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2017年1月 4日 (水)

名古屋能楽堂 2017 正月特別公演を観てきました!

一度は観たいと思っていた「翁」です。古くからある能で、ストーリーはなく、おめでたいときに舞うものらしいです。いわゆる「神楽」です。翁の面(おもて)は舞台でつけるらしく、橋掛りから登場したのは、面箱持ち、翁、千歳(せんざい)、三番叟(さんばそう)。続いて、お囃子方、地謡ら、ずらずらと行列になっています。しかも、烏帽子に直垂姿なので、なにやら宮中の祝いの席にいるような気になります。しかも囃子方は、笛と大鼓と小鼓トリオの5人組です。

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「翁」は三部構成で、最初は「千歳」の若々しく颯爽とした舞。次に、シテの翁が舞台で面をつけて謡いながらどっしり貫禄をもって舞います。渋いです。地謡を聞いていて思ったのですが、抑揚のない謡はお経に似てるんです。だから眠くなるのかもしれません。

翁はわりとあっさり面を外し、千歳と共に橋掛りから退場します。そして最後に登場するのが三番叟です。狂言師の鹿島俊裕さん。狂言方の足袋は黄色と決まっているのでしょうか。前半は直面、後半は黒い翁の面をつけて舞います。小鼓に合わせて鈴を振るのですが、腕ではなく手首のスナップを利かせています。ご本人はツイッターで「体力の衰えを感じた」と書いていますが、そんなふうには見えませんでした。よかったです!

三番叟はお囃子も盛り上がります。後半、河村眞之介さんの大鼓が入ったのですけど、カンっと突き刺さるような音が胸に響きます。小鼓トリオも音の厚みが出て迫力がありました。

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「翁」に続いては狂言「鬼瓦」です。訴訟のために都にながく滞在していた大名が、勝訴した御礼にと、太郎冠者と共に、日頃から信仰している因幡堂(平等寺)の薬師如来に参ります。ふたりして御堂を眺めていると屋根の鬼瓦が目につきます。そして大名は厳しい顔の妻を思い出し「落涙」してしまいます。太郎冠者は「なにも泣くことはありません。帰ればすべて解決です」と、ふたりして声を合わせ「わっはっはっは」と笑い飛ばしておしまい。山崎まさよしの『お家に帰ろう』が脳内で流れます。

15分間の休憩を挟んで、最後が能「楊貴妃」です。唐の玄宗皇帝は楊貴妃を亡くなって嘆き悲しみ、霊の世界と行き来することができる「方仕」に、楊貴妃の魂魄を探すよう命じました。

最初に背の高い、宮の作り物が運び込まれ、囃子方の正面に据えられますが、布が掛けられており中は見えません。しかし、その大きさからみて「あの中に楊貴妃が」と思わせます。方仕が話しかけると、後見ふたりが宮の両脇から被せてあった布を外して下げていきます。しかし、宮の天井から御簾が下がっていて楊貴妃はよく見えません。じれったいけれど、憎い演出です。

方仕が「あなた様にお会いした証拠の品を賜りたく存じます」というと、楊貴妃は簪を渡しますが「このような品は他所でも手に入ります。あなた様が皇帝陛下と交わしたお言葉を教えてください」と頼みます。それが「天にあらば願わくは比翼の鳥とならん、地にあらば願わくは連理の枝とならん」というものでした。

簪って「実体のない幽霊が何故そんなものを渡すことができるんだろう」と思ったのですが、そこは死後の世界なので楊貴妃は幽霊ではないのです。なるほど、これは現世に思いを残した幽霊が旅の僧に弔いを求めるという「夢幻能」ではなく、かといって「現実能」ともいえない。不思議な能です。

その後、楊貴妃は先ほどの簪をつけ、方仕のまえで舞を舞います。静かな舞ですが、儚く美しい。能面をはじめて美しいと感じました。無表情な面に感情を与えるのが演者の力なのですね。

お正月から良いものを観せていただきました。ありがとうございました。

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