SF/ファンタジー

2018年2月19日 (月)

コルヌトピア (津久井 五月)

コルヌトピア
コルヌトピア 』は、日経新聞夕刊の書評欄で紹介されていて興味を持ちました。植物群を計算資源化するというのです。それってコンピュータですよね。植物計算機(フロラ)とは、俄かに想像しがたいものだけに「おもしろそう」!

一方「コルヌトピア」とは、ギリシア神話に出て来る「豊饒の角」のこと。ヤギの角のような小型アンテナ(ウムヴェルト)をうなじに取り付けて、フロラと通信できるらしいのです。余談ですが、人間がハックされそうで怖い。

フロラ開発設計企業の調査官・砂山淵彦(すなやま・ふちひこ)は、二子玉川近くのグリーンベルトで起きた火災事故を調査するため出向いた先で、天才植物学者・折口鶲(おりくち・ひたき)と出会いますが、彼女との作業中に突然意識を失い倒れてしまいます。

SFなのですが、文学的表現が多く、最初は戸惑います。淵彦の友人・藤袴嗣実(ふじばかま・つぐみ)との出会いの場面で「源氏物語の藤袴、藤田嗣治の嗣に」と名前を説明するのです。好きな人にはたまらないのでは?

ひたきの研究には、フロラに適さない植物について、また植物と昆虫の関わりについてなど、なかなか興味深いものがあります。そもそも未解明の部分が大きいフロラを都市のインフラに取り込むとは大胆です。それ以前にウムヴェルトを着けている背景説明がないのが、わたしとしては怖い。

東京よりも赤道付近のジャングルをフロラ化したほうが効率がいいはず。逆に緯度が高い地域は「量子コンピュータを利用している」らしい。50年後、現実はどうなっているでしょう?

お勧め度:★★★☆☆

2018年2月 6日 (火)

たったひとつの冴えたやりかた (ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)
たったひとつの冴えたやりかた 』は三浦しをんの『本屋さんで待ち合わせ 』で紹介されていたので読んでみました。

16歳の少女コーティは宇宙の冒険に出たくて仕方がありません。両親からプレゼントされた小型宇宙艇に思い切り燃料を積んで向かったのは辺境の基地。行方不明の宇宙船を探すうち、脳内にイーアというエイリアンが入り込んでしまって、さぁ、たいへん!

だと私は思うのですが、本人は意外に冷静。イーアに悪意も害意もないことがわかると、ともに探検に乗り出していくのですが...。

切ない物語でした。

お勧め度:★★★★☆

2018年1月25日 (木)

ペガサスの解は虚栄か?Did Pegasus Answer the Vanity? (森博嗣)

ペガサスの解は虚栄か? Did Pegasus Answer the Vanity? (講談社タイガ)
ペガサスの解は虚栄か?』はWシリーズ第7弾。今回、ハギリ博士が向かうのはインドの富豪宅。パリ万博会場から逃亡したウォーカロンが逃げ込んだ可能性が高いというのです。護衛はウグイに代わってキガタと、アネバネ。せっかくウグイに慣れて来たのに残念です。と思ったら最後にちらっと登場します。お楽しみに!

毎回地球を飛び回るハギリですが、スーパーコンピュータやデボラのようなトランスファもネットを通じて瞬時に世界を一周するわけで「電脳社会」というのが文字通り実現しています。人間が生殖能力を失い、ウォーカロンに受胎能力を持つものがいるという噂もある中、クローンは違法だけどウォーカロンならOKという、いかにもありそうな法律。ここで描かれる社会の未来像はすでに見えているのに、それをいまさらどうしようというのでしょうか。

もはや惰性で読んでいます。そろそろ意表を突いてくれないと退屈です。

お勧め度:★★☆☆☆

2017年10月20日 (金)

書架の探偵 (ジーン・ウルフ)

書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
書架の探偵』は「図書館に収められているミステリー作家のリクローンが探偵として活躍する」という紹介文と、古い図書館の書棚を描いた表紙を見て、一冊の本の中にAIとして作家の記憶を封じ込めてあって、彼と対話しながら、知恵を借りて事件を解決していく物語だと思ったのです。

が、予想は見事に裏切られました。その書架は、ワンルームマンションの出入口側の壁を取り払ってあり、蔵書ならぬ「蔵者」はそこで人間のように暮らしているのです。図書館の開館時間中は自分の部屋にいなければならず、閲覧や貸し出しの希望者がいたら要求に応えねばなりません。もしも長年、閲覧希望すらない状態が続くと最後には焼却処分が待っているとか。そう、蔵者は人間ではなく「物」扱いなのです。クローンに人権はないみたい。

父親につづいて兄も亡くしたコレット・コールドブルック嬢は、兄を殺した犯人の手がかりになりそうな一冊の本『火星の殺人』の著者であるE・A・スミスのリクローンを一週間借り出したのです。正体不明の敵に襲われ、攫われ、暴行され、散々な目に遭いながらも、スミスは丁寧な口調を崩すことなく、淡々と自分が果たすべき役割をこなしていきます。

途中、話がどこへ転がっていくのかわからず戸惑いましたが、最後はビックリ、どんでん返し。スミス氏が100年以上前に本物の人間だったときにどんな小説を書いてきたのかわかりませんが、この『書架の探偵』がいちばん面白いことは間違いないでしょう。

あ、蔵者には文章を書くことは禁じられていたのでした。もし駄文を書いたりすると作家としての価値が下がるからという図書館の都合で。でも、価値が上がるなら問題ないはず、ですよね?

