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2018年12月

2018年12月31日 (月)

熱帯 (森見登美彦)

熱帯

熱帯 』 は森見登美彦の新作長編小説。ご本人は締切にずいぶん苦しめられていたらしく、本作の冒頭でも鬱憤が爆発していて可笑しい。

冒頭、作者は佐山尚一の『熱帯』という本を古書店で手に入れ、読みかけたものの、途中で失くした、いや消えてしまったというのです。

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絶版本であっても図書館にはあるはず。と、名古屋市図書館でネット検索しても出てこない。国会図書館にすらないのはおかしい。つまり出版社によって流通された本ではないということ。自費出版?

なぜかAmazonで検索するとヒットする(上図)けれど入手不可。偽情報か。いずれにせよ、これを読む必要はありません。わたしたちが読むべきは、森見登美彦の『熱帯 』なのです。

ただ、作者は佐山尚一の『熱帯』を探し求め「沈黙読書会」なる集まりで出会ったメンバーと深みに嵌っていくという趣向です。そして舞台は東京から京都へ。

千一夜物語 』が背景にあり、魔王や魔女、海賊やシンドバッドが登場し、物語は混沌を深めていきます。そして中盤、主人公は記憶を失い、孤島に飛ばされてしまいます。「何もないということは何でもあるということなのだ。魔術はそこから始まる」。

観測所、砲台、美術館、海上を走る2両編成の電車(叡山電鉄?)、「進々堂」という珈琲店、「芳蓮堂」という古道具屋...。これは夢なのか妄想なのか。

作者のいうように、たしかにこれは「怪作」です。

お勧め度:★★★★★

2018年12月30日 (日)

嘘の木 (フランシス・ハーディング)

嘘の木

嘘の木 』は、有名な博物学者で牧師のサンダースの逃避行先ヴェイン島での不慮の死にまつわる物語。14歳の娘フェイスは父を尊敬し慕っているのですが、父は研究にしか興味がなく、いつも無表情でフェイスとの会話もほとんどありません。

タイトルになっている" The Lie Tree"とは、木に嘘を聞かせ、それを広めると実をつけ、それを食べると嘘に関連する正夢を見るという不思議な植物。その「嘘の木」をめぐって人の欲が争いを生み、周囲を不幸に巻き込んでいきます。

父の死に疑問を持ち、死因を明らかにしようと孤軍奮闘する様は健気ですが、父にしろ娘にしろ「嘘の木」の生態に疑問を持ちつつも「利用」することを優先します。それがすべての過ちのはじまりだというのに...。

読み進めるうちにどんどん引き込まれて、やめたくてもやめられなくなって、今年読んだ小説のなかでいちばん怖かった。翻訳も秀逸です。

お勧め度:★★★★★

2018年12月28日 (金)

宮廷神官物語 四 (榎田ユウリ)

宮廷神官物語 四 (角川文庫)

宮廷神官物語 四 』 はシリーズ第4弾。

慧眼児の偽物があちこちに出没しているため、藍晶王子は力比べを行って偽物を一掃する作戦を立てます。そこにひとり、手を触れるだけで相手の心の内を読み取る少年が現れて...。

慧眼児はふたりも必要ない。どちらが真の慧眼児かを競い合わせるべきだ。と、景羅大臣が言い出したのですが、これはちょっと無理筋かと。王の御前で天青は慧眼児としての力を見せているのに、いまさら否定するのは王に対して無礼ですし、愚かなこと。

と、突っ込んでも仕方ありません。そういうお話になっています。

さて、天青は競い合いに勝つことができるのでしょうか?

お勧め度:★★★☆☆

2018年12月26日 (水)

宮廷神官物語 三 (榎田ユウリ)

宮廷神官物語 三 (角川文庫)

宮廷神官物語 三』はシリーズ第3弾。神官書生の天青は夏休み、笙玲たちと町へ探検に出たところ、貴族の子弟とまちがわれ誘拐されてしまいます。さぁ、宮廷では鶏冠を筆頭に大騒ぎです。どうなることやら?

一方、鶏冠は雨乞いの儀式に挑むことになり、無理をすれば命がない!?

