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2017年5月

2017年5月30日 (火)

喧嘩 ー 疫病神シリーズ (黒川博行)

喧嘩
喧嘩 』は「疫病神シリーズ」第6弾。高校時代の友人である議員秘書からヤクザを抑えてほしいと依頼された二宮は、選挙での票集めをめぐって揉めた麒林会の背後には鳴友会がいることを知り(前巻で)二蝶会を破門された桑原に声をかけます。

いつもここがわからない。二宮は毎回ひどい目にあって「二度と桑原とは付き合わん」と誓いながら、ちょっと困っただけで頼るなんて、学習能力ゼロのアホです。ここでいつも一瞬読む気が失せるのですが、これもお約束かとあきらめてページを繰るわけです。

破門されてもイケイケの桑原はヤクザ相手に大立ち回り。主導権を握る桑原に金の分け前を無心する二宮。例によって大阪弁による軽妙な貶しあいが炸裂。人でなしの桑原とろくでなしの二宮はよいコンビなのでしょう。お互いを疫病神だと罵り合う、めちゃくちゃなふたりですが、最後は見殺しにはせずに相手を助けます。人としての最後の一線はぎりぎり守っている点が、シリーズが続いている理由ではないでしょうか。

しかし、威勢のいい啖呵も、最後は尻すぼみで、ちょっとがっかり。このシリーズは毒気が強いので常用はお勧めしません。たまに刺激がほしいときにどうぞ。

お勧め度:★★★☆☆

2017年5月24日 (水)

ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード 東京バンドワゴン (小路幸也)

ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード  東京バンドワゴン
ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード  東京バンドワゴン 』は シリーズ第11弾。もう10年になるんですね。早いものです。

久しぶりですが、大ばあちゃんの家族紹介があるので大丈夫。紹介だけで10ページもありました。

・春 花も嵐も実の生る方へ
・夏 チャーリング・クロス街の夜は更けて
・秋 本を継ぐもの味なもの
・冬 ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード

なんといっても4歳になったかんなちゃんと鈴花ちゃんがかわいい! 第3章で活躍してくれますが、なにやら末恐ろしい子たちです。でもかわいいから赦します。

第2章では、勘一がMI6をむこうに回してロンドンに飛んでいくのですからたいしたもの。胸がスッとしました。今回はちょっと変わった趣向を取り入れてくれて楽しめました。

お勧め度:★★★★★

2017年5月20日 (土)

真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者 (大沼紀子)

([お]7-8)真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者 (ポプラ文庫)
真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者』はシリーズ第5弾。久しぶりに手に取った5冊目は500ページ以上の大作。紹介文に「母親と久しぶりの対面を果たした希実だったが」とあったので、ちょっと重たい話かと思ったら、すごく重い話でした。疲れました。

おそらく次巻が最終巻。それに備えて、これまでの伏線を回収しておくためと、登場人物とその縁者たちの過去を振り返るために、話が長くなったのかもしれません。

今回感心したのは、希実が人の話を鵜呑みにせず、別の伝手をたどって裏を取ろうとするところ。これなら詐欺には簡単には引っかからないはず。逆にいえば「高校生にしては用心深いな」ということになるのですが。

パンは大好きなので、美味しそうなパンの話を読んでいるとお腹が空いてきます。また、岐阜のパンシノンに行きたいなぁ。

お勧め度:★★★☆☆

2017年5月15日 (月)

豊田市能楽堂の「さつき能」を観てきました!

今度の日曜休みにどこか気分転換に行きたくてネットを検索していたら、豊田市能楽堂の2017年5月14日(日) 14:00「さつき能」を発見。ネットから座席予約して支払いは当日会場で、というのも無駄がなくて気に入りました。

演目は狂言「因幡堂」と能「盛久」。平盛久が京から鎌倉まで護送され処刑されるところ、観音様の加護を得て命拾いする話。幽霊が出てきて、生前の恨みつらみを聞かされ、成仏させてくれと迫られるより平和でいい。ネットでは出演者などの情報はわからないけれど「ま、いいか」。

せっかく名古屋から豊田市まで出かけるなら他になにか見るべきもの、食べるべきものはないかと調べたところ、豊田市美術館で「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」を開催しています。日曜日の美術館は混むだろうけれど、10時の開館にあわせて行けば時間に余裕はあります。

