歌舞伎

2017年9月21日 (木)

コインロッカー・ベイビーズ (村上龍)

新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫)
コインロッカー・ベイビーズ』は、三浦しをんの『本屋さんで待ち合わせ 』で紹介されているのをみて爆笑し「そういえば読んだことないな」というわけで図書館で借りてきました。

冒頭からショッキングな掴み。コインロッカーに捨てられた嬰児のうちのふたりが奇跡的に生き延びたのちのお話なのですが、狂気の連鎖に目を背けたいのに目が離せません。これを三浦しをんは中学のときに読んだというのは刺激が強すぎやしないでしょうか。

そういえば村上春樹の新作小説も読んでいません。前評判の高い小説は敬遠してしまい、何年か経ち、図書館で待たずに借りられるようになって初めて読むことが多いのです。

コインロッカーは「荷物」を預ける装置であって「人」を捨ててはいけません。しかし、自分のまわりをよく見ると、そこはコインロッカーの中だったりして…!?

わたしにとってはほとんどホラー小説でした。(怖かった)

お勧め度:★★★★☆

2016年12月31日 (土)

文楽、能楽、歌舞伎ー古典芸能入門 2016 総集編

三浦しをんの小説『仏果を得ず 』を読んで以来、文楽(人形浄瑠璃)に興味を持ち「機会があったら文楽を観てみたい」と思いつつ時間が経ってしまいました。それが2016年の春、京都に遊びに行った日に偶然文楽の公演があり「チャンス到来」とばかり京都府立芸術文化会館に飛び込んだのでした。

▼ 2016/3/21 京都(京都府立芸術文化会館)
絵本太功記(夕顔棚の段、尼ヶ崎の段)
日高川入相花王(渡し場の段)
15:00-17:30
▼ 2016/4/10 大阪(国立文楽劇場)
妹背山婦女庭訓(二段目 鹿殺しの段、掛乞の段、万歳の段、芝六忠義の段 四段目 杉酒屋の段、道行恋苧環、鱶七上使の段、姫戻りの段、金殿の段)
16:00-21:30
▼ 2016/5/29 名古屋(中日劇場)
壺坂観音霊験記(沢一内の段、山の段)
本朝廿四孝(十種香の段、奥庭狐火の段)
16:00-19:00
▼ 2016/8/21(日) 内子町(内子座)
仮名手本忠臣蔵(五段目 山崎街道出合いの段・二つ玉の段/六段目 身売りの段・早野勘平腹切の段)
14:00-16:40
◉ 2016/9/11(日) 名古屋能楽堂
第14回 名古屋片山能「小督」「融」
14:00-
◎ 2016/10/5(Wed) 名古屋(日本特殊陶業市民会館ビレッジホール)
錦秋名古屋 顔見世(歌舞伎)菅原伝授手習鑑(寺子屋)、英執着獅子、品川心中
16:00-19:35
▼ 2016/10/7(金) 名古屋(名古屋市芸術文化センター)
近頃河原の逢引(四条河原の段、堀川猿廻しの段)
18:30-20:40
◉ 2016/10/21(金) 名古屋能楽堂
十月定例公演 能:通小町 狂言:鬼継子
18:30-20:15
◉ 2016/10/29(土) 西尾市文化会館 大ホール
西尾城址薪能 能「舎利」狂言「成上り」
14:00-
◉ 2016/11/3(木) 名古屋能楽堂
やっとかめ文化祭 能:草薙 狂言:昆布売
14:00-
◉ 2016/12/4(日) 名古屋能楽堂 
12月特別公演 能:富士太鼓、項羽 狂言:釣針 舞囃子:井筒、芦刈
12:30-16:05

以上、▼文楽が5回、◉能楽も5回、◎歌舞伎が1回の合計11回。がんばりました!

