現代小説

2019年1月24日 (木)

利き蜜師物語 銀蜂の目覚め (小林栗奈)

利き蜜師物語 銀蜂の目覚め

利き蜜師物語 銀蜂の目覚め 』は、魔王と魔物がいて、魔法使いと弟子がいて、密かに闘っている世界の物語。しかし、それが蜂にまつわるお話なので、ミツバチがいて蜂蜜があって、利き蜜師という職業があり、専門の大学まである。

お話としては面白いのですが、世界観に馴染みづらいためにアウェー感がハンパないのです。おかげでのめりこめずに苦労しました。本としては、表紙絵も雰囲気がよく出ているし、装丁も紙質も活字の配置もソフトカバー本として手に馴染み、目に優しく、よくできています。

わたしは世界観に馴染めませんでしたが、利き蜜師・仙道と、その弟子・まゆの活躍を読んでみてください。続編もあります。

お勧め度:★★★☆☆

2019年1月12日 (土)

愛なき世界 (三浦しをん)

愛なき世界 (単行本)

愛なき世界 』は三浦しをんの最新作。帯には「恋のライバルは草でした。(マジ)」とあって、面白そうなので飛びつきました。

舞台は、本郷のT大理学部生物学科の松田研究室。そこにシロイヌナズナ(葉っぱ)をこよなく愛する本村紗英に惚れた、近所の食堂見習い・藤丸陽太がフラれる物語です。(笑)えません...。

舟を編む 』では辞書編纂部署を『風が強く吹いている 』ではマラソンランナーを取材して書かれたのでしょう。つまり、植物の研究についてかなり突っ込んだ取材をされたものと思われます。読む前にメンデルの法則を復習しておきましょう。(冗談です)

それにしても基礎研究って地味で地道で根気のいる仕事。実験ノートをきちんと取っておくことも大事。このあたりは作中でも松田教授がしつこいくらい念押ししているから、STAP細胞論文疑惑のようなことが二度と起きないようにという配慮があるのでしょう。

一方で教授いわく「予想どおりの結果を得るための実験など、退屈です。(中略)実験で大切なのは独創性と、失敗を恐れないことです。失敗のさきに、思いがけない結果が待っているかもしれないのですから」。たしかに実験の失敗が発見につながったという話はよく聞きます。

さて、藤丸の恋のゆくえが気になる方は、実際に読んでみてください。

お勧め度:★★★★★

2019年1月 6日 (日)

継続捜査ゼミ (今野敏)

継続捜査ゼミ (講談社文庫)

継続捜査ゼミ 』は『隠蔽捜査』の今野敏の変わり種警察小説。

元刑事が女子大の教授に。5人の学生に参加する「刑事政策演習ゼミ」では、実際に過去に起きた殺人事件をテーマに「捜査」を開始するのですが...。

学生がゼミで事件を解決ってなにそれ? と思ったのですが、女子大生が現場に乗り込んで大暴れするわけではなく、あくまでゼミでの演習扱い。ただ、現職警官から捜査情報は聞き出すし、事件の証人にも会いに行くのです。マスコミが知ったら即クビだな、この先生。

長編小説のわりに読みやすいのは『隠蔽捜査』同様、文章が淡々として薄いから。これは悪い意味ではなく、濃すぎると(すぐに嫌気がさして)読めません。

女子大生と警察のコラボなんて、絶対にありえないファンタジー小説。軽いノリで読めます。

お勧め度:★★★☆☆

2019年1月 1日 (火)

ハロー・ワールド (藤井太洋)

【Amazon.co.jp限定】ハロー・ワールド(特典: オリジナルショートストーリー データ配信)

ハロー・ワールド 』 は日経新聞夕刊の文化面で紹介されて興味を持ったのですが、新聞に載ったことではなく、誰(評者)がそう書いたかに注目すべきだということを昨年学習しました。どんなに評価が高くても「この人とは好みがちがう」場合は参考になりません。