お勧め度:★★★☆☆

2017年10月11日 (水)

怨讐星域 3 約束の地 (栃尾真治)

怨讐星域Ⅲ 約束の地 (ハヤカワ文庫 JA カ 2-16)
怨讐星域Ⅲ 約束の地』はシリーズ最終巻。地球を飛び立った宇宙船ノアズ・アークがついに約束の地・エデンの衛星軌道上に到着します。しかし、母船は着陸できないため、宇宙艇を建造し、その一方でエデンの地表に探査機を送り込み、データ収集を行うのですが…。

エデンには知的生命体が存在する兆候が見られる。地表の95%は海なので、残る5%の陸地で共存していくことは可能なのか。凶暴な敵となったら勝ち目はあるのか。最高会議は紛糾し、地表への降下計画は頓挫します。

一方、エデンでは首長アンデルスが「裏切り者の末裔は皆殺しにすべし」と唱え、少年兵に槍を持たせて訓練を行なっています。さぁ、ジャンプ組と宇宙船組が出会ったときに何が起こるのか、目が離せません。

ラストはご自分の目で確かめていただくとして、最後にサプライズが用意してありました。「なんじゃ、そりゃー!?」。生きていくって大変ですね。

SFとしてはツッコミどころ満載ですが「もし地球が滅亡するとしたら」というIFで始まる物語としては実に面白いものでした。それぞれの立場の人間がそのときどう感じたのかが丁寧に描かれていて、その都度「彼(彼女)に幸せになってほしい」と願わずにはいられません。

最後に、表題になっている「怨讐」について。内の結束を固めるために外に共通の敵をつくるという方法があることは理解できるのですが、地球滅亡をまえにしてアメリカの大統領が宇宙船で脱出したからといって、その何世代も後の子孫を皆殺しにするという恨みは筋違いだと思います。作者もそんなことは承知のうえで、現在の地球でも同様の「恨み」が存在することを想起させようというのかもしれません。

果たして人類に希望はあるのか。ドキドキしながら読んでください。

追記:星間移住つながりで、Amazonビデオで『インターステラー』と『オブリビオン』を観ました。後者は崩壊した地球が舞台なのですがアンドリュー・ワイエスの絵画「クリスティーナの世界」が象徴的で面白かった。興味のある方はどうぞ!

お勧め度:★★★★☆

2017年10月 8日 (日)

怨讐星域 2 ニューエデン (栃尾真治)

怨讐星域Ⅱ ニューエデン (ハヤカワ文庫JA)
怨讐星域Ⅱ ニューエデン 』はシリーズ2作目。宇宙船ノアズ・アークも、約束の地エデンも、人類は3世代目になっています。孫の世代になると、地球のことを教育でしか知りませんから、どうもピンと来ない部分が増えてくるようです。

昨年の降誕祭というイベントでは「かぶと虫」というグループの「昨日」という曲が披露されて盛り上がったとか。5世代目になると、地球の文化と文明もある程度戻ったようです。生きるのに必死だったから武器は進歩していないようで幸いです。ここは日本人が書いたからそうなのであって、アメリカ人なら銃を持たせているような気がします。人名などは翻訳物っぽいのですが、そういう意味では日本的なSF小説で、わたしにとっては逆に新鮮でした。

お勧め度:★★★★☆

2017年10月 5日 (木)

怨讐星域 1 ノアズ・アーク (栃尾真治)

怨讐星域Ⅰ ノアズ・アーク (ハヤカワ文庫JA)
怨讐星域Ⅰ ノアズ・アーク 』は「太陽フレアによって数年後に地球が滅亡する」という予測のもと、アメリカ大統領と3万人は宇宙船ノアズ・アーク号で秘密裏に地球を離れ「約束の地」へ旅立ったのです。一方、大統領の娘ナタリーの恋人が星間転送装置を実用化。引き離された恋人を先回りして待つことに…。

舞台は3つ。ノアズ・アーク船内と172光年離れた惑星、そして地球です。

実際にこんなことになったら一体どうなるのだろう? 読み進めるうちに引き込まれます。

ノアズ・アークが目的の星に到着するのは数百年後。地球を出発した人々の何世代も後のこと。冷凍睡眠かと思ったらそうじゃない。ただ次の世代にバトンを渡すためだけに生きるのでは、自殺者が増えるのもわかるような気がします。

