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2014年11月

2014年11月30日 (日)

ぶたぶたの食卓 (矢崎存美)

ぶたぶたの食卓 (光文社文庫) ぶたぶたの食卓』はシリーズ第6弾。
  1. 十三年目の再会
  2. 嘘の効用
  3. ここにいてくれる人
  4. 最後の夏休み

1話では、由香が立ち寄った「中華料理はしもと」という店で焼き餃子とチャーハンを注文して、チャーハンをひと口食べた途端、亡くなった祖母の味がして…。2話では、会社を辞めた谷萩琢巳が、仕切り直して再就職するか、実家の農業を継ぐかと迷いつつ、顔を出してみた料理教室で豚のぬいぐるみに出会い…。3話では、夫に打ち明けられない鬱に悩む刈谷美澄が、病院で出会った女性に紹介されたカフェで豚のぬいぐるみがしゃべって「わたし、やっぱり病気なんだ」。4話では、吹成一司が小学生のとき友達だった女の子の父親が豚のぬいぐるみで…。

とても楽しい全4話です。ぶたぶたさんに「人間の」奥さんと娘さんがいるわけがわかりました。わかってしまえばなんのことはないのですが、謎の多い「人物」なので、読み進めるうちにすこしずつ謎が明かされていくようで面白い。

お勧め度:★★★★☆

2014年11月29日 (土)

ぶたぶたと秘密のアップルパイ (矢崎存美)

ぶたぶたと秘密のアップルパイ (光文社文庫) ぶたぶたと秘密のアップルパイ』はシリーズ第9弾。

イラストレーターの森泉風子は、ある喫茶店でキリ番のレシートを出したところ「会員制喫茶店への特別招待券を差し上げます」。ただし、そこでは誰にも話せない秘密をひとつ話さなくてはいけないらしい。実際に行ってみると豚のぬいぐるみが珈琲を淹れてくれて…。

店の合鍵を渡して「いつでも来てくれていい」なんて、隠れ家喫茶店がステキです。ましてや接客してくれるのは山崎ぶたぶたさん。おいしいアップルパイも食べられます。

この本で気分だけでも味わってください。

お勧め度:★★★★☆

2014年11月27日 (木)

その街の今は (柴崎友香)

その街の今は (新潮文庫) その街の今は』は大阪、心斎橋を舞台にした合コン物語。ではなくて、28歳の歌ちゃんが、大阪の古い写真が好きで、その当時、この場所がどんなふうだったのか、そこに居た人が今はどうしているのか、今と過去とのつながりに興味をもっていて…という物語。街と人とが織りなす景色が目に浮かびます。

あとがきにもありましたが「出てくる人たちがいやな人たちじゃない」というのがいい。ひと癖ある、変な人はいても、不愉快にさせるような人はいない。「年の違う人が出てきても、作中の人たちは年の差を言い立てたりしない」「作中の人たちが作中の人たちの話をちゃんと聞く」というのもいい。それぞれがそれぞれの居場所を持っている感じ。その人たちを包み込む大阪という街と、その歴史。

「それ、へん」と思うことなく小説世界に没入し、安心して読み終えることのできる本は多くはありません。好きか嫌いか、面白いかつまらないか。そういう個人の嗜好以前に「それ、へん」と思ってしまうとガッカリしてしまいます。いわゆる「納得できん」というやつです。

柴崎友香は初めて読ませてもらいましたが、安心して読めました。つぎはどれを読もうかな。

お勧め度:★★★★★

2014年11月25日 (火)

クローバー・リーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ (円居挽)

                         
クローバー・リーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ         『クローバー・リーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ』は、京都大学を舞台にしたミステリー。法学部一回生の遠近倫人は京都観光サークル「賀茂川乱歩」で、密かに想いを寄せる理学部一回生・青河 幸と謎解きに挑むとき、大学構内のどこかに忽然と現れる伝説のバー「三号館」のマダム蒼馬美希が圧倒的な推理を見せてくれる。カクテルのお代は「謎」。謎解きが大好きみたいです。
       
             
  1. クローバー・リーフをもう一杯
  2.          
  3. ジュリエットには早すぎる
  4.          
  5. ブルー・ラグーンに溺れそう
  6.          
  7. ペイルライダーに魅入られて
  8.          
  9. 名無しのガフにうってつけの夜
  10.        
       

上記5章のタイトルのうち、カタカナ部分はカクテルの名前。一浪して一回生ということは19歳だから酒はまだ飲めないじゃないか!って思ったら4月生まれなんだそうです。このあたりの理詰め、辻褄合わせは円居挽らしいところ。

       

第一印象は「思い切って軽い小説を書いたなぁ」。京都の裏社会を描いたフィクション「ルヴォワール」シリーズ4部作に比べると、主人公はひねくれていないし、謎解きもシンプル。「ルヴォワール」らしさを期待すると肩透かしを喰らいますが、反面、わかりやすく、読みやすい。適度に頭を捻らせてくれて、奥手な主人公に適度にイライラする(笑)良作だと思います。

       

「ルヴォワール」も京都が舞台でしたが、登場人物たちが京大生だとは断言していませんでした。今回は京大が舞台だから話がはっきりしています。京大生はもちろん、吉田キャンパス周辺をご存知の方であれば、より一層楽しめるでしょう。

       

観光サークルの活動がベースにあるので、京都の観光スポットが効率よく紹介されるのも魅力のひとつ。新しいところでは京都水族館も出てきます。このあたりは京大卒の作者にはお手のものでしょう。

       

鴨川をどりの演目が歌舞伎の「妹背山婦女庭訓」。三号館のマダム美希いわく「一幕目から見ていたらもっと混乱してるところだ。なんてったって天智天皇の時代(668-672)に蘇我蝦夷(587-645)が出てくるんだから」。思わず在位と生年没年を調べてしまいました(前述の括弧内)。たしかに時代考証がでたらめ。こういうウンチクは好きです。

       

謎の伏線の張り方に、確実だけど堅苦しく、露骨じゃないけどぎこちない繋がりを感じるのですが、最後の謎であるところの「三号館は誰が仕掛けたのか」については、素直にホッとしました。謎が解けてしまったということは、続編はないということ!?

       

お勧め度:★★★★★

      

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2014年11月24日 (月)

なれるSE! 3 失敗しない?提案活動 (夏海公司)

なれる!SE (3) 失敗しない?提案活動 (電撃文庫) なれる!SE (3) 失敗しない?提案活動』はシリーズ第3弾。タイトルどおり、今回は、工兵が提案書の作成に挑戦します。

出禁を喰らったスルガシステム社長・六本松の代わりに、業平産業株式会社のDR (Data Recovery)サイト構築の提案を行うことになりました。当然、SE部の先輩・立華と、OS部の梢も巻き込んで。

しかし、ごくごく当たり前の提案を行ったのでは、見積金額ひとつ取っても競合他社に勝てる可能性はゼロ。先方が望んでいるものは何なのか。考えてもわからない工兵は先方の担当課長に話を聞くべく、何度も足を運ぶのですが…。

3巻に至って『神様のメモ帳』の主人公・鳴海を思い出しました。ふだんは頼りないのに、いざとなると詐欺師顔負けの反則技で問題を解決してしまう。不利な状況で主人公が大逆転を演じてくれて溜飲を下げる、というパターン。結果、かわいい女の子が主人公を見直す点も同じですよね。

なