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2015年11月 1日 (日)

忘れられた巨人 (カズオ・イシグロ)

忘れられた巨人 忘れられた巨人 』は『わたしを離さないで 』のカズオ・イシグロの新作。アーサー王伝説を下敷きにした、ある老夫婦の愛と冒険の物語。翻訳もすばらしく、読み応えがあります。読み始めて、ちょっとだけ村上春樹に似ているように感じました。

アーサー王亡き後、7世紀のブリテン島、アクセルとベアトリスは穴蔵のような村を出て、息子を探す旅に出ます。しかし、物忘れがひどく、記憶が曖昧。夫婦の間に何があったのか、なぜ息子が出て行ったのか、ふたりとも覚えていません。

アーサー王伝説とともに、ドラゴンや悪鬼、妖精などが存在し、ブリテン人とサクソン人が争う世界に誘われて戸惑いました。円卓の騎士ガウェインも(年老いて)登場します。

わたしを離さないで 』がショッキングだったので、カズオ・イシグロの作品は避けていたのですが、新作ということで好奇心に負けた次第。しかし、やはり、読後感は「ぐさり」と来ます。心が涙を流しています。

老夫婦は息子の記憶を取り戻し、会うことができるのか。そこが焦点なのですが、伝説や民間伝承、はたまた神の意志によってか、物語の筋道がねじれていくので、読んでいてやきもきします。そもそも「忘れられた巨人」(The Buried Giant) とはどういう意味なのでしょう?

わたしを離さないで 』同様、読み進めるうちに、すこしずつ事情がわかってきて、物悲しくなっていきます。読者はやるせないのに、登場人物は健気に前に進もうとします。読み手は、年老いたアクセルとベアトリスに引き連れられて旅をするのです。

忘却の霧が晴れるのが、幸せなのかどうか。守ろうとする者と、破壊しようとする者がいれば、そこに争いが起きる。そして、彼らが武器を持てば殺し合いになる。

結局、別離は避けられないのでしょうか。

お勧め度:★★★★★

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