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2015年7月 9日 (木)

太宰治の辞書 (北村薫) と 掌中新辞典

太宰治の辞書

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太宰治の辞書 』は『空飛ぶ馬』に始まる「円紫さんシリーズ」の第6弾です。主人公の「私」が、ちょっとした謎について、落語家の円紫さんと話しながら解いていくというシリーズ。

今回はあらためて「文学って面白いな」と思わせてくれましたし、癒されました。いえ、最近、警察小説とか推理小説を読んでいて、殺人事件が多いので気持ちまで殺伐としてくるんです。太宰治も最後は自殺してしまうんですけど、短編「女生徒」という作品の世界は興味深い。青空文庫でダウンロードして読んでみました。元の日記が下敷きになっているとはいえ、ここまでまとめたのは太宰の腕です。

「女生徒」の中に「ロココ料理」という言葉が出てきます。
ロココという言葉を、こないだ辞典でしらべてみたら、華麗のみにて内容空疎の装飾様式、と定義されていたので、笑っちゃった。名答である。美しさに、内容なんてあってたまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で、無道徳だ。きまっている。だから、私は、ロココが好きだ。
「ロココ」がずいぶんとひどい意味で使われていることに「私」は引っかかって調べるのです。そして、太宰が使ったであろう『掌中新辞典』を群馬県立図書館まで見せてもらいに行ったのです。

そして「その辞書でしたら、後は、名古屋の鶴舞中央図書館、それから大阪府立大学にあるようです」。なんと、わたしがいつも利用している図書館にある。早速ネットから予約したら、予約できてしまった。禁帯出じゃなくて貸出し可? 図書館というのは本当に有り難い。(感謝)

さすが「掌中」。約14×8×2センチというコンパクトさに、青いハードカバー。大正13年発行ということは1924年だから、91歳の辞書です。辞書の紙はすごく薄いので、痛めないように注意してページを繰ります。「財団法人名古屋公衆図書館」の蔵書印が押してあり、日付は「大正13年12月24日」。クリスマスイヴですね。

作中にもあるように「ロココ」という言葉は、この辞書にはありません。つまり「太宰治の辞書」はコレではなかったのです。詳しくは、この小説をお読みください。

お勧め度:★★★★★

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