時代小説

2018年6月18日 (月)

雲上雲下 (朝日まかて)

雲上雲下(うんじょううんげ) (文芸書)
雲上雲下 』は、日本昔話版「ネバーエンディングストーリー」。

参考文献だけでなく、実際に各地の民話を取材してまわったそうです。だから、それを集めて再構成しただけの小説なのかと思ったらそうではありませんでした。

高さ二丈というから6メートルもあろうかという「草どん」が崖っぷちにぼんやりと立ってて、そこへ子狐が現れて「お話をしてほしい」とねだります。「話なぞ知らん」と突っぱねていた草はそれでもなぜか「むかしむかしあるところに」と語り始め、自分でも驚いてしまうのです。なぜ自分はそんな話を知っているのか?

子狐に山姥、乙姫に天人、そして龍の子。 「まんが日本昔話」で見て聞いたことのあるお話のオンパレードです。いいなぁ、この感じ。自分はいまここにいるのだけれど、お話のなかでは摩訶不思議な登場人物たちが語り、泣き笑いする。想像力は人生を豊かにしてくれます。だから小説が好き。

恐ろしいばかりかと思っていた山姥がいい味出してます。(笑)

お勧め度:★★★★★

2018年6月15日 (金)

新・御宿かわせみ 青い服の女 (平岩弓枝)

青い服の女 新・御宿かわせみ
青い服の女』は「御宿かわせみ」シリーズ第41弾。明治維新後の「新・御宿かわせみ」シリーズ第7弾になります。

1. 霧笛
2. 玄猪祭さわぎ
3. 去年今年
4. 青い服の女
5. 二人女房
6. 安見家の三姉妹

前巻『お伊勢まいり 』はピンと来なかったのですが、今作はいつもどおりの「かわせみ」に戻ってうれしい。

あやしげな男女4人が泊まり、なにやらきな臭いと思ったら、最後は血なまぐさい話になるのですが、そこをさらっと終わらせるあたりが真骨頂。

一方、長年勤めた奉公人が暇乞いをしても、そこもさらっと流してしまうのはどうなのか。逆にもやもやが残りますが、それでも嫌いじゃない。

医者の麻太郎が自分のことを「たけのこです」「………」「そのうち、薮になります」。お後がよろしいようで。(笑)

続編を楽しみにしています。

お勧め度:★★★★★

2018年5月20日 (日)

駒姫 三条河原異聞 (武内涼)

駒姫: 三条河原異聞
駒姫: 三条河原異聞 』は日経新聞の書評欄で見かけて以来気になっていたので読んでみたのですが、読まなければよかった。久々の「後悔の一冊」です。

最上家の駒姫が関白秀次の側室となるため聚楽第に入った直後、秀次は謀反の罪で切腹させられます。すべては秀吉が実子を世継ぎに据えたいが故の横暴。そもそも秀吉は嫌いだし、天下人の器でもない。

最後に救いがあることを期待して読んだのですが、なにが「異聞」なのでしょう。とにかく後味が悪すぎます。残念ながらおすすめできません。

読み始めたものの、つまらないから途中で投げ出した本は紹介できません。面白いと思えなかった本も紹介しないほうがよいと思うのですが、このブログは自分の読書記録でもあるため、仮にも最後まで読んだ本は掲載させていただきます。どうかご容赦ください。

2018年5月 3日 (木)

ふんわり穴子天 居酒屋ぜんや (坂井希久子)

ふんわり穴子天―居酒屋ぜんや (時代小説文庫)
ふんわり穴子天 』は「居酒屋ぜんや」シリーズ第2弾。主人公・林只次郎は愛鴬・ルリオの後継ぎを育てなければと焦っています。小鳥の寿命は短く、ルリオがいなくなってしまったら林家は貧乏に逆戻りです。

悩みがあっても、それはそれ。只次郎は毎日のように居酒屋ぜんやに通っています。わたしは美味しいものが出てくる小説が好きで「みをつくし料理帖」も愛読していました。本シリーズでちょっとだけ残念なのが、飲んべえが集まること。わたしは酒を嗜まないので、酒がなくても美味い料理のほうがいい。その点「みをつくし」は基本、酒抜きなのでよかった。しかし、ここは「居酒屋」なので仕方ありません。

でも、穴子天は美味しそう。そう、塩がいいですね!

お勧め度:★★★☆☆

余談ですが「お志乃は良人をじっと見下ろして、能面のような顔でこう言った」という下りの「能面」の喩えが気になりました。ここでいう能面とは無表情という意味だと思うのですが、能楽師がつけた面は角度や光の当たり具合で表情を変えます。その表情は「無」ではなく「多彩」なのです。能面には翁(おきな)、尉(じょう)、鬼神、男、女と種類があることもあって、能に興味のある方であれば「能面のような顔」という表現はしないはず。作者にも観能を通じて、そのあたりを知っていただきたいと思います。(小説を書くってむずかしいですね。)

2018年4月28日 (土)

お伊勢まいり 新・御宿かわせみ (平岩弓枝)

お伊勢まいり 新・御宿かわせみ
お伊勢まいり 』は久々に読ませてもらった「新・御宿かわせみ」の続編です。

「かわせみ」の台風被害を修理する間、伊勢まいりに誘われたるい。十数人で東海道を西へ進むうち事件が起きて...。

やはりそうですよね。和気藹々と旅を楽しみ、お伊勢さんにお参りする様子だけが描かれるなんてありえないのですね。期待したわたしが愚かでした。

誰も死なない(そして面白い)時代小説が読みたい!

