ミステリー

2018年6月25日 (月)

血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (森博嗣)

血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)

血か、死か、無か? 』は、Wシリーズ第8弾。前巻でマンネリを感じて飽きてきたのですが、なぜか続きが読みたくなってしまう、不思議な本です。

早瀬耕の『グリフォンズ・ガーデン 』を読むと、理系の知的会話が愉快で、それに比べるとWシリーズのハギリ博士は事件に巻き込まれるわりには、おっとりしていて軽いし、発想の根拠が(SFだから?)見えにくい。おまけに、根っこのところでは結局マガタ・シキ博士に行き着いてしまう。

でも、登場するガジェットには反応してしまう。博士の「メガネ」は一度使ってみたい。翻訳や検索、録画、赤外線ビューワー機能まであって、007も真っ青の優れモノ!

今回、以前護衛だったウグイが登場します。彼女が部屋に入ってくると「一気に目が覚めた。そういう機能が彼女にはあるようだ。彼女の視線を実装した目覚まし機が開発できるのではないか」。(笑)

他にも「なるほど、それで僕のところへ飛んできたわけか」
「飛んできたわけではありません」

「え、どうしたの? 目の色が変わったね」
「私の目には、そんな機能はありません」

まるで漫才です。大真面目だから余計に可笑しい。

お勧め度:★★★☆☆

2018年6月21日 (木)

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (田中経一)

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (幻冬舎文庫)
ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 』は、皇居の料理人だった直太朗が第2次大戦中、満州で完成させたレシピを再現してほしいと依頼された“最期の料理請負人”の佐々木が主人公。

借金を抱える佐々木は高額の報酬に目が眩んで引き受けるのですが、手がかりは乏しいし、依頼主の意図が掴めないし、なにやら雲行きが怪しい...。

それって「究極のメニュー?」と思ったのですが、ちょっとちがうみたい。料理の物語なのですが、美味しい場面は少なく、どちらかというと「料理ミステリー」。現在と過去の場面が交互に出てきて、テンポよく進みます。

作者がやたら料理にくわしいので、他に著書がないかと調べたらなくて、なんとTV番組「料理の鉄人」の演出家だったそうです。納得!

お勧め度:★★★☆☆

2017年12月31日 (日)

小袖日記 (柴田よしき)

小袖日記 (文春文庫)
小袖日記 』は平安時代に飛ばされたOLが「源氏物語」執筆の手伝いをすることになるというSF時代小説。どんなものかな、と思いつつ読んでみたら、これが意外に面白い!

冒頭「死んでやる。」とは、不倫相手の上司から「女房が妊娠したんや」と別れを告げられてのセリフ。

1. 夕顔
2. 末摘花
3. 葵
4. 明石
5. 若紫

「源氏物語」の語り手というか取材係の小袖と中身が入れ替わってしまい、書き手の香子さまの下で暮らすことになるのですが、多少とんちんかんなことを言っても雷に打たれたせいで済む「よう」です。タイムスリップではなく、重力が弱く、別の宇宙らしいということなので、過去の歴史を変えると云々という問題も起きない「よう」です。ご都合主義に見えないこともありませんが、穴はおおむね違和感なく塞がっています。上手いと思います。

小袖は「光源氏はロリコンのエロ親父」というように、わたしも「源氏物語」は好みではないのですが、能の曲にいくつも取り上げられている(半蔀、夕顔、葵上、野宮、須磨源氏、住吉詣、玉鬘、落葉、浮舟) ので、その点で興味があります。

取材して回る間に、事件が起きて、香子さまと謎解きをしたり、現代に伝わる「源氏物語」との違いに悩んだりと、楽しませてくれます。

それはともかく、彼女は現代に戻ることができるのでしょうか?

お勧め度:★★★★★

2017年はこれでおしまい。2018年もよろしくお願いします!

