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2017年1月

2017年1月29日 (日)

ヤーンの虜ーグイン・サーガ140 (宵野ゆめ)

ヤーンの虜 (グイン・サーガ140巻)
ヤーンの虜 』はグイン・サーガの140巻目。1巻が刊行された1979年から38年も経つんですね。外伝も含めて全巻読んできました。栗本薫が亡くなって、どうなることかと思ったけれど、後継者が出てきて今も続いているのは素晴らしいことだと思います。

しかし、お調子者だけど一本筋が通っていたマリウスはふらふらと頼りない吟遊詩人になってしまったし、グインもどことなく軽くなってしまいました。変わってしまうのは仕方ないことだとわかっていますし、決して批判するつもりはありません。でも、さびしい。今作を読み終えて、グイン・サーガから心が離れていることに気がつきました。しばらく離れて、また気が向いたら戻ってきます。

お勧め度:★★★☆☆

2017年1月26日 (木)

銀河アドベンチャー Walkr 新エピック「封印されたモンスターを解放しよう」に挑戦

銀河アドベンチャー Walkr の惑星がついに100を超えました。今回のアップデートで惑星が6つ、エピックがひとつ、ミッションが6つ追加されました。

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知らないうちに追加されているので、App Storeの「アップデート」の内容を日頃からチェックしておく必要がありそうです。

早速、新しいエピックを体験してみました。

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  1. 宇宙艦隊をつくる コイン+トマト
  2. パーティのために白髭魔法使いを探そう コイン
  3. 魔法使いの新年パーティに参加 資源x2
  4. 小さな魔法使いたちのために小さなキャンディを準備しよう コイン+トマト
  5. 真夜中のパーティで白髭魔法使いに出会おう 資源x3
  6. 封印されたモンスターの謎を探ろう 二択 (北風の森、南の海) 右
  7. 葦の海賊船を作る コイン+トマト
  8. 白い葦を収穫しよう コイン+トマト
  9. 船を建設するための青写真を買おう 資源x3
  10. 長い旅路 コイン
  11. モンスターを封印するための封印の石を取り戻そう 資源x2
  12. 魔法使いの谷への入口 二択 (左の門、右の門) 右
  13. ピンクローブの魔法使いに相談しよう トマト
  14. 封印の石を壊そう コイン
  15. ビーストたちとのダンス 資源x2

わたしの苦手な「二択」が2回もあって、終了までに4日間かかって疲れましたが、銀河マップ(惑星探査の必需品)が報酬になっているので一度はクリアしなければなりません。それでも、エピック「恐るべきドラゴンキング」のときの二択は「過半数」が条件だったのが、今回は「半数」でOKでした。これは進歩です。

つまり、参加者10名の場合、どちらかが5票になった時点で終了。以前、10名参加で5対5のまま、時間切れするまで24時間待たされたことがあります。あれは最悪だったから改善されたといえるでしょう。個人的には二択は時間の無駄なのでなくしてほしい。

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二択はどちらを選んでも大差ないので考える必要などありません。全員がどちらか一方に投票するのがいちばんの近道。そのため、メッセージ欄に「迷ったら右のボタンを押しましょう」と書き込んでも、スクロールしないと見えないので見てもらえるかどうかは疑問。最初から二択があるとわかっていれば、艦隊名に「二択は右(左)で」というメッセージを入れる手もあります。

惑星数が(地球を含めて)102 とは、気が遠くなるというかうんざりしてきました。惑星が増えるほどインフレが進むので(96個現在で)惑星を1レベルアップグレードするのに10日以上かかり、1,000〜2,000万コインが必要で常に金欠状態。既存惑星にせっせと食糧供給して資源をコインに換えては貯めていますが、とても追いつかないのでエピックで出稼ぎに出ています。

ま、時間制限はないので、マイペースで行きましょう。みなさんの健闘を祈ります!