お勧め度:★★★☆☆

2018年4月23日 (月)

ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや (坂井希久子)

ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや (ハルキ文庫 さ 19-3 時代小説文庫)
ほかほか蕗ご飯』は「居酒屋ぜんや」シリーズ第1弾。「人が死なない時代小説」を探して、美味しいものを食べさせる話だったら大丈夫、じゃないかなぁ。

武家の次男坊・林只次郎が主人公ですが、堅苦しい武家よりも商人になりたい願望の持ち主。鶯が上手に鳴くよう躾けることを生業として家計を助けています。その只次郎が知人に連れられて入った店が「居酒屋ぜんや」。そこの美人女将・お妙に一目惚れしてしまいます。

1. 笹鳴き
2. 六花
3. 冬の蝶
4. 梅見
5. なずなの花

父の上役から預かった、大事な鶯を逃してしまったと落ち込む只次郎。冒頭では気の毒に思ったけれど、1冊読み終わる頃には「もうすこし痛い目に遭ったほうがいいかも」と意地悪を言いたくなります。優柔不断な只次郎には共感できません。続編を読むべきか否か。

お勧め度:★★★☆☆

2018年4月21日 (土)

鬼煙管 羽州ぼろ鳶組 4 (今村翔吾)

鬼煙管 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)
鬼煙管 』は、 羽州ぼろ鳶組シリーズ第4弾。日経新聞夕刊の文化面でイチオシされていたので買ってみたのですが...。

1. 火車
2. 本所の銕
3. 湧く焔
4. 宵山
5. あの日の竜吐水
6. 京都怪炎
7. 隠れ鬼

なぜ長谷川平蔵(鬼平)が京都にいるのか。人の頭がいきなり燃え出すって「ガリレオかよ」。源吾と武蔵って過去になにがあったの?

事件の謎解きは奥深く、サプライズがあって面白かったけれど、やはり4巻から読んだのでは十分に楽しむことができません。1巻から読むことをお勧めします。

お勧め度:★★☆☆☆

2018年4月18日 (水)

さくら舞う―立場茶屋おりき (今井絵美子)

さくら舞う―立場茶屋おりき (角川春樹事務所 (時代小説文庫))
さくら舞う―立場茶屋おりき 』 はシリーズ第1弾。時代小説というと戦国時代であれ江戸時代であれ、人が傷つけられ、殺される場面が多くて閉口します。だから「人が死なない時代小説」を常々探しています。『御宿かわせみ』は好きだったなぁ。

そこで今回、品川宿門前町にある立場茶屋を舞台にした女主人おりきの物語はどうかと手にとってみたのです。

・さくら舞う
・涙橋
・明日くる客
・秋の別
・侘助

「じりじり舞い」「おぼおぼしい笑い」「火面を張って」「朝餉膳は山留」「降りみ降らずみだった空が」「喜撰の苑香」といった、凝った言葉が使われていて「そういう言い方もあったのか」と勉強になります。そういう意味では独自の世界観があります。

おいしい料理が出てくる人情物なのですが、主人公のおりきがちょっとカタイかな。もうすこし肩の力を抜いたほうがいいし、恋をしたほうがいい。そうすればもっと魅力的な小説になるような気がします。

お勧め度:★★★☆☆

2018年3月30日 (金)

あきない世傳 金と銀(五) 転流篇

あきない世傳 金と銀(五) 転流篇 (時代小説文庫)
あきない世傳 金と銀(五) 転流篇』はシリーズ5作目。『みをつくし料理帖』に続いて愛読しています。

本棚がパンクするので普段は図書館を利用しているのですが、本シリーズは書店で見つけ次第買っています。そして、クリスマスシーズンのシュトーレンのように、毎日すこしずつ楽しみながらコーヒー片手に読むのがささやかな楽しみなのです。

なにが良いって、時代小説なのに人が死なないことと、胸キュンが散りばめてあること。商人として以前に、人としてあるべき姿を追い求めて、一本筋が通った生き方を見せてくれる主人公たちが愛おしい。現代の商売人(ビジネスパーソン)たちにも見習ってほしい!

今作はイベントが盛りだくさんで目が回りそう。おまけにまた最後は「え...」。もう、こういう終わり方はやめてほしい。作者も自分の首を絞めるだけです。「はやく次巻を出してくれ」と読者から矢の催促になります。

五鈴屋の今後が楽しみです。

お勧め度:★★★★★

2018年2月14日 (水)

風神雷神 雷の章 (柳広司)

風神雷神 雷の章
風神雷神 雷の章 』は『風神雷神 風の章 』の続編(下巻)。本阿弥光悦から田舎へ移住して自由に作品を作ろうという誘いを断り、家業を継いだ宗達が家庭を持ってからの物語です。

光悦の代わりに今度はお公家さんが登場。その烏丸光広の案内で、養源院の血生臭い噂を晴らすため、唐獅子図・白象図を描き、相国寺には蔦の細道図屏風を納めます。帝から法橋の地位を与えられた宗達は、宮中の名品を模写することができたのです。

他に、関屋澪標図屏風、舞楽図屏風も登場し、実物が見たくなりました。どんな絵なのかはネットで確かめたほうがストーリーもわかりやすい。最後は、あの風神雷神図です。建仁寺にさりげなく展示してあるのは「模写だよな」と思いつつ、改元のCMを思い出していました。冗談はさておき「屏風に風神なんてありえない」と聞いて目からウロコ。

徳川幕府の鎖国政策についてなど、時々うんちくが入るのが面白い。

すぐれたエンタメ時代小説です。興味がある方はぜひ!

お勧め度:★★★★★

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