現代小説

2019年4月16日 (火)

RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴 (萩原規子)

RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴 (角川文庫)

RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴 』は2012年に6巻で完結後に出た外伝です。久しぶりにRDGを読んだら、人見知りでぼんやりアワアワしてる泉水子がいて、懐かしかった。

1. 影絵芝居 相良深行・中三の初夏
2. 九月の転校生 相良深行・中三の秋
3. 相楽くんは忙しい 相良深行・高一の秋
4. 氷の靴 ガラスの靴 宗田真響・高一の冬

相良深行視点の短編3本と、宗田真響が後継問題で祖父と対決する中編が1本です。

そういえば、泉水子に憑依する姫神って「ウィッチクラフトワークス 」の白姫に似ているような気がしませんか?

お勧め度:★★★★★

2019年3月29日 (金)

食堂のおばちゃん (山口恵以子)

食堂のおばちゃん (ハルキ文庫)

食堂のおばちゃん
は姑・一子と嫁・二三が切り盛りする佃の「はじめ食堂」が舞台。

1. 三丁目のカレー
2. おかあさんの白和え
3. オヤジの焼き鳥
4. 恋の冷やしナスうどん
5. 幻のビーフシチュー

巻末レシピ:血糖値の上がらないご飯、オムライス、バラちらし、鰯のカレー揚げ、牡蠣フライ、春巻、春キャベツのペペロンチーノ、ブリ大根、白和え、焼き魚・煮魚、白滝の常備菜二種、チキン南蛮、タルタルソース、麻婆茄子、ポテトサラダ、豚の生姜焼き、コロッケ

決して特別な料理ではないけれど、ふと恋しくなる家庭料理を出してくれる食堂のお話です。食いしん坊にオススメ!(笑)

お勧め度:★★★☆☆

2019年2月23日 (土)

さよならの夜食カフェ マカン・マラン おしまい (古内一絵)

さよならの夜食カフェ-マカン・マラン おしまい (単行本)

さよならの夜食カフェ-マカン・マラン おしまい 』は、シリーズ第4弾にして完結編。

1. さくらんぼティラミスのエール
2. 幻惑のキャロットケーキ
3. 追憶のたまごスープ
4. 旅立ちのガレット・デ・ロワ

1話を読み始めて思い出しました。「苦しむ人が癒されるカフェ」の物語では、まず人が苦しむところを見せられるのがつらい。刑事ドラマでも殺人事件ありきなのと同様、そこで挫けそうになるけれど、ここで止めたら意味がない。と、自分を励ましてページを繰ります。

シャールいわく「自分を憐れみたくなったら、誰かに八つ当たりしたり、甘えたりしないで、自分で自分の機嫌を上手に取って元気になる。それが大人の嗜みというものよ」。たしかに。美味しいものを食べれば元気が出ます。

3話では「わたしは、不安と戦うのは、筋トレみたいなものだと思ってるの」「そりゃあ、不安と向き合うのは骨が折れるわよ。筋トレって基本的に苦しいものだから。でもそれを続けていけば、完全な解決はしなくても、心の筋力は鍛えられるのではないかしら」。わかる気がします。

お勧め度:★★★★☆

2019年2月19日 (火)

利き蜜師物語2 図書室の魔女 (小林栗奈)

利き蜜師物語2 図書室の魔女

利き蜜師物語2 図書室の魔女 』は、1巻目では世界観に馴染めなかったのですが、それでも2巻目のタイトルの「図書室」が気になって「図書館」で借りてきました。そういえば、高田大介の『図書館の魔女 』の新作を去年からずっと待ってるのですが出ませんねぇ。

今回、利き蜜師・仙道とその弟子・まゆは協会の依頼で、列車に揺られて古城・ベルジュ城にやってきました。昔、協会が預けた大量の図書を引き取ってほしいという連絡があって、その対応に派遣されたわけです。城主シェーラは若い貴婦人だが病弱。この城は呪われているらしいのですが、くわしいことは誰も話そうとしません。

