時代小説

2017年11月22日 (水)

天下 奥右筆秘帳 (上田秀人)

天下 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
天下 奥右筆秘帳 』 はシリーズ第11巻。

今回は、瑞紀が衛悟と共に「探索」に出ます。外出することがほとんどないお嬢様にしては、慣れている様子。一方の衛悟は剣術以外は情けない有様。瑞紀に主導権を握られています。

毎回命を狙われる家斉ですが、今回の敵は島津です。そもそも御台所、家斉の奥さんの実家です。権力を望む人たちはみんな発想が短絡的。それに比べれば家斉は英邁なのでしょうけれど、残念ながら実権がなく、傾きつつある幕府を立て直すこともできずにいます。

次が最終巻。衛悟と瑞紀の祝言を見たいものです。

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月19日 (日)

墨痕 奥右筆秘帳 (上田秀人)

墨痕 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
墨痕 奥右筆秘帳 』 はシリーズ第10巻。

前巻では、鷹狩りに出かけた家斉を狙って失敗。今回は大奥での法要を利用しようということのようです。毎回命を狙われるのでは「上様」もたいへんです。

それにしても、毎度毎度、次から次へと、悪巧みと人殺しの繰り返し。ちょっと異常です。家斉の命が狙われたという事実を隠しても、奥右筆の併右衛門は知っているので「口封じ」に狙われるのです。お気の毒ではありますが、蜂の巣を突いた本人の責といえましょう。衛悟は親父さんに巻き込まれたわけです。

戦うことが仕事の武士(旗本)を、仕事(戦)がないのに国家公務員として給料を払い続ければ、そりゃ財政は破綻します。よく300年以上もったものです。本作を読んでいると、明治維新は必然だったのだろうと思えてきます。

一方、祝言はまだとはいえ、衛悟は立花家に婿入りしたわけで、

「立花瑞紀は浮かれていた。」

いいですねぇ。彼女が浮かれていれば世は太平であります。

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月16日 (木)

召抱 奧右筆秘帖 (上田秀人)

召抱<奥右筆秘帳> (講談社文庫)
召抱<奥右筆秘帳> 』はシリーズ第9弾。

松平定信は大老として権力を握るべく、奧右筆組頭を潰しにかかります。そのために、邪魔な柊衛悟に新規召抱を持ちかけたのです。立花家への婿入りの書類は未提出のため、召抱を断ることができません。えぇ、一体どうするんですか、併右衛門さん!?

家斉を頂点として、父の治済、溜間詰の定信、寛永寺の覚蝉と僧兵たち、冥府防人と絹、甲賀、伊賀、御庭番...これだけのメンバーが陰謀を巡らし殺し合うのです。ほんと、ロクでもない連中です。

そこに巻き込まれた併右衛門は気の毒ですが、衛悟がまだ生きているのが不思議なくらいです。彼が甲賀や伊賀より強いとは全く思えないのです。本職の忍び相手に、しかも複数でかかってこられて無事でいられるはずがない。とんでもなくご都合主義のフィクションです。これもひとえに「主人公効果」といえましょう。主人公とそれに準じる人物は死なないのです。だから戦闘シーンは適当に読み飛ばします。

相変わらず、何者かに襲われ怪我をして帰ってくる父や衛悟を案じるだけの瑞紀が健気です。

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月13日 (月)

刃傷 奥右筆秘帳 (上田秀人)

刃傷 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
刃傷 奥右筆秘帳 』はシリーズ第8弾。

江戸城内で禁じられている刃傷沙汰。城内で襲われた併右衛門が脇差の鞘で身を守ったところが、鞘が割れて刃が露わになってしまったことで目付に捕らえられます。

そんな殺生な。悪いのは斬り付けてきた奴でしょう。いくら決まりだとはいえ、それだと城内で斬り付けられたら応戦することもできません。黙って死ねと? 将軍を守るためだとしても? 浅野内匠頭は切腹したけれど、吉良上野介はお構いなしだったじゃないですか。