2017年1月25日 (水)

能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集10)

能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集10)
日本文学全集10 能・狂言 (池澤夏樹=個人編集 ) 』は、河出書房新社から出版されている、池澤夏樹の「日本文学全集」第10巻。このシリーズの「枕草子」など、現代語訳というより口語訳といってよいほどくだけた表現で話題になっています。最初は違和感があったのですが「いま清少納言がエッセイとして書いたとしたらこんなふうなのかも」と思うとストンと腑に落ちました。能や狂言もこれなら若い人でも抵抗なく読めるはず

能は「松風」「卒塔婆小町」「邯鄲」、狂言は「金津」「木六駄」「月見座頭」、説経節「かるかや」、文楽は「曽根崎心中」「女殺油地獄」「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」。

昨年、歌舞伎で「菅原伝授手習鑑」の「寺子屋の段」を見たのですが、寺子屋の師匠である源蔵や松王丸が何者なのかがわかりませんでした。それが今回、源蔵は菅丞相に弟子だった人物で、松王丸は菅丞相に恩を受けた三つ子のひとりで、敵方(藤原時平)に仕える人物だということがわかって「なーるほど」。能・狂言、文楽、歌舞伎は物語の一部しか上演しませんが、チラシに書かれているあらすじを読んだだけでは全体のストーリーが見えません。見るまえに「予習」しておくと、より深く楽しめます。

「曽根崎心中」は意外と短い物語。「女殺油地獄」はちょっとホラーで苦手。「義経千本桜」は頼朝に疎まれた義経が都落ちしていく過程で、死んだと思われた平家の武将、知盛(とももり)、維盛(これもり)、教経(のりつね)が絡んでくる、複雑なストーリーが魅力。狐がいい味出してます。ただ「仮名手本忠臣蔵」はわたしの好みではありませんが『あやつられ文楽鑑賞 』で三浦しをんが「由良助はいつも登場が遅い」とイライラしていたのを思い出して笑えました。

文楽の時代物は「可哀想な男の話」で、世話物は「可哀想な女の話」だと酒井順子は書いています。それらは「可哀想」を消費するための物語なのだと。なにやら「昼ドラ」のような世界です。それが、たとえば江戸時代の娯楽だったのでしょう。

全800ページ以上、厚さ4.5cmあって「途中で挫折しそう」と思いつつも全部読んでしまいました。

能では、地謡がシテとの掛け合いになっているのが新鮮でした。一方「卒塔婆小町」では、卒塔婆にどうやって腰掛けるのか疑問です。実際の舞台を見てみたい。狂言も雰囲気がよく出ていますし、説経節も面白かった。

そう、この本は面白いのです。興味のある方はまず図書館で探してみてください。

お勧め度:★★★★★

2017年1月22日 (日)

校閲ガール ア・ラ・モード (宮木あや子)

校閲ガール ア・ラ・モード
校閲ガール ア・ラ・モード 』は「校閲ガール」シリーズ第2弾。主人公・河野悦子のまわりの人物を描く短編集です。あのときの悦子をこの人はこんなふうに見ていたんだ、というのがわかる一冊です。

1. 校閲ガールのまわりのガール・森尾
2. 校閲ガールのまわりのガールなんだかボーイなんだか・米岡
3. 校閲ガールのまわりのガールというかウーマン・藤岩
4. 校閲ガールのまわりのサラリーマン・貝塚
5. 校閲ガールのまわりのファンジャイ
番外編 皇帝の宿

悦子を含めて、上辺の印象は悪くても「じつは影で努力している」とか「こんな過去があったんだ」とか知ることで評価が変わる。これはお仕事のうえでは「あるある」お話。可笑しいのが、周囲の悦子の評価が「無礼な、暴れん坊悦子」と一貫していること。ただ、それでも憎めないのは、どこか可愛げがあるからでしょうか。

Web小説を書籍化した、いわゆるラノベに多いのですが、誤字脱字があるとがっかりします。そういう出版社には校閲部はないのでしょうか。厳しい見方をすれば「欠陥商品」です。手間もかかれば根気も必要な仕事だとは思いますが、本を作るには欠かせない、大事な仕事です。どうかしっかりとお願いします。

本作には誤字脱字などありませんが、ちょっと気になったのが「歌舞伎や能はいまでこそ古典芸能として位置付けられているけれど、当時は庶民の娯楽だった」という主旨の記述。歌舞伎はそうかもしれませんが、江戸時代の能は徳川幕府の庇護を受け、武士の嗜みとされ、庶民が気軽に見ることはできなかったと聞きます。わたしの感覚では、今でも歌舞伎を見て盛り上がることはあっても、文楽や能では感激することはあっても観客が一体となって盛り上がることはありません。歌舞伎、文楽、能を比べると、お芝居として娯楽性が最も高いのは歌舞伎です。逆にいえば、文楽や能がこれまで伝統を受け継がれてきたのが驚きです。文楽と能も身近な芸能として、もっとマスコミで取り上げてほしい。