退屈知らずの物語はまだまだ続きます。

お勧め度:★★★★★

2018年12月24日 (月)

宮廷神官物語 二 (榎田ユウリ)

宮廷神官物語 二 (角川文庫)

宮廷神官物語 二 』 はシリーズ第2弾。

田舎で食うや食わずだった少年・天青はなぜか宮中神学院に入ることに。そこは貴族の子弟ばかりで、当然のようにいじめられます。教師でもある鶏冠は天青をかばおうともせず冷たい。

ふたり一組になり、山上の洞窟にあるという黒い石を持ち帰る訓練で、相棒とはぐれた天青は山小屋で暮らす少年・櫻嵐と美少女・紀希に出会います。

2巻目も次々といろんなことが起こるので退屈しません。

お勧め度:★★★★★

2018年12月22日 (土)

宮廷神官物語 一 (榎田ユウリ)

宮廷神官物語 一(角川文庫)

宮廷神官物語 一 』 は、角川ビーンズ文庫で出ていたものが角川文庫から再販されたもの。面白そうなので手にとってみたらアタリでした。

朝鮮王朝風の「麗虎国」の宮廷が舞台。生真面目な宮廷神官・鶏冠が王命により「慧眼児」を探しに山奥の村まで足を運ぶところから始まります。で、いきなり天から降ってきたのは肥柄杓。悪臭漂うスタートはなんとも...。

額に三つ目の眼をもつ少年・天青は柄杓を落とした犯人。天青の兄代わりの青年・曹鉄と3人で都へ戻るのですが、田舎育ちのやんちゃ坊主が次から次へと騒動を引き起こしてくれます。

このシリーズ、一冊ずつは薄くて、すぐに読めてしまうのですが、一気読みするのはもったいないので、スタバでコーヒー片手にちびちび読んでます。エンタメ小説としては秀逸。おすすめです。

お勧め度:★★★★★

2018年12月19日 (水)

荒野 (桜庭一樹)

荒野 (文春文庫)

荒野』 は鎌倉が舞台の小説を検索して発見、読んでみました。中学から高校時代の瑞々しい成長記です。

山野内荒野というのが主人公の名前。女の子の名前としては変わっていると思うのだけれど、友人たちも誰もツッコまないのが不思議。父の正慶は恋愛小説家。母は亡くなり、お手伝いさんがいたのですが、父が再婚して...と、荒野を取り巻く環境はめまぐるしく変わっていくのに、それでもまっすぐ育つところがすごい!

少女、少年の心を持ち続ける人たちへお勧めします。

お勧め度:★★★★★

2018年12月16日 (日)

後宮の烏 (白川紺子)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏』は『鴨川アンティーク』の作者・白川紺子の新作。気になっていたので読んでみたら「アンティーク」よりも本格的で、面白いのです。

中国らしい国の後宮に「烏妃」(寿雪)という術師が住んでいて、国王・高峻が「この翡翠の耳飾りの落とし主を探して欲しい」と依頼に来ます。寿雪は国王相手でもつっけんどんな喋り方で、従者・衛青は「無礼な」と怒りますが知らんぷり。国王と寿雪のやりとりが愉快で楽しい。

このお話は、桜庭一樹の『GOSICK ―ゴシック 』と雰囲気が似ています。口の悪い、深窓の姫が不思議な力を発揮して事件を解決していく。現世に囚われた幽鬼を祓うあたりは、夢幻能の定番を見るようで興味深い。

ライトノベルでは物足りないけれど、本格的な小説はまだちょっと重いという方にお勧めします。続編が読みたいと思っていたら出るみたいですね。うれしい!

お勧め度:★★★★★

2018年12月13日 (木)

下町ロケット ヤタガラス (池井戸潤)

下町ロケット ヤタガラス

下町ロケット ヤタガラス 』 はシリーズ第4弾。『ゴースト』の続編です。読み始めて「ここで分けるか!?」。TVドラマの「つづく」みたいであざとい。出版社の方針なのか、最近、金儲け主義を感じます。

