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2015年2月

2015年2月28日 (土)

最も遠い銀河 4 秋 (白川道)

最も遠い銀河〈4〉秋 (幻冬舎文庫) 最も遠い銀河〈4〉秋』はシリーズ最終巻。

桐生晴之が追いつめられていく様を見るのがつらいのは、彼が(善人ではないにしろ)悪人ではないから。貧しさから這い上がり、苦労して努力して、現在の地位を築いてきたのだから、幸せになってもバチは当たらないはず…と思うからなのでしょう。

元刑事の渡誠一郎は、晴之の人柄と事情を察し、本人と会うことにします。嘘を突き通しても周囲を不幸にするだけだと。そう、誰も幸せになれないのだと。

晴之は美里を失ったあと、茜と出会い、結婚する決意を固め、その一方で李京愛にも愛され、建築設計の仕事も軌道に乗り、もうすこしですべてを手に入れられる。

懸命に生きようとしているのに、小さな嘘の積み重ねが人生を狂わせる。最後はあっけない結末。人の死と生の物語でした。

お勧め度:★★★★★

信じた友の、命を賭した凶行。晴之の成功は、日陰に生まれ落ちた者たちの悲願に変わった。哀しみと期待を一身に背負い、悲壮な決意で道を切り開く晴之。そ して、彼に対して深い理解を示しながらも執拗に追い詰めていく誠一郎。ついに二人が対峙した時、運命は優しく微笑むのか、それとも―。人が人として生きる 意味を問う感動巨編、完結。

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2015年2月26日 (木)

最も遠い銀河 3 夏 (白川道)

最も遠い銀河〈3〉夏 (幻冬舎文庫) 最も遠い銀河〈3〉夏』はシリーズ全4作中3巻目。物語も佳境に差し掛かります。

ヤクザの小島浩は、桐生晴之にとってダチ、無二の親友。美里の寿命を縮めた清家淳介を許せず、晴之にとっても邪魔者だと判断した浩はついに…。

元刑事・渡誠一郎は病身にもかかわらず執拗に調査を行い、晴之を追いつめていきます。愛娘が死んだ、おなじ小樽の海から上がった遺体の身元を明らかにしてやりたいというけれど、本人はそんなことは望んでいません。もう警官ではないのだから、そこまでこだわるのは不自然。エゴです。余計なちょっかいを出すから話がややこしくなる。もうやめてほしい! でも、プロット上必要な人物なのでしょうね、たぶん。

3巻の最後で「えっ!?」。ショッキングな出来事が待っていました。

お勧め度:★★★☆☆

2015年2月25日 (水)

コップクラフト 4 (賀東招二)

コップクラフト 4 (ガガガ文庫) コップクラフト 4』は敏腕刑事マトバと美少女剣士ティラナの凸凹コンビが活躍するポリスアクション!だそうですが、今回はスラップスティック、漫画です。馬鹿馬鹿しいながらも愉快です。

異世界セマーニからの密輸品を押収したマトバは、ティラナに怪しい物を調べておくよう言いつけて寝てしまいます。彼女が見つけたのは小さな弩。殺傷能力はないものの飼い猫のクロイが蹴飛ばした弾みに飛び出した矢がティラナの腕に当たって、気づいたらティラナは猫の姿になっていて…!?

猫の肉球でも操作できるスマホって、タブレット端末くらい大きいのでしょうか。ツッコミどころ満載ですが、面白かったから許します。

おまけとして「風紀班の人々:アレクサンドル・ゴドノフ刑事の場合」「準騎士ティラナに訊いてみた〜あるいはオニール師のグダグダトーク」を収録。最後に、マトバは1954 コルベットC1を手に入れるのですがティラナは不機嫌で…。

というわけで『コップクラフト 4』はお笑い編でした。

お勧め度:★★★★☆

2015年2月24日 (火)

さいはてにて〜やさしい香りと待ちながら (柿木 奈子)

さいはてにて やさしい香りと待ちながら (集英社文庫) さいはてにて やさしい香りと待ちながら』は佐々木希が出演する映画のノベライズ本。映画より先に原作本を読みました。

ふたりの子供をもつシングルマザー山崎絵里子。祖母が営んでいた民宿が能登半島の北端にあって、16歳で生んだ有沙(8歳)と翔太(6歳?)を連れて転がり込んだのだけど、祖母が入院してしまい、平日は金沢のキャバクラ勤め。子供たちはふたりだけで暮らしていました。

