文楽

2017年2月12日 (日)

平家物語をラジオで聴く

先日、池澤夏樹編集の日本文学全集『平家物語』を読んで、実際の琵琶での語りを聴いてみたいと思っていたのです。

日曜の朝、ふとラジオをつけたら、なんと琵琶で「祇園精舎」が始まりました。当然ながら、本を読むよりもずっと時間がかかりますが、それでも5分くらいだったでしょうか。琵琶を撥で弾きながら、独特の節回しで語ります。なるほどなぁ、琵琶法師がこんな感じで語るのを聴いていた人たちがいたんだ。

Img_0074

以前、同じラジオ番組で、狂言が流れたことがあります。しばらく黙って聴いていたのですが、なにを言っているかわからず、パソコンで検索し、あらすじを把握してようやくついていくことができました。ふだん能舞台で見ているものを耳だけで聴くのは妙な感じです。

でも「聴く」ことは能、狂言、文楽、歌舞伎すべてに共通しています。狂言は「ござる」ことばと独特のイントネーションがあって、他とは異なることがよくわかります。

ラジオから邦楽が流れてきたら、以前は即座に選曲を変えていたのに、伝統芸能を観るようになってからは常磐津(三味線)も聴いてみるようになりました。

先月、SONYのAM/FMラジオを長男にプレゼントしてもらったのです。いまどきラジオ番組もネットで配信されていて、電波状況に左右されず快適に聴くことができるのに、なぜわざわざラジオ?

時間帯やアンテナの向きによって聞こえたり聞こえなかったり、かと思うと外国語の放送が聞こえたり、面白いじゃないですか。それになんでもかんでもネット頼みというのはイヤなのです。

本を「読む」のも好きですが「聴く」ことももうすこし意識してみようと思います。

2017年2月 9日 (木)

平家物語 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09)

平家物語 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09)
平家物語 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09) 』は、わたしが初めて読破した「平家物語」です。同シリーズの「能・狂言」を読んだら面白かったので、能や文楽の出典となっている平家物語は読んでおきたかったのです。

京の治安維持や反乱の鎮圧など、武力を必要とした朝廷が、平清盛に介入、蹂躙され、ついには帝が幽閉されるまでに及び、頼朝、義仲ら源氏の巻き返しに遭って滅びる物語。900ページ近い大作です。

文中に出てきた人名、地名、寺社名などをパソコンで検索しつつ読み進めました。平家の家系図と御所の見取り図はいつでも見れるようにしておくことをお勧めします。

三の巻の「足摺」は、能「俊寛」の元ネタ。菊池寛、倉田百三も「俊寛」という小説を書いています。平家に対する反乱(鹿谷事件)に加わったとして流罪となった俊寛。清盛の娘・徳子(建礼門院)が高倉天皇の世継ぎ(安徳天皇)を生んだという慶事により、共に流された成経と康頼は赦免され都に戻ったのに俊寛だけ取り残され絶望して死んでしまうという、ただそれだけのストーリー。平家物語によると俊寛は名僧とはいえないようなのですが一体そういう人物だったのか、反乱謀議ではどのような立場だったのかがよくわかりません。

後日、俊寛に仕えていた有王が、俊寛の娘の手紙を携えて島を訪れるわけですが、芥川龍之介は「俊寛」で有王に「俊寛様の話くらい、世間に間違って伝えられた事は、まずほかにはありますまい」と言わせています。これがいちばん「ありそうな話」にわたしには思えます。

なぜ「俊寛」がこのようにあちこちで取り上げられるのか。仮にも僧都が、自分も御赦免船に乗せてくれと、恥も外聞もなく泣きわめくなどみっともないったらありゃしない。清盛亡きあとの宗盛や維盛も含めて「平家物語」は敗者、弱者を描きたかった、というか、その無常観が時代の空気だったのかもしれません。

それと、この時代には霊魂や幽霊が信じられていたというか、ほんとうに存在したような気がします。だから、能では成仏できない幽霊がたくさん登場するのでしょう。

敦盛の最期、那須与一の見事な弓、屋島の合戦後、義経が頼朝に追討される下りなど、有名なお話がたくさん出てきます。なにより安徳天皇が可哀想。読み方は人それぞれ。これまで「平家物語」に挫折してきた方も、この本なら読破も夢じゃない。

