時代小説

2018年4月18日 (水)

さくら舞う―立場茶屋おりき (今井絵美子)

さくら舞う―立場茶屋おりき (角川春樹事務所 (時代小説文庫))
さくら舞う―立場茶屋おりき 』 はシリーズ第1弾。時代小説というと戦国時代であれ江戸時代であれ、人が傷つけられ、殺される場面が多くて閉口します。だから「人が死なない時代小説」を常々探しています。『御宿かわせみ』は好きだったなぁ。

そこで今回、品川宿門前町にある立場茶屋を舞台にした女主人おりきの物語はどうかと手にとってみたのです。

・さくら舞う
・涙橋
・明日くる客
・秋の別
・侘助

「じりじり舞い」「おぼおぼしい笑い」「火面を張って」「朝餉膳は山留」「降りみ降らずみだった空が」「喜撰の苑香」といった、凝った言葉が使われていて「そういう言い方もあったのか」と勉強になります。そういう意味では独自の世界観があります。

おいしい料理が出てくる人情物なのですが、主人公のおりきがちょっとカタイかな。もうすこし肩の力を抜いたほうがいいし、恋をしたほうがいい。そうすればもっと魅力的な小説になるような気がします。

お勧め度:★★★☆☆

2018年3月30日 (金)

あきない世傳 金と銀(五) 転流篇

あきない世傳 金と銀(五) 転流篇 (時代小説文庫)
あきない世傳 金と銀(五) 転流篇』はシリーズ5作目。『みをつくし料理帖』に続いて愛読しています。

本棚がパンクするので普段は図書館を利用しているのですが、本シリーズは書店で見つけ次第買っています。そして、クリスマスシーズンのシュトーレンのように、毎日すこしずつ楽しみながらコーヒー片手に読むのがささやかな楽しみなのです。

なにが良いって、時代小説なのに人が死なないことと、胸キュンが散りばめてあること。商人として以前に、人としてあるべき姿を追い求めて、一本筋が通った生き方を見せてくれる主人公たちが愛おしい。現代の商売人(ビジネスパーソン)たちにも見習ってほしい!

今作はイベントが盛りだくさんで目が回りそう。おまけにまた最後は「え...」。もう、こういう終わり方はやめてほしい。作者も自分の首を絞めるだけです。「はやく次巻を出してくれ」と読者から矢の催促になります。

五鈴屋の今後が楽しみです。

お勧め度:★★★★★

2018年2月14日 (水)

風神雷神 雷の章 (柳広司)

風神雷神 雷の章
風神雷神 雷の章 』は『風神雷神 風の章 』の続編(下巻)。本阿弥光悦から田舎へ移住して自由に作品を作ろうという誘いを断り、家業を継いだ宗達が家庭を持ってからの物語です。

光悦の代わりに今度はお公家さんが登場。その烏丸光広の案内で、養源院の血生臭い噂を晴らすため、唐獅子図・白象図を描き、相国寺には蔦の細道図屏風を納めます。帝から法橋の地位を与えられた宗達は、宮中の名品を模写することができたのです。

他に、関屋澪標図屏風、舞楽図屏風も登場し、実物が見たくなりました。どんな絵なのかはネットで確かめたほうがストーリーもわかりやすい。最後は、あの風神雷神図です。建仁寺にさりげなく展示してあるのは「模写だよな」と思いつつ、改元のCMを思い出していました。冗談はさておき「屏風に風神なんてありえない」と聞いて目からウロコ。

徳川幕府の鎖国政策についてなど、時々うんちくが入るのが面白い。

すぐれたエンタメ時代小説です。興味がある方はぜひ!

