタジーです。東西南北四家から送り込まれたお后候補の姫たちが主人公なのに『烏に単は似合わない 』とはまた、意味深なタイトルではありませんか。

東家からは長女の代わりに急遽妹姫が送り込まれることになり、物見遊山に出かけるようにはしゃぐ姫がかわいい。しかし「玉の輿」に乗ることができるかどうか。四家の思惑が絡み合い、陰謀が渦巻くなか、果たして誰が若宮をゲットするのか、目が離せません。

平安王朝風ファンタジーの世界を能天気に楽しんでいたのですが、最後にまさかのどんでん返し。これ、単なるファンタジーではなくミステリーだったのね。つまり、読者にとって、登場人物の当初の設定は意味がなく、あるとき突然本性を現すので要注意です。

能天気に楽しみたかった気もするけれど、そういうことであれば、こちらもそのつもりで続巻を読ませていただきます。

お勧め度:★★★★☆

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