わたしが読破できた鍵は、図書館で借りたことにあります。2週間という返却期限付きだったのが奏功しました。購入していたら今も積んだままになっていたと思います。(苦笑)

お勧め度:★★★★★

2017年1月 8日 (日)

人形は口ほどにものを言い (赤川次郎)

赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い (小学館文庫)
赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い』は、自身を「文楽の素人ですが」とことわったうえで綴ったエッセイ集です。素人と言いつつ、わたしなどより多くの作品を観ていて参考になるお話もたくさんあります。それでいて、目線の高さが同じなので、文楽に対する意見には「なるほど」と思うものも多いです。

「時代物」より「世話物」が好きな筆者は「曽根崎心中」「妹背山婦女庭訓」「心中天網島」「近頃河原の達引」「菅原伝授手習鑑」などを引き合いに出してきます。自分も観たことがある演目なら「うん、そうそう」と頷けるのですが、観たことがないとチンプンカンプン。そういうものかと受け流すしかありません。ですから、本書はある程度文楽を観てきた方のための軽い読み物として好適だと思います。

文楽を知るのに歌舞伎が参考になることもあれば、能の影響を受けている部分もある。逆に、現代劇が古典芸能の流れを汲んでいることもあって、幅広い知識、見識があったほうが、より深くたのしむことができるわけです。

川本喜八郎の人形アニメ「鬼」「道成寺」「火宅」が紹介されていて、おもしろそうだったのでDVDを注文しました。届くのがたのしみです。

文楽「曽根崎心中」は一度観てみたい。歌舞伎は一度行ってみて面白いとは思ったけれどチケットが高すぎる。歌舞伎に1回行くなら文楽や能を2回観るほうがいい。ただ、最近わかってきたのですが、チケットの価格で観るべきかどうかを決めるのは危険です。たとえ高くても観るべきものがあります。それを見分ける眼というか価値観を養うのも大切ですね。

お勧め度:★★★☆☆

2016年12月31日 (土)

文楽、能楽、歌舞伎ー古典芸能入門 2016 総集編

三浦しをんの小説『仏果を得ず 』を読んで以来、文楽(人形浄瑠璃)に興味を持ち「機会があったら文楽を観てみたい」と思いつつ時間が経ってしまいました。それが2016年の春、京都に遊びに行った日に偶然文楽の公演があり「チャンス到来」とばかり京都府立芸術文化会館に飛び込んだのでした。

▼ 2016/3/21 京都(京都府立芸術文化会館)
絵本太功記(夕顔棚の段、尼ヶ崎の段)
日高川入相花王(渡し場の段)
15:00-17:30
▼ 2016/4/10 大阪(国立文楽劇場)
妹背山婦女庭訓(二段目 鹿殺しの段、掛乞の段、万歳の段、芝六忠義の段 四段目 杉酒屋の段、道行恋苧環、鱶七上使の段、姫戻りの段、金殿の段)
16:00-21:30
▼ 2016/5/29 名古屋(中日劇場)
壺坂観音霊験記(沢一内の段、山の段)
本朝廿四孝(十種香の段、奥庭狐火の段)
16:00-19:00
▼ 2016/8/21(日) 内子町(内子座)
仮名手本忠臣蔵(五段目 山崎街道出合いの段・二つ玉の段/六段目 身売りの段・早野勘平腹切の段)
14:00-16:40
◉ 2016/9/11(日) 名古屋能楽堂
第14回 名古屋片山能「小督」「融」
14:00-
◎ 2016/10/5(Wed) 名古屋(日本特殊陶業市民会館ビレッジホール)
錦秋名古屋 顔見世(歌舞伎)菅原伝授手習鑑(寺子屋)、英執着獅子、品川心中
16:00-19:35
▼ 2016/10/7(金) 名古屋(名古屋市芸術文化センター)
近頃河原の逢引(四条河原の段、堀川猿廻しの段)
18:30-20:40
◉ 2016/10/21(金) 名古屋能楽堂
十月定例公演 能:通小町 狂言:鬼継子
18:30-20:15
◉ 2016/10/29(土) 西尾市文化会館 大ホール
西尾城址薪能 能「舎利」狂言「成上り」
14:00-
◉ 2016/11/3(木) 名古屋能楽堂
やっとかめ文化祭 能:草薙 狂言:昆布売
14:00-
◉ 2016/12/4(日) 名古屋能楽堂 
12月特別公演 能:富士太鼓、項羽 狂言:釣針 舞囃子:井筒、芦刈
12:30-16:05

