現代小説

2017年6月28日 (水)

本を守ろうとする猫の話 (夏川草介)

本を守ろうとする猫の話
本を守ろうとする猫の話 』は 『神様のカルテ 』の作者による長編小説。

高校生の林太郎は、夏木書店を営む祖父とふたり暮らし。だったのですが、祖父が他界し、呆然としているところから物語は始まります。叔母さんに引き取られることになっているのですが、ちょっとした事件が起きます。

1. 第一の迷宮「閉じ込める者」
2. 第二の迷宮「切りきざむ者」
3. 第三の迷宮「売りさばく者」
4. 最後の迷宮
5. 事の終わり

夏木書店は古典もしっかり揃えてある古書店。そこへトラ猫が現れて「本を助けてほしい」と頼みます。これは夏目漱石か、涼宮ハルヒか!?

林太郎は学校でも目立たない、自宅で本を読んでばかりいる引きこもり。「ぼくなんかよりもっと役に立つ人がいるだろうに」と断ります。が、猫は「おまえの力を貸してほしい」とねじ込んだ結果「迷宮」に連れていかれる羽目になったわけです。

第2章までは『STORY BOX』に寄稿したもので、以後は書き下ろしだとか。たしかに2章まではインパクトがあって引き込まれたのですが、後半はきれいにまとめすぎてて物足りず、ちょっと残念でした。

他にも、わたしは古書店が舞台になっている『東京バンドワゴン』『ビブリア古書堂の事件手帖』『書楼弔堂 』などがお気に入り。日経新聞で見たのですが、駒場公園の日本近代文学館1階に "BUNDAN COFFEE&BEER"というブックカフェがあるとか。そこでAKUTAGAWAという珈琲をいただいて、のんびり本に埋もれてみたい。

夏木書店のその後が気になるので、続編を期待しています。

お勧め度:★★★☆☆

2017年6月20日 (火)

真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥 (大沼紀子)

([お]7-9)真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥 (ポプラ文庫)
真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥 』はシリーズ完結編。表紙絵を見て「希美もパン屋さんになるの!?」と思ったけれど、そういうわけじゃないみたい。

400ページ弱の紙幅に、斑目氏、ソフィア、弘基、希美の、その後の人生が綴られています。それぞれ海外に出て行くところが共通していておもしろい。不幸がデフォルトだと思い込んでいた人たちが、気づいたら幸せになってるっていいですね。

ここまで来たら最後は暮林さんでしょう。彼は最初から謎の人。喜怒哀楽がはっきりしないのです。妻の美和子さんが「真夜中にパン屋さんをやろうと思った理由」について希美が口にしたのは、意外なようで自然なもの。最後にそう来ましたか。いいお話です。

お勧め度:★★★★★

2017年6月 9日 (金)

アキラとあきら (池井戸潤)

アキラとあきら (徳間文庫)
アキラとあきら 』は『陸王』に続く長編小説。「感動の青春巨篇」なんて紹介されているから、やや不安を感じながら購入したのですが、いつもの「池井戸節」でした!

そう「負けるものか」ビジネス小説です。大企業と小企業、そして銀行。だれが強者で、だれが弱者なのか。ちいさな町工場の息子・山崎瑛は父親の工場が倒産して夜逃げ同然に引っ越し。一方、大手海運会社の社長の息子・階堂彬がそれぞれの運命に翻弄されながらも、お互いを知らないままに同じ大学を卒業し、同じ企業に就職するのでした。

山崎瑛は失うものは持たないものの、ひとつの理想(夢)を持っていました。一方、階堂彬は親の会社と叔父ふたりの会社を失いたくありません。問題は叔父たちが伊豆に立ち上げたリゾートホテルが赤字続きで、このままでは親会社を含めて破綻は必至ということ。一体どうなってしまうのかハラハラ、どきどき。後半は坂を転がり落ちるように、一気に読んでしまいました。

東芝をはじめとする日本の電気メーカーの惨状をみるにつけ、サラリーマン社長や役員が従来路線を踏襲するだけでは大企業も確実に傾くことを再認識しました。プロの経営者が必要です。

お勧め度:★★★★☆

2017年5月30日 (火)

喧嘩 ー 疫病神シリーズ (黒川博行)

喧嘩
喧嘩 』は「疫病神シリーズ」第6弾。高校時代の友人である議員秘書からヤクザを抑えてほしいと依頼された二宮は、選挙での票集めをめぐって揉めた麒林会の背後には鳴友会がいることを知り(前巻で)二蝶会を破門された桑原に声をかけます。

いつもここがわからない。二宮は毎回ひどい目にあって「二度と桑原とは付き合わん」と誓いながら、ちょっと困っただけで頼るなんて、学習能力ゼロのアホです。ここでいつも一瞬読む気が失せるのですが、これもお約束かとあきらめてページを繰るわけです。

破門されてもイケイケの桑原はヤクザ相手に大立ち回り。主導権を握る桑原に金の分け前を無心する二宮。例によって大阪弁による軽妙な貶しあいが炸裂。人でなしの桑原とろくでなしの二宮はよいコンビなのでしょう。お互いを疫病神だと罵り合う、めちゃくちゃなふたりですが、最後は見殺しにはせずに相手を助けます。人としての最後の一線はぎりぎり守っている点が、シリーズが続いている理由ではないでしょうか。

しかし、威勢のいい啖呵も、最後は尻すぼみで、ちょっとがっかり。このシリーズは毒気が強いので常用はお勧めしません。たまに刺激がほしいときにどうぞ。

お勧め度:★★★☆☆

2017年5月24日 (水)

ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード 東京バンドワゴン (小路幸也)

ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード  東京バンドワゴン
ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード  東京バンドワゴン 』は シリーズ第11弾。もう10年になるんですね。早いものです。

久しぶりですが、大ばあちゃんの家族紹介があるので大丈夫。紹介だけで10ページもありました。

・春 花も嵐も実の生る方へ
・夏 チャーリング・クロス街の夜は更けて
・秋 本を継ぐもの味なもの
・冬 ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード

なんといっても4歳になったかんなちゃんと鈴花ちゃんがかわいい! 第3章で活躍してくれますが、なにやら末恐ろしい子たちです。でもかわいいから赦します。

第2章では、勘一がMI6をむこうに回してロンドンに飛んでいくのですからたいしたもの。胸がスッとしました。今回はちょっと変わった趣向を取り入れてくれて楽しめました。

お勧め度:★★★★★

2017年5月 7日 (日)

悪果 (黒川博行)

悪果 (角川文庫)
悪果 』は「疫病神シリーズ」の作者による大阪府警の堀内・伊達シリーズ第1弾。

マル暴担当刑事が主人公なのですが、こいつらヤクザよりタチが悪い。堀内いわく「暴力団犯罪担当刑事という利権を手にしながら気の利いたシノギのひとつも見つけられないやつは出世の見込みがない。そんな宝の持ち腐れをする能なしはとっとと異動して、交番のパトロールや駐車違反の取締りでもしていればいい」。業界誌編集長・坂辺に賭博で逮捕された客を強請らせて、その上がりを着服するのが堀内のシノギ。女を囲い、高級クラブに出入りしても一回5千円ポッキリ。

そういえば、疫病神シリーズにこんなセリフがありました。「刑務所の塀のうえを歩いていて、中に落ちたのがヤクザで、外に落ちたのが警察官だ」。おそらく、本質は変わらないという意味でしょう。フィクションだとわかってはいても、リアリティがありすぎて、警察不審が募る一冊です。

お勧め度:★★★☆☆

2017年3月25日 (土)

人生を変えてくれたペンギン (トム・ミッチェル)

人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日
人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日 』は、イギリス人の著者が1970年代にアルゼンチンの全寮制男子校に赴任し、憧れていた南米を旅する過程で出会った1羽のペンギン<フアン・サルバドール>との触れ合いを描いた物語です。

1. ペンギンを拾う
2. マゼランペンギン
3. バスタイム
4. フォークランド諸島は禁句
5. おかしな税関
6. 小魚をあげるから
7. 紆余曲折を経て
8. 新しい友人たち
9. 掘り出し物
10. 屋上談話
11. 動物園を偵察に
12. マスコット
13. マリアの家へ
14. ペンギンを探して
15. 黄金郷を探して
16. 「僕、泳げる?」
17. そして、いつまでも幸せに暮らしました―
18. あのころを振り返って