そもそもは、併右衛門があちこち蜂の巣を突くから、文字通り「刺される」のです。

甲賀だけでなく伊賀までも敵にまわして、これで御庭番が来れば「詰み」ですが、いまのところ家斉は奥右筆組頭を害することを良しとはしていません。

そういうゴタゴタは横に置くとして、衛悟を婿として迎えると併右衛門から聞かされた瑞紀の慌てようは愉快です。うれし恥ずかし瑞紀は幸せです。しかし、父と婿殿はあちこちから命を狙われているわけで、気が気じゃありません。

まわりは、自分のことしか考えない連中ばかり。邪魔になったら殺せばいいという野蛮な世界。さぁ、いよいよ物語は佳境へ!

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月10日 (金)

隠密 奧右筆秘帖 (上田秀人)

隠密 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
隠密 奥右筆秘帳 』 はシリーズ第7弾。

立花併右衛門の娘・瑞紀が「また」攫われてしまいます。婿入り話を断られた旗本の次男坊がヤケを起こしたのです。まったく...。

それ以外、本作では衛悟と瑞紀の仲には進展はありません。タイトルどおり「隠密」がバタバタ走り回ります。これでは全然「隠密」じゃないです。甲賀が内輪揉めで空中分解したと思ったら、今度は伊賀が出て来ました。武家も忍びも命よりもメンツが大事なのですね。

お願いですから、不毛な殺し合いはやめましょう。

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月 7日 (火)

秘闘 奥右筆秘帳 (上田秀人)

秘闘 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
秘闘 奥右筆秘帳 』 はシリーズ第6弾。

前作に続いて、柊衛悟と立花瑞紀との仲を軸に読んでいくと、なかなか楽しい。

どちらも死んでしまったらおしまいなので、忍者に襲われる奥右筆組頭立花併右衛門を守ろうとする衛悟を応援する手に力が入ります。シリーズ中、このふたりが死ぬことはないと安心していますが。

徳川家基の死因は「毒を盛られたのでは」という噂はあっても、事実は深い闇の中。だったのですが、本作の最後に明かされる驚愕の真実!

なーんて、そんなことよりも、瑞紀に対する強引な婿取り話を一蹴する親父さんがかっこいい! しかし、前巻の衛悟の縁談相手の娘さんは反応なし。彼女が絡んできたときに瑞紀がどう反応するか楽しみだったのですが、残念です。(イヂワル?)

12巻完結なので、折り返し地点まで来ました。

お勧め度:★★★☆☆

2017年11月 3日 (金)

簒奪 奥右筆秘帳 (上田秀人)

簒奪 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
簒奪 奥右筆秘帳 』はシリーズ第5弾。4作目で読むのを中断したのですが再開します。

奥右筆組頭立花併右衛門とその娘・瑞紀を守ってきた、隣家の次男坊・柊衛悟の活躍は面白いのですが、権力をめぐる争い(陰謀、脅迫、暗殺)には辟易します。映画やアニメでも同様、暴力や殺し合いなど見たくありません。そういう部分を読み飛ばすと半分くらいになってしまいます。

御三家や幕府がどうなろうと知ったこっちゃない!

そんなことより、衛悟と瑞紀の仲がどうなるかが気がかりだし、楽しみなのです。愛娘の幸せのために親父さん(併右衛門)はどうするのか。そう簡単に瑞紀とくっつけるわけにはいかないと思いますが、それだけ長く楽しめます。

『居眠り磐音 江戸双紙』の「おこん」も最初は威勢がよくて、女だてらに啖呵を切るところが素敵だったのですが、結婚したら丸くなってしまいつまらなくなってしまいました。(途中で読むのをやめたので今どうなっているかは不明)。瑞紀も、優柔不断な衛悟に対してツンツンしているくらいが可愛い。

一方、衛悟の見合い相手の娘さんは、道場での試合をどう見たか。多少とも人を見る眼があれば黙ってはいないと思うのですが、さてさて、どうなるでしょうか?