しかし、今回はアタリでした。IT関連のエンジニアは必読。フィクションとはいえ、とってもリアル(現実に即しているという意味で)なのです。

1. ハロー・ワールド
2. 行き先は特異点
3. 五色革命
4. 巨像の肩に乗って
5. めぐみの雨が降る

主人公は、空撮用ドローンを販売する会社の「自称・何でも屋」エンジニア、ヤスヒロ・フヅイ。友人ふたりと開発した、iPhone用広告ブロッカーアプリがインドネシアで急に売れ出します。一体なぜ!?

日本の外ではなにが起こっているのか。

ネットは世界を巡り、人と人をつなぐのですが、それを快く思っていない人たちもいるわけで...。知識としては分かっているつもりでも実感のなかった事柄が、突然目の前にドンっと現れたよう。

本書に啓発されて、わたしもiPhoneにBBCニュースアプリをインストールしました。なるほど、たしかに今イギリスにとってBrexitは大問題。世界で起こっていることが生々しく伝わってきます。

パソコンやネットに興味がある人はぜひご一読あれ!

お勧め度:★★★★★

2018年12月31日 (月)

熱帯 (森見登美彦)

熱帯

熱帯 』 は森見登美彦の新作長編小説。ご本人は締切にずいぶん苦しめられていたらしく、本作の冒頭でも鬱憤が爆発していて可笑しい。

冒頭、作者は佐山尚一の『熱帯』という本を古書店で手に入れ、読みかけたものの、途中で失くした、いや消えてしまったというのです。

Nettai_3

絶版本であっても図書館にはあるはず。と、名古屋市図書館でネット検索しても出てこない。国会図書館にすらないのはおかしい。つまり出版社によって流通された本ではないということ。自費出版?

なぜかAmazonで検索するとヒットする(上図)けれど入手不可。偽情報か。いずれにせよ、これを読む必要はありません。わたしたちが読むべきは、森見登美彦の『熱帯 』なのです。

ただ、作者は佐山尚一の『熱帯』を探し求め「沈黙読書会」なる集まりで出会ったメンバーと深みに嵌っていくという趣向です。そして舞台は東京から京都へ。

千一夜物語 』が背景にあり、魔王や魔女、海賊やシンドバッドが登場し、物語は混沌を深めていきます。そして中盤、主人公は記憶を失い、孤島に飛ばされてしまいます。「何もないということは何でもあるということなのだ。魔術はそこから始まる」。

観測所、砲台、美術館、海上を走る2両編成の電車(叡山電鉄?)、「進々堂」という珈琲店、「芳蓮堂」という古道具屋...。これは夢なのか妄想なのか。

作者のいうように、たしかにこれは「怪作」です。

お勧め度:★★★★★

2018年12月30日 (日)

嘘の木 (フランシス・ハーディング)

嘘の木

嘘の木 』は、有名な博物学者で牧師のサンダースの逃避行先ヴェイン島での不慮の死にまつわる物語。14歳の娘フェイスは父を尊敬し慕っているのですが、父は研究にしか興味がなく、いつも無表情でフェイスとの会話もほとんどありません。

タイトルになっている" The Lie Tree"とは、木に嘘を聞かせ、それを広めると実をつけ、それを食べると嘘に関連する正夢を見るという不思議な植物。その「嘘の木」をめぐって人の欲が争いを生み、周囲を不幸に巻き込んでいきます。

父の死に疑問を持ち、死因を明らかにしようと孤軍奮闘する様は健気ですが、父にしろ娘にしろ「嘘の木」の生態に疑問を持ちつつも「利用」することを優先します。それがすべての過ちのはじまりだというのに...。

読み進めるうちにどんどん引き込まれて、やめたくてもやめられなくなって、今年読んだ小説のなかでいちばん怖かった。翻訳も秀逸です。

お勧め度:★★★★★

2018年12月19日 (水)

荒野 (桜庭一樹)

荒野 (文春文庫)

荒野』 は鎌倉が舞台の小説を検索して発見、読んでみました。中学から高校時代の瑞々しい成長記です。

山野内荒野というのが主人公の名前。女の子の名前としては変わっていると思うのだけれど、友人たちも誰もツッコまないのが不思議。父の正慶は恋愛小説家。母は亡くなり、お手伝いさんがいたのですが、父が再婚して...と、荒野を取り巻く環境はめまぐるしく変わっていくのに、それでもまっすぐ育つところがすごい!