お勧め度:★★★★★

2018年2月10日 (土)

風神雷神 風の章 (柳広司)

風神雷神 風の章
風神雷神 風の章 』は、建仁寺にある風神雷神図を描いた俵屋宗達(伊年)の物語。そもそも扇屋の絵師だったとは知りませんでした。

冒頭「醍醐の花見」の場面では、醍醐寺の桜と、上醍醐への参道の険しさを思い出し、かぶきおどりの阿国一座は、有吉佐和子の『出雲の阿国』を思い出しました。幼馴染の角倉与一が嵯峨野で印刷出版事業を始め、そこに本阿弥光悦が加わって、伊年は扇屋を超えた絵師としての才能を開花させていきます。

とにかく読みやすい。現代小説作家が手がけた時代小説はそういう傾向があるようです。時代小説、歴史小説は読みづらいと敬遠していた方にもお勧めします。ただ「コラボレーション」を連発されると違和感が募るのでほどほどに。

お勧め度:★★★★★

2017年12月31日 (日)

小袖日記 (柴田よしき)

小袖日記 (文春文庫)
小袖日記 』は平安時代に飛ばされたOLが「源氏物語」執筆の手伝いをすることになるというSF時代小説。どんなものかな、と思いつつ読んでみたら、これが意外に面白い!

冒頭「死んでやる。」とは、不倫相手の上司から「女房が妊娠したんや」と別れを告げられてのセリフ。

1. 夕顔
2. 末摘花
3. 葵
4. 明石
5. 若紫

「源氏物語」の語り手というか取材係の小袖と中身が入れ替わってしまい、書き手の香子さまの下で暮らすことになるのですが、多少とんちんかんなことを言っても雷に打たれたせいで済む「よう」です。タイムスリップではなく、重力が弱く、別の宇宙らしいということなので、過去の歴史を変えると云々という問題も起きない「よう」です。ご都合主義に見えないこともありませんが、穴はおおむね違和感なく塞がっています。上手いと思います。

小袖は「光源氏はロリコンのエロ親父」というように、わたしも「源氏物語」は好みではないのですが、能の曲にいくつも取り上げられている(半蔀、夕顔、葵上、野宮、須磨源氏、住吉詣、玉鬘、落葉、浮舟) ので、その点で興味があります。

取材して回る間に、事件が起きて、香子さまと謎解きをしたり、現代に伝わる「源氏物語」との違いに悩んだりと、楽しませてくれます。

それはともかく、彼女は現代に戻ることができるのでしょうか?

お勧め度:★★★★★

2017年はこれでおしまい。2018年もよろしくお願いします!

2017年11月26日 (日)

決戦 奥右筆秘帳 (上田秀人)

決戦 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
決戦 奥右筆秘帳』はシリーズ第10弾、最終巻です。

出された料理を、好きなものだけいただくという、行儀の悪い読み方をしましたが、そうすれば苦手なものも美味しくいただけることがわかりました。

さて、いよいよ冥府防人(めいふさきもり)との決戦です。衛悟は生き残りを賭けて大久保典膳と修行に励み、併右衛門は決戦の舞台づくりに策をめぐらせます。

それよりも、衛悟と瑞紀が祝言を挙げることができてめでたし、めでたし。江戸城の留守居・本田駿河守を仲人にしたものだから、参加者一同びっくり。本田は併右衛門を部下にしたがっているのですが、首を縦に振らないもので「まず婿を取り立てて...」。江戸城はどこへ行っても陰謀、策謀の闇に覆われているようです。

ともあれ、立花家のご一同が末長く幸せでありますように!

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月22日 (水)

天下 奥右筆秘帳 (上田秀人)

天下 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
天下 奥右筆秘帳 』 はシリーズ第11巻。

今回は、瑞紀が衛悟と共に「探索」に出ます。外出することがほとんどないお嬢様にしては、慣れている様子。一方の衛悟は剣術以外は情けない有様。瑞紀に主導権を握られています。

毎回命を狙われる家斉ですが、今回の敵は島津です。そもそも御台所、家斉の奥さんの実家です。権力を望む人たちはみんな発想が短絡的。それに比べれば家斉は英邁なのでしょうけれど、残念ながら実権がなく、傾きつつある幕府を立て直すこともできずにいます。

次が最終巻。衛悟と瑞紀の祝言を見たいものです。

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月19日 (日)