ある日、その民宿の前の船小屋に30歳くらいの女がクルマでやってきて、大工が来て工事がはじまり、見る間に珈琲店が出来てしまいます。吉田岬は東京から、昔父親と過ごした記憶のある船宿に引っ越してきたのです。もしかしたら父と再会できるかもしれないと思って。

そんな岬の事情を知らない絵里子は(自分とちがって幸せそうに見えるために)反感を抱き、好奇心旺盛な子供たちにも近づかないように言います。しかし、給食費を払えない(母親に言い出せない)有沙は店の手伝いをして小遣いをもらい、喜んで学校に給食費を届けに行ったのですが…。

ちょっと切ないけれど、いい小説です。海辺の静かな土地で必死で生きる人間が、大人も子供も、それぞれに悩みや悲しみを抱えながら、ひとりでは辛くても、誰かと寄り添って生きていければなんとかなると思えてくる。

じつはあまり期待していたかったので、自分だけ読めればいいとiPhoneのiBooksで電子本を買ったのですが、文庫にしておけばよかったかなぁ。そうすれば息子にも読ませることができたから。でも、彼は文庫本よりは映画に付き合わせたほうがいいかも。

二三味珈琲というモデルがあるとかで、一度行ってみたい。ただ、金沢からでもクルマで片道150kmあるので最低でも1泊2日。名古屋からだと行って帰るだけでも往復800km。能登半島で寄り道してたら900km近くなるでしょう。2日で900kmだと一日450km。次男にがんばって運転してもらおうっと。(笑)

お勧め度:★★★★★

2015年2月23日 (月)

[iPhone] 神様ゲーム Godus

神様となって、地形を改変し、人類を導くゲーム。 懐かしい『ポピュラス』の進化版。iPhoneの横持ちでは(プレイできないことはないけれど)人間がありんこサイズで、かなり小さいのでやりづらい。iPhoneよりもiPadでプレイすべき。

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地層になっている土地をドラッグして平地を広げていくと、そこに人間たちが住居を建てていき、人口が増える仕組みになっています。

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住民数が目標に達するとレベルが上がっていくみたい。そして遺跡(写真上の塔)を修復、復活させると人々の信仰心が向上し、それが神様のパワー源となるわけ。なるほどぉ。

それはいいのですが、次はあっちに行けだの、港を修復しろ、船に乗れだの、神様に指図するなんて「おまえは一体何様だぁ!」(笑)

船で島を巡っているうちに「いかに高得点で課題をクリアしていくか」を競うゲームだというのが透けて見えて興醒めしました。

もっと自由に遊びたい。「ゲーム」よりも「トーイ」(おもちゃ)にしたほうが面白いはず。用意された筋書きをなぞるのではなく、仮想世界で自由に遊ぶほうが好き。作者が予想もしなかったことをしでかすプレイヤーが出てくるのが愉快じゃないですか。

でも、ゲームとしてはよくできてると思います。ただ、こういうゲームをしているよりは本を読んでいるほうが好きなんです。だからゲームをダウンロードしても長続きはしません。

お勧め度:★★☆☆☆

2015年2月22日 (日)

鹿の王 (下) 還って行く者 (上橋菜穂子)

鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐ 鹿の王 (下) 還って行く者』で「独角」の長だったヴァンと、伝染病の治療薬を作ろうとしている医術師ホッサルが出会ったとき、物語は一気に転がり始めます。ヴァンを追っていたサエも彼と行動を共にするようになり、なにやらいい雰囲気。

本書では、感染症と、命の不思議について考えさせてくれます。

Wikipediaによると「感染症の歴史は生物の発生と共にあり、有史以前から近代までヒトの病気の大部分を占めてきた。医学の歴史は感染症の歴史に始まったと言っても過言ではない。1929年に初の抗生物質であるペニシリンが発明されるまで根本的な治療法はなく、伝染病は大きな災害と捉えられてきた」。

ヴァンの「人はなぜ病み、なぜ、病んでも治る者と治らぬ者がいるのか」という疑問に対して、ホッサルは「犬やダニに噛まれたことで病を得て死んでしまう者といれば助かる者もいる。「運」で片付けずに、その因果関係が知りたい」と、ヴァンの血液を調べさせてほしいと頼みます。

