現代小説

2018年10月13日 (土)

星をつなぐ手 桜風堂ものがたり (村山早紀)

星をつなぐ手 桜風堂ものがたり

星をつなぐ手』は『桜風堂ものがたり 』の続編。前作を読んでからお楽しみください。

序章 白百合の花
第一話 夏の終わりの朝に
 幕間1 カーテンの向こう
第二話 遠いお伽話
 幕間2 ケンタウロスとお茶を
第三話 人魚姫
 幕間3 Let it be
 幕間4 神様の手
終章 星をつなぐ手

冒頭、人気作の新刊が一冊も届かないと知った月原一整は慌てます。そこへ銀河堂書店のオーナーから呼び出しを受けて...。

欠けている部分に、あたかも用意されていたかのようにピースがハマっていくストーリー。予想外の展開はないから安心して読むことができます。誰かが怪我したり傷ついたりするんじゃないかとドキドキ、ハラハラするのは心臓に悪いという方には、お伽話のように沁みると思います。

お勧め度:★★★★★

2018年9月25日 (火)

サラバ! (西加奈子)

サラバ! 上 (小学館文庫)
サラバ! 』 に限らず、直木賞とか芥川賞とは距離(時間)を置く癖があるので、4年経ってようやく読んだのですが、非常にくたびれました。

はじめのうちは、ユーモラスな言い回しにクスクス笑いながら読めたのですが、その後も家族の紹介を通じて、延々と自分探しの旅が続くので何度挫けそうになったことか。

それでも、イランで生まれてエジプトで育ったという、異国の地での出来事はおもしろい。エジプトから帰国した母親の戸惑いが愉快。

「まず、スーパーの品数と清潔さに打ちのめされた。一時帰国のときは、宝物のように見えたそれらが、これから永遠に手に入るものだと認識してしまった途端、どうしようもなく贅沢で、ふざけたものに変わった。あらかじめ小さく切られたネギのパックを見て、母は「嘘やろ」と言い、レトルトの袋に書いてある「ここからお開けください」の矢印を見て「阿呆か」と言った。母が言うには、このままでは、日本人の手は退化し、脳みそも小さくなるに違いない、とのことだった」。

これはまったく同感です。日本の企業は日本人(顧客)を甘やかしすぎ。かまぼこや卵焼きくらい自分の手に包丁をもって切りなさい。中学高校入試に「生活力」という実技科目を加えるべきではないでしょうか。

お勧め度:★★★☆☆

2018年9月20日 (木)

料理人の光 ヤッさんIV (原宏一)

料理人の光 ヤッさんIV

料理人の光 ヤッさんIV 』 はシリーズ第4弾。前作からずいぶん時間が経っていますが、個性的なヤッさんは忘れようがありません。

築地市場は移転騒動中なので、ヤッさんは足立市場に現れたようです。

・河川敷食堂
・寮姉の献立
・タケ坊の道
・料理人の光
・日向灘の恋
・旅立つ舌

「ヤッさんシリーズ」ファンの方であれば、安心して読むことができるのでオススメです。

お勧め度:★★★☆☆

2018年9月15日 (土)

プラネタリウムの外側 (早瀬耕)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 』は『グリフォンズ・ガーデン 』の後日譚にあたる連作小説です。理系世界の恋愛小説というのは、文系のわたしには刺激的なのです。

北海道大学にある有機素子コンピュータでチューリングテストの研究を行うという名目で、じつは出会い系サイトで稼いでいる南雲助教のもとへ工学部2年の佐伯衣理奈がやってきます。彼女は元恋人の川原圭が札幌駅で列車に轢かれて死んだのは自殺ではないと確かめるため、有機素子コンピュータで会話プログラムを開発して川原圭の行動をシミュレートしようというのです。

有機素子コンピュータは、同じパラメータを設定しても解が一意にならないので、人間の会話プログラムを組みにはうってつけ。チューリングテストでは、ある人が、2台のコンピュータにテキスト入力して会話を行い、一方が人間、もう一方がコンピュータの会話プログラムが相手をします。どちらが人間なのか区別できなければ、そのコンピュータは知性を持っているといえるというもの。今でいうAI、人工知能の開発です。

出会い系サイトの「さくら」の補助システムとして開発を始めて、徐々にコンピュータに直接、人間(客)の相手をさせるようになっていきます。IDの盗用を防ぐため、登録したApple Watchをはめているときだけログインできるなど、コンピュータ好きには興味深い小説です。

前作同様、現実と仮想現実が交錯するなかで、物語は進んでいきます。さて、南雲助教が手がける会話プログラムはどこまで行くでしょうか。興味のある方はぜひご一読を! 前作を読んでいなくても楽しめます。

お勧め度:★★★★★

2018年9月10日 (月)

下町ロケット ゴースト(池井戸潤)

下町ロケット ゴースト

下町ロケット ゴースト 』は、シリーズ第3弾。

ロケットエンジンのバルブ、人工心臓の弁、そして今回は(耕運機の)トランスミッションのバルブ。なのですが、ピンチに陥るのは佃製作所ではなく、創業5年のベンチャー企業「ギアゴースト」。縁あって佃はギアゴーストに手を差し伸べることになるのですが...。

冒頭、佃製作所では耕運機のエンジンの改良が進み、納入先に採用を打診するのですが、これがピンと来ません。自家用車であればともかく、5%の燃費改善と言われてもピントがずれているような気がします。佃社長らしくない。

たしかに池井戸潤ではあるのですが、どうもキレがありません。これでは「下町ロケット」が墜落してしまいそう。

後編「ヤタガラス」に期待しています。

お勧め度:★★★☆☆

2018年9月 4日 (火)

フォー・ディア・ライフ (柴田よしき)

フォー・ディア・ライフ (講談社文庫)