墨痕 奥右筆秘帳 (上田秀人)

墨痕 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
墨痕 奥右筆秘帳 』 はシリーズ第10巻。

前巻では、鷹狩りに出かけた家斉を狙って失敗。今回は大奥での法要を利用しようということのようです。毎回命を狙われるのでは「上様」もたいへんです。

それにしても、毎度毎度、次から次へと、悪巧みと人殺しの繰り返し。ちょっと異常です。家斉の命が狙われたという事実を隠しても、奥右筆の併右衛門は知っているので「口封じ」に狙われるのです。お気の毒ではありますが、蜂の巣を突いた本人の責といえましょう。衛悟は親父さんに巻き込まれたわけです。

戦うことが仕事の武士(旗本)を、仕事(戦)がないのに国家公務員として給料を払い続ければ、そりゃ財政は破綻します。よく300年以上もったものです。本作を読んでいると、明治維新は必然だったのだろうと思えてきます。

一方、祝言はまだとはいえ、衛悟は立花家に婿入りしたわけで、

「立花瑞紀は浮かれていた。」

いいですねぇ。彼女が浮かれていれば世は太平であります。

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月16日 (木)

召抱 奧右筆秘帖 (上田秀人)

召抱<奥右筆秘帳> (講談社文庫)
召抱<奥右筆秘帳> 』はシリーズ第9弾。

松平定信は大老として権力を握るべく、奧右筆組頭を潰しにかかります。そのために、邪魔な柊衛悟に新規召抱を持ちかけたのです。立花家への婿入りの書類は未提出のため、召抱を断ることができません。えぇ、一体どうするんですか、併右衛門さん!?

家斉を頂点として、父の治済、溜間詰の定信、寛永寺の覚蝉と僧兵たち、冥府防人と絹、甲賀、伊賀、御庭番...これだけのメンバーが陰謀を巡らし殺し合うのです。ほんと、ロクでもない連中です。

そこに巻き込まれた併右衛門は気の毒ですが、衛悟がまだ生きているのが不思議なくらいです。彼が甲賀や伊賀より強いとは全く思えないのです。本職の忍び相手に、しかも複数でかかってこられて無事でいられるはずがない。とんでもなくご都合主義のフィクションです。これもひとえに「主人公効果」といえましょう。主人公とそれに準じる人物は死なないのです。だから戦闘シーンは適当に読み飛ばします。

相変わらず、何者かに襲われ怪我をして帰ってくる父や衛悟を案じるだけの瑞紀が健気です。

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月13日 (月)

刃傷 奥右筆秘帳 (上田秀人)

刃傷 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
刃傷 奥右筆秘帳 』はシリーズ第8弾。

江戸城内で禁じられている刃傷沙汰。城内で襲われた併右衛門が脇差の鞘で身を守ったところが、鞘が割れて刃が露わになってしまったことで目付に捕らえられます。

そんな殺生な。悪いのは斬り付けてきた奴でしょう。いくら決まりだとはいえ、それだと城内で斬り付けられたら応戦することもできません。黙って死ねと? 将軍を守るためだとしても? 浅野内匠頭は切腹したけれど、吉良上野介はお構いなしだったじゃないですか。

そもそもは、併右衛門があちこち蜂の巣を突くから、文字通り「刺される」のです。

甲賀だけでなく伊賀までも敵にまわして、これで御庭番が来れば「詰み」ですが、いまのところ家斉は奥右筆組頭を害することを良しとはしていません。

そういうゴタゴタは横に置くとして、衛悟を婿として迎えると併右衛門から聞かされた瑞紀の慌てようは愉快です。うれし恥ずかし瑞紀は幸せです。しかし、父と婿殿はあちこちから命を狙われているわけで、気が気じゃありません。

まわりは、自分のことしか考えない連中ばかり。邪魔になったら殺せばいいという野蛮な世界。さぁ、いよいよ物語は佳境へ!

お勧め度:★★★☆☆

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