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2018年7月

2018年7月21日 (土)

能舞台の赤光 多田文治郎推理帖 (鳴神響一)

能舞台の赤光 多田文治郎推理帖 (幻冬舎文庫)

能舞台の赤光 』は「多田文治郎推理帖」シリーズ第2弾。タイトルどおり、能の上演中に殺人事件が起きたということで興味を持ちました。

最初に「主要登場人物」と能舞台の見取図が載っているのが便利。鏡の間の裏手に楽屋があることは名古屋能楽堂のバックステージツアーに参加したので知っているのです。シテとかワキ、ツレと聞いても能を知らないとピンと来ませんが、能楽初心者が読む限り、能に関する記述に違和感はありません。逆にいえば、わたしが理解できるわけですから、さほど深い内容ではないともいえるでしょう。(苦笑)

五番立ての祝儀能ということで「翁三番叟」から始まり「田村」「楊貴妃」「張良」そして最後が「酒瓶猩々」で、五人の猩々が舞台で舞うものです。このあと、どんな事件が起きるのか知らないけれど「全員が面を着けているから、人が入れ替わってもわからないなー」。

作者は能をご存知のようで安心して読むことができましたが「酒瓶猩々」以外の演目のことも書いて欲しかった。でも、そうすると能に興味がない読者はつらくなる、か。仕方ありません。江戸時代、能は武家のものなので、次は町人文化の人形浄瑠璃を舞台にするのはいかがでしょう?

主人公の多田文治郎は目付けでも目明しでもなく、趣味(物好き?)で謎解きに首を突っ込むタイプ。手柄を立てないといけないわけでもなく気楽なもの。その点、内田康夫の「浅見光彦」に似ています。探偵役が軽いと、残酷な事件も必要以上に深刻にならずに済むので、わたしもすこしは抵抗が減って助かります。

お勧め度:★★★★☆

2018年7月15日 (日)

猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 (鳴神響一)

猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 (幻冬舎文庫)

猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 』は続巻『能舞台の赤光 』を読もうと思ったのですが、前巻を図書館で借りてきたのです。「人死に」は苦手なのですが仕方ありません。

と、読み始めて後悔しました。無人島の密室茶寮で6人が無残に殺されています。それを取り調べる浦賀奉行所与力が主人公・多田文治郎の友人・宮本甚五左衛門だったところから字「事件に巻き込まれた」という設定です。

文治郎と甚五左衛門は、5W1Hでいうと"How"から調べます。焼死、弓矢、スズメバチ、毒殺、撲殺、刺殺と、ほんとロクデモナイ、いやトンデモナイ。つぎが"Who"。誰が実行可能だったか。"When"は、囲碁棋士が書き残した手記で明らか。犯行の様子が書き残してあるなんて、ミステリーとしてはちょっと狡い気がします。こういう手法もあるのでしょうか。

ともあれ『能舞台の赤光 』を読むことにします。

お勧め度:★★★☆☆

2018年7月10日 (火)

長兵衛 天眼帳 (山本一力)

長兵衛天眼帳

長兵衛天眼帳 』は、日経新聞夕刊文化面で紹介されていたので手にとってみました。

江戸日本橋の眼鏡屋「村田屋」の主人・長兵衛は家宝の天眼鏡で謎解きをすることで有名な御仁。そこへ目明し・新蔵が助けてほしいとやってきます。裏店で婆さんが殺され、土間を掘り返してあったため、おなじ裏店に住む17の娘おさちが目明し・巳之吉に連れていかれます。おさちの無実を信じつつも、管轄違いのため口出ししにくい。さて、長兵衛はどうやって解決するのか!?

というのが1本と、もう1本のお話は檜問屋・福島屋の主人の遺言状の真贋鑑定。天眼鏡というのは望遠鏡かと思ったら顕微鏡のようなものらしいので、こちらのほうが本領発揮できそうです。

それにしても主人公・長兵衛の影が薄い。天眼鏡の説明も特にないし、1話目は「長兵衛でなくてもいいのでは?」と思えてしまいます。

それでも決してつまらないわけではなく、小狡い目明しがじつはいい奴だったり、大店の主人がじつは真っ当な商売人を唆す悪人だったり、様々な人間模様を楽しませてもらいました。

お勧め度:★★★★☆

2018年7月 5日 (木)

土漠の花 (月村了衛)

土漠の花 (幻冬舎文庫)

土漠の花 』は、自衛隊の海外派遣を舞台にした物語。東アフリカのソマリア沖海賊の対策部隊派遣に伴い、ジブチの基地の警護と基地管理を担ったのが陸上自衛隊第一空挺団という設定のようです。そこへ多国籍軍のヘリが墜落した可能性があるので、その探索の依頼を受けて出動した先で、武装勢力の襲撃に遭い、隊長は無残にも殺され、ひとりの現地女性を救っての決死の脱出行が始まるのです。

冒頭から容赦ない殺し合い(戦争)に巻き込まれます。心臓の弱い人はやめたほうがいい。内戦状態の国へ派遣されたら「安全な場所」などないということがわかります。クルマが使えない状況で、基地までたどり着くことができるのか。無線さえあれば基地に救援依頼できるのに...。

絶望的な状況が続きますが「死んでたまるか」という根性を見せてくれます。隊員同士の確執や自衛隊内の暴力、自殺などについても語られ「そこはフィクションであってほしい」と思いつつ「ほんとにあるのかも」。暴力は嫌いです。だけど、そんなことを言ってたら殺される。

残酷なシーンは怖いので飛ばし読みしつつ、なんとか読了。予想どおり「犠牲者は救助活動中の事故死。戦闘はなかった」という「政治的配慮」がされて闇に葬られます。肝心なところでマスコミは無力です。

お勧め度:★★★★☆

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