今年は生まれて初めてだったので「機会があればどんどん観てやろう」という方針でしたが、来年以降は、観たい演目や演者を選ぶつもりです。今年いちばん印象に残っているのは名古屋片山能の「小督」と「融」です。いずれも舞が素晴らしかった。

歌舞伎は華やかで人間くさいところが面白いけれど、入場料が高いのが玉に瑕。逆に文楽は人形だからこそ残酷な場面でもさらりと流せるところがすごい。だけど、長時間座り続けるとお尻がつらい。その点、能は上演時間が短めでチケット代も手頃で(映画よりは高いけど)、狂言が入れば気分も変わります。歌舞伎、文楽、能楽の中ではいちばんマイナーなのもいい。

能には、祖母が好きだった木目込み人形が1/1スケールで動いているような様式美があります。お囃子も含めて演者の技と技がぶつかりあう偶然が奇跡を生み出す(かもしれない)可能性。琴線に触れる煌きの目撃者になりたいし、演出家不在の舞台劇のことをもうちょっと知りたい。

歌舞伎に比べて文楽と能楽は敷居が高いでしょう。でも、すこしでも興味があるのなら「むずかしい」とか「退屈」といった思い込みを捨てて、一度観てみるだけでいい。なにもむずかしいことはありません。初めて能を観て、わたしが感激したのは笛と大鼓でした。

「最近、能にハマってるんです」と話したときの相手の顔といったら。その顔を見るためだけにでも能を観に行く値打ちはあります。(笑)

2016年11月13日 (日)

2016 やっとかめ文化祭 ストリート歌舞伎『悪七兵衛景清』を観てきました!

やっとかめ文化祭」の本日の会場はKITTE名古屋1Fです。3Fまで吹き抜けになっている、お洒落な空間です。開演まで時間があるので、スタバでコーヒーを買って、JOUVAUDでクロワッサンを買って食べたらおいしかった。歌舞伎は一度しか見たことがありませんが、ストリート歌舞伎ってどんなものなのでしょう。

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『悪七兵衛景清』ということは平家物語の弓流し。「遠からん者は音にも聞け。近き者は目にも見ろ。われこそ、京の童がうわさする、上総悪七兵衛景清だ」ですね。

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歌舞伎にダンスパフォーマンスを加えた演出。黒い幕を持ってくるから何をするのかと思ったら人形劇が始まりました。

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しかし、いくら人形といえども姫さまを裸に剥くというのはどうかと思います。

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船上の扇を見事射抜いた那須与一が景清と戦います。そう、扇を射るときは2Fに登場しました。

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最後に全員登場して、景清が「土蜘蛛」のような蜘蛛の糸を投げてハイ、ポーズ! 歌舞伎らしいエンディングでした。

2016年10月 8日 (土)

2016 錦秋名古屋顔見世 歌舞伎初体験記 2

「菅原伝授手習鑑」が終わり、20分間の休憩でロビーに出て(コンビニで買ってきた)パンを食べました。会場ではお弁当も売っていますが、夕食は帰りに取る予定なので、いまはおやつでいい。

さて、続いては「英執着獅子」です。

これは長唄舞踊なのですが、能の「石橋」から来ており、霊獣である獅子が舞う様子を演じています。お囃子も、左に笛、小鼓x2、大鼓、太鼓、右には三味線と太夫が4人ずつという豪華キャスト。パーカッション、ストリングスとコーラスでしょうか。主役である女方(時蔵)の衣装も華やかで、舞も美しく、力強い。

能では、囃子方はシテのセリフに被ろうが容赦なく音を出していましたが、歌舞伎のお囃子はあくまで役者のためのBGMという感じ。お芝居として全体のまとまりを大事にしているように感じました。

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上の写真が2階席から見た舞台。下手側に花道が見えます。花道にはすっぽん(下からせり上がってくる仕掛け)もあります。

舞台の緞帳を見ていた次男が「右のほうに白く見えるのは東京タワーみたいじゃない?」。たしかに、うっすらと塔が見えます。「名古屋だからテレビ塔だろうな」。

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それじゃ、その左隣に見える白いシルエットは? 名古屋市役所を横から見たところという話も出ましたが確証はなく、会場整理の女性に訊いたところ「緞帳には名古屋城、テレビ塔、熱田神宮が描かれていると聞いています」。あれは熱田神宮のどこなのだろう。そうは見えませぬ。

あとで元画像を拡大してみて判明しました。やはりテレビ塔の左に見える建物は名古屋市役所です。

Cityhall

そして、熱田神宮は名古屋城の左上にちらっと見えています。つまり、日本特殊陶業市民会館の緞帳には名古屋城、熱田神宮、名古屋市役所、テレビ塔が描かれています。あぁ、すっきりした!