「人の身体は国みたいなもの。ひとつの個体に見えるけれど、実際には、たくさんの小さな命がこの身体の中にいて、私たちを生かしながら、自分たちも生きている。私たちの身体が病んだり、老いたりして死んでいくと土に還ったり、他の生き物の中に入ったりして命を繋いでいく」

AIDSやエボラ出血熱のように、外部から身体にウイルスが入ってきて病気になる場合と、癌のように身体の中だけで起こる病気がある。ある人にとっては「病原菌」でも、菌にとっては良いも悪いもない。菌も生き残らねばなりません。リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子 』を思い出して、急遽図書館で借りてきました。

鹿の王とは「群れが危機に陥ったとき、己の命を張って群れを逃がす」だといい「群れを支配する者、という意味ではなく、本当の意味で群れの存続を支える尊むべき者」だといいます。でも、それが本書のタイトル?

クライマックスでは状況が二転三転し、どうなるのかとハラハラしていたら、最後に「鹿の王」が登場。余韻を残しつつ大団円となりました。児童書に分類されるようですが、大人にとっても読み応え十分。異世界ファンタジーの世界で、生命の尊厳と不思議に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

お勧め度:★★★★★

2015年2月20日 (金)

鹿の王 (上) 生き残った者 (上橋菜穂子)

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐ 鹿の王 (上) 生き残った者』を読みたいけれど、図書館は予約待ちが多くて時間がかかるので買いました。文庫になるのを待っていられません。

上橋菜穂子といえば「守り人シリーズ」「旅人シリーズ」「獣の奏者」。短槍遣いのバルサが懐かしい!

そういえば『鹿の王』に登場するサエという「跡追い狩人」がバルサを思い出させます。弓の遣い手だし、体格も雰囲気も違うのだけど、嗅覚というか、危険を察知する能力に長けているところとか似ているような気がします。

物語は、主人公ヴァン(40歳、男)が奴隷として岩塩鉱で強制労働させられているところから始まります。ある夜、黒犬の群れが襲来し、大勢噛まれて怪我をします。すると、数日のうちに周囲の人間たちがバタバタと倒れ、生き残ったのはヴァンと女の赤ん坊ユナだけ。岩塩鉱を脱出し、街に向かう途中で出会った若者トマは「飛鹿」を連れていて、以前飛鹿乗りだったヴァンは彼の村までいっしょに向かうことにしたのでした。

トマたちはトナカイを飼育しているとか。トナカイの生息地は(現実には)スカンジナビア半島からシベリア、アラスカにかけての北極圏周辺。かなり寒い地域です。

東乎瑠(ツオル)帝国がアカファを占領し、移住民を送り込んできたため、先住民が住み慣れた土地を追われ、政治的、文化的、免疫学的な均衡が崩れてしまいます。

ヴァンに対する、もう一方の主人公がホッサルという医術師。岩塩鉱で広まった伝染病の治療薬を作るため「生き残った者」(ヴァン)を追わせます。それはさておき、とにかくユナがかわいい。拾われたときは1歳未満かな。片言をしゃべるくらいで、満足に歩けない。この子がどんな娘に成長するのか楽しみです。

お勧め度:★★★★★

2015年2月19日 (木)

御手洗潔と進々堂珈琲 (島田荘司)

御手洗潔と進々堂珈琲 (新潮文庫nex) 御手洗潔と進々堂珈琲』は、京大北門前に実在する喫茶店「進々堂」と京大周辺、一条戻り橋、嵐山で語られる物語4編を収録しています。どっしりした木製テーブルが並び、BGMもなくて静かで、やや暗い店内。そう、表紙絵が雰囲気をよく表しています。ゆっくり本が読めるのがうれしい喫茶店です。
  1. 進々堂ブレンド 1974
  2. シェフィールドの奇跡
  3. 戻り橋と悲願花
  4. 追憶のカシュガル
世界を放浪してきた御手洗潔の話し相手は、京大目指して浪人中のワタルくん。1話はワタルくんの切ない恋物語、2話はイギリスでの身体障害者のスポーツ差別の話、3話は朝鮮と彼岸花の話、4話はウイグル自治区カシュガルとソメイヨシノの話。