ずっと「図書室の魔女」って誰のことなのか気になって読み進めていたのですが、それは最後まで読んでのお楽しみ。利き蜜師の世界にもだいぶ慣れてきて、13歳のまゆの活躍が頼もしくも危なっかしい第2弾でした。第4弾で完結します。

お勧め度:★★★★☆

2019年1月24日 (木)

利き蜜師物語 銀蜂の目覚め (小林栗奈)

利き蜜師物語 銀蜂の目覚め

利き蜜師物語 銀蜂の目覚め 』は、魔王と魔物がいて、魔法使いと弟子がいて、密かに闘っている世界の物語。しかし、それが蜂にまつわるお話なので、ミツバチがいて蜂蜜があって、利き蜜師という職業があり、専門の大学まである。

お話としては面白いのですが、世界観に馴染みづらいためにアウェー感がハンパないのです。おかげでのめりこめずに苦労しました。本としては、表紙絵も雰囲気がよく出ているし、装丁も紙質も活字の配置もソフトカバー本として手に馴染み、目に優しく、よくできています。

わたしは世界観に馴染めませんでしたが、利き蜜師・仙道と、その弟子・まゆの活躍を読んでみてください。続編もあります。

お勧め度:★★★☆☆

2019年1月12日 (土)

愛なき世界 (三浦しをん)

愛なき世界 (単行本)

愛なき世界 』は三浦しをんの最新作。帯には「恋のライバルは草でした。(マジ)」とあって、面白そうなので飛びつきました。

舞台は、本郷のT大理学部生物学科の松田研究室。そこにシロイヌナズナ(葉っぱ)をこよなく愛する本村紗英に惚れた、近所の食堂見習い・藤丸陽太がフラれる物語です。(笑)えません...。

舟を編む 』では辞書編纂部署を『風が強く吹いている 』ではマラソンランナーを取材して書かれたのでしょう。つまり、植物の研究についてかなり突っ込んだ取材をされたものと思われます。読む前にメンデルの法則を復習しておきましょう。(冗談です)

それにしても基礎研究って地味で地道で根気のいる仕事。実験ノートをきちんと取っておくことも大事。このあたりは作中でも松田教授がしつこいくらい念押ししているから、STAP細胞論文疑惑のようなことが二度と起きないようにという配慮があるのでしょう。

一方で教授いわく「予想どおりの結果を得るための実験など、退屈です。(中略)実験で大切なのは独創性と、失敗を恐れないことです。失敗のさきに、思いがけない結果が待っているかもしれないのですから」。たしかに実験の失敗が発見につながったという話はよく聞きます。

さて、藤丸の恋のゆくえが気になる方は、実際に読んでみてください。

お勧め度:★★★★★

2019年1月 6日 (日)

継続捜査ゼミ (今野敏)

継続捜査ゼミ (講談社文庫)

継続捜査ゼミ 』は『隠蔽捜査』の今野敏の変わり種警察小説。

元刑事が女子大の教授に。5人の学生に参加する「刑事政策演習ゼミ」では、実際に過去に起きた殺人事件をテーマに「捜査」を開始するのですが...。

学生がゼミで事件を解決ってなにそれ? と思ったのですが、女子大生が現場に乗り込んで大暴れするわけではなく、あくまでゼミでの演習扱い。ただ、現職警官から捜査情報は聞き出すし、事件の証人にも会いに行くのです。マスコミが知ったら即クビだな、この先生。

長編小説のわりに読みやすいのは『隠蔽捜査』同様、文章が淡々として薄いから。これは悪い意味ではなく、濃すぎると(すぐに嫌気がさして)読めません。

女子大生と警察のコラボなんて、絶対にありえないファンタジー小説。軽いノリで読めます。

お勧め度:★★★☆☆

2019年1月 1日 (火)

ハロー・ワールド (藤井太洋)

【Amazon.co.jp限定】ハロー・ワールド(特典: オリジナルショートストーリー データ配信)