以上、▼文楽が5回、◉能楽も5回、◎歌舞伎が1回の合計11回。がんばりました!

今年は生まれて初めてだったので「機会があればどんどん観てやろう」という方針でしたが、来年以降は、観たい演目や演者を選ぶつもりです。今年いちばん印象に残っているのは名古屋片山能の「小督」と「融」です。いずれも舞が素晴らしかった。

歌舞伎は華やかで人間くさいところが面白いけれど、入場料が高いのが玉に瑕。逆に文楽は人形だからこそ残酷な場面でもさらりと流せるところがすごい。だけど、長時間座り続けるとお尻がつらい。その点、能は上演時間が短めでチケット代も手頃で(映画よりは高いけど)、狂言が入れば気分も変わります。歌舞伎、文楽、能楽の中ではいちばんマイナーなのもいい。

能には、祖母が好きだった木目込み人形が1/1スケールで動いているような様式美があります。お囃子も含めて演者の技と技がぶつかりあう偶然が奇跡を生み出す(かもしれない)可能性。琴線に触れる煌きの目撃者になりたいし、演出家不在の舞台劇のことをもうちょっと知りたい。

歌舞伎に比べて文楽と能楽は敷居が高いでしょう。でも、すこしでも興味があるのなら「むずかしい」とか「退屈」といった思い込みを捨てて、一度観てみるだけでいい。なにもむずかしいことはありません。初めて能を観て、わたしが感激したのは笛と大鼓でした。

「最近、能にハマってるんです」と話したときの相手の顔といったら。その顔を見るためだけにでも能を観に行く値打ちはあります。(笑)

2016年11月 8日 (火)

文楽へようこそ (桐竹勘十郎、吉田玉女)

文楽へようこそ (実用単行本)
文楽へようこそ 』は、 実際の舞台でも拝見する人形遣い・桐竹勘十郎さん、吉田玉女さんの対談やそれぞれお好きな演目紹介など、人形遣いを中心にした文楽案内です。

「足遣い10年、左遣い15年」を経て、ようやく主遣いができるようになる世界。2階席から舞台を見ていると足遣いさんがずっと前かがみなので「あの姿勢は辛そうだな」。足遣いは「動かないでいるほうがつらい」など、経験者の言葉には重み、真実味があって興味深い。

カラー写真も多いので、気軽に読めると思います。文楽を初めて見た方にお勧めします。

お勧め度:★★★★☆

2016年10月11日 (火)

名古屋で文楽:近頃河原の逢引(四条河原の段、堀川猿廻しの段)

2016年はわたしの「文楽元年」と決めて、今回を含めて5回観ました。

1.3月は、京都(京都府立芸術文化会館)で、絵本太功記(夕顔棚の段、尼ヶ崎の段)と日高川入相花王(渡し場の段)。

2.4月は、大阪(国立文楽劇場)で、妹背山婦女庭訓(二段目 鹿殺しの段、掛乞の段、万歳の段、芝六忠義の段 四段目 杉酒屋の段と、道行恋苧環、鱶七上使の段、姫戻りの段、金殿の段)。

3.5月は、名古屋(中日劇場)で、壺坂観音霊験記(沢一内の段、山の段)と、本朝廿四孝(十種香の段、奥庭狐火の段)。

4.8月は、愛媛県内子町(内子座)で、仮名手本忠臣蔵(五段目 山崎街道出会いの段、二つ玉の段、六段目 身売りの段、早野勘平腹切の段)。そして、今回、

5.10月が、名古屋市芸術創造センターで、近頃河原の逢引(四条河原の段、堀川猿廻しの段)。

Bunrau1007

文楽公演は、大阪と東京が2大拠点で、時々地方公演があるといった感じ。年に2回名古屋で公演があるだけでも有難いことです。(ぜひ来年もお願いします!)

