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2018年5月25日 (金)

活版印刷 三日月堂 星たちの栞 (ほしおさなえ)

([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)
活版印刷三日月堂 』は、川越にある古い活版印刷工場に越して来た孫娘・弓子が、周囲の人間に請われて「手キン」でカードや栞を印刷してみたことから人の輪が広がっていくお話です。

1. 世界は森
2. 八月のコースター
3. 星たちの栞
4. ひとつだけの活字

活版印刷とは、判子状の活字を並べ、インキを塗り、紙に押し付けて印刷する技術。日本語の場合、書体、サイズのちがいもあるため、かな漢字記号など含めると膨大な数の活字が必要になります。いまはそれをパソコンで編集し、印刷所にデータを渡すだけで本ができてしまいますが、昔はこうだったのです。ピンと来ない方は「大人の科学マガジン 小さな活版印刷機」をお勧めします。

「手キン」のことを読んで思い出したのは、学生時代に使っていた英文タイプライター。ヨイショっとキートップを1センチ以上押し込んで、ようやく活字がインクリボンを叩きます。Aなど左手の小指ですからうまく力が入りません。押し付ける力によって文字の濃淡と上下位置が微妙に変わるので、慣れるまでに時間がかかりましたが、おかげでブラインドタッチを覚えました。Apple ][ パソコンのキーボードに初めて触ったときは、あまりの軽さに驚きました。キーを「叩く」のではなく「軽く押さえる」だけ。さすがアメリカ人が作った機械です。

カタカナ、ひらかな、英数字、漢字と複雑な文字体系をもつ日本語だからこそ「マンガ」が発達したと養老孟司氏は『京都の壁 』で書いています。アメコミがつまらないのはシンプルなアルファベットのせい? その理屈がいまひとつピンと来ないのですが、日本文化の根底に日本語があることは確かです。

西尾の岩瀬文庫で「枕草子」の写本を見て、崩し字が読めないことにショックを受け、くずし字は活字に合わないので置き去りにされたという展示を見て再びショックを受けました。

レターセットから始まって、喫茶店のショップカードとコースター、高校文芸部の栞、結婚式の招待状と、話が広がっていく様子が自然に描かれています。仮名文字だけ1組の活字で新郎新婦の名前を印刷したいのだけれど「ともあき」「ゆきの」では「き」が2個必要になるから無理だというから「クロスさせればいいのに」とわたしは思ったのですが、さて、どう解決するでしょうか。

古いモノや技術を見直す動きはアナログレコードでも見られます。理屈ではデジタルのほうが音質が優れているはずなのに、実際に聴くとアナログのほうが(わたしの場合)魂を揺さぶるから不思議です。

「三日月堂」は面白かったので、続編も読んでみようと思います。

お勧め度:★★★★☆

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