2017年12月16日 (土)

倒立する塔の殺人 (皆川博子)

倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)
倒立する塔の殺人 』は、三浦しをんの『本屋さんで待ち合わせ 』で「戦争の非日常に遊ぶ少女」と題して紹介されていました。戦時中なので、きのうまで一緒だった友達が「空襲で焼死」したり、買い出しのために叔母が乗った列車が米戦闘機に掃射されて頭蓋を撃ち抜かれたとか、死と隣り合わせの生活なのに悲壮感はなく、ある生徒の死をめぐって「倒立する塔の殺人」と手書きされたノートに小説を回し書きしていく...。

女子校が舞台なので華やかさがありますが、一方で毒もあります。図書室で探す画集がエゴン・シールなのですからアブナイ。なにが倒立するのか、なぜ倒立するのか、だから何なのか? 読んでいるうちに、なにが現実で、どこが虚構なのかわからなくなっていきます。

皆川博子は『少女外道』に続く2冊目でしかありませんが、まちがいなく同じ匂いがします。アブナイです。生と死の境が曖昧になるのではなく、どうでもよくなるという意味で。

お勧め度:★★★☆☆

2017年10月20日 (金)

書架の探偵 (ジーン・ウルフ)

書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
書架の探偵』は「図書館に収められているミステリー作家のリクローンが探偵として活躍する」という紹介文と、古い図書館の書棚を描いた表紙を見て、一冊の本の中にAIとして作家の記憶を封じ込めてあって、彼と対話しながら、知恵を借りて事件を解決していく物語だと思ったのです。

が、予想は見事に裏切られました。その書架は、ワンルームマンションの出入口側の壁を取り払ってあり、蔵書ならぬ「蔵者」はそこで人間のように暮らしているのです。図書館の開館時間中は自分の部屋にいなければならず、閲覧や貸し出しの希望者がいたら要求に応えねばなりません。もしも長年、閲覧希望すらない状態が続くと最後には焼却処分が待っているとか。そう、蔵者は人間ではなく「物」扱いなのです。クローンに人権はないみたい。

父親につづいて兄も亡くしたコレット・コールドブルック嬢は、兄を殺した犯人の手がかりになりそうな一冊の本『火星の殺人』の著者であるE・A・スミスのリクローンを一週間借り出したのです。正体不明の敵に襲われ、攫われ、暴行され、散々な目に遭いながらも、スミスは丁寧な口調を崩すことなく、淡々と自分が果たすべき役割をこなしていきます。

途中、話がどこへ転がっていくのかわからず戸惑いましたが、最後はビックリ、どんでん返し。スミス氏が100年以上前に本物の人間だったときにどんな小説を書いてきたのかわかりませんが、この『書架の探偵』がいちばん面白いことは間違いないでしょう。

あ、蔵者には文章を書くことは禁じられていたのでした。もし駄文を書いたりすると作家としての価値が下がるからという図書館の都合で。でも、価値が上がるなら問題ないはず、ですよね?

お勧め度:★★★☆☆

2017年9月29日 (金)

不等辺三角形 (内田康夫)

不等辺三角形 (幻冬舎文庫)
不等辺三角形』は、日経新聞夕刊の文化面で紹介されていて、地元名古屋が舞台になっていることに興味をもって、読んでみることにしました。

名古屋の覚王山日泰寺の東側に「揚輝荘」という、松坂屋初代社長が建てた、いわゆる私設迎賓館が舞台。現在は名古屋市指定文化財となっていて、北園は無料、南園の聴松閣が入場料300円。先月長男といっしょに訪れたところだったのです。長男の感想は「1ヶ月くらい借りて住んでみたい」。そりゃ最高ですね。エントランス2階部分の明るい書斎でゆっくり本を読んでいたい。

小説では丁寧に取材されたことがわかります。漢詩が出てきたところで「リアルと同じだ」。もう一方の舞台である東松島のことはわかりませんが、おそらく同様かと。あとがきによると本書を書き上げるのに5年かかったそうです。

浅見光彦シリーズ三部作の最終巻だとか。主人公の浅見光彦はフリーのコピーライターなのですが、警察庁刑事局長の兄を持つため、本人が望まずとも警察に顔が効いてしまうので、探偵として通用するようです。

探偵としては上品というか押しが弱いところがあるのですが、嫌味がなく安心して読むことができました。

お勧め度:★★★★★

2017年4月12日 (水)