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嫌な予感は当たるもので、チケット売り場で並び、入館するためにまた並び、たいへんな混雑でした。しかし、最初のほうのちいさな絵でも、緑の山あいを霧が流れていく様子をみると、その場に吸い込まれそうでした。これがもっとおおきな襖や障壁画になったらどうなるのだろうとワクワクします。あいにく人混みは苦手なので、駆け足で見てまわりましたが、海では波の音、風の音が聞こえ、潮の香りが漂い、最後の「山雲」は、山懐で緑の匂いやひんやりした霧に包まれているような錯覚に陥りました。目で見ているだけのはずなのに、音が聞こえ、匂いがして、温かさ冷たさを感じるのです。不思議です。

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豊田市美術館はとても立派な建物で、小高い丘のうえにあり、周囲は公園になっています。散策していると「挙母城(七州城)隅櫓跡」というのがありました。ここは昔、お城があったのですね。なるほど、見晴らしがよいわけです。

豊田市能楽堂は豊田市駅のすぐ東。駅へ戻る途中にあった担々麺と麻婆豆腐の店「虎玄」で「担々つけ麺」をいただきました。

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担々麺をつけ麺にしたらこうなるのだろうなという感じ。シメはつけ汁にご飯を入れて雑炊にしてもらい満腹になりました。ごちそうさま!

まだお昼だから、能までには時間があるので、松坂屋のスターバックスで読書にしました。「トールドリップコーヒーのホットにデイリーとキャラメルソース追加で」とお願いしたら「コーヒーとミルクの割合はどうしますか?」。お、わかってますねぇ。「今日はパイクプレイスか。それじゃコーヒー7割で」。スタッフの対応力も味のうち、ですね。

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豊田市の駅前に降りたとき「豊橋と似てるな。路面電車はないけど」。名古屋から豊田市は、岐阜同様、30kmほどの距離なのに、岐阜がJR快速で20分なのに対して、豊田市までは1時間かかります。地下鉄鶴舞線で名鉄乗り入れとはいえ各駅停車だから仕方ないか。近くて遠い街です。

ちょっと早いけれど能楽堂のある「豊田参合館」という大きなビルへ向かうと3Fから7Fに豊田市中央図書館が入っています。3Fで『本―その歴史と未来 』という大型本を手に椅子に座りました。

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電子本が普及するなかで、紙の本はどうなっていくのか。その意義と未来を問う一冊です。図版が豊富で、シェイクスピアのファーストフォリオの製本例も載っていて『ビブリア古書堂の事件手帖7』を思い出しました。

そのビルの8Fに能楽堂があります。受付で名前を告げて、代金と引き換えにチケットを受け取ります。座席予約してあるので開演に間に合えばいい。急ぐ必要がないのは気楽です。無料のイヤホンガイドを借りると「あ、小さい」。名古屋よりコンパクトでアンテナ内蔵型。これならシャツの胸ポケットに入ります。今回の公演パンフを見ると、囃子方の笛が藤田六郎兵衛で大鼓が河村眞之介。「よしっ!」。わたしはこのおふたりのファン。能のお囃子が好きなのです。

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能楽堂へ入ると「名古屋と同じだ」。そりゃそうですね。

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この能楽堂は全400席。今回は脇正面席に座りました。あとでわかったことですが、ここの椅子はお尻が痛くなるし、ビニールの座面が滑るので疲れます。わたしは1時間が限界です。

開演前、能楽ライターの石淵文恵さんによる演目解説がありました。「盛久」は現在能なので直面(面をつけない)だということもあって、上演される機会が少ないそうです。しかも愛知では珍しい金春流ということで、今回企画した人はチャレンジャーだとか。いいじゃないですか。面白い!

「盛久」の詞章(文章)がパンフレットに挟んであるものの、総論や豆知識など話してもらえると参考になります。能楽ファンを増やすため、演目解説は名古屋能楽堂の定例公演でもやるべきです。詞章は上演中に見ていると舞台が見れないので、わたしは開演前に目を通すだけにしています。イヤホンガイドも石淵さんで(名古屋能楽堂とちがって)いろいろと話してくれます。さすがに能楽の楽しみ方をよくご存知で勉強になります。おなじ能楽堂でも名古屋と豊田ではいろいろとちがいます。ハコではなくココロイキが。

まずは狂言「因幡堂」です。家事を放棄した大酒飲みの嫁が実家に帰った隙に離縁状を送りつけた男が、ひとり暮らしは不便なので、新しい嫁がほしいと京の因幡堂に請願しにいくのですが、噂を聞きつけた嫁が一計を案じます。狂言ってやっぱり漫才の源流だと感じます。狂言は能とちがって聞き取りやすいので初めての方でも抵抗が少ないと思います。今度京都に行く機会があれば因幡堂(平等寺)を訪れてみたいと思います。

ここで20分間の休憩。階段でひとつ上の9Fに上がるとカフェがあって、そこでコーヒーを頼みました。窓外の眺めがいい。

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能「盛久」が始まります。囃子方と地謡が舞台に上がると、ふつうはシテを呼び出すお囃子が始まるのですが、静かなままシテとワキ、ワキツレが橋掛りから入ってきます。これから平盛久が土屋三郎によって鎌倉まで護送されます。盛久は、京を離れるまえに日頃信心している清水の観音へ参詣したいと土屋に頼みます。観音様に手を合わせたところで、控えめに大鼓と小鼓が入ってきて「あ、お囃子のことを忘れてた」。このフェードインはいいです。とてもドラマチック。

輿の屋根だけを傘のようにワキツレふたりが盛久に差し掛けて一行は東へ向かいます。といっても、演者たちはほとんど動かず、まわりの風景だけが過ぎて行く様子がシテと地謡によって語られます。それが「森をすぐるや美濃尾張」は「身の終わり」というように言葉遊びが利いていて面白い。実際には20日余りかかったであったであろう道中で、一行が舞台をくるっと回ったのが2回。鎌倉に着いた盛久は、明日処刑という日、観音経を読誦し、その夜、不思議な夢をみます。

処刑当日、由比ヶ浜に引き出された盛久に振り上げた刀が手から落ちたと思ったら真っ二つに折れてしまいます。盛久の身に起こった奇蹟は源頼朝にも報告され、盛久は罪を赦されます。頼朝に召し出された盛久は烏帽子と直垂を身につけ、宴となります。早速京に戻ろうとする盛久を呼び止めた頼朝は、盛久に舞を一差し所望します。待ってました。わたしは男舞(直面の男、主として武士が舞う舞。笛、大鼓、小鼓が囃すテンポの速い壮快な舞)が好きなんです。だって、かっこいいじゃないですか。

お囃子が急にアップテンポになり、舞台は一気に盛り上がり、盛久は扇を手におおきく舞います。ポール・マッカートニー&ウイングスが歌った映画『007 死ぬのは奴らだ』の主題歌 "Live And Let Die" のように、静かに始まった曲が途中からテンポが速くなるのを思い出します。そう、男舞はロックなのです。

そういえば、大鼓も笛も名古屋能楽堂ほど響きません。座席の位置にもよるのかもしれませんが、あまり響くと耳が痛いのでこれくらいでちょうどいいかも。最後の男舞はシテと囃子方を含めて、一体感と緊張感があってよかった。すばらしい!

今回の「盛久」には大満足です。良い舞台をありがとうございました。

2017年5月 9日 (火)

居酒屋ぼったくり 6 (秋川滝美)

居酒屋ぼったくり〈6〉
居酒屋ぼったくり〈6〉 』は シリーズ第6弾。4巻まで読んでいたので、ほんとうは5巻が読みたかったのですが、名古屋市図書館で2冊予約して、5巻は半年待っても42番目。待ちきれないので6巻を先に借りました。早く読みたい場合は買えばいいのですが、この本だけは表紙のせいで買う気になれません。逆に『マージナルオペレーション』は新刊を即買います。

・秋休みの花火大会
・振り込め詐欺事件
・町の本屋
・釣り合わぬ恋
・路地裏の出来事
・似て非なるもの

1話目は「読んだ覚えがあるぞ」。6巻は初めてのはずなのに…あ、Webだ。以前Webで読んだことがあるのです。リアルタイムにWebで読むのもいいけれど、あとから本でまとめて読むのとどちらかに決めたほうがいいですね。混乱します。

「釣り合わぬ恋」は「身分違いの恋」らしいのですが、いまどき「身分」ってなんでしょう。江戸時代じゃないのだから、たとえ相手が皇族だったとしても、それは「家柄」でしょう。意味がわかりません。

それと『ショッピングプラザ下町』って、そんな店名つけるわけないでしょう。作者もいろいろ考えたのでしょうね、きっと。具体的な地名は出せないし、下町情緒を前面に出してるから「そのまま行くか」となったのでは?

