出雲の阿国 (上) (有吉佐和子)
『出雲の阿国』は、日経新聞夕刊の紹介記事をみて読んでみたのですが、時代小説でありながら、とても読みやすく、とっても面白い。今年になって古典芸能に興味を持ち、文楽や能を観たこともあって、歌舞伎創始の物語は興味深いものです。
出雲出身のお国は唄と踊りが好きで、口べらしの念仏踊りに京の都に出てきて、秀吉の御伽衆のひとり梅庵の目に止まったのでした。
秀吉による検地令や大坂城築城、朝鮮出兵などに翻弄されながらも、お国自身は常に多くの観客といっしょに唄と踊りに酔いたいと思っていました。ところが、梅庵のところで出会った鼓打ちの三九郎に惚れて女夫仲になっても、三九郎は権力者に認めてもらうことしか眼中になく、お国とすれちがっていくのでした。
とにかく、お国の健やかな素直さが好ましい。つらい思いをしても踊りがお国を救います。「人の死というのは、そのときから魂が他人の中に生きることではあるまいか」という言葉からも、その心根が窺えます。
秀吉が死に、にわかに家康の動きが派手になってきて、三九郎は慌てます。さて、お国一座はどうなっていくのでしょうか。(下巻へつづく)
お勧め度:★★★★★
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