会場は名古屋市芸術創造センターで18:30開演。名古屋市営地下鉄桜通線高岳駅から歩くついでに幕間のおやつ用に「テーラ・テール」でパンを買いました。いつものクロワッサン(サリュー)とカレーパン(とまとオリエンタル)。どちらも焼きたてだったので、温かいうちにと、会場に着くなり開演前に食べちゃいました。カレーパンはたっぷりの挽肉にトマトの酸味がアクセント。サリューは噛むとひろがる小麦の甘さとバターの風味。やっぱりおいしい!

Img_2944

例によって2階席、2,600円です。歌舞伎の6,000円に比べると半額以下。財布にやさしいのがうれしい。今回は、京都公演で見た、縦長の字幕装置が舞台下手に置いてあります。これ「G・マーク」と呼ぶそうで…。(苦笑)

近頃河原の逢引の四条河原の段では、井筒屋の若旦那・伝兵衛と恋仲の祇園の遊女お俊(しゅん)に横恋慕した官左衛門が、主家の宝である茶入れを餌に伝兵衛を困らせ「とにかく茶入れを一旦わたしに預けてくれ」と頼み込む伝兵衛の眼の前で官左衛門は茶入れを割ってしまいます。それでキレた伝兵衛が官左衛門を斬り殺してしまいます。その場は井筒屋の番頭がごましかてくれたものの、お上の調べで容疑者伝兵衛が確定。殺人容疑で逃げる伝兵衛はお俊の実家に現れたのです。ここからが堀川猿廻しの段になります。

お俊の母と兄は伝兵衛がヤケをおこしてお俊を殺してしまうのではないかと心配でなりません。慌て者の兄は、伝兵衛を締め出したつもりでお俊を家から締め出してしまい大騒ぎ。ただ、伝兵衛は暴れることなく神妙な様子。お俊の命を奪っては親兄弟が悲しむからと、お俊を巻き込むまいとするのですが「それは聞けませぬ伝兵衛さん」の名セリフで、元はといえば自分の責任だと、ともに心中しようと心に決めます。

最後は母と兄もお俊の気持ちを汲んで、ふたりの道行を許します。暗くなりがちな雰囲気を取り繕うかのように、まるで前途を祝うかのように、兄は猿回しを見せるのです。これは黒子さんがひとりで二匹の子猿をマペットのように動かすのですが、これが可愛い! 三味線もふたりになって迫力があります。かっこいい!

道行の予感のなか、愉快な猿回しを見るというのは、物悲しいはずなのに、面白可笑しく見てしまうのが、人としてどうなのかと(ちょっとだけ)悩んでしまいます。そもそも主家の茶入れを無断で持ち出したうえに故意に壊した官左衛門は放っておいても切腹でしょう。忠臣蔵ではないけれど、伝兵衛の「短気は損気」だったような気がします。

文楽は、舞台の人形だけでなく、左の字幕、右の太夫と三味線も見たいから忙しい。最近わかってきたのですが、見たいところを見ればいいと思うのです。人形が布団を被って寝ているシーンでは「主遣いさんは腕が苦しそうだな」と思うし、女性のセリフでは「太夫さんの声が裏返ってる」とか「三味線の弦が切れたみたい」とか。気づいたら一点を凝視していたことが多々あります。

歌舞伎はとにかく華やかですし、役者が大勢出てくると迫力があります。それに比べると文楽は派手さは控えめながら、人形ならではのマニアックな演出があったりして面白い。一体の人形を3人で操るので、舞台に4体登場すれば、そこには12人いるわけで、狭い家ならいっぱいになります。ただ、そんなことはおくびにも出さず、観客も人形の動きだけを追うお約束に従うも良し、心のなかでツッコミまくって楽しむも良し。文楽は、いろんな見方、楽しみ方ができます。