店主の美音と要は付き合っているようですが、美音のおぼこさ加減には驚きます。そこがかわいいといえば可愛いのですが、なんだかなぁ。今時めずらしい女性です。

旨い肴と人情の機微が『居酒屋ぼったくり』の売り。ホッとさせてくれる一冊。なのですが、心がざらざらしているときは粗が気になっていけません。ホッとしたくて読んだ本でイライラしていては意味がありません。こういうときは、粗など微塵も感じさせない、一流の小説を読むべきなのでしょう。

お勧め度:★★★☆☆

2017年5月 7日 (日)

悪果 (黒川博行)

悪果 (角川文庫)
悪果 』は「疫病神シリーズ」の作者による大阪府警の堀内・伊達シリーズ第1弾。

マル暴担当刑事が主人公なのですが、こいつらヤクザよりタチが悪い。堀内いわく「暴力団犯罪担当刑事という利権を手にしながら気の利いたシノギのひとつも見つけられないやつは出世の見込みがない。そんな宝の持ち腐れをする能なしはとっとと異動して、交番のパトロールや駐車違反の取締りでもしていればいい」。業界誌編集長・坂辺に賭博で逮捕された客を強請らせて、その上がりを着服するのが堀内のシノギ。女を囲い、高級クラブに出入りしても一回5千円ポッキリ。

そういえば、疫病神シリーズにこんなセリフがありました。「刑務所の塀のうえを歩いていて、中に落ちたのがヤクザで、外に落ちたのが警察官だ」。おそらく、本質は変わらないという意味でしょう。フィクションだとわかってはいても、リアリティがありすぎて、警察不審が募る一冊です。

お勧め度:★★★☆☆

2017年5月 5日 (金)

継承 奧右筆秘帳 4 (上田秀人)

継承 奥右筆秘帳 (講談社文庫)
継承 奥右筆秘帳 』はシリーズ第4弾。このシリーズの各タイトルが漢字二文字で覚えづらい。それが何巻目なのかがわからないので、次に読む本を探すのに書名をいちいち調べないといけません。シリーズものにはタイトルに連番を振ってほしい。

さて、尾張徳川家の後継をめぐる問題に、駿府城で家康の書付が見つかった件が絡み、書付の真贋を見極めるために奥右筆組頭・立花併右衛門が派遣されるという異例の事態。書付を狙うものは複数いて、江戸に残された衛悟は併右衛門が心配でなりません。

これまでのところ、本シリーズの舞台は、江戸城の将軍を含む上層部、御庭番ら忍集団、吉原が主なところ。欲にまみれた連中がやりたい放題。ただ、おとなしく殺されるわけにはいかないぞっと。

わたしはここで小休止。また気が向いたら続きを読みます。間が空いても、話を忘れても、ちゃんと人物紹介してくれるでしょうから。

お勧め度:★★★☆☆

2017年5月 3日 (水)

侵食 奧右筆秘帳 3 (上田秀人)

侵蝕<奥右筆秘帳> (講談社文庫)
侵蝕 奥右筆秘帳 』はシリーズ第3弾。大奥の御台所・茂姫に薩摩藩から女中が入ったという知らせが奥右筆組頭・立花併右衛門に届き「なぜこんな時期に?」と不審を抱きます。だれがなんのために女中を送り込んだのか…。

今回のテーマは大奥の闇。そこに薩摩藩の抜け荷も絡んできます。というわけで、護衛の衛悟は薩摩示現流を相手に戦うことになるのでした。いつも辛勝するものの「今回は勝てたが次回も勝てるとは限らない」という、当たり前のセリフがイタイ。

気軽に読めて、そこそこ楽しめる。娯楽時代小説としては秀逸なのですが「毎度おなじみ」老中や旗本たちの悪巧みとか、忍たちの思惑とか、襲撃シーンとか、パターンが見えてきました。でも、図書館で4巻まで借りたので一気読みします。

お勧め度:★★★☆☆

2017年5月 1日 (月)

国禁 奧右筆秘帳 2 (上田秀人)

国禁 (講談社文庫 う 57-2 奥右筆秘帳)
国禁 奥右筆秘帳 』はシリーズ第2弾。主人公は奥右筆組頭立花併右衛門という文官。武士とはいえ、刀を抜いたことがないような男。それが江戸城に巣くう闇に触れ、命を狙われる羽目に。やむなく隣家の次男坊・柊衛悟に護衛を頼んだという設定です。

併右衛門も衛悟もヒーローではありません。併右衛門は愛娘・瑞紀のために出世に汲々としているし、衛悟は兄から早く養子に行けとせっつかれているし、どちらも凡人です。いわば江戸を舞台にした凡人たちの闘い。「あ、これは死んだな」と思っても死にません。不死身です。

気になるのが、人物紹介や背景説明がしばしば繰り返されること。月刊誌に連載したのであればわかるのですが、見ると「文庫書き下ろし」。何度もおなじ説明を読まされるのが煩わしい。

今回のテーマは、津軽藩の抜け荷(密貿易)です。

お勧め度:★★★☆☆

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