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2016年9月13日 (火)

第14回 名古屋片山能(能初心者の体験記)

今年になって文楽を見るようになって、能と狂言にも興味を持ち『風姿花伝』をざっと読んでみたもののピンと来なくて、これは実際に見てみるしかないという結論に達したのでした。

どうも「能=退屈」という印象があるため、まずは狂言の公演を探したのですが、そう都合よくは見つかりません。そんなとき、中日新聞の夕刊に、翌日の「第14回 名古屋片山能」が紹介されていたのです。当日券ってあるのかな?

当日、自転車で散歩がてら、名古屋能楽堂へ向かいます。

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場所は、名古屋城正門前駐車場の西隣り。能に関する展示室が常設されていて、9:00-17:00まで自由に入ることができます。

受付で、名古屋片山能の当日券について尋ねたところ「主催者がまだ見えていないのでわかりません。開演1時間前に開場となりますから、午後1時前に会場受付にいらしてみてください」とのこと。

まだ時間があるので、小川交差点近くの「テーラ・テール」で買ったパンをもって名城公園へ。

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写真左上がサリュー(クロワッサン)、右上がチョコとくるみのハード系、下がブルーベリーとクリームを挟んだパン。焼きたてのチョコくるみもおいしかったけれど、わたしはサクサク系が好きなので、やっぱりサリューかな。わたしにとってテーラ・テールの基本はサリューです。

読書したいのですが、屋外は暑いし騒々しい。能楽堂の中のソファーのほうが静かで涼しい。待ち時間が長くなるかもしれないと思って、今日は文庫を2冊持参しました。アン・レッキーの『亡霊星域 』と、有吉佐和子の『出雲の阿国 』。

いろいろとユニークなSF『亡霊星域 』を読み終えて『出雲の阿国 』に移ったら、これが面白い! 秀吉の時代、ややこ(子供)踊りをもとにしてかぶき踊りを創始した「おくに」を描いた小説です。

1時前に会場前の廊下に並んでいると「当日券をお求めの方」と呼ばれたので、受付で自由席券を買いました。指定席も結構空いていましたから当日でも大丈夫みたい。ただし保証はありません。

おなじく当日券を求めてきた人と話していたら、文楽の字幕の代わりに、能ではイヤホンガイドというのを無料で貸してくれるとか。それは初心者必携ですね。

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会場に入ると、おぉ、これが総檜造りの能舞台ですか。さっき展示室のパネルで説明を読んだところです。大きなホールの中に屋根付きの舞台があるというのは違和感がある。これは元来、屋外にあるものだったのでしょう。

今日の演目は「小督」(こごう)と「融」(とおる)。

前者は「高倉天皇の寵愛を受けた小督の局は、平清盛の怒りに恐れをなし、誰にも知られず嵯峨野へ身を隠した。天皇はこれを嘆き源仲国を召して行方を探させる」というストーリー。

後者は「東国出身の僧が京都六条の「河原の院」に着くと、汐汲みの翁が現れる。翁は僧に、この地は昔の源融(みなもとのとおる)の邸宅の跡であると教え、二人は河原の院の情趣をともに楽しんでいたが、翁は汐を汲もうと言うと、そのまま姿を消してしまう。この翁こそ融の霊であり、その夜、僧の夢の中に融の霊が在りし日の姿で現れると、月光のもとで懐旧の舞を舞う」というもの。

舞台が始まると、まずは笛、小鼓、大鼓の囃子方と、地謡の8人が入場します。

みんな床に座っても、鼓のふたりは椅子(床几)に座って演奏します。突然、笛が鳴り響いてびっくり。笛の音が高く低く、突き刺さるよう。そこに大鼓の高い音がペンっと締め、小鼓がポンっと和らげるかのよう。鼓の掛け声も素敵です。

文楽の太棹もかっこいいけれど、能のお囃子もかっこいい! あらためて和楽器を見直しました。録音ではなく、実際に演者が真剣に演奏しているのを見ているせいもあるのでしょう。迫力があります。持参した双眼鏡でみると、笛方は演奏していないときも険しいお顔。「ドッスン」みたい。(失礼)

4人ずつ2列に並んだ地謡さんたちは「男声合唱団」。みなさん扇子を持っています。合唱といっても旋律はひとつでハーモニーはありません。おまけに歌詞はさっぱりわかりません。そういうときに頼りになるのがイヤホンガイドです。セリフを逐次翻訳してくれるわけではなく、時々要所を説明してくれるだけですが、おかげでストーリーの流れはわかります。

小督と侍女が能面をつけて登場します。なるほど、なぜ能面が必要なのかわかったぞ。能も歌舞伎や文楽同様、男の世界なのですよね。女性を演じるなら、さすがに面をつけてもらわないとイメージが崩壊します。展示室に能面体験コーナーがありまして、わたしもつけてみたのですが、非常に視界が狭い。立っていると足元が見えません。自撮りしたのですが不気味なので非公開とします。

小督が隠れ住む庵の戸口と柴垣(大道具)が舞台に運び込まれます。文楽のように黒子さんが動くのではなく、きちんと和服を着た男性がセットします。しかし、戸口はひとりで持ち運べるくらい軽いせいか、舞台に置いてもユラユラ揺れて、いまにも倒れそうでハラハラしました。

さて、馬に乗って張り切ってやって来た仲国が小督の住まいを見つけ、対面の上、院(天皇)からの手紙を渡します。小督が返事を差し出す際、双眼鏡で小督の手を見たのですが、これは女性の手じゃない。見なかったことにしましょう。

小督の返書を手に帰ろうとする仲国を呼び止め、小督たちは宴を催します。そのときの仲国の舞がこれまたかっこいいのです。お囃子も盛り上がり、仲国がおおきく見えます。

能の役者さんの姿勢はちょっと前かがみで、上体を上下させることなくすり足で歩きます。思わず「からくりのお茶汲み人形みたい」。そう、文楽は人形そのものですが、能では人が人形を真似ているかのように見えます。

「融」も最後に見せ場の舞があって、やはり素晴らしかった。これは老若男女、外国人でも感動できると思う。「融」では、汐汲の翁が旅の僧と、東を南を西を、眺めやる場面があります。舞台が京都六条を中心にパノラマのように広がるのです。これは「見る小説」です。想像力が世界を広げます。

15分の休憩を挟んで各1時間ちょっとの演目だったせいもあってか、退屈せず楽しめました。次回、第15回名古屋片山能は2017年4月2日(日)午後2時開演。また来ます!

お勧め度:★★★★★

名古屋能楽堂は冷房が効きすぎて寒かった。半袖ではだめです。長袖やひざ掛けを持参しましょう。

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