脱線しましたが、この本の困るところは、喫茶店で読みづらいこと。この表紙がこっ恥ずかしいのです。どう見ても「女子本」です。それでも第3弾も気になってたりします。「小説屋sari‐sari」に連載されていたので、バックナンバーを購入する手もありますね。

お勧め度:★★★★☆

2017年1月19日 (木)

校閲ガール (宮木あや子)

校閲ガール (角川文庫)
校閲ガール』の主人公・河野悦子はファッション誌の編集者に憧れて入社したのに配属されたのは校閲部。原稿の誤字脱字、ルビ、整合性、時代考証までチェックする、とっても神経をつかう仕事。ファッションが大好きで、気合のいれようは半端じゃない。思い込みが激しく、気が強く、ときに毒舌。それでも、過去のファッション誌の「歩く書籍データベース」ともいえる頭脳は、ただしく使えば社会の役にたつはず。

校閲は、作家の担当編集者とちがって、直接作家と会うことはないはずなのですが、なぜか作家のトラブルに巻き込まれてしまいます。「死ぬほどどうでもいいんだけど」と悪態をつきながらも、知らんふりできない悦子がいます。

最後は、同情しつつも大笑いさせてもらいました。おつかれさまでした!

お勧め度:★★★★☆

2017年1月16日 (月)

神仙の告白 旅路の果てにー僕僕先生 10 (仁木 英之)

神仙の告白 僕僕先生: 旅路の果てに
神仙の告白 僕僕先生: 旅路の果てに 』は僕僕先生シリーズ第10弾。新シリーズ「僕僕先生 零」もスタートしていますが、わたしはこのオリジナルシリーズのほうが好きです。零の僕僕先生のほうが可愛いけれど、オリジナルのほうが謎があって面白いのです。永遠の時を生きる神仙がなにを想うのか。それを知りたくて仕方がない王弁も可哀想な男なのです。

今回、王弁はいきなり眠ってしまって出番がほとんどありません。いわゆる過労ですね。王弁を救うため、僕僕は反魂丹という秘薬の材料を求めて旅立ちます。そこへ僕僕を捕えようとする一派が現れ、それがなぜか王弁をも捕えて、なにかに利用しようと企んでいる様子。孫悟空、猪八戒、沙悟浄、関羽まで出てきて大騒ぎです。一体なにがどうなってるんだ?

で、いよいよクライマックスというところで「つづく」って、ひどい!

お勧め度:★★★★☆

2017年1月14日 (土)

デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping? (森 博嗣 )

デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping? (講談社タイガ)
デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping? 』は「Wシリーズ」第4弾。久しぶりなのでストーリーがうろ覚えになっています。シリーズが完結してから読み直したほうがいいかもしれません。そのほうがストレスが少ないです。

要するに「W世界」では、人体に人工細胞を移植することで不老長寿に近い肉体を手にいれることに成功した人類がいるのですが、その代償として生殖機能を失ってしまったという設定なのです。このままでは生身の人類は滅亡してしまいます。そう『人類は衰退しました』の世界になります。小人さんはいませんが。

しかし、その一方で生殖機能をもつ(子供を産める)人間が生き残っていたりするので、ハギリ博士は護衛のウグイと共に世界中を飛び回っています。今回は、フランスの古い修道院でウォーカロン修道僧たちに守られた150年前のスーパーコンピュータが発見されたというのです。

SF映画やコミックでも「これは近未来の姿なのだろう」と思うことがあって、本作では、ウグイの拳銃は所有者しか使用できないというのがそうでした。グリップで所有者を認証してトリガーを引くことができるようになるなら、日本の警察や自衛隊でも導入したい。ただ、所有者が倒れたときに仲間に使用を許可したい場合、作中ではウグイが小声でコードを伝えたという、なんともアナログな手段でした。それでは所有者が気を失ったらおしまいです。なにかもっと良い方法はないものか...?

というように、ついつい思考が脱線してしまいます。本当は「生命とは」「生きているとはどういうことか」について考えるべきなのでしょう。わたしにとって「生きている」とは「名前を呼ばれたら返事をすること」です。

お勧め度:★★★☆☆

2017年1月12日 (木)

テンペスト (池上永一)

テンペスト 第一巻 春雷 (角川文庫)
テンペスト 』では、19世紀の琉球王朝を舞台に、13歳の少女・真鶴が(性別を偽り宦官の孫寧温として)科試を突破し首里城の評定所筆者として王府の改革に挑みます。厳しい父親から逃げ出した兄との再会。宦官に対する嫌悪から、容赦ない改革に対する反感、嫉妬、憎悪。伏魔殿と化した王宮で生き残ることはできるのか?

