沈黙の書 (乾石智子)
『沈黙の書
』は「オーリエラントの魔道師」シリーズ第5弾。
主人公は風森村の「風の息子」ヴェリル。その弟が「山をまたぐウサギ」だったり「雨の娘」「三日月の望み」「賢い岩」「明日に飛ぶカラス」「速い赤い熊」というように、太古の、文明が芽生えるまえの世界のようだと思ったら、物語は「コンスル帝国建国前 627年」から始まります。いわゆる「紀元前」ですね。本シリーズの「エピソード 0」にあたるようです。
ある日、白狐が現れ、鍬、織機、斧、カラン麦の穂、弓矢、巻物、探検など、様々なものを口から出します。「雨の娘」は馬の人形を「三日月の望み」はカラン麦の穂を「風の息子」は迷った末に巻物を選んだのでした。風森村には魔法の力をもつ者が多く、周辺の町は彼らを戦に利用しようと企み、彼らも巻き込まれていくのでした。
「沈黙の書」は言葉ではなく絵で運命を示します。持ち主がその運命から逃れようと努力するならば、それは「希望の書」になるでしょう。今作も従来の作品同様、この世が闇に包まれ、悪魔のささやきに心が揺らぎながらも、かすかな希望の光を求めて、前に進もうとする魔道師の姿を描きます。あまりに絶望的な、悲惨な状況に、読んでいるこちらの心が折れそうになります。「死んだほうがマシ」というのはこういうことじゃないかと思うくらい。だから、あまり感情移入しないほうがいい。
ここまでシリーズ5冊を続けて読んだら(面白いのだけれど)心が磨り減りました。希望はあるといっても来世のことなんて考えられない。憔悴するので心が元気なときに読みましょう。
お勧め度:★★★★☆
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