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2015年7月23日 (木)

すべてがFになる (森博嗣)

すべてがFになる (講談社文庫)


すべてがFになる 』は、N大工学部助教授・犀川創平とお嬢様学生・西之園萌絵(S&Mコンビ)シリーズ第1弾。本当は第4弾だったのをインパクト重視で最初に持って来たとか。

定期船も通わない、個人所有の孤島で、窓もない研究所の、出入口がひとつしかない密室で、天才工学博士・真賀田四季(まがたしき)が殺されたのです。密室殺人事件の定番設定。偶然その場に居合わせたS&Mコンビが、巻き込まれたのが半分、好き好んで首を突っ込んだのが半分。

作者は名古屋大学で教鞭を取っていたことがあるそうなので「N大」というのは「名大」をイメージしますし、孤島である「妃真加島」は、知多半島の先っぽに浮かぶ「日間賀島」でしょう。「篠島」はそのままですね。

『すべてがFになる』というタイトルからして意味不明ですし、表紙に引用されている文章も…

「先生…現実って何でしょう?」
萌絵は小さな顔を少し傾けて言った。
「現実とは何か、と考える瞬間にだけ、
人間の思考に現れる幻想だ」
犀川はすぐに答えた。
「普段はそんなものは存在しない」

というように、たいへん面倒くさそうな匂いがします。面白そう。(笑)

本書は1996年に発行されましたが、作中に「Macintosh SEを持っている」とあるので、物語は1980年代後半でしょう。わたしもSEを使ってました。当時、70万もしましたっけ。わたしは中古で買いましたが、当時のアップル仲間は医師、翻訳家、放送作家、編集者、パイロット等々、濃い人たちが多くて楽しかった。パソコンが一般大衆化するまえ、物好きな人間のオモチャだった頃の話です。

舞台は研究所ですから、当時研究機関のネットワークだった「インターネット」につながっていたはず。だからメールのやりとりができる。UNIXワークステーションとパソコンがあるのなら、独自ドメインのメールサーバはUNIXだろう。そこから内側をファイアウォールで守っている、と。メールが受信できるのに送信できないと騒いでいるけれど、そんなことは簡単にできるし、すこし調べれば原因もわかる。telnetなんて、むちゃくちゃ懐かしい。一時、NeXTも使ってました。

真賀田四季博士が改造したUNIXを使っていたというけれど、自分でも開けられないドアを作るなんて考えにくい。わたしだったら絶対にバックドア(裏口)を用意しておく。そもそも相手は天才なのだ。凡人の考えが及ぶはずがない。四季は死んではいない。そうじゃないとシリーズが続きません。

殺人事件が起きてからの騒々しい空回りが長くて退屈だったけれど、警察が乗り出してきて、解決編に入ってビックリの連続。にわかに鋭くなった犀川先生にもビックリですけど、きわめて人間臭い、ドロドロした部分と、感情ではなく論理で割り切ってしまう部分とが交互に現われて、わたしを翻弄してくれました。

天才の会話はスピーディでリズミカル。萌絵も頭の回転が速く、クソ度胸があるのが面白い。ラブコメ要素も軽く盛り込んであって楽しめました。

謎解きとしてのミステリーは好きだけど、人が死ぬのは好きになれません。したがってミステリーのほとんどは好きなれないのです。

「F」の意味は予想外でした。

お勧め度:★★★★★

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