今年は文楽はこれで見納めになりそうですが、また機会があれば見に行きたいと思います。

2016年9月22日 (木)

能・文楽・歌舞伎 (ドナルド・キーン)

能・文楽・歌舞伎 (講談社学術文庫)
能・文楽・歌舞伎 』は、初めて能を観て、もっと能のことを知ろうと図書館で本を探していて見つけました。作者は、日本人以上に日本文化を愛するドナルド・キーンです。彼が見た能について興味が湧き、大きな窓に向いた椅子に座ってページを繰るうちに引き込まれていきました。能について200ページ、文楽が100ページ、歌舞伎等に60ページを割いていて、それがそのまま彼の関心度を表しているようです。

西欧の戯曲、演劇、文学との比較が興味深い。シェークスピアやゲーテのように劇作家の地位は高く、世阿弥や近松の作品は文学としても優れているというのです。そう言われると、勉強する値打ちがあります。能は歌舞伎と異なり、玄人の観客向きだとか。どこまで深く鑑賞できるかということでしょうが、最初から玄人だった人はいません。私も興味が続く限り、たくさん観て、勉強して、息子たちを巻き込みたいと思います。(笑)

お勧め度:★★★☆☆

2016年8月27日 (土)

[AppleWatch旅] 内子座文楽を観に行こう! 2

JR内子駅はガード下。隣の案内所でレンタサイクルを借りました。徒歩でも大丈夫かと思ったのですが、荷物が重いうえに暑さで挫けそうだったので、体力温存のために自転車にしました。岐阜市の1日100円に慣れると、2時間350円は高く感じます。

Img_2780

現在、正午。2時の開演までに内子座に着けばいい。つまり、それまでは内子町観光とランチです。

内子駅を自転車で出発して、まずは内子座の場所をチェック。住宅街のなかにすっぽり収まってて、正面入口前が広場になっているわけでもなく、向かいはふつうの一戸建て。沿道にテントを並べてスタッフの人たちがお祭り気分を盛り上げてます。今日はお世話になります。

Img_2785

うちこ まち歩きマップ」を見ながら「木蝋資料館上芳我邸」に行ってみることにします。表通りは人影がほとんどありません。文楽のお客さんと観光客はいずこ?

Img_2795

ここまでの緩やかな上り坂はたいしたことないのですが、とにかく暑くてふらふらです。ここと「商いと暮らし博物館」は、内子座文楽のチケットを見せれば無料で拝観できるとのこと。ラッキー!

Img_2794

木蝋作りで財を成したお宅で、台所をみると高田郁の『あきない世傳 金と銀 源流篇 』の五十鈴屋を思い出します。

木蝋資料館を出るときに「おすすめのランチのお店ってありますか」と訊くと、おそばの下芳我邸か、洋食の町家カフェDORF、創作料理の米屋さんを勧めてくれました。ちょうどお昼どきだったので、どこも混んでいましたが、町家カフェに入ることができました。

内子豚ステーキランチを注文して、待っている間にポケモンGOしてみたらピッピが出ました。岐阜城とおなじです。

Img_2803

町家の奥のお座敷でゆっくりいただきました。となりのテーブルの女性グループはどこからいらしたのでしょうか。

Img_2810

食後に「商いと暮らし博物館」にお邪魔しました。ここは薬屋さんだったお宅だそうです。

Img_2804

あちこちに人形があって、そばを通ると急に喋り出すのでビックリ。受付の男性がいろいろと説明してくださるのですが「そろそろ内子座に行かなくちゃ」と気もそぞろ。

Img_2813

大勢お客さんが来ています。内子座は観光客誘致に一役買っているようです。入口で履物用ビニール袋を受け取って入ります。わたしの席は2階の東桟敷の椅子席。折りたたみ椅子に厚めの座布団が敷いてあるのでお尻が痛くなることはなさそう。ただ、舞台を見るのに柱が邪魔です。

Img_2814

おぉ、満員じゃないですか!