少女、少年の心を持ち続ける人たちへお勧めします。

お勧め度:★★★★★

2018年12月13日 (木)

下町ロケット ヤタガラス (池井戸潤)

下町ロケット ヤタガラス

下町ロケット ヤタガラス 』 はシリーズ第4弾。『ゴースト』の続編です。読み始めて「ここで分けるか!?」。TVドラマの「つづく」みたいであざとい。出版社の方針なのか、最近、金儲け主義を感じます。

佃製作所はロケット部品から、トラクターのエンジンとトランスミッションに賭けたようですが「ギアゴースト」に裏切られ、商品化は頓挫します。それでも「無人農業ロボットは、日本の農業の高齢化、人手不足を救い、作業効率が向上し、作付面積を増やせることで世帯収入も大幅アップする」と張り切ります。でも、ロボット導入のコストと維持費はどうするのか。ここでお得意の「銀行」は登場しないのか。ややリアリティに欠ける面もあります。

裏切り、保身、嫌がらせをする悪者が報いを受けて読者は溜飲を下げる。このあたりはいつもの池井戸潤なのですが、今回の「ゴースト」「ヤタガラス」はイマイチ。もう「下町ロケット」というタイトルから離れたほうがいいと思います。

お勧め度:★★☆☆☆

2018年12月 7日 (金)

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン (小路幸也)

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン 』 はシリーズ13弾。しばらくぶりなので登場人物の名前が混乱してたり、語り手のおばあちゃんは女性を老いも若きも、かずみちゃん、かんなちゃんと「ちゃん」づけなのでなおさら混乱します。

冬:人と出会わばあかよろし
春:新しき風大いにおこる
夏:若さ故の二人の夏に
秋:ヘイ・ジュード

花陽は医大に合格できるのか。研人と芽莉依ちゃんとの仲はどうなの。気がかりはいくつもあれど、堀田家全員でかかれば、なんでもなんとかなるのです。堀田家と隣の藤島ハウスだけでは部屋が足りなくなってきたこともなんとかなるのでしょうか?

巻頭の人物相関図なくして読めなくなりつつあるのは、人間関係が複雑になりすぎてどうかと思うのですが、このシリーズはこのまま進むしかないのでしょう。本で読む「連続テレビドラマ」として。

お勧め度:★★★★☆

2018年11月22日 (木)

東京すみっこごはん 楓の味噌汁 (成田名璃子)

東京すみっこごはん 楓の味噌汁 (光文社文庫)
東京すみっこごはん 楓の味噌汁 』はシリーズ第4弾。

1. 安らぎのクリームコロッケ
2. SUKIYAKI
3. 楓の味噌汁

1話は、SNS映えを生きがいにする読者モデル瑠衣は、セレブな友人2人に合わせて無理を重ねて...というときに「すみっこごはん」と出会います。2話は、母子家庭で経済的に高校進学が難しい瑛太。3話が、板前の金子さんの弟弟子・晴彦なのですが、金子さんが「すみっこごはん」で彼を試すようなことをするのは反則。それは職場ですべきこと。しかも、その後の「事件」も辻褄あわせとしか思えません。

このシリーズは好きだったのですが、ここに来て無理な展開が目につき残念です。

お勧め度:★★☆☆☆

より以前の記事一覧

2019年2月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28    
無料ブログはココログ