一方、目的の星に転送された人たちも悲惨です。そもそも無事に転送された人は限られています。海上だったら溺死、高いところだったら転落死、山や木や石のある場所だったら合成死? 生き残ったとしても、水と食料を確保するだけでも苦労が絶えず、謎の捕食生物の犠牲者も後を絶たない。文明がリセットされた状態から未知を惑星の生活をスタートするのは、地球でのキャンプとは訳が違います。恐ろしい。

そして、もし地球が明日滅ぶとしても、最後まで見届けようとする人たちもいます。そうなったら毎日がまさに「神に与えられた」貴重な時間。そこに幸せを見出す人もいるのです。「自分だったらコレかなぁ。出不精だし」などと思いつつ読みました。

まさに三者三様の極限状態。

タイトルに「怨讐星域」とあるように、地球に取り残され組は、ノアズ・アーク組を深く恨んでいます。転送先のコミュニティでは「ノアズ・アークがこの星に着いたとき、裏切り者の子孫たちに鉄槌を下すのだ」と子供らに言い聞かせています。でも、これはちょっと違和感がある。アメリカ人なら「国民を見捨てた大統領」ということで糾弾できるけれど、日本人であれば文句をいう筋合いではないでしょう。

本作は3巻完結。さて、どうなっていくのか興味津々です。

お勧め度:★★★★★

2017年9月 7日 (木)

ふわふわの泉 (野尻抱介)

ふわふわの泉
ふわふわの泉 』 は、高校の化学部部長・浅倉泉が偶然、ダイヤモンドより固く、空気より軽い物質を作り出した。彼女はそれを「ふわふわ」と名付け、科学部の後輩・保科昶と共に、大々的に売り出しにかかったのです。どこで失敗するのかと思っていると、あれよあれよという間に規模が大きくなって…。

化学オタクの小説を読んだのは初めてで新鮮でした。ふわふわが様々な物に応用され、空を飛び、果ては宇宙にまで飛び出そうとする、壮大なSF小説です。荒唐無稽とも見えますが、いまのわたしには判断できません。数万光年の宇宙を旅するには人間の肉体がお荷物になるため情報化が必要だとか。いわば長門有希の親分ですね。つまり、人類にとって「シンギュラリティ」(人類が人工知能と融合し、生物学的な思考速度の限界を超越すること)は不可避だというのです。

ちょっと毛色の変わったSFを読んでみたい方にお勧めします。

お勧め度:★★★★☆

2017年8月30日 (水)

弥栄の烏 (阿部知里)

弥栄の烏 八咫烏シリーズ6
弥栄の烏 八咫烏シリーズ6 』 は八咫烏シリーズ第1部完結編。

1. 烏に単は似合わない
2. 烏は主を選ばない
3. 黄金の烏
4. 空棺の烏
5. 玉依姫
6. 弥栄の烏

1巻と2巻が同じ時と場所を、異なる登場人物の視点から描いた作品であったように、5巻と6巻もそうです。5巻は山神の「母」となる志帆が、6巻は若宮たちが、主人公です。ガールズサイドとボーイズサイドですね。

今回、初めてKindle版を買いました。iPhoneSEの4インチ画面で読む気はしなかったので、以前買ったKindle Fireを指定し、途中まで読んで3日ほど忘れていたら、持ち出したもののバッテリー切れで読めず。次回、朝100%充電して持ち出したにもかかわらず、昼休みに電源が入りません。帰宅後、すったもんだして、立ち上げ直して、なんとか読み終えましたが、Kindle Fireは信用できません。

バッテリーが切れたら読めないのは困るのと、Kindle Fireは重くて持ちにくい。滑りやすく落としたら壊れるという不安もあります。わたしはやっぱり紙の本がいい。単行本1,680円がKindle1,200円というのは他に比べれば安いほうですが、まだまだ高い。1,000円以下にすべき。Kindle Fireがだめなら iPhoneで読めないのかとKindleアプリを立ち上げてみたら、ちゃんと読めるじゃないですか。画面が小さいとはいえ、小説ならば読めないわけではないので、こっちで読めばよかった。

というわけで、今作は疲れました。(なんのこっちゃ?)

お勧め度:★★★★☆

2017年8月27日 (日)

神様の御用人 6 (浅場なつ)

神様の御用人 (6) (メディアワークス文庫)
神様の御用人 (6) 』はシリーズ第6弾。

1. 東国の武者
2. 神様と兄と妹と
3. 親愛なる姉上へ

なにやら企んでいる幸太郎に「旅費は出すから」と言われ、ホイホイと東京までついてきた良彦(と黄金)。そこで平将門に出会い、自分を裏切った藤原氏の末裔に仕返しをしたいと御用を頼まれてしまいます。その末裔とは…。良彦のまえに突然現れる大国主神が可笑しい。

3話目は、いま話題の九州は沖ノ島。宗像三女神に呼び出されます。東へ西へと御用人も忙しい。

お勧め度:★★★☆☆

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