単行本2冊が文庫本4冊になって出ています。文庫1巻は「なんて面白い小説なんだ。今年ベスト1だ」。高田郁の『澪つくし料理帖』『あきない世傳』シリーズのように、健気な少女が運命に抗いながら成長していく物語として楽しめました。

が、2巻になると希望と絶望が表裏の木の葉が激流に弄ばれる落差についていけなくなりました。意思の強さに畏れさえ感じさせたかと思うと、政敵の脅迫に幾度もあっさり膝を追って自らの主張を曲げてしまいます。情けない。倒錯した性も同様。女を捨てて男として生きると決めたから恋が成就することはない。そうはわかっていても自分のなかの女を殺しきれない。この小説の行き方にはわたしはついていけません。

琉球の本格時代小説に見えますが、時々、作者の「軽口」が出ます。13歳の少女が、王の側室の衣装代を節約するのに「どうせすぐに脱ぐのだから不要。過剰包装です」なんて言いますか? 愉快ではありますが、場の雰囲気が壊れます。

身も心も(作者に)ボロボロにされた寧温が後半戦をどう戦うのか。清国と薩摩藩との微妙な政治力学のなかで琉球をどう生かすのか。竜の導きと父親の遺言が伏線になっているはずなので、紆余曲折の末たどりつく先は見えるような気がします。

・・・・・

後半戦も主人公の女「真鶴」と男「寧温」がトグルスイッチのように切り替わります。まるで映画『ミセス・ダウト』。真鶴といっしょに側室(あごむしられ)になった真美那は聡明な美人なのですが天然系破天荒「お嬢様爆弾」。真鶴/寧温が至極まっとうな神経の持ち主だけに好対照で、なかなか愉快なキャラです。

日本に開国を迫ったアメリカの黒船が、先に琉球に足がかりを求めてやってきます。したたかなペリー提督に対抗できるのは寧温しかいない。しかし、寧温は八重山に流罪にされ、真鶴は王の側室になっています。琉球危うし!

と、シリアスな展開も天変地異のように突如巻き起こるコメディパートによって崩れ去るのです。面白いけど疲れます。竜と遺言はどこ行ったぁ!?

お勧め度:★★☆☆☆

2017年1月10日 (火)

葉桜の季節に君を想うということ (歌野晶午)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
ミステリーはあまり読まないのですが「究極の徹夜本」という宣伝文句につられて『葉桜の季節に君を想うということ 』を読んでみました。

元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼されます。一方で、地下鉄に飛び込んだところを助けた麻宮さくらと出会って惹かれてしまい…。

しばらく読むうちに「なんだか貧乏神シリーズみたいだなぁ」と思っていたら、ほんとにヤクザが出てくるし「そう来たか」という種明かしには驚いたものの、救いのない展開にがっかり。最後に希望は見せてくれたけれど釈然としません。残念ながら、わたしの好みには合いませんでした。

お勧め度:★☆☆☆☆

2017年1月 8日 (日)

人形は口ほどにものを言い (赤川次郎)

赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い (小学館文庫)
赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い』は、自身を「文楽の素人ですが」とことわったうえで綴ったエッセイ集です。素人と言いつつ、わたしなどより多くの作品を観ていて参考になるお話もたくさんあります。それでいて、目線の高さが同じなので、文楽に対する意見には「なるほど」と思うものも多いです。

「時代物」より「世話物」が好きな筆者は「曽根崎心中」「妹背山婦女庭訓」「心中天網島」「近頃河原の達引」「菅原伝授手習鑑」などを引き合いに出してきます。自分も観たことがある演目なら「うん、そうそう」と頷けるのですが、観たことがないとチンプンカンプン。そういうものかと受け流すしかありません。ですから、本書はある程度文楽を観てきた方のための軽い読み物として好適だと思います。

文楽を知るのに歌舞伎が参考になることもあれば、能の影響を受けている部分もある。逆に、現代劇が古典芸能の流れを汲んでいることもあって、幅広い知識、見識があったほうが、より深くたのしむことができるわけです。