隣の男性と話していて気づいたのですが「床が見えない」。そうか、太夫と三味線がいる床は舞台上手だから、この席の真下。2階席でも正面か西側なら床が見えたのに、失敗したな。

午後の部は「仮名手本忠臣蔵」の五段目 山崎街道出会いの段、二つ玉の段と六段目 身売りの段、早野勘平腹切の段です。仮名手本は「いろはにほへと」の47文字なので「忠臣蔵」の四十七士に引っ掛けてあるわけです。

2階席からでも舞台が近くて、トザイトーザイの黒子さんの声がよく聞こえます。舞台に登場した人形の右手の動きを見た瞬間「あぁ人形浄瑠璃だ」と、わたしのなかのスイッチが入りました。太夫と三味線は「音」でしか感じ取ることができませんが、それならそれで人形に集中することができます。

これまで「文楽は太夫が主役」だと思って、太夫と三味線と人形に意識が分散していました。しかし、今回見るべきものが人形に限られたことで、逆に集中することができました。

ただ、文楽初心者に東桟敷席はいけません。ちゃんと床が見える席を取るべきです。座席が安い理由を内子座文楽のホームページできちんと伝えていただきたい!

床本集を送ってくれたわけがわかりました。字幕装置がないのです。しかし、舞台と床本集を同時に見ることはできず、じきに床本集を追うのはあきらめました。3月に京都で使っていた縦置きの字幕装置を置けなかったのでしょうか。(舞台が狭い?)

六段目で勘平は切腹してしまうのですが、例によって刀を腹に突き立ててからが長い。主の仇討ちのための資金を捻出するために女房を売り飛ばすというのも無茶苦茶ですが、自分が撃ち殺した(と思い込んだ)相手の傷口を確かめもしないというのはどうなの? じつに間抜けな話なのですが、それを悲劇、美談としてまとめてあるからすごい。そもそも忠臣蔵そのものが間抜けな殿様のせいで起きたわけだから、首尾一貫しているという見方もできますね。

例によって、ツッコミどころ満載の文楽でした。あ〜おもしろかった!

(松山の旅へつづく)

2016年8月25日 (木)

[AppleWatch旅] 内子座文楽を観に行こう!

2016年は「文楽の年」と決めて、以下のように3回観てきました。

・3月は、京都(京都府立芸術文化会館)で、絵本太功記(夕顔棚の段、尼ヶ崎の段)と日高川入相花王(渡し場の段)。
・4月は、大阪(国立文楽劇場)で、妹背山婦女庭訓(二段目 鹿殺しの段、掛乞の段、万歳の段、芝六忠義の段 四段目 杉酒屋の段と、道行恋苧環、鱶七上使の段、姫戻りの段、金殿の段)。
・5月は、名古屋(中日劇場)で、壺坂観音霊験記(沢一内の段、山の段)と、本朝廿四孝(十種香の段、奥庭狐火の段)。

3回観ると流れや観るべきポイントなどもわかってきて、余裕が出てきます。来年は異なる芸能文化に触れてみようと思っているので、今年のうちにあと何回文楽を観ることができるか、文楽協会の年間予定表を眺めていたときのことです。

7〜8月は大阪で夏休み文楽特別公演があるだけか…と思ったら、8月後半に「第20回内子座文楽」ってなにこれ?

内子町って、原田マハの『旅屋おかえり 』に出てきて、機会があれば一度訪れてみたいと思っていた場所。そこで文楽公演があるということはチャンスです。iPhoneの「Y!乗換案内」で検索してみたところ、名古屋始発の新幹線に乗れば昼前に内子に着きます。

Img_2769

ということは、午後2時からの午後の部公演には間に合う。早速内子座のホームページから座席予約の申し込みをしました。会場に入ることができればよいので、いちばん安い3,000円の席です。1週間ほどで予約受付の案内と郵便振替用紙が郵送されてきたので振り込んだところ、今度はチケットと内子町関連のパンフレットが送られてきました。おぉ、旅の気分が盛り上がります。(8月に入ると床本集を送ってくれました。これは有難い。)