さて「英執着獅子」が終わって、30分間の休憩後、最後の演目「品川心中」です。

これは面白くて笑えました。まるで松竹新喜劇です。セリフもテレビの時代劇みたいでわかりやすいし、地元ネタで笑わせてくれたりします。

三大名作の一つに加えて、舞踊と喜劇を並べて、まるでお芝居の「幕の内弁当」。しっかり楽しませてもらいました。歌舞伎も面白い!

お勧め度:★★★★★

2016年10月 7日 (金)

2016 錦秋名古屋顔見世 歌舞伎初体験記

錦秋名古屋顔見世(夜の部)を観てきました。今年になって、文楽と能を生まれて初めて観て、残るは歌舞伎だったのです。

演目は「菅原伝授手習鑑(寺子屋)」「英執着獅子」「品川心中」。会場は本来、伏見の御園座なのですが、建て替え中のため、金山の日本特殊陶業市民会館です。

Kabuki2

3等席なので、2階席のいちばんうしろ。いわゆる「大向こう」というやつです。「よろずや」と声をかけるおじさんがいました。それにしても、この席が6,000円とは、文楽や能と比べると高い。それだけ歌舞伎は大掛かりでお金がかかるのでしょう。

次男といっしょだったので、上図のチラシを受付でもらって、裏面のあらすじを読んでおくように渡しました。あらすじがわかっていればなんとかついていけるはず。

「菅原伝授手習鑑」は文楽にもあります。菅原道真が大宰府に流されるお話なのですが、寺子屋を営む武部源蔵が、道真(菅丞相)の息子(菅秀才)を匿っていることを時平に知られ、秀才の首を差し出すよう命じられたのです。なんと源蔵(染五郎)は、その日寺子屋に入ったばかりの小太郎を身代わりにして、その首を差し出します。検分役の松王丸(仁左衛門)の目をごまかし、ピンチを切り抜けたところに、小太郎の母が迎えにやってきます。「小太郎は奥で元気に遊んでおります」と嘘をついて、母親に斬りかかったところに松王丸が現れます。じつは小太郎は松王丸の実子だったのです!

小太郎を身代わりに差し出すのは覚悟のうえだったとはいえ、親にとってはむごすぎる。小太郎の最後の様子を訊ねる松王丸に、源蔵は「事情を説明したらご自分から首を差し出されました。しかも最後は笑っておられました」。「なに、笑っておったか」。息子をあっぱれと褒めてやりたいところだけれども…そのときの松王丸のなんともいえない表情を思い出すと今でも泣けてきます。

舞台上手に太夫と三味線がいて「文楽とおなじだ」。人形はしゃべらないから太夫がセリフも話さないといけないけれど、歌舞伎では役者がしゃべるので、太夫は解説役。

舞台がはじまって最初に感心したのが、源蔵の妻戸浪(梅枝)が登場した瞬間。「女方ってすごい」。女より女らしい。男は男らしく、女は女らしくと、はっきりしています。これが浮世絵になったのですね。

最後に、登場人物全員がポーズを取って終わるのですが、それがすごく様(さま)になっているのです。そのまま菊人形にしたいくらい。ほぉ〜っとため息をついたところで幕となりました。

しかし、寺子屋はストーリーが重すぎて疲れました。

(つづく)

2016年10月 6日 (木)

歌舞伎名作ガイド50選 (鎌倉惠子)

一冊でわかる歌舞伎名作ガイド50選
一冊でわかる歌舞伎名作ガイド50選 』は「歌舞伎ってどんなものなんだろう」と最初に手に取った一冊。豊富なカラー写真で、極彩飾の世界だということがよくわかります。