ハロー・ワールド 』 は日経新聞夕刊の文化面で紹介されて興味を持ったのですが、新聞に載ったことではなく、誰(評者)がそう書いたかに注目すべきだということを昨年学習しました。どんなに評価が高くても「この人とは好みがちがう」場合は参考になりません。

しかし、今回はアタリでした。IT関連のエンジニアは必読。フィクションとはいえ、とってもリアル(現実に即しているという意味で)なのです。

1. ハロー・ワールド
2. 行き先は特異点
3. 五色革命
4. 巨像の肩に乗って
5. めぐみの雨が降る

主人公は、空撮用ドローンを販売する会社の「自称・何でも屋」エンジニア、ヤスヒロ・フヅイ。友人ふたりと開発した、iPhone用広告ブロッカーアプリがインドネシアで急に売れ出します。一体なぜ!?

日本の外ではなにが起こっているのか。

ネットは世界を巡り、人と人をつなぐのですが、それを快く思っていない人たちもいるわけで...。知識としては分かっているつもりでも実感のなかった事柄が、突然目の前にドンっと現れたよう。

本書に啓発されて、わたしもiPhoneにBBCニュースアプリをインストールしました。なるほど、たしかに今イギリスにとってBrexitは大問題。世界で起こっていることが生々しく伝わってきます。

パソコンやネットに興味がある人はぜひご一読あれ!

お勧め度:★★★★★

2018年12月31日 (月)

熱帯 (森見登美彦)

熱帯

熱帯 』 は森見登美彦の新作長編小説。ご本人は締切にずいぶん苦しめられていたらしく、本作の冒頭でも鬱憤が爆発していて可笑しい。

冒頭、作者は佐山尚一の『熱帯』という本を古書店で手に入れ、読みかけたものの、途中で失くした、いや消えてしまったというのです。

Nettai_3

絶版本であっても図書館にはあるはず。と、名古屋市図書館でネット検索しても出てこない。国会図書館にすらないのはおかしい。つまり出版社によって流通された本ではないということ。自費出版?

なぜかAmazonで検索するとヒットする(上図)けれど入手不可。偽情報か。いずれにせよ、これを読む必要はありません。わたしたちが読むべきは、森見登美彦の『熱帯 』なのです。

ただ、作者は佐山尚一の『熱帯』を探し求め「沈黙読書会」なる集まりで出会ったメンバーと深みに嵌っていくという趣向です。そして舞台は東京から京都へ。

千一夜物語 』が背景にあり、魔王や魔女、海賊やシンドバッドが登場し、物語は混沌を深めていきます。そして中盤、主人公は記憶を失い、孤島に飛ばされてしまいます。「何もないということは何でもあるということなのだ。魔術はそこから始まる」。

観測所、砲台、美術館、海上を走る2両編成の電車(叡山電鉄?)、「進々堂」という珈琲店、「芳蓮堂」という古道具屋...。これは夢なのか妄想なのか。

作者のいうように、たしかにこれは「怪作」です。

お勧め度:★★★★★

2018年12月30日 (日)

嘘の木 (フランシス・ハーディング)

嘘の木

嘘の木 』は、有名な博物学者で牧師のサンダースの逃避行先ヴェイン島での不慮の死にまつわる物語。14歳の娘フェイスは父を尊敬し慕っているのですが、父は研究にしか興味がなく、いつも無表情でフェイスとの会話もほとんどありません。

タイトルになっている" The Lie Tree"とは、木に嘘を聞かせ、それを広めると実をつけ、それを食べると嘘に関連する正夢を見るという不思議な植物。その「嘘の木」をめぐって人の欲が争いを生み、周囲を不幸に巻き込んでいきます。

父の死に疑問を持ち、死因を明らかにしようと孤軍奮闘する様は健気ですが、父にしろ娘にしろ「嘘の木」の生態に疑問を持ちつつも「利用」することを優先します。それがすべての過ちのはじまりだというのに...。

読み進めるうちにどんどん引き込まれて、やめたくてもやめられなくなって、今年読んだ小説のなかでいちばん怖かった。翻訳も秀逸です。

お勧め度:★★★★★

より以前の記事一覧