内子町役場の担当の方はとっても親切です。わからないことはメールなどでなんでも問い合わせましょう。

と、これが2016年GW前のこと。8月の四国というと、怖いのは台風だけ。

嫌な予感というのは当たるもので、内子座文楽公演2日前に台風9号が発生したと思ったら、台風10号、11号とトリプル台風状態。しかし、落ち着いて進路予想をみると3つとも四国を含む西日本には影響がなさそうです。心底、ホッとしました。

そして、内子座文楽当日となり、のぞみ号で名古屋を出発しました。

岡山から特急しおかぜに乗り換え、瀬戸内海を渡ります。

Img_2772

長男とハチロクで四国ドライブしたときにこの橋を渡ったっけ。なんだか懐かしい。

Img_2773

岡山駅で買った「栗おこわ弁当」は美味でした。栗は小さかったけど。

Img_2778

予讃線はアンパンマン列車でした。なぜにアンパンマン?

名古屋も暑いけれど、四国もおなじくらい暑い。残暑が厳しいです。

Img_2775

松山駅で宇和島行特急に乗換えて内子まで。この線は単線で、スピードを出すと結構揺れます。通路を歩いているとコケそうになりました。単線の場合、ありがちなのが列車の本数が少ないこと。文楽の終演予定は16:40。できればすぐに松山まで戻りたいのですが、17時台に列車がありません。16:56の特急になんとかして乗りたい。駆け足の内子町訪問ですが、できる限り楽しみたいと思います。

(つづく)

2016年5月30日 (月)

中日文楽観劇記(壺坂観音霊験記、本朝廿四孝)

2016年5月は、地元名古屋で文楽公演「中日文楽」があるということで観て参りました。地元で観ることができるのは有難いです。どんどんやってください!

演目は、壺坂観音霊験記(沢一内の段、山の段)と本朝廿四孝(十種香の段、奥庭狐火の段)。午後4時、栄の中日劇場で開演です。

天気予報は雨なので地下鉄で行きます。栄で降りてすこし歩けば地下から中日ビルに連絡しているのですが、思わず「喫茶コンパル」に寄ってしまいました。

IMG_2570.jpg

熱いコーヒーに砂糖など入れてから氷のグラスに注ぐ。このアイスコーヒーが美味しい。問題は、喫煙可なので隣にタバコを吸う人が来ないかどうか。店が空いている時が狙い目です。

中日ビルの1階から直通エレベーターで9階へ。窓から外を見ると栄が一望できます。

IMG_2572.jpg

わたしは高額な席でなくても「見えればいい」ので、2階席のB席です。すぐ後ろの扉を出ると3階ですから、舞台までかなり遠い。でも双眼鏡持参ですから大丈夫。2階席にはぱらぱら空きがあります。「もったいない」と思う反面、空いている方が快適ではあります。

開演前に豊竹咲寿太夫が演目の説明に立ちます。3月の京都でも彼が説明していましたが、4月の国立文楽劇場ではなかった。地方公演だけなのでしょうか。

いよいよ開演。とざいとーざいの黒子さんの声が遠いです。

▼ 壺坂観音霊験記(沢一内の段、山の段)

国立文楽劇場みたいに、字幕は舞台上に横書きで表示されます。太夫と三味線の紹介されたところで「待ってました!」。おぉ、お芝居みたい。文楽では初めて聞きました。

さて、目が見えない沢一が、3つ年下の幼なじみ・お里と所帯をもって3年。こんな身体では、お里に世話をかけるばかりと世を儚んで身を投げ、お里もあとを追うという悲劇。

早い話が、夫婦喧嘩の段と、投身自殺の段です。

貧しい暮らしをしているという設定ですが、沢一の衣装は汚れひとつない絹ですよ。木綿なんかじゃありません。いい暮らししてるじゃないですか。(と、ツッコム)

どうやって身を投げるんだろう。ひょっとして…と舞台を注目していると「あ、落とした」。崖の上から約1メートル下の谷底(舞台)に人形を落としたのです。それを受け取った黒子が舞台の袖に消えていきました。高い位置から見ていると黒子の動きがよくわかる。頭が傷つかないようにしないといけないものね。