わたしは2話が気に入りました。3話は悲しすぎる。やっぱり戦争はダメです。

御手洗潔って読んだことないのですが、さすが京大医学部出身という設定だけあって、知識と教養が豊富で、話が面白い。内容がリアルで、どこまでが本当で、どこまでがフィクションなのかわかりづらいほど。受け売りで吹聴するまえに裏を取っておきましょう。(笑)

お勧め度:★★★★★

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2015年2月18日 (水)

からくさ図書館来客簿 第三集 (仲町六絵)

からくさ図書館来客簿 第三集 ~冥官・小野篁と短夜の昔語り~ (メディアワークス文庫) からくさ図書館来客簿 第三集 ~冥官・小野篁と短夜の昔語り』は、京都の私設図書館を舞台にした、ちょっと不思議なファンタジー。表紙は少女漫画みたいですけど、内容は京都の街並や歴史、文化、古い書物などが登場して、本好き、京都好きにも楽しめる物語です。
  1. 馬琴の謎かけ 前編
  2. 馬琴の謎かけ 後編
  3. 金魚と琥珀
  4. わたの原 前編
  5. わたの原 後編

今回の「道なし」は滝沢馬琴。さて、どんな未練があるというのでしょうか。小野篁は生前の流刑地だった隠岐の島に、そこの図書館に勤める女性とともに渡ります。そこで出会った道なしは…。

お勧め度:★★★☆☆

2015年2月17日 (火)

京都はじまり物語 (森谷 尅久 )

京都はじまり物語 京都はじまり物語』は、松花堂弁当、しば漬け、千枚漬け、にしんそば、鯖寿司、饅頭、みたらし団子、フランスパン、湯豆腐など、京都のおいしいものの「はじまり」を解説している一冊。発祥の地(お店)の地図も載っているのがうれしい。今度機会があったら行ってみよう!

その他、トイレ、映画、学校、サッカー、喫茶店も京都が発祥だとか。その真偽はさておき、風呂敷の由来には「な〜るほど」。え、知りたいですか。ぜひご一読あれ!

お勧め度:★★★★☆

2015年2月16日 (月)

ソロモンの偽証 第3部 法廷 (宮部みゆき)

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 上巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)
ソロモンの偽証: 第III部 法廷』は、いよいよ柏木卓也の死の真相に迫る裁判を描きます。

最後のドンデン返しの証人が「彼」であろうことは、第3部を読めばわかってきます。それでも、事実がどうであったのかは、実際に語られるまでわかりません。これがミステリーなのでしょうか。

最後の証言を聴いて「もっと早く言えよ!」と思うのが人情。そうすれば、こんな面倒な裁判なんてやる必要もなかったのに。え、だったらなんのための校内裁判だったの?

真実を明らかにするため? 嘘を暴くため? 反省させるため?

結局、誰の言うことが本当で、誰が嘘をついているかはどうでもよくって、審理の過程で明らかにされてきたことと、それをそれぞれがどう納得して乗り越えていくかが重要。誰かを裁くのが目的ではない。そこに救いがあります。

で、『ソロモンの偽証』のソロモンとは○○のことだと思うのだけれど、あなたはどう思う? と友人にも訊きたいのだけれど「500ページが6冊」というと引いてしまうんです。

お勧め度:★★★★★

2015年2月14日 (土)

ソロモンの偽証 第2部 決意 (宮部みゆき)

ソロモンの偽証: 第II部 決意 上巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第II部 決意 下巻 (新潮文庫)

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ソロモンの偽証: 第II部 決意』は、学校で転落死した柏井卓也に続いて起きた事件、事故、騒動で傷ついた生徒たちが「真実を知りたい」と、藤野涼子の呼びかけで、夏休みに「学校内裁判」をすることになった。被告は大出俊次。罪状は柏井卓也の殺害。藤野涼子が検察官役、弁護人役には他校の生徒である神原和彦。柏井卓也と学習塾が同じだったというだけの、謎の中学生です。札付きのワルの俊次に、淡々とした態度で取り入ってしまいます。

驚いたのは、周囲の大人たちの物わかりの良さ。ありえないくらい協力的。学校は「裁判」を開くことは渋々認めたものの、水面下では教師や保護者に協力しないよう働きかけていて、反対者は少なくないものの、実際には妨害活動は封じ込められ、裁判の準備は着々と進んでいきます。第2部は裁判の準備編です。

