現代小説

2018年3月14日 (水)

怪物はささやく (パトリック・ネス)

怪物はささやく (創元推理文庫 F ネ 2-1)
怪物はささやく 』は、闘病中の母親と暮らす、13歳の少年コナーが主人公。ある夜、教会の墓地に立つイチイの木の怪物がコナーの部屋の外に現れ「おまえに3つの物語を話して聞かせる。わたしが語り終えたら、おまえが4つめの物語を話すのだ」。コナーはそれを夢だと断じ、怪物を恐れる気配もありません。一方、学校でコナーはいじめられていて…。

モノクロの挿絵が不気味で、雰囲気を盛り上げます。児童書といってもよいのではないでしょうか。怖いけれど深い。休日のスターバックスで一気読みしてしまいました。

最後は「え…そんな…」。

映画化されているので、そちらも見てみようと思います。

お勧め度:★★★★★

2018年2月 2日 (金)

スローハイツの神様(上・下) (辻村深月)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)
スロウハイツの神様 』は、若きクリエイター達が暮らす「スロウハイツ」での出来事を、登場人物ごとに視点を切り替えつつ語られる小説です。オーナーの赤羽環(あかばね・たまき)が、人気作家チヨダ・コーキを迎え入れると、まるで手塚治虫が住んでいた「ときわ荘」みたいです。

▼上巻
1. 赤羽環はキレてしまった
2. 狩野壮太は回想する
3. チヨダ・コーキの話をしよう
4. 円屋伸一は出て行った
5. 加々美莉々亜がやってくる
6. 『コーキの天使』は捜索される

▼下巻
7. 森永すみれは恋をする
8. 長野正義は鋏を取り出す
9. 拝島司はミスを犯す
10. 赤羽桃花は姉を語る
11. 黒木智志は創作する
12. 環の家は解散する
13. 二十代の千代田光輝は死にたかった

上巻5章で美少女作家・加々美莉々亜が登場したあたりから雰囲気が怪しくなってきます。(こいつはなにかあるな) また、環が憧れのコーキと初めて出会ったとき、コーキから「お久しぶりです」と言われて(初めて会ったのに誰かと勘違いしてると)ショックを受けたのですが、これも引っかかります。編集長の黒木は文字どおり腹黒い。

下巻を最後まで読むと、それまでの伏線が拾われて、謎がひとつずつ明らかになっていって、気分すっきり。ミステリーの要素もあります。上巻を読んだなら下巻まで読みましょう。

お勧め度:★★★★☆

2018年1月21日 (日)

七つの人形の恋物語 (ポール・ギャリコ)

七つの人形の恋物語 (角川文庫)
七つの人形の恋物語 』は、三浦しをんの『本屋さんで待ち合わせ 』で紹介されていたので読んでみました。パリに出て来たものの仕事を失い、行くあても失った少女ムーシュは、川に飛び込もうかと歩いているところを人形劇一座の人形に声をかけられます。

7体の人形たちは個性的で、ムーシュは彼らと上手に掛け合い、周囲には自然と人垣ができるのでした。ムーシュは彼らと共に行くことにしたのですが、問題は偏屈な座長キャプテン・コック。事あるごとにムーシュに辛く当たります。さて、物語の結末は?

パリを出た一座はランスに向かいます。先月「ランス美術館展」を観たところなので親しみを覚えます。

お勧め度:★★★★☆

2018年1月17日 (水)

八日目の蟬 (角田光代)

八日目の蝉 (中公文庫)
八日目の蝉 』は、昔読みかけて断念したのですが、三浦しをんの『本屋さんで待ち合わせ 』で紹介されていたので再挑戦しました。

赤ん坊を連れ去って、自分の娘として育てる。薫と名付けられた子のあどけない笑顔や容赦ない泣き声。赤ちゃんてそうだったなぁと思い出します。とくに生後1ヶ月以内の母親はたいへん。24時間態勢で世話しなければなりません。天使であり悪魔でもある。それでも可愛くて、愛おしい。

東京から名古屋へ来ても、身元を詳しく説明できず、行き場を失ったところを老女に拾われます。しかし、母子手帳もなければ住民票もない。予防接種は、病気になったらどうするのか、学校に通うことができるのか。当然のように社会サービスを受けることができるというのは恵まれているのだと気付かされます。

そして仮初めの親娘が逃げ込んだ先は...なるほどそういう手があったか。しかし、それでも逃げ続けなければならないことに変わりはありません。そこまで「子」に拘るのは母性の為せる技なのかどうか。そして、その娘はどう育つのか。最後まで目が離せません。

