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2018年6月

2018年6月30日 (土)

グリフォンズ・ガーデン (早瀬耕)

グリフォンズ・ガーデン (ハヤカワ文庫JA)
グリフォンズ・ガーデン』は『プラネタリウムの外側 』の前日譚ということなので、こちらを先に読んでみました。

主人公は東京の大学院を出ると、札幌にある知能工学研究施設、通称「グリフォンズ・ガーデン」に就職したのです。しかも、由美子という恋人と共に。

物語は PRIMARY WORLD と DUAL WORLD が交互にあって、後者の世界での恋人は佳奈といいます。登場する女性はいずれも素敵で理想的。つまり、恋愛小説でもあるわけです。

合わせ鏡に映る鏡像を「無限」だという彼女に対して、主人公は「光はいつか消滅するから無限ではない」と主張し、さらに二人の会話が続くのがすごいところ。正しいかどうかは別として、彼らの会話はなかなか興味深い。それが本作の魅力でもあります。

さて、PRIMARY WORLD の主人公は、大学のバイオコンピュータ IDA-10 の中に「世界」を構築してみることにしたのですが、一体なにが起こるのか!?

あとがきを読んでびっくり。これはそもそも大学の卒論だったというのです。それが1992年に本になって、2018年に『プラネタリウムの外側 』が発表された。その間、2014年に『未必のマクベス 』という作品があります。いずれ読んでみたいと思います。

お勧め度:★★★★☆

2018年6月25日 (月)

血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (森博嗣)

血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)

血か、死か、無か? 』は、Wシリーズ第8弾。前巻でマンネリを感じて飽きてきたのですが、なぜか続きが読みたくなってしまう、不思議な本です。

早瀬耕の『グリフォンズ・ガーデン 』を読むと、理系の知的会話が愉快で、それに比べるとWシリーズのハギリ博士は事件に巻き込まれるわりには、おっとりしていて軽いし、発想の根拠が(SFだから?)見えにくい。おまけに、根っこのところでは結局マガタ・シキ博士に行き着いてしまう。

でも、登場するガジェットには反応してしまう。博士の「メガネ」は一度使ってみたい。翻訳や検索、録画、赤外線ビューワー機能まであって、007も真っ青の優れモノ!

今回、以前護衛だったウグイが登場します。彼女が部屋に入ってくると「一気に目が覚めた。そういう機能が彼女にはあるようだ。彼女の視線を実装した目覚まし機が開発できるのではないか」。(笑)

他にも「なるほど、それで僕のところへ飛んできたわけか」
「飛んできたわけではありません」

「え、どうしたの? 目の色が変わったね」
「私の目には、そんな機能はありません」

まるで漫才です。大真面目だから余計に可笑しい。

お勧め度:★★★☆☆

2018年6月21日 (木)

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (田中経一)

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (幻冬舎文庫)
ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 』は、皇居の料理人だった直太朗が第2次大戦中、満州で完成させたレシピを再現してほしいと依頼された“最期の料理請負人”の佐々木が主人公。

借金を抱える佐々木は高額の報酬に目が眩んで引き受けるのですが、手がかりは乏しいし、依頼主の意図が掴めないし、なにやら雲行きが怪しい...。

それって「究極のメニュー?」と思ったのですが、ちょっとちがうみたい。料理の物語なのですが、美味しい場面は少なく、どちらかというと「料理ミステリー」。現在と過去の場面が交互に出てきて、テンポよく進みます。

作者がやたら料理にくわしいので、他に著書がないかと調べたらなくて、なんとTV番組「料理の鉄人」の演出家だったそうです。納得!

お勧め度:★★★☆☆

2018年6月18日 (月)

雲上雲下 (朝日まかて)

雲上雲下(うんじょううんげ) (文芸書)
雲上雲下 』は、日本昔話版「ネバーエンディングストーリー」。

参考文献だけでなく、実際に各地の民話を取材してまわったそうです。だから、それを集めて再構成しただけの小説なのかと思ったらそうではありませんでした。

高さ二丈というから6メートルもあろうかという「草どん」が崖っぷちにぼんやりと立ってて、そこへ子狐が現れて「お話をしてほしい」とねだります。「話なぞ知らん」と突っぱねていた草はそれでもなぜか「むかしむかしあるところに」と語り始め、自分でも驚いてしまうのです。なぜ自分はそんな話を知っているのか?

子狐に山姥、乙姫に天人、そして龍の子。 「まんが日本昔話」で見て聞いたことのあるお話のオンパレードです。いいなぁ、この感じ。自分はいまここにいるのだけれど、お話のなかでは摩訶不思議な登場人物たちが語り、泣き笑いする。想像力は人生を豊かにしてくれます。だから小説が好き。

恐ろしいばかりかと思っていた山姥がいい味出してます。(笑)

お勧め度:★★★★★

2018年6月15日 (金)

新・御宿かわせみ 青い服の女 (平岩弓枝)

青い服の女 新・御宿かわせみ
青い服の女』は「御宿かわせみ」シリーズ第41弾。明治維新後の「新・御宿かわせみ」シリーズ第7弾になります。

1. 霧笛
2. 玄猪祭さわぎ
3. 去年今年
4. 青い服の女
5. 二人女房
6. 安見家の三姉妹

前巻『お伊勢まいり 』はピンと来なかったのですが、今作はいつもどおりの「かわせみ」に戻ってうれしい。

あやしげな男女4人が泊まり、なにやらきな臭いと思ったら、最後は血なまぐさい話になるのですが、そこをさらっと終わらせるあたりが真骨頂。

一方、長年勤めた奉公人が暇乞いをしても、そこもさらっと流してしまうのはどうなのか。逆にもやもやが残りますが、それでも嫌いじゃない。

医者の麻太郎が自分のことを「たけのこです」「………」「そのうち、薮になります」。お後がよろしいようで。(笑)

