時代小説

2018年10月 5日 (金)

花だより みをつくし料理帖 特別巻 (高田郁)

花だより みをつくし料理帖 特別巻
花だより』は「みをつくし料理帖」シリーズ完結後の後日譚。澪が大坂に戻ったあとの物語。うれしくて即購入しました。

1. 花だよりー愛し浅蜊佃煮
2. 涼風ありーその名は岡太夫
3. 秋燕ー明日の唐汁
4. 月の船を漕ぐー病知らず
 巻末付録:澪の料理帖
 特別付録:みをつくし瓦版

1話目は江戸のつる家の店主・種市が大坂の澪に会いに行くと言い出し、2話目は、御膳奉行・小野寺数馬が娶った乙緒視点。3話目はあさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たした野江。4話目が澪と源斉夫婦の奮闘を描きます。

やっぱり「みをつくし料理帖」は善いなぁ。ありがとうございました!

お勧め度:★★★★★

2018年7月21日 (土)

能舞台の赤光 多田文治郎推理帖 (鳴神響一)

能舞台の赤光 多田文治郎推理帖 (幻冬舎文庫)

能舞台の赤光 』は「多田文治郎推理帖」シリーズ第2弾。タイトルどおり、能の上演中に殺人事件が起きたということで興味を持ちました。

最初に「主要登場人物」と能舞台の見取図が載っているのが便利。鏡の間の裏手に楽屋があることは名古屋能楽堂のバックステージツアーに参加したので知っているのです。シテとかワキ、ツレと聞いても能を知らないとピンと来ませんが、能楽初心者が読む限り、能に関する記述に違和感はありません。逆にいえば、わたしが理解できるわけですから、さほど深い内容ではないともいえるでしょう。(苦笑)

五番立ての祝儀能ということで「翁三番叟」から始まり「田村」「楊貴妃」「張良」そして最後が「酒瓶猩々」で、五人の猩々が舞台で舞うものです。このあと、どんな事件が起きるのか知らないけれど「全員が面を着けているから、人が入れ替わってもわからないなー」。

作者は能をご存知のようで安心して読むことができましたが「酒瓶猩々」以外の演目のことも書いて欲しかった。でも、そうすると能に興味がない読者はつらくなる、か。仕方ありません。江戸時代、能は武家のものなので、次は町人文化の人形浄瑠璃を舞台にするのはいかがでしょう?

主人公の多田文治郎は目付けでも目明しでもなく、趣味(物好き?)で謎解きに首を突っ込むタイプ。手柄を立てないといけないわけでもなく気楽なもの。その点、内田康夫の「浅見光彦」に似ています。探偵役が軽いと、残酷な事件も必要以上に深刻にならずに済むので、わたしもすこしは抵抗が減って助かります。

お勧め度:★★★★☆

2018年7月15日 (日)

猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 (鳴神響一)

猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 (幻冬舎文庫)

猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 』は続巻『能舞台の赤光 』を読もうと思ったのですが、前巻を図書館で借りてきたのです。「人死に」は苦手なのですが仕方ありません。

と、読み始めて後悔しました。無人島の密室茶寮で6人が無残に殺されています。それを取り調べる浦賀奉行所与力が主人公・多田文治郎の友人・宮本甚五左衛門だったところから字「事件に巻き込まれた」という設定です。

文治郎と甚五左衛門は、5W1Hでいうと"How"から調べます。焼死、弓矢、スズメバチ、毒殺、撲殺、刺殺と、ほんとロクデモナイ、いやトンデモナイ。つぎが"Who"。誰が実行可能だったか。"When"は、囲碁棋士が書き残した手記で明らか。犯行の様子が書き残してあるなんて、ミステリーとしてはちょっと狡い気がします。こういう手法もあるのでしょうか。

ともあれ『能舞台の赤光 』を読むことにします。

お勧め度:★★★☆☆

2018年7月10日 (火)

長兵衛 天眼帳 (山本一力)

長兵衛天眼帳

長兵衛天眼帳 』は、日経新聞夕刊文化面で紹介されていたので手にとってみました。

江戸日本橋の眼鏡屋「村田屋」の主人・長兵衛は家宝の天眼鏡で謎解きをすることで有名な御仁。そこへ目明し・新蔵が助けてほしいとやってきます。裏店で婆さんが殺され、土間を掘り返してあったため、おなじ裏店に住む17の娘おさちが目明し・巳之吉に連れていかれます。おさちの無実を信じつつも、管轄違いのため口出ししにくい。さて、長兵衛はどうやって解決するのか!?