お勧め度:★★★☆☆

2018年1月13日 (土)

政と源 (三浦しをん)

政と源 (集英社オレンジ文庫)
政と源』は、三浦しをんの新作小説。じいさん二人が主人公では食指が動かなかったのですが、作者に敬意を称して拝読しました。

1. 政と源
2. 幼なじみ無線
3. 象を見た日
4. 花も嵐も
5. 平成無責任男
6. Y町の永遠

東京都墨田区のつまみ簪職人・源二郎は破天荒な性格のくせに職人としての腕はいい。幼馴染の国政は元銀行員だけあって生真面目で融通が効かない。真反対の性格なのに、なぜかいつもつるんでる。現実には「大人としては」できない無茶をやってくれるから愉快です。

本文イラストは完全に三浦の趣味ですね。コメントは差し控えます。

お勧め度:★★★☆☆

2018年1月 9日 (火)

ヒカルの卵 (森沢明夫)

ヒカルの卵 (徳間文庫)
ヒカルの卵 』は山奥の限界集落に暮らす3人の幼馴染を軸にした「村おこし」の物語。養鶏農場を営むムーさん、娘がかわいくて仕方ない大吉、出戻り直子。お人好しのムーさんが、自慢の卵で村に人を呼ぼうと「たまごかけご飯専門店」を開くことを決意します。しかも無料で食わせるというので、周囲は「絶対失敗する」と猛反対するのですが...。

1. 卵ブーメラン
2. 傷つかない心
3. ヒカルの卵
4. 商売の真髄
5. 魔法の醤油

そもそも美味しいものが出てくる小説を読みたかったのです。たしかに卵は美味しそうなのですが、卵だけではグルメ小説とはいいにくい。それならば川で釣ったイワナやヤマメのほうが美味しそうでした。

お勧め度:★★★☆☆

2017年12月30日 (土)

ピカルディの薔薇 (津原泰水)

ピカルディの薔薇 幽明志怪 (ちくま文庫)
ピカルディの薔薇 』は『少女外道 』は、三浦しをんの『本屋さんで待ち合わせ 』で紹介されているのをみて読んでみました。

・夕化粧
・ピカルディの薔薇
・籠中花
・フルーツ白玉
・夢三十夜
・甘い風
・新京異聞

皆川博子の『少女外道』も地味に怖かったけれど、本作は鋭利な怖さがあります。おしろい花とヤドカリを思い出すと身震いします。

お勧め度:★★★★☆

2017年12月22日 (金)

戦場のコックたち (深緑野分)

戦場のコックたち
戦場のコックたち 』は、限られた食糧をすこしでも美味しく食べられるよう、戦場で奮闘するコック兵の物語かと思ったら『バンド・オブ・ブラザース 』でした。

第2次世界大戦後半、連合軍のノルマンディー上陸作戦に始まり、ヒトラーの自殺、ドイツの降伏までを描く、ガチの戦争小説だったのです。疲れました...。タイトルの「コックたち」に惑わされてはいけません。英題は"Armed with skillets"。フライパンでは戦えないのでライフルを抱えています。

たしかにコック兵なのですが、主人公ティモシー・コールの正規の身分は「合衆国陸軍 第101空挺師団第506パラシュート歩兵連隊 第3大隊G中隊隊員」なのです。で、まだ20歳にもならないティムはドイツ占領下のフランスにパラシュートを背負って飛び降りたのです。

1. ノルマンディー降下作戦
2. 軍隊は胃袋で行進する
3. ミソサザイと鷲
4. 幽霊たち
5. 戦いの終わり

悲惨な戦闘が繰り返されるなか、ちょっとした謎解きが気分転換に用意されています。不要になったパラシュートを集めている男がいたり、粉末卵の大量盗難があったり、オランダ人夫婦の自殺、何者かに背中を刺される米兵たち...。戦場でそんなことに手間を割く余裕などあるものか!