続編を楽しみにしています。

お勧め度:★★★★★

2018年6月10日 (日)

トッカン 徴収ロワイヤル (高殿円)

トッカン 徴収ロワイヤル
トッカン 徴収ロワイヤル 』は「トッカン」シリーズ第4弾。

1. 幻の国産コーヒー
2. 人生オークション
3. 徴収官のシャランラ
4. 五年目の鮭
5. 招かれざる客と書いて本屋敷真事と読む
6. 対馬ロワイヤル

主人公の「ぐー子」も鏡トッカンに鍛えられて、ひとりで動けるようになってきました。トッカンに一喝されて「うぐっ」と固まってしまうことなく言い返せるようになってきました。同僚の木綿子いわく「もう徴収に敵はいないんじゃない?」。

そんなぐー子ですが、1本150円のペットボトル飲料代を節約するためにオフィスの冷水機にかじりつき、150x5=750円でケーキを買うことを楽しみに生きてる小市民なのでした。

「雑誌やネットの記事がごはんものであふれかえるはずだ。もっとも身近で、もっとも手軽でもっとも安価に人を幸福にできるのはおいしいごはんなのである。(そうだ。肉だ。コンビニ飯食ってる場合じゃない!)」

しかし、昼はコンビニ「コーヒー+からあげ」、夜はコンビニ「スイーツ」。なんだか随所に妙なリアリティを感じてしまいます。作者は最後に「この作品はフィクションです。本当に本当にフィクションです」。なんだか怪しい。

お仕事小説としてはイチオシ! まちがいなく笑えます。(それでいいのか!?)

お勧め度:★★★★★

2018年6月 7日 (木)

海の見える理髪店 (萩原浩)

海の見える理髪店
海の見える理髪店 』 は直木賞をとった短編集。

1. 海の見える理髪店
2. いつか来た道
3. 遠くから来た手紙
4. 空は今日もスカイ
5. 時のない時計
6. 成人式

表題作は「よくしゃべるおやじだなぁ」と思っていたら、それがそのまま小説のストーリーになってる。淡々としていて、重い。

他の短編も、生活感が濃く漂っていて、読んでいて憂鬱になってきます。残念ながら、わたしの好みではありませんでした。

お勧め度:★☆☆☆☆

2018年6月 4日 (月)

遺譜 浅見光彦 最後の事件 (内田康夫)

遺譜 浅見光彦最後の事件 上 (角川文庫)
遺譜 』は「浅見光彦最後の事件」というサブタイトルに惹かれて読んでみることにしました。以前『不等辺三角形 』を読んで、他の「浅見光彦シリーズ」も読もうかと思ったら100冊以上あって断念したのです。

わたしが子供の頃、母親が「(同い年の従姉妹とちがって)うちの子は推理小説を読まない」と心配していたのを覚えています。たぶんホームズとかクリスティとかのことでしょう。最近わかったのですが、わたしが嫌いなのは推理小説ではなくて(フィクションとはいえ)人が殺されることなのです。小説でも漫画でも映画でも「殺人」が軽すぎます。

それでも本作は気になって上下巻読んでみました。浅見光彦シリーズは2作目でしかありませんが、主人公は控えめで探偵気取りではないところがいい。本作でいえば、オーストリアからドイツ、神戸、丹波、篠山としっかり取材されたようで、旅行記としても楽しめます。

「その辺りに、石の文化を持つヨーロッパと、木と紙の住居文化の日本との相違を感じる」とさりげないフレーズに思わず相槌を打ってしまうこともあります。そう、なぜ日本の建築は木だったのでしょうか。すぐに燃えてしまうのに。と、脱線できるところも魅力です。

お勧め度:★★★★☆

2018年6月 1日 (金)

名古屋駅西 喫茶ユトリロ (太田忠次)

名古屋駅西 喫茶ユトリロ (ハルキ文庫)
名古屋駅西 喫茶ユトリロ 』 は、ちょっと懐かしい喫茶店が舞台の、ご近所グルメ小説です。近年コメダやスタバなどのチェーン店が増えてきて、個人経営の古い喫茶店が減ってきたのは寂しい。太田忠次は名古屋在住の作家さんなので、名古屋の風景をリアルに描いてくれます。

1. 手羽先唐揚げと奇妙なイタズラ
2. カレーうどんとおかしなアフロ
3. 海老フライと弱気な泥棒
4. 寿がきやラーメンと家族の思い出
5. 鬼まんじゅうと縁結びの神
6. 味噌おでんとユトリロが似合う店

カレーうどんもいいけれど、それより味噌煮込みうどんやあんかけパスタじゃないのかなぁ。わたしは大阪出身で、東京と名古屋で暮らした経験から、食べ物がおいしい(好みに合う)のは大阪。ただし、お金さえ出せば東京ではおいしいものが食べられる。名古屋は特筆すべきグルメはないものの、おいしいもの、おいしい店はあります。

おいしいものを食べれば幸せになれます。幸せ探しはどこに住んでいてもできるはず。だからグルメ小説は好きです。

お勧め度:★★★☆☆

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