佃製作所はロケット部品から、トラクターのエンジンとトランスミッションに賭けたようですが「ギアゴースト」に裏切られ、商品化は頓挫します。それでも「無人農業ロボットは、日本の農業の高齢化、人手不足を救い、作業効率が向上し、作付面積を増やせることで世帯収入も大幅アップする」と張り切ります。でも、ロボット導入のコストと維持費はどうするのか。ここでお得意の「銀行」は登場しないのか。ややリアリティに欠ける面もあります。

裏切り、保身、嫌がらせをする悪者が報いを受けて読者は溜飲を下げる。このあたりはいつもの池井戸潤なのですが、今回の「ゴースト」「ヤタガラス」はイマイチ。もう「下町ロケット」というタイトルから離れたほうがいいと思います。

お勧め度:★★☆☆☆

2018年12月10日 (月)

大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 3 千両富くじ根津の夢 (山本功次)

大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢 』 はシリーズ第3弾。

1. 本石町の蔵破り
2. 根津の千両富
3. 蔵前の活劇
4. 板橋の秋日和

蔵破りの盗賊と千両富くじ。ふたつの事件が起きて、なにやらややこしいことに。

江戸の証拠品を現代に持ち帰って科学分析。その結果は江戸では証拠にならないけれど、犯人を絞り込めれば攻めようもあります。ただ、派手に動くと正体がバレますよ。

しっぽまでしっかりクリームが詰まったチョココルネ。甘いかどうかは食べてみてのお楽しみ!

お勧め度:★★★☆☆

2018年12月 7日 (金)

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン (小路幸也)

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン 』 はシリーズ13弾。しばらくぶりなので登場人物の名前が混乱してたり、語り手のおばあちゃんは女性を老いも若きも、かずみちゃん、かんなちゃんと「ちゃん」づけなのでなおさら混乱します。

冬:人と出会わばあかよろし
春:新しき風大いにおこる
夏:若さ故の二人の夏に
秋:ヘイ・ジュード

花陽は医大に合格できるのか。研人と芽莉依ちゃんとの仲はどうなの。気がかりはいくつもあれど、堀田家全員でかかれば、なんでもなんとかなるのです。堀田家と隣の藤島ハウスだけでは部屋が足りなくなってきたこともなんとかなるのでしょうか?

巻頭の人物相関図なくして読めなくなりつつあるのは、人間関係が複雑になりすぎてどうかと思うのですが、このシリーズはこのまま進むしかないのでしょう。本で読む「連続テレビドラマ」として。

お勧め度:★★★★☆

2018年12月 3日 (月)

ジーヴスの事件簿 (P.G.ウッドハウス)

ジーヴズの事件簿 (P・G・ウッドハウス選集 1)

ジーヴズの事件簿 (P・G・ウッドハウス選集 1) 』 は、皇后陛下が「ジーヴス」を読まれると聞き、図書館で借りてきました。

"The Casebook of Jeeves"ですから、文字通り「事件簿」なのですが、いわゆるミステリー小説ではなく、どちらかというとスラップスティックです。事件というのはジーブスが仕える、頼りない独身貴族バーティにとっての「事件」。アガサ叔母や幼馴染のビンゴ・リトル、双子の従兄弟クロードとユースタスら「バーティと愉快な仲間たち」が起こす騒動を頭脳明晰ジーヴスが見事解決するという連作短編集であります。

執事ジーブスと主人バーティの力関係は微妙、絶妙なもので、バーティが趣味の悪いネクタイや靴下を身につけようとするとジーブスは表立って反抗はしませんが不本意なため冷戦状態となります。それは居心地が悪いためにバーティもなんとか休戦をと望むところにジーブスの策略がスポンとハマる。その軽妙で絶妙なユーモアがこの小説の魅力でしょう。ただ、ユーモアといってもイギリスなのでブラック寄りが標準です。

ジーブスいわく、執事に大切なのは「機略と手際」。紳士に仕える紳士というのがモットーなのです。

この小説をより楽しむには、ロンドン暮らしと執事のいる生活を経験することでしょう。その点、皇后陛下は日本でいちばん「ジーブス」を楽しめると思われます。

しかし、当時のハロッズには鮮魚を売っていたのでしょうか。わたしが訪れたときはインドの高級百貨店でしたが。当時も今も変わらないロンドンの風景も「ジーヴス」シリーズの魅力の源です。

お勧め度:★★★★☆

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