たしかに面白い。いいなぁ、裁判ゴッコ。ワクワクします。中坊ならではの妄想力、いえ、想像力で突き抜けてほしい。

この裁判は、被告を裁くことが目的ではなく「真実を知る」ことが目的。だから検察側と弁護側のどちらが勝つかは大きな問題ではありません。ただ、裁判のためには「告発状」を出した生徒も巻き込むことになる。柏井卓也の死に、なにが関係があって、なにが無関係なのか。混沌とした状況を整理することはできるのでしょうか。そして、おそらく今の段階では読者が想像もできないi真実が待ち受けているのでしょう。(わくわく)

お勧め度:★★★★★

2015年2月12日 (木)

ソロモンの偽証 第1部 事件 (宮部みゆき)

ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第I部 事件 下巻 (新潮文庫)

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ソロモンの偽証: 第I部』は、クリスマス前夜、中学二年生・柏木卓也が学校で転落死した事件をきっかけに始まる物語。じつはタイトルの意味が知りたくて読むことにしました。ソロモン王が偽証するなら、どんなに巧みな偽証なのか興味があります。期待を裏切らないでね。>作者

で、第1部では「事件」が次から次に起きます。同校の生徒、校長、教師、保護者、警察、記者らの内面が赤裸々にあぶり出される様は「さすが宮部」と思わざるを得ません。バブル崩壊直前の1990年が舞台になっているわけですが、勝手な理屈でいがみ合い、憎み合い、傷つけ合い、この世に救いはあるのだろうか?状態。

「十代前半から半ばまでの年頃は、徹底して自己チュウであって、自己チュウであることを隠すだけの用心深さと狡さを持ってはいない。だからこそ、手痛い経験を積んで自己チュウの限界を知り、社会と折り合いをつける方法を学んでゆくことのできる時期なのである。ただ問題は、世界の中心にいる自分自身の、そのまた中心にあるものが何か、ということだろうと、礼子(佐々木刑事)は思う。柏木卓也の中心にあったものは何か。」

校内での事件、事故が相次ぐ中、なぜこれが「校内裁判」につながるのか不可解でしたが、第1部の終盤でわかります。これは第2部も読むしかありません!

しかし、上下巻各500ページ。第1部だけで1000ページの超大作。それなりに時間がかかります。長文が読みたい気分のときに挑戦しましょう。

お勧め度:★★★★★


2015年2月10日 (火)

なれる!SE 8 案件防衛?ハンドブック (夏海公司)

なれる!SE (8) 案件防衛?ハンドブック (電撃文庫) なれる!SE (8) 案件防衛?ハンドブック 』は、工兵がライバル会社の新人・次郎丸縁に対して案件防衛に励むお話。技術よりは営業、政治の世界です。

外資系企業アルマダはコンサルと称して入り込んだ企業のシステム費用が妥当かどうかを調査し、必要なら再コンペを迫るというトップセールスならではの強引な手法であちこちの顧客を食い荒らしています。スルガシステムもその標的となり、このままでは工兵の飲み友達・橋本のいる業平産業まで奪われてしまう!?

池井戸潤の経済小説みたい。とことん不利な状況に置かれながら闘うことを止めず、あきらめず、最後に弱小企業が勝つというストーリー。安心して感動できます。

お勧め度:★★★☆☆

2015年2月 8日 (日)

なれる!SE 7 目からウロコの?客先常駐術 (夏海公司)

なれる!SE (7) 目からうろこの?客先常駐術 (電撃文庫) なれる!SE (7) 目からうろこの?客先常駐術』は「SE残酷物語」というキャッチフレーズにぴったりの巻。最初にまとめ買いしてしまったから手に取ったけれど、あまり読みたくなかった。後味悪い。1冊ずつ読んでいる方は7巻は飛ばしてもいいです。

人を出せと言われたから工兵と立華は客先に常駐することになったものの、とてもじゃないけれど仕事ができる環境じゃない。残業は認めない現場責任者、いちいち制限されるアクセス権、リモート管理なんて夢のまた夢、逐次データセンターに出向けと!?