単なる好奇心でペンギンを飼ったわけではなく「彼にとってなにが幸せなのか」を常に考え、悩みつつ、学校の屋上で他の職員、教員、生徒たちと共にフアン・サルバドールと交流するなかで得たのはお金では買えない貴重な経験だったようです。冒険好きな著者だったからこそフアン・サルバドールと出会い、共に過ごすことができたのでしょう。

お勧め度:★★★★★

2017年3月18日 (土)

校閲ガール トルネード

校閲ガール トルネード
校閲ガール トルネード 』は、校閲ガールシリーズ第3弾。

アフロヘアーのイケメン作家との恋に溺れる河野悦子。ファッション誌 Lassy 編集部に憧れ、異動に望みをかけ校閲部での仕事に精を出してきた悦子が、久々の恋にあたふたする様子が可笑しくて可愛い。

1. 校閲ガールと恋のバカンス 前編
2. 校閲ガールと恋のバカンス 後編
3. 辞令はある朝突然に 前編
4. 辞令はある朝突然に 後編
5. When the World is Gone 〜 快走するむしず

アフロとふたりで軽井沢でお泊まりという絶好のシチュエーションに盛り上がる悦子ですが、この手のシアワセは邪魔が入ってひどいことになるのがお約束。そこに、悦子が以前から仕事上感じていた違和感の正体が明らかになっていくという展開。可笑しく笑いながらも「なるほどそういうことだったのか」と膝を叩く快感。オススメ!

お勧め度:★★★★★

2017年3月15日 (水)

金沢あかり坂 (五木寛之)

金沢あかり坂 (文春文庫)
金沢あかり坂 』は、一時期金沢で暮らしたという五木寛之の短編集です。日経新聞夕刊の文化面で「七つ橋めぐり」が紹介されて興味をもった次第。それに金沢といえば泉鏡花の出身地。先日『書楼弔堂 破暁 』の作中で若き日の鏡太郎に出会ったので親近感があります。岐阜市立図書館で読みかけて、名古屋の図書館で借りて読み終えました。といっても約250ページの薄い文庫本です。

1. 金沢あかり坂
2. 浅の川暮色
3. 聖者が街にやってきた
4. 小立野刑務所裏

金沢の花街を舞台にした表題作がいい。4話は自身の若い頃を語った私小説。リアルです。

また、金沢に行きたいなぁ。冬、雪の日に訪れたいと思いつつ、天気予報をみるといつも雲がかかっているのをみて挫けます。先の楽しみにとっておきましょう。

お勧め度:★★★★★

2017年3月 4日 (土)

書楼弔堂 破暁 (京極夏彦)

文庫版 書楼弔堂 破暁 (集英社文庫)
書楼弔堂 破暁 』は、明治20年代の東京府の外れに、ひっそりと佇む「書楼弔堂」なる古書店。ふと足を踏み入れた主人公が不思議な縁でだれかを弔堂に案内し、そこの主が客に対して「生涯で一冊の本」を売る。

探書壱 臨終
探書弐 発心
探書参 方便
探書肆 贖罪
探書伍 闕如
探書陸 未完

ホラーは苦手なのですが、本が好きなので楽しめました。明治の文豪や幕末の著名人が登場するのも楽しい。4章「贖罪」を読んでいくと「この人が客なのだろう」とわかってきて、最後にどんな本を勧めるのか興味津々。お、そう来たか。反面、それはないだろう。とも思う。複雑です。

「読まれぬ本を弔い、読んでくれる者の元へ届けて成仏されるが我が宿縁。(中略)読まれる本は紙くずですが、読めば本は宝となる。宝と為すか塵芥と為すかは人次第。私は、何千巻何万冊であろうとも、必ず我が楼に収めた凡ての書物を宝に変える所存」と、弔堂の主は言い切ります。

6章「未完」で紹介された『トリストラム・シャンディ』(The Life and Opinions of Tristram Shandy, Gentleman)は実在して、全9巻の未完小説とのこと。今度図書館で見てみようと思います。

お勧め度:★★★★☆

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