川本喜八郎の人形アニメ「鬼」「道成寺」「火宅」が紹介されていて、おもしろそうだったのでDVDを注文しました。届くのがたのしみです。

文楽「曽根崎心中」は一度観てみたい。歌舞伎は一度行ってみて面白いとは思ったけれどチケットが高すぎる。歌舞伎に1回行くなら文楽や能を2回観るほうがいい。ただ、最近わかってきたのですが、チケットの価格で観るべきかどうかを決めるのは危険です。たとえ高くても観るべきものがあります。それを見分ける眼というか価値観を養うのも大切ですね。

お勧め度:★★★☆☆

2017年1月 6日 (金)

能の物語 (白洲正子)

能の物語 (講談社文芸文庫)
能の物語 』は『白洲次郎 占領を背負った男 』の妻であるエッセイスト白洲正子の手になる本です。井筒、鵺、頼政、実盛、二人静、葵上、藤戸、熊野、俊寛、巴、敦盛、清経、忠度、大原御幸、舟弁慶、安宅、竹生島、阿漕、桜川、隅田川、道成寺の21編を読みやすく現代語訳してあります。

読んでみると、実際の能の雰囲気がよく現れています。それぞれ文庫本10ページ前後の短い物語なのですが、舞台では1時間を超えるのですから能のテンポがわかるというものです。

「お能は本来神様のものだ」というのは「翁」という曲に表れているといいます。正月に祝言として演じられることが多い「翁」にストーリーはなく、おめでたい祝福の言葉に終始する儀式のような曲です。しかし、おめでたい歌詞や舞だけでは満足しなくなった観客のために作られた能はすべて「翁」の変奏曲であるといいます。名古屋能楽堂の正月特別公演で観た「翁」は印象的でした。

お勧め度:★★★☆☆

2017年1月 4日 (水)

名古屋能楽堂 2017 正月特別公演を観てきました!

一度は観たいと思っていた「翁」です。古くからある能で、ストーリーはなく、おめでたいときに舞うものらしいです。いわゆる「神楽」です。翁の面(おもて)は舞台でつけるらしく、橋掛りから登場したのは、面箱持ち、翁、千歳(せんざい)、三番叟(さんばそう)。続いて、お囃子方、地謡ら、ずらずらと行列になっています。しかも、烏帽子に直垂姿なので、なにやら宮中の祝いの席にいるような気になります。しかも囃子方は、笛と大鼓と小鼓トリオの5人組です。

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「翁」は三部構成で、最初は「千歳」の若々しく颯爽とした舞。次に、シテの翁が舞台で面をつけて謡いながらどっしり貫禄をもって舞います。渋いです。地謡を聞いていて思ったのですが、抑揚のない謡はお経に似てるんです。だから眠くなるのかもしれません。

翁はわりとあっさり面を外し、千歳と共に橋掛りから退場します。そして最後に登場するのが三番叟です。狂言師の鹿島俊裕さん。狂言方の足袋は黄色と決まっているのでしょうか。前半は直面、後半は黒い翁の面をつけて舞います。小鼓に合わせて鈴を振るのですが、腕ではなく手首のスナップを利かせています。ご本人はツイッターで「体力の衰えを感じた」と書いていますが、そんなふうには見えませんでした。よかったです!

三番叟はお囃子も盛り上がります。後半、河村眞之介さんの大鼓が入ったのですけど、カンっと突き刺さるような音が胸に響きます。小鼓トリオも音の厚みが出て迫力がありました。

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「翁」に続いては狂言「鬼瓦」です。訴訟のために都にながく滞在していた大名が、勝訴した御礼にと、太郎冠者と共に、日頃から信仰している因幡堂(平等寺)の薬師如来に参ります。ふたりして御堂を眺めていると屋根の鬼瓦が目につきます。そして大名は厳しい顔の妻を思い出し「落涙」してしまいます。太郎冠者は「なにも泣くことはありません。帰ればすべて解決です」と、ふたりして声を合わせ「わっはっはっは」と笑い飛ばしておしまい。山崎まさよしの『お家に帰ろう』が脳内で流れます。

15分間の休憩を挟んで、最後が能「楊貴妃」です。唐の玄宗皇帝は楊貴妃を亡くなって嘆き悲しみ、霊の世界と行き来することができる「方仕」に、楊貴妃の魂魄を探すよう命じました。

最初に背の高い、宮の作り物が運び込まれ、囃子方の正面に据えられますが、布が掛けられており中は見えません。しかし、その大きさからみて「あの中に楊貴妃が」と思わせます。方仕が話しかけると、後見ふたりが宮の両脇から被せてあった布を外して下げていきます。しかし、宮の天井から御簾が下がっていて楊貴妃はよく見えません。じれったいけれど、憎い演出です。