そもそも開発途中で業者を替えたら状況がわからず混乱するでしょう。一体なにがあった?というところから疑わないといけません。ここでいうブラック企業とは、スルガシステムではなく、受け入れ企業です。

お勧め度:★☆☆☆☆

2015年2月 6日 (金)

最も遠い銀河 2 春 (白川道)

最も遠い銀河〈2〉春 (幻冬舎文庫) 最も遠い銀河〈2〉春 』はシリーズ全4作中2巻目。

元刑事の渡誠一郎は、美里の身元を調べようと、李京愛が作ったペンダントから晴之を辿ろうとしている頃、晴之は恋人・茜の祖父が経営するサンライズ実業の「ホテル事業再建計画」の建築家候補として面接を受けていた。そこで選ばれて小樽に素晴らしいホテルを建てること。それが美里との約束だった。

切ない物語です。

「日陰に落ちた種子」である晴之は、美里や新宿時代の仲間・浩の希望だったし、李京愛もまた陽の当たる場所に出ようと必死で生きてきた。一方「日向に落ちた種子」の茜や、大学時代の同窓生・葛城と堀峰は社会的に恵まれているけれど、それが幸せだとは限らなくて…。

このままでは誰も幸せにはなれません。そう思うと余計に切ないのです。

お勧め度:★★★★★

2015年2月 4日 (水)

最も遠い銀河 1 冬 (白川道)

最も遠い銀河〈1〉冬 (幻冬舎文庫) 最も遠い銀河〈1〉冬 』は、iBooksストアで「シリーズ第1巻が無料」セールをしていたのをダウンロードしました。iPhoneの小さい画面でも小説が読めることがわかりましたが、2巻目以降は700円と高いので、図書館で借りることにします。

文庫本なら嵩張らないとはいえ、500ページもあると持ち歩くには邪魔になります。その点、電子本のほうが好都合なのですが、印刷本のほうが「読んでいる」実感がある。しおりを挟むと「半分超えたな」と、満足感を感じるのです。バッテリーも要らないし。(笑)

主人公の建築家・桐生晴之は、小樽の貧しい家に育ち、両親を亡くし、新宿で不良グループのヘッドをしていたが、そこで露天を出していた韓国人ハーフの李京愛から百合のペンダントを買い、恋人の美里と半分ずつ持っていたのだが、美里を白血病で失い、亡骸は小樽の海に沈めたのを発見され、小樽署の元刑事・渡誠一郎が幼くして同じ場所で死んだ娘・梢を弔うためにも、亡骸が誰なのか突き止めたいと、晴之の過去に迫る…。

「最も遠い銀河」というタイトルは、当時、李京愛が初めて書いた詩集に収められていた詩。それを買った晴之は今でも大事に持っているのです。

「日陰に落ちた種子」である晴之と美里。「日向に落ちた種子」である人たちと出会い、運命が絡み合っていきます。

お勧め度:★★★★★

2015年2月 1日 (日)

天地明察 (冲方丁)

天地明察(上) (角川文庫)

天地明察(下) (角川文庫)
天地明察』は、江戸幕府碁方の安川家に生まれた渋川春海が算術に惹かれ、暦づくりに取り組むことになった物語。

冒頭「幸福だった。この世に生まれてきてからずっと、ただひたすら同じ勝負をし続けてきた気がする。」って、これホントに時代小説?(絶対ヘンだ!)

作者のプロフィールを見るとラノベ作家からスタートしたみたい。これが初の時代小説? やっぱり…。ま、それはいいとして、暦づくりがどうしたって?

日本中で北極星を観測して記録して巡り、交流を広め、最後には幕閣から、新たな暦づくりを任される。それはわかったのですが、上巻では、何故それがそんなに重要な仕事なのかについて説明不足。

800年前の暦を使っていたために2日のズレが生じて、日食や月食の発生も予見できない。暦が各地でマチマチだと、ある地では1日なのに、となりでは30日だったりする。混乱するわけです。暦は朝廷が発布するものだったのを、武家の手で新しい暦を作ろうとしたわけです。

下巻では、暦法を新たにすることがいかに重要か、大事業かが解かれていますが、あまり難しく考えずにさらっと読んだほうがいいみたいです。

Wikipediaによると…1年は約365.2422日で、それを暦で定義するのが暦法。現行暦では1年を365日とし、閏年を400年間に97回設けて、一年の平均日数を365.2425日としている。至極当然のように教科書に載っている事柄も、そこにたどり着くまでには過去の人たちの貢献があったわけで、その点を描いたのが本作だといえます。

次男の「時代小説デビュー」にちょうどいいかも。(あまり時代小説っぽくないから?)

お勧め度:★★★★★

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