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2016年12月21日 (水)

名古屋能楽堂バックステージツアー:能舞台に立つ

名古屋能楽堂には「舞台公開日」というのがあるのですが、行ってみたら客席から舞台を見るだけ。それではいつも見ているのと同じです。がっかりしていたら「バックステージツアー」なる企画(事前申込制、有料300円)があるとのこと。そこでは楽屋や鏡の間、橋掛りから舞台と、能楽堂の裏側を見て回ることができるのです。鏡の間から先へは白足袋を履いていなければ立ち入ることができません。

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受付を済ませると、上のような資料とスリッパを渡されます。客席に座って白足袋に履き替えるのです。まずはそこで能楽堂の構造などについて説明を受けます。定員40名なので2グループに分けてバックステージを見学します。参加者の8割は女性でした。

まずは楽屋です。旅館の大広間みたいですが、一部屋ずつ「囃子方」「狂言方」「ワキ方」「シテ方」そして「装束の間」に分かれています。いちばん手前の「囃子方」の隣には大鼓の乾燥室があり、そこで炭を燃やすようになっています。一方、小鼓は適度な湿気が必要だとか。むずかしいですね。

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いちばん奥には「作り物の間」があり、作り物の材料が保管してあります。ピンクのカバーがかけてあるのが「道成寺」で使う釣り鐘です。高さ180cmくらいあって重さも50〜60kgあるとか。舞台の天井にはこれを吊り下げるための滑車がついています。

ただ、骨組みしかなくて、公演ごとにこれに布を貼って仕上げるそうです。公演は基本的に1回限りだから、その都度作り物を用意するのは無駄な気がしますが、流派によってもちがいが出るので仕方ないのか、伝統が合理性を覆い隠しているのか。

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実際に能面をつけて廊下を歩いてみましたが、能面は自分が見やすいようにつけるのではなく、見た目が美しいように付けるのだとか。顎が1cmほど見えるように付けるように言われてやってみたのですが、両手を前に伸ばして人差し指と親指で円をつくったくらいの視界です。舞台では足元を見ようと下を向くわけにいかないから大変です。

さて、装束の間で着付けをしたら、廊下の向こうの「鏡の間」に入り、鏡のまえで面をつけます。

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そして、揚げ幕の両端の竹をふたりで息を合わせて立てることで幕が上がります。

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揚げ幕を潜って橋掛かりを渡ります。あの世からこの世へ渡っていくわけです。床板は縦に貼ってあります。試しに踵を上げないようにすり足で歩いてみたけれど意外と難しい。速くは歩けません。

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橋掛かりと本舞台の床板は縦ですが、その間の後座は横に貼ってあるので、面で視界が限られていても、足裏の感覚でどこにいるかがある程度感じ取れるそうです。でも、床面は平らで、それほどはっきりとはわかりません。それだけ神経を研ぎすませているということなのでしょう。

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本舞台です。天井の照明がかなり眩しい。床下は空洞で、コンクリートで音が響きすぎないように吸音材が置いてあるとか。昔の能舞台は瓶を置いて共鳴させていたのとは対照的。踵でドンっと床を踏むと、いい感じに響きます。地謡座あたりに正座したら、床は温かみがあって気持ちよかった。ただ、わたしは10分以上の正座は無理。よく見ると床には細かい傷がたくさんあります。

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老松を描いてある鏡板の裏側です。ここから床下を覗くことができますが、真っ暗でなにも見えませんでした。来年は老松を若松に替えるそうです。(若松は常設展示中)

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たいへん興味深いバックステージツアーでした。そう、これなんです。表側ではなく裏側が見たかった。これで一層「能楽」が身近に感じられるようになりました。ありがとうございました。

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