お勧め度:★★★☆☆

2017年10月14日 (土)

かんじき飛脚 (山本一力)

かんじき飛脚 (新潮文庫)
かんじき飛脚 』は、図書館で手に取った児玉清の『ひたすら面白い小説が読みたくて 』で絶賛されていたので借りてみました。文庫で560ページなので、そこそこ読み応えがあります。

幕府の松平定信は加賀藩の力を抑え込むことにやっきになっていました。加賀藩主前田治脩の内室が重い病だと知り、内室同伴で新年の宴に招くことにしたのです。もし同伴できなければ幕府から無理難題を吹っかけられることになりかねないため、加賀藩江戸詰要人 庄田要之助は浅田屋伊兵衛を呼び、加賀の秘薬「密丸」を急ぎ国元から取り寄せるよう言いつけたのでした。しかし、密丸のことも御庭番を通じて松平定信には知られていたのです。屈強な飛脚たちといえど、御庭番に狙われてはひとたまりもありません。さて、加賀藩の大ピンチ!

読み進めていくと、12月のことですから加賀は雪の中。途中難所がいくつもあります。それに加えて手練れの御庭番に邪魔されるのですから、ふつうはあきらめます。文字通り命がけなのですから、読んでいて気の毒になります。これもすべては性格の悪い松平定信のせいです。やることが陰湿で好かん。武力を背景に権力で人を押しつぶそうとするなんてひどい。

それでも飛脚は飛脚の使命を果たすべく全力を尽くします。果たして松平定信の鼻を明かしてやることができるのか!?

お勧め度:★★★★☆

2017年9月14日 (木)

あきない世傳 金と銀 4 貫流篇 (高田郁)

あきない世傳 金と銀(四) 貫流篇 (時代小説文庫)
あきない世傳 金と銀(四) 貫流篇』はシリーズ第4弾。大坂天満の呉服商「五鈴屋」の五代目店主・惣次の女房・幸が主人公。この時代、女性は商店の主人になることは禁じられている中での奮闘記。

前作で、惣次はその傲慢さから取引先の信頼を失い「あんたとは取引できんが、幸さんなら喜んで」と言われ轟沈、行方不明となりました。さあ、主人が出奔したなどと知れては店の信頼はガタ落ち。さて、惣次の祖母・お富久は(家出した)三男坊・智蔵に店を継いでくれるよう頼むのですが…。

読み始めれば、その後のおおまかな展開は見えてきます。落ち着くところに落ち着くだろうという安心感からゆったりとした気分で楽しめました。「水戸黄門」的というか「正義は勝つ」という安心感というのか、これが時代劇(時代小説)の王道なのかもしれません。『みをつくし料理帖』もよかったけど、本シリーズもわたしのなかの評価が上がってきました。

今回は人形浄瑠璃(文楽)に引っ掛けた部分があって、それも面白かった。新手の手法で次々に商いを広げていく様子が痛快です。ただ、世話になった人のピンチには「売られていない喧嘩をも買う」幸でした。はやく続きが読みたい!

お勧め度:★★★★★

2017年9月10日 (日)

墨龍賦 (葉室麟)

墨龍賦(ぼくりゅうふ)
墨龍賦(ぼくりゅうふ) 』は、武士の家に生れながら東福寺に入れられ、のちに絵師として生きていくことになる海北友松(かいほうゆうしょう)を描いた物語。表紙絵は彼が建仁寺で描いた雲龍図です。

若き日の友松は、東福寺でのちの安国寺恵瓊と出会い、狩野永徳に弟子入りし、明智光秀の側近・斎藤内蔵助とも親しくなっていきます。恵瓊は毛利家のために働き、織田信長が勢力を拡げていく中で本能寺の変が起きて…。

とんでもない乱世を生き、絵師として人生を全うした男の物語。次々に「天下人」が入れ替わる時代には、歴史は強者によって都合のよいように書き換えられるもの。しかし「絵に魂を込めるなら、力ある者が滅びた後も魂は生き続けます。たとえ、どのような大きな力でも変えることができなかった魂を、後の世のひとは見ることになりましょう」。

2017年春の京博での展覧会を見逃したのが悔やまれます。

お勧め度:★★★★★

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