無表情な人形が、怒ったり、泣いたり、笑ったりする。それが人形遣いの技。舞台まで遠くても、太夫の声はちゃんと聞こえます。竹澤宗介の三味線が気に入りました。

舞台となった壺阪寺(南法華寺)は、奈良県にあり(橿原神宮の南方)、眼病に霊験があるとか。「沢一の杖」が伝えられているそうです。

夫婦が互いを思って投身自殺。でも救われる道が用意されていますからご安心を!

chunichi.jpg
このデザインのクリアファイルをもらいました。(八重垣姫+白狐モード)

▼ 本朝廿四孝(十種香の段、奥庭狐火の段)

武田勝頼の影武者が切腹し、許嫁だった八重垣姫は部屋に篭って勝頼の絵姿を眺めながら落ち込んでいるし、反対側の部屋では、腰元の濡衣が位牌をまえに影武者を供養している。その真ん中で立派な装束に身を包んだ「花作りの蓑作」が立ってます。

これはどう見ても若殿じゃないですか。蓑作を見た八重垣姫は「もしやあなた様は勝頼様では」と縋りつきます。それを振り払う蓑作。橋本治いわく「文楽の姫は恋することがお仕事」。アイドルの追っかけ、ストーカー寸前です。

勝頼でなくてもいい、勝頼似のいい男・蓑作を紹介してほしいと濡衣に頼み込む八重垣姫。それならば武田家の家宝「諏訪法性の御兜」を盗み出してくるように言います。その話をこっそり聞いていた謙信は、使いに出した蓑作を暗殺しようと企み、それを知った姫は、そのことを蓑作に知らせたいと「アゝ、翅がほしい。羽がほしい。飛んで行きたい。知らせたい。逢ひたい」となるのでした。わたしの脳内では「翼をください」が流れます。

奥庭狐火の段は圧巻でした。ツインギターならぬツイン三味線に琴が加わり、舞台では怪しい狐火が飛び回り、ついには白狐が飛び出します。え、どこからどうやって出てきたの。あたりを跳ねまわった狐は諏訪法性の御兜にとり憑きます。そこへやってきた八重垣姫。塩尻へ向かった勝頼にどうやって危機を知らせればいいのか。近道するには諏訪湖を渡るしかない。でも冬だから湖は凍っていて船は出せない。それなら神の使いの狐のあとを歩いて渡るしかないのだけれど。

というお話で、八重垣姫の衣装が赤から白に一瞬で変わり、人形使いが3人とも黒子ではなくなるし、最後は白狐が4匹出てきて大団円。もう宝塚状態です。

▼ そんなわけで

休憩を含めて3時間の公演でしたが、奥庭狐火の段は最高に面白かった。興味のある方はぜひ一度ごらんください。派手な演出が、とてもわかりやすい。

2階席の後方からは、舞台にベニア板が張ってあるのが丸見え。主遣いさんが履いている高下駄のような履物に草鞋みたいなものが2枚前後に巻いてあるのが見えました。ドンドンと足を踏み鳴らすのは足遣いさんなんですね。屈んだままで動き回るのはつらそう。

文楽を観るのは今回で3度目なので、すこし慣れて余裕が出てきました。

休憩時間はロビーに出て身体を動かしたり、ペットボトル茶と軽食を持参したり、観劇中は脱いでおける靴にしたり、スポーツタオルを寒ければ肩に羽織り、疲れたら畳んで背もたれに乗せれば簡易枕とか、工夫ができるようになってきました。

椅子のクッションは国立文楽劇場よりよかったのか、お尻もあまり痛くなりませんでした。ただ、左右と足元に余裕がないのはおなじ。日本人の体格も大きくなっていますから新幹線だけでなく、劇場の設計も変えてもらいたい。

中日劇場でもらったパンフレットに、三谷幸喜演出の「其礼成心中」大阪公演がありました。曽根崎心中のパロディだから「それなり心中」。落語みたいに新作ってないのか疑問だったのです。どんどんチャレンジしてほしい。しかし、興味はあるけれど8,000円+交通費は高いなぁ。DVDを買ったほうが安上がり。それに、できればオリジナルの「曽根崎心中」を先に観たい。

さて、次回の文楽はいつ、どこで、なにを? たのしみです。

2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