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2016年3月12日 (土)

信長の肖像 (志野靖史)

信長の肖像
信長の肖像 』は、朝日新聞に紹介されているのを見て手に取りました。以前『等伯 』に感銘を受けて以来、絵師(画家)を主人公にした小説を見つけると読んでいるような気がします。

主人公は、加賀大乗寺の小僧・小次郎。寺の肖像画を見るたび「しゃもじのような顔」だと、平面的な描写を疑問に思い、自らは立体的な、生々しい人物画を模索していました。小次郎の画才を見抜いた守護の冨樫晴貞から雪舟の絵巻を授けられ、それを手本に腕を磨き、京の狩野一派に加わることとなったのです。

ただし、小次郎の好きな絵を描けるわけではありません。狩野松栄、永徳はあくまで商売として絵を描いているわけで、売れなければ意味がないのです。それは洋の東西を問わず、駆け出しの絵描き達に共通する悩みなのでしょう。

昔、東京でふらっと画廊に入って、小さな風景画を買ったことがあります。その金額は額縁代にしかならないのではないかと思われるもの。キャンバスに絵の具を使って、時間をかけて描いたはずなのに、なにやら申し訳ない気がしたのを覚えています。

さて、上洛を果たした信長から「似せ絵を描くところをみたい」と呼び出された狩野松栄は、信長の嗜好がわからないため、小次郎も連れて行くことにしたのです。そこで小次郎の似せ絵を気に入った信長から、後日、武田信玄の似せ絵を描いて来ることを命じられたのです。

信玄、家康、秀吉、お市、浅井長政、お永、そして信長。写真などなかった時代、その人を偲ぶ縁に似せ絵(肖像画)はたいせつなものだったのです。

ただ、文章で絵を表現するのはむずかしい。長谷川等伯やアンリ・ルソーといった実在した人物あれば、実際の作品が残っているので、作中で紹介された絵がどういうものかわかるのですが、本作では架空の人物(小次郎)が主人公なので、どんな絵だったのかがわかりづらいのです。

その反面、読むのがつらかった『等伯 』に比べると、時代の混迷も、自らの悲運も淡々と描かれ、読みやすい時代小説になっています。

お勧め度:★★★★☆

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