あとがきによると「本作品内における連合軍の侵攻作戦は史実に基づきますが、個別の戦闘内容や町並みの描写には、作者の創作が含まれます」。地獄の戦場に、呑気な謎解きは似合わないけれど、それがなければ救いがありません。

本書のなかでも「人間が存在している限り、戦争はなくならない」と言っています。互いに争い、傷つけ合うことのない人間に進化でもしない限り、人類に望みはなさそうです。

お勧め度:★★★☆☆

2017年12月19日 (火)

辺境図書館 (皆川博子)

辺境図書館
辺境図書館 』は皆川博子による幻想小説紹介本です。三浦しをんに唆されて?『少女外道』を読むまでは、こういうジャンルの小説には縁がありませんでした。怖い話は苦手なのですが、好奇心が勝って、紹介されている「名作・稀覯本」が名古屋市図書館にあるかどうか調べてみました。以下、目次のうち★印は在庫あり、☆印は読んでみたい本です。

001『夜のみだらな鳥』とホセ・ドノソ
002★『穴掘り公爵』とミック・ジョンソン
003★『肉桂色の店』とブルーノ・シュルツ
004★『作者を探がす六人の登場人物』とルイジ・ピランデルロ
005★「建築家とアッシリアの皇帝」「迷路」とフェルナンド・アラバール
006★『無力な天使たち』とアントワーヌ・ヴァロディーヌ
007★「黄金仮面の王」とマルセル・シュオップ
008★『アサイラム・ピース』『氷』とアンナ・カヴァン
009★「曼珠沙華の」と野溝七生子
010★☆『夷狄を待ちながら』とジョン・マックスウェル・クッツェー
011「街道」「コフェチュア王」とジュリアン・グラック
012★『黒い時計の旅』とスティーブ・エリクソン
013★『自殺案内者』「蓮花照応」と石上玄一郎
014★『鉛の夜』『十三の無気味な物語』とハンス・へニー・ヤーン
015★☆『セルバンテス』とパウル・シェーアバルト
★『ゾマーさんのこと』とパトリック・ジュースキント
016★☆『吸血鬼』と佐藤亜紀
017★『魔王』とミシェル・トゥルニエ
018「光の門」とロード・ダンセイニ
★「鷹の井」とウィリアム・バトラー・イェイツ
019★☆『神の聖なる天使たち ジョン・ディーの精霊召喚 1581〜1607』と横山茂雄
020『心は孤独な狩人』とカースン・マッカラーズ
021「アネモネと風速計」と鳩山郁子
★☆『わたしは灯台守』とエリック・ファーユ
022★「紅い花」「信号」とフセヴァーロド・ミハイロヴィチ・ガルシン
★『神経内科医の文学診断』(正・続)と岩田誠
023★☆『塔の中の女』と間宮緑
024★『銀河と地獄』と河村二郎
★「ロレンザッチョ」とアルフレッド・ミュッセ
025★☆『郡虎彦全集』と郡虎彦
★『郡虎彦 その夢と生涯』と杉山正樹
000『水族図書館』皆川博子(書き下ろし)

絶版本が気軽に、手軽に読めるというのは大変有難いことです。みなさん、図書館の本は大事に扱いましょう。地域の財産です。

お勧め度:★★★★☆

2017年12月13日 (水)

少女外道 (皆川博子)

少女外道 (文春文庫)
少女外道 』は、三浦しをんの『本屋さんで待ち合わせ 』で紹介されているのをみて図書館で手に取りました。皆川と三浦は同じ棚にあるので、紹介者のエッセイ『乙女なげやり 』もいっしょに借りてきました。少女と乙女、外道となげやり。なんとなく共通項のあるタイトルなのに、中身はまったく違う。しをんさんの「比べないで〜」という悲鳴が聞こえてきそうです。(笑)

1. 少女外道
2. 巻鶴トサカの一生
3. 隠り沼の
4. 有翼日輪
5. 標本箱
6. アンティゴネ
7. 祝祭

1話目は「なにが外道なんだろう」と思いつつ読み進め、なんだかおかしいぞと思っていると「なんとエロティック! おまけにアブナイぞ、これは」。たしかに外道だ。正道とは言えません。

2話目の冒頭「寿司を食べながら焼き上がるのを待つというのは、なかなかにブラックな情景ではないかと彼は思うのだが、これが一般的な風習になっているようだ」。なにが「焼きあがる」のだろう。栄螺の壷焼き? このときはまだ皆川博子を知らなかったのです。ラストは1話をなぞるように「おーい、だれかたすけて!」。

人の肉体が傷つき、血が流れ、死に至り、朽ちていく。そこにエクスタシーを感じる背徳感。戦時中、人の生命が軽く、死が身近だったこともあるでしょう。だけど、それにしても...。

7話目のラストは「あぁ、もうかんべんして」。つかれました。

お勧め度:★★★★★(貴方もどうぞごいっしょに...)

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