方仕が「あなた様にお会いした証拠の品を賜りたく存じます」というと、楊貴妃は簪を渡しますが「このような品は他所でも手に入ります。あなた様が皇帝陛下と交わしたお言葉を教えてください」と頼みます。それが「天にあらば願わくは比翼の鳥とならん、地にあらば願わくは連理の枝とならん」というものでした。

簪って「実体のない幽霊が何故そんなものを渡すことができるんだろう」と思ったのですが、そこは死後の世界なので楊貴妃は幽霊ではないのです。なるほど、これは現世に思いを残した幽霊が旅の僧に弔いを求めるという「夢幻能」ではなく、かといって「現実能」ともいえない。不思議な能です。

その後、楊貴妃は先ほどの簪をつけ、方仕のまえで舞を舞います。静かな舞ですが、儚く美しい。能面をはじめて美しいと感じました。無表情な面に感情を与えるのが演者の力なのですね。

お正月から良いものを観せていただきました。ありがとうございました。

2017年1月 3日 (火)

白洲次郎 占領を背負った男 (北康利)

白洲次郎 占領を背負った男(上) (講談社文庫)
白洲次郎 占領を背負った男 』は芦屋の裕福な家庭に生まれ、イギリス留学時代にはブガッティ35を乗り回したというとんでもない男。当時のグランプリカーですから、いまでいえばF1マシンを乗り回すようなものです。それが敗戦後、昭和天皇からの贈り物を届けに行ったところ、テーブルの上がいっぱいだったために「その辺に置いておいてくれ」と言ったマッカーサーの無礼を怒鳴りつけたという逸話が残っています。

前半であっさり戦争に突入してしまい拍子抜け。白洲は敗戦を予期して都心から疎開準備をしていたほど。その後、吉田茂と知り合い、憲法草案作成などにあたってGHQと交渉するようになります。それでも政治家にはならず在野精神を貫いた「育ちのいい野蛮人」。「葬式不要、戒名不用」が遺言だったとか。

彼のパートナーだった白洲正子のエッセイを読んでみたいと思います。

お勧め度:★★★★☆

2017年1月 1日 (日)

「新幹線をつくった男」とリニア・鉄道館

新幹線をつくった男 島秀雄物語 (Lapita Books)
新幹線をつくった男 島秀雄物語』は、東海道新幹線の開発秘話かと思ったら、島秀雄という鉄道エンジニアの人生を追ったものでした。

東海道新幹線はわたしにとって身近な乗り物で、何度もお世話になっているのですが、東京オリンピックにあわせて開業したということ以外、とくに知りませんでした。それがD51を設計したエンジニアによって開発されたとは驚いたと同時に妙に納得してしまったのです。

新幹線はまったく新しい技術ではなく、過去の技術の集大成だったようです。巨額の予算で失敗したでは済まされず、周囲では「万里の長城、ピラミッド、戦艦大和、新幹線」と世界の4大無用の長物に数えられようとしていました。

開業してからも「あわや大惨事」という事件もあったらしく、重大事故を回避できたのも万一を考えた安全設計があったことと、乗務員の機転によるものだったのです。安全は当然だと考えられていますが、それを支えるのは並大抵のことではありません。

そのことを実感したのが「リニア・鉄道館」のドクターイエロー車内でビデオを見たときです。

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線路交換の方法を知ってびっくり。さらにバラスト交換には、除去、投入、固定の段階があって、それぞれ専用車両があるのです。550kmもある線路を夜ごと保守している人たちの努力あってこその安全です。新幹線を海外に輸出するときは、保守システムも含めるのでしょうけれど、どの国でもきちんと保守できるのかちょっと心配です。

名古屋の新幹線の線路近くに住んでいたことのある人に聞いたところ、バラスト交換作業が始まると騒音が響いてマンションが揺れたそうです。作業が終わるまで眠れなかったとか。バラストって代用品はないのでしょうか。もっと長持ちするもの。あ、リニア新幹線なら不要ですか。

リニア・鉄道館は「平日なら空いてるだろう」と思ったら中学校の社会科見学でにぎやかだった。東海道新幹線の歴史や保守作業の様子なども展示があって、それを見れば概要はわかるけれど、たとえば原秀雄(という人物)を軸にして見るとまた違うものが見えてきて感動します。

お勧め度:★★★☆☆

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