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2016年11月 4日 (金)

2016 やっとかめ文化祭【観劇記】能:草薙 狂言:昆布売り

名古屋で年に一度開催される「やっとかめ文化祭」。「やっとかめ」というのは名古屋弁で「久しぶり」という意味ですが、実際の会話で聞いたことはありません。10/29-11/20までの期間中、町のあちこちでイベントが行われ、その一環として名古屋能楽堂で能「草薙」、狂言「昆布売り」がありました。

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すべて自由席なので、いつもは指定席になっている舞台正面に座ってみました。

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前から3列目、やや右寄りの席です。ここならば双眼鏡は不要です。それにしても、ふだんの定例公演に比べると圧倒的にお客さんが多い。祝日の午後ということもあるのでしょうが、市を挙げてのイベント(NPOが主催)なので宣伝が行き届いているような気がします。

▼ 狂言「昆布売り」

刀をもった侍(大名)が現れ、お供がいないので通りかかった者を太刀持ちにしようと企んでいます。そこへ出てきたのが若狭は小浜の昆布売り。声をかけて強引に太刀を持たせてついてくるように言います。家来のように扱われた昆布売りは怒って太刀を突きつけて大名を脅し「昆布を売れ」。「昆布召され候へ昆布召され候へ、若狭の小浜の召しの昆布を召し上げられ候へ」と、最初は口上だけなのが、節がついて、足踏みがついて、最後は舞までついて。それを見ながら昆布売りは「愉快な奴じゃ」と笑って「太刀は返すまいぞ」と去っていきます。

能、狂言ともに「ござる」「そうろう」「申す」コトバが使われ、わたしの感覚ではそれは侍コトバなのですが、僧でも大名でも昆布売りでも同様なのが不思議。室町時代って物売りでも言葉遣いが丁寧だったのでしょうか?

▼ 能「草薙」

名古屋の熱田神宮に祀られる三種の神器の一、草薙の剣がモチーフになっています。

比叡山の恵心僧都が熱田神宮に7日間参籠し、天下泰平を祈願する最勝王経を講じていると花売りの男女がやってきます。主に橘を商って生計を立てているようです。ふたりは夫婦で「草薙の神剣を守る神」と「齢を延ぶる仙女」だと言って姿を消します。

面をつけた花売女(ツレ)の声を聞いた途端「あ、女性だ」。能楽師は男性ばかりかと思っていましたが、女性もいるのですね。いや、女性が演じてくれてホッとしました。能楽師と役柄の性別は無関係だと頭ではわかっているつもりなのですが、大柄で顔の大きな男性が小さな能面をつけているとどうしても引いてしまうのです。

ちょっと歩き方について気になったのですが、前ツレ(花売女)は爪先も踵も上げて歩いていたので「おや?」。能では踵を上げないはずでは? それが後ツレ(橘姫)は、踵は上げずに歩いていました。役柄によって歩き方が変わるのでしょうか。

次に登場したのは里人なのですが、アイなので狂言方です。これを「間狂言(あいきょうげん)」というのですね。里人が僧に熱田神宮の歴史や功徳を説明し、参籠7日目の夜、日本武尊と橘姫の霊が現れます。日本武尊が、東国征伐に赴いた際、敵に火をかけられたのを草薙の剣で草を薙ぎ払い、敵を打ち破ったことを語ります。

日本武尊と橘姫の霊は衣装も美しい。まさに「神々しい」。

そして、草薙の剣が熱田神宮に納められ、国が栄え民が平和に暮らすのは最勝王経の功徳だということで締めくくられます。が、なんで熱田神宮で僧がお経を唱えるの? 恵心僧都は平安時代中期の天台宗の僧です。その時代、神社もお寺も区別がなかったの?

これはあくまで推測ですが、まず「草薙の剣」の物語を曲にしたかった。すると舞台は熱田神宮で決まり。本来、神社なら神主とか禰宜が祝詞を上げるもの。でも、能におけるワキは旅の僧であって、旅の禰宜というのは考えにくい。国を守護する最勝王経を講ずるならば僧でなければなりません。要するにこれは「草薙の剣で国を守り平和をもたらしたことと重ねて、最勝王経で護国の神・日本武尊を讃える」曲であり、舞台がたまたま熱田神宮だったのではないでしょうか。作者なりの優先順位があったのだと思います。

ツッコミどころはありましたが、大鼓が河村眞之介さんだったので満足です。あの「カンっ」という鋭い音が好き。あとは掛け声ですね。若い囃子方さんは掛け声が一本調子だったりするけれど、河村眞之介さんはそうじゃない。やはり経験を積む必要があるということなのでしょう。

能はいろんな見方、楽しみ方があります。能面や衣装に注目してもいいし、能楽師の所作や謡にこだわるのもいい。当時の歴史を調べてみるとか、関係書籍を読んでみるとか、すこし掘り下げただけで視界が広がっていきます。好奇心があればなんだって面白いのです。

お勧め度:★★★★★

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