ビブリア古書堂の事件手帖 7 ~栞子さんと果てない舞台

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~<ビブリア古書堂の事件手帖> (メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂の事件手帖7』はシリーズ第7弾の完結編。これまで挙げられたのは国内の古書でしたが、今回はシェイクスピア。栞子の祖父が母親を試そうとした仕掛けに栞子が挑みます。

1. 「歓び以外の思いは」
2. 「わたしはわたしではない」
3. 「覚悟がすべて」

どんなに価値のある本でも、自分のものにしてしまえば、どうしようと自分の勝手、なのでしょうか。わたしのような小心者には抵抗のある発想です。

栞子のお相手は物足りなかったものの、シリーズを通して楽しく読めました。

お勧め度:★★★★★

2016年9月 9日 (金)

ビブリア古書堂の事件手帖 6 〜栞子さんと巡るさだめ

ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ 』は、シリーズ第6弾。栞子が田中敏雄に階段から突き落とされて怪我を負った足は治らないまま、いまも杖をついています。それでも本を読むには不都合はないと気に病むふうもない彼女はいったい何を考えているのでしょうか。

保釈中の田中敏雄は、太宰治の別の『晩年』を捜してほしいと大輔を通じて依頼してきます。そこで「古書探偵・栞子」が調査を開始。古書を追っていくと、その作家も含めて、関わった人間の過去と歴史が明らかになっていきます。なんと恐ろしい!(古書が嫌いになりそう)

栞子と大輔の初々しいお付き合いはちょうどよい息抜きになっています。そろそろ7巻を出してもらえるとうれしいです。

お勧め度:★★★★☆

2016年7月11日 (月)

暗礁 (黒川博行)

暗礁〈上〉 (幻冬舎文庫)

暗礁 』は「疫病神」シリーズ第3弾。やくざの桑原に賭け麻雀の代打ちを頼まれた二宮は、臨時収入に喜んだものの、例によって「疫病神」のトラブルに巻き込まれるのでした。お決まりのパターンですね。

今回の「シノギ」は、大手運送会社と奈良県警との癒着により生まれた裏金の争奪戦です。そこに桑原だけでなく、大阪府警のマル暴担まで絡んできます。作者はその筋のご友人がいらっしゃるのでしょうか。詳しすぎます。

二宮の父親はヤクザだったのですが「ヤクザとデカは同じ人種や。権力志向で一家意識が強い。縦社会で命令には絶対服従。刑務所の塀の上を歩いてて、たまたま中に落ちたんがヤクザで、外に落ちたんがデカ」というのが口癖だったとか。説得力ありすぎ。

すべてが金に絡んだ抗争。桑原の頭にはカネとミエしかありません。二宮も、桑原を疫病神だと忌み嫌いながらも、巻き込まれた元を取ろうと欲をかくから痛い目に遭うのです。たまには刺激があっても面白いけれど、続けて読むものではありませんね。

お勧め度:★★☆☆☆

2016年5月16日 (月)

えんま寄席 江戸落語外伝 (車浮代)

                  
えんま寄席 江戸落語外伝
      『えんま寄席 江戸落語外伝 』は「落語の世界の住人が死後にやってくる」と紹介されているから、亡くなった落語家が閻魔様のまえで一席披露するのかと思ったら、そうではなくて、4つの落語噺をつなげて、その落語の登場人物を閻魔様が裁くホラーミステリー、になるのかなぁ?
      
      今年になって文楽を見るようになって、落語にも興味があるので読んでみました。「芝浜」「子別れ」「火事息子」「明烏」という落語は実際にあって、オチ(下げ)を変えたり、話をつないだりしながら「落語ミステリー」に仕立てたもの。
      
      読んでいるうちに「この人はさっきの話の奥さんか」とわかってくるのですがややこしい。落語にくわしい方は、元ネタがわかるから楽しめる部分もあるでしょうが、元ネタを知らない私は戸惑うばかり。そもそも、これらの噺を聞いて笑えるのでしょうか? 暗い話が多いのですが。
      
      閻魔様登場以前に、実際の落語噺ありきなので、素人にはとっつきにくいというか、あまり楽しくなかった。落語にくわしい方が読まれたほうがよいかと思います。
      
      お勧め度:★★★☆☆
      

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