フォー・ディア・ライフ 』は、探偵「花咲慎一郎シリーズ」の第1弾。『風のベーコンサンド 高原カフェ日誌 』といっしょに図書館で借りてきました。

新宿2丁目の無認可保育園の園長である花咲の前職は警官、しかもマル暴。いまでは園長として子供たちの面倒をみることが天職だと思っているのですが、とにかく金がない。金を稼ぐために探偵として、アブナイ仕事も受けるわけで...。

そういえば、このまえ黒川博之の「疫病神シリーズ」を読んだっけ。最近ヤクザものが多いなぁ。ただ「疫病神」よりは「花咲慎一郎」は救いがあります。金は欲しいけれど、心根の優しい男は、人として(カタギとして?)筋は通すのです。

家出人探しをしているうちに、とんでもない事件に巻き込まれていくわけですが、みんな丸く収まることを願わずにはいられません。

お勧め度:★★★☆☆

2018年8月31日 (金)

風のベーコンサンド 高原カフェ日誌 (柴田よしき)

風のベーコンサンド 高原カフェ日誌 (文春文庫 し 34-19)

風のベーコンサンド 高原カフェ日誌 』は、東京の仕事を辞めて百合が原高原にカフェを開いた奈穂が主人公。「高原カフェのベーコンサンド」がおいしそうなので読んでみることにしました。

ペンションブームが去った高原は客足が遠のいて、どこも厳しい経営を強いられています。それでも奈穂はカフェに来てくれる人が「おいしい」と言ってくれることに喜びを見出し、毎日前向きに取り組みます。

そこまではよいのですが、仕入先のベーカリーや牧場などもそれぞれ問題や悩みを抱え、奈穂自身も家族との問題が、物語全体に暗い影を落とします。わたしが今食べたいのは、残念ながらこの味ではありませんでした。

お勧め度:★★★☆☆

2018年8月26日 (日)

菓子屋横丁 月光荘 歌う家 (ほしおさなえ)

菓子屋横丁月光荘 歌う家 (ハルキ文庫 ほ 5-1)
菓子屋横丁月光荘 』は、4巻で完結した『活版印刷三日月堂 』と同じ川越が舞台。

大学院生の遠野守人が、川越の菓子屋横丁にある古民家「地図資料館」の住み込み管理人として越してきます。彼は幼い頃から、古い家の声が聞こえるのです。だから「歌う家」なのです。

古い道具に神や霊魂が宿るのを「つくも神」といいますが、家がまるごとというのは珍しい。まぁ、飛び跳ねるわけではなく、静かにしゃべったり、歌ったりする程度らしいので、大きな問題はないでしょう。(ほんとに!?)

活版印刷三日月堂 』はリアルに物理的に機械的に「印刷」と格闘するお話だったのですが、今作はファンタジー色が強い。わたしは「歌う家」よりも、川越の店主たちの苦労や工夫、人間模様のほうが面白い。そういう意味ではどっちつかずで、やや中途半端。

続編に期待したいと思います。

お勧め度:★★★★☆

2018年8月21日 (火)

キラキラ共和国 (小川糸)

キラキラ共和国
キラキラ共和国 』 は『ツバキ文具店 』の続編です。鎌倉にある代書屋さんの鳩子さんが主人公。前作が好きだったので、続編も読みたい。

でも、図書館では300人が予約待ちしてて半年以上待たないといけません。予約できるのは6冊までなので、優先順位があって『キラキラ共和国 』はどうしても後回しになってしまう。

嵩張らず、外へ持ち出しやすい文庫本ならば買ってもいいのだけれど、単行本は嵩張るし、高い。読み終えた本が溜まってきたのでブックオフに持っていくと『キラキラ共和国 』があって「本が全品20%オフ!」とあったので思わず買ってしまいました。

・ヨモギ団子
・イタリアンジェラート
・むかごご飯
・蕗味噌

やっぱりいいなぁ。ほっこり、あったかい。おいしいものが出てくるのもいい。QPちゃんも可愛い!

ツバキ文具店の鎌倉案内 』も気になります。

お勧め度:★★★★★

2018年8月16日 (木)

泥濘 疫病神シリーズ (黒川博之)

泥濘 疫病神シリーズ

泥濘 』は「疫病神シリーズ」第7弾。

半堅気の二宮啓之は、またぞろ二蝶会のイケイケやくざ桑原保彦に巻き込まれてひどい目にあいます。毎度毎度懲りん奴や。あほらしなって一度本を閉じました。

二宮いわく、後悔も反省もじきに忘れて、喜怒哀楽が長続きしないらしいが、それだけじゃないだろう。桑原が他人から巻き上げた金でも、花札で買った金でも、二宮にとっては「稼ぎ」なのだ。この発想がおかしい。「変人」なのだから仕方ないか。

従妹の渡辺悠紀いわく「啓ちゃんはどこまで行っても桑原とは縁が切れへんねん。口では毛嫌いしているくせに、誘われたらのこのこついて行く。あげくに頭縫って足を捻挫して、傷が癒えたころにはひどいめにあったことをころっと忘れてる。ほんまにね、こんなに能天気でズボラな人間がほかにいるやろか。つくづく感心するわ」。

結局、ふたりとも相手を疫病神だと罵りつつ、いつもつるんでる。こういうのを世の中では「悪友」と呼びますね。別名「裏稼業凸凹コンビ」。

このシリーズは「水戸黄門」極道編。舞台は変われどパターンが決まってる。しかしリアリティがあるから、こんな連中が大阪を跳梁跋扈していると思うと空恐ろしい。

「疫病神、凶弾に倒れる」と帯に大書してあるけれど(残念ながら)主人公は死にません。しばらく病院でおとなしくしていればよろしい!

お勧め度:★★★☆☆

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