菅原伝授手習鑑、仮名手本忠臣蔵、義経千本桜の三大名作って、それ、文楽にもあるじゃないですか。やっぱり文楽の演目が歌舞伎にも流れたんですね。他に、勧進帳、毛抜、暫、助六、鳴神、矢の根といった歌舞伎十八番など、全部で50の演目が紹介されています。

これで予習して、本物の歌舞伎を見にいきましょう。

お勧め度:★★★☆☆

2016年9月29日 (木)

絵本 夢の江戸歌舞伎 (服部幸雄)

絵本 夢の江戸歌舞伎 (歴史を旅する絵本)
絵本 夢の江戸歌舞伎 』は、芝居小屋での歌舞伎興行の様子を描いた絵本です。巻末の資料によると、芝居小屋は間口22m、奥行36m。地上3階、地下1階建ての木造建築。

大道具、小道具、衣装、着付け、稽古などの舞台裏が丹念に描かれ、升席、桟敷には客が大入りです。客席の真上に俄かに橋が架けられ、華やかな踊りの列が練り歩き、役者が宙吊り(宙乗り)をしています。客は弁当を広げ、酒を飲み、大騒ぎ。文字通り、お祭り騒ぎです。

図書館では児童書コーナーにありますが、たしかに「ウォーリーをさがせ」に似ています。ひとりひとりの表情を追っていくのも楽しい。子供がこの絵本で歌舞伎に興味を持ったら、ほんとうの歌舞伎に連れていってみるといいでしょう。江戸時代を肌で感じることができるかもしれません。

お勧め度:★★★★★

 

2016年9月27日 (火)

出雲の阿国 (下) (有吉佐和子)

出雲の阿国(下) (中公文庫)
出雲の阿国 』下巻では、阿国歌舞伎に名護屋山三が笛で飛び入りし、阿国は一目惚れ。しかし「天下一」の阿国は、男たちに我が身を思い知らせてしまい離れていってしまいます。秀吉の死後、家康の時代となり、阿国一座も江戸を目指します。

風に舞う木の葉のような旅芸人人生。歌舞伎が当たれば真似をする者が出てきて、阿国を憎いと思えば邪魔をする。つねに新しいものを求めて変わっていかなければ生き残れない。モノマネでは本物にはなれない。

解説にあるように「お国をめぐる四人の男の愛憎、人はパンのみにて生くるにあらずという芸術論、反体制文化(かぶき風俗)、和楽器発展史など主題の重層性」もおおきな魅力。といっても、出雲からお国を追いかけてきた男はうっとおしい。奴はフィクションでしょう。

歌舞伎の種を蒔いたお国の一生をあなたも読んでみませんか?

お勧め度:★★★★★

2016年9月25日 (日)

出雲の阿国 (上) (有吉佐和子)

出雲の阿国(上) (中公文庫)
出雲の阿国』は、日経新聞夕刊の紹介記事をみて読んでみたのですが、時代小説でありながら、とても読みやすく、とっても面白い。今年になって古典芸能に興味を持ち、文楽や能を観たこともあって、歌舞伎創始の物語は興味深いものです。

出雲出身のお国は唄と踊りが好きで、口べらしの念仏踊りに京の都に出てきて、秀吉の御伽衆のひとり梅庵の目に止まったのでした。

秀吉による検地令や大坂城築城、朝鮮出兵などに翻弄されながらも、お国自身は常に多くの観客といっしょに唄と踊りに酔いたいと思っていました。ところが、梅庵のところで出会った鼓打ちの三九郎に惚れて女夫仲になっても、三九郎は権力者に認めてもらうことしか眼中になく、お国とすれちがっていくのでした。

とにかく、お国の健やかな素直さが好ましい。つらい思いをしても踊りがお国を救います。「人の死というのは、そのときから魂が他人の中に生きることではあるまいか」という言葉からも、その心根が窺えます。

秀吉が死に、にわかに家康の動きが派手になってきて、三九郎は慌てます。さて、お国一座はどうなっていくのでしょうか。(下巻へつづく)

お勧め度:★★★★★