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2017年9月 4日 (月)

鬼神 (矢野隆)

鬼神
鬼神 』 は、平安時代の大江山酒呑童子討伐を描いた小説。酒呑童子は「鬼」ではなく「人」だったのではないかという視点が新鮮です。

冒頭、山奥で母親と二人暮しの公時が、畑を荒らす熊と取っ組み合いをしています。あれ、坂田公時って「金太郎」じゃないですか。それじゃここは足柄山? でっかい鉞を振り回して熊の頭を飛ばしてしまいます。

そこへ源頼光が訪れて公時を武士として鍛えるべく都へ連れて帰り、彼を含めて頼光四天王(渡辺綱、坂田公時、碓井貞光、卜部季武)が揃います。けれど、山育ちの公時は都になじめず、大江山の偵察に出向いて、頭領の朱天の人柄に触れ、討伐などしないよう頼光に願ったのも虚しく、朝廷から酒呑童子討伐を命じられます。

朝廷や公家には己の欲を満たす「都合」があり、朱天たちには里の者たちを食わせていく「都合」がある。人として正しいのは朱天たちだとわかっていても頼光や公時は逆らうことができない。その葛藤に胸が締め付けられます。大江山の「鬼」は皆殺しにされてしまうのでしょうか。最後まで目を離すことができません。

これは大人向けの「金太郎」です。「ぜひ能で観たい」と思ったら、あるんですね「大江山」。でも、酒呑童子は鬼として成敗されてしまいます。つまりは都側の見方です。それが、時の権力者に擁護されてきた能の限界かもしれません。

お勧め度:★★★★★

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