というのが1本と、もう1本のお話は檜問屋・福島屋の主人の遺言状の真贋鑑定。天眼鏡というのは望遠鏡かと思ったら顕微鏡のようなものらしいので、こちらのほうが本領発揮できそうです。

それにしても主人公・長兵衛の影が薄い。天眼鏡の説明も特にないし、1話目は「長兵衛でなくてもいいのでは?」と思えてしまいます。

それでも決してつまらないわけではなく、小狡い目明しがじつはいい奴だったり、大店の主人がじつは真っ当な商売人を唆す悪人だったり、様々な人間模様を楽しませてもらいました。

お勧め度:★★★★☆

2018年6月18日 (月)

雲上雲下 (朝日まかて)

雲上雲下(うんじょううんげ) (文芸書)
雲上雲下 』は、日本昔話版「ネバーエンディングストーリー」。

参考文献だけでなく、実際に各地の民話を取材してまわったそうです。だから、それを集めて再構成しただけの小説なのかと思ったらそうではありませんでした。

高さ二丈というから6メートルもあろうかという「草どん」が崖っぷちにぼんやりと立ってて、そこへ子狐が現れて「お話をしてほしい」とねだります。「話なぞ知らん」と突っぱねていた草はそれでもなぜか「むかしむかしあるところに」と語り始め、自分でも驚いてしまうのです。なぜ自分はそんな話を知っているのか?

子狐に山姥、乙姫に天人、そして龍の子。 「まんが日本昔話」で見て聞いたことのあるお話のオンパレードです。いいなぁ、この感じ。自分はいまここにいるのだけれど、お話のなかでは摩訶不思議な登場人物たちが語り、泣き笑いする。想像力は人生を豊かにしてくれます。だから小説が好き。

恐ろしいばかりかと思っていた山姥がいい味出してます。(笑)

お勧め度:★★★★★

2018年6月15日 (金)

新・御宿かわせみ 青い服の女 (平岩弓枝)

青い服の女 新・御宿かわせみ
青い服の女』は「御宿かわせみ」シリーズ第41弾。明治維新後の「新・御宿かわせみ」シリーズ第7弾になります。

1. 霧笛
2. 玄猪祭さわぎ
3. 去年今年
4. 青い服の女
5. 二人女房
6. 安見家の三姉妹

前巻『お伊勢まいり 』はピンと来なかったのですが、今作はいつもどおりの「かわせみ」に戻ってうれしい。

あやしげな男女4人が泊まり、なにやらきな臭いと思ったら、最後は血なまぐさい話になるのですが、そこをさらっと終わらせるあたりが真骨頂。

一方、長年勤めた奉公人が暇乞いをしても、そこもさらっと流してしまうのはどうなのか。逆にもやもやが残りますが、それでも嫌いじゃない。

医者の麻太郎が自分のことを「たけのこです」「………」「そのうち、薮になります」。お後がよろしいようで。(笑)

続編を楽しみにしています。

お勧め度:★★★★★

2018年5月20日 (日)

駒姫 三条河原異聞 (武内涼)

駒姫: 三条河原異聞
駒姫: 三条河原異聞 』は日経新聞の書評欄で見かけて以来気になっていたので読んでみたのですが、読まなければよかった。久々の「後悔の一冊」です。

最上家の駒姫が関白秀次の側室となるため聚楽第に入った直後、秀次は謀反の罪で切腹させられます。すべては秀吉が実子を世継ぎに据えたいが故の横暴。そもそも秀吉は嫌いだし、天下人の器でもない。

最後に救いがあることを期待して読んだのですが、なにが「異聞」なのでしょう。とにかく後味が悪すぎます。残念ながらおすすめできません。

読み始めたものの、つまらないから途中で投げ出した本は紹介できません。面白いと思えなかった本も紹介しないほうがよいと思うのですが、このブログは自分の読書記録でもあるため、仮にも最後まで読んだ本は掲載させていただきます。どうかご容赦ください。

2018年5月 3日 (木)

ふんわり穴子天 居酒屋ぜんや (坂井希久子)

ふんわり穴子天―居酒屋ぜんや (時代小説文庫)
ふんわり穴子天 』は「居酒屋ぜんや」シリーズ第2弾。主人公・林只次郎は愛鴬・ルリオの後継ぎを育てなければと焦っています。小鳥の寿命は短く、ルリオがいなくなってしまったら林家は貧乏に逆戻りです。

悩みがあっても、それはそれ。只次郎は毎日のように居酒屋ぜんやに通っています。わたしは美味しいものが出てくる小説が好きで「みをつくし料理帖」も愛読していました。本シリーズでちょっとだけ残念なのが、飲んべえが集まること。わたしは酒を嗜まないので、酒がなくても美味い料理のほうがいい。その点「みをつくし」は基本、酒抜きなのでよかった。しかし、ここは「居酒屋」なので仕方ありません。

でも、穴子天は美味しそう。そう、塩がいいですね!

お勧め度:★★★☆☆

余談ですが「お志乃は良人をじっと見下ろして、能面のような顔でこう言った」という下りの「能面」の喩えが気になりました。ここでいう能面とは無表情という意味だと思うのですが、能楽師がつけた面は角度や光の当たり具合で表情を変えます。その表情は「無」ではなく「多彩」なのです。能面には翁(おきな)、尉(じょう)、鬼神、男、女と種類があることもあって、能に興味のある方であれば「能面のような顔」という表現はしないはず。作者にも観能を通じて、そのあたりを知っていただきたいと思います。(小説を書くってむずかしいですね。)

2018年4月28日 (土)

お伊勢まいり 新・御宿かわせみ (平岩弓枝)

お伊勢まいり 新・御宿かわせみ
お伊勢まいり 』は久々に読ませてもらった「新・御宿かわせみ」の続編です。

「かわせみ」の台風被害を修理する間、伊勢まいりに誘われたるい。十数人で東海道を西へ進むうち事件が起きて...。

やはりそうですよね。和気藹々と旅を楽しみ、お伊勢さんにお参りする様子だけが描かれるなんてありえないのですね。期待したわたしが愚かでした。

誰も死なない(そして面白い)時代小説が読みたい!

お勧め度:★★★☆☆

2018年4月23日 (月)

ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや (坂井希久子)

ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや (ハルキ文庫 さ 19-3 時代小説文庫)
ほかほか蕗ご飯』は「居酒屋ぜんや」シリーズ第1弾。「人が死なない時代小説」を探して、美味しいものを食べさせる話だったら大丈夫、じゃないかなぁ。

武家の次男坊・林只次郎が主人公ですが、堅苦しい武家よりも商人になりたい願望の持ち主。鶯が上手に鳴くよう躾けることを生業として家計を助けています。その只次郎が知人に連れられて入った店が「居酒屋ぜんや」。そこの美人女将・お妙に一目惚れしてしまいます。

1. 笹鳴き
2. 六花
3. 冬の蝶
4. 梅見
5. なずなの花

父の上役から預かった、大事な鶯を逃してしまったと落ち込む只次郎。冒頭では気の毒に思ったけれど、1冊読み終わる頃には「もうすこし痛い目に遭ったほうがいいかも」と意地悪を言いたくなります。優柔不断な只次郎には共感できません。続編を読むべきか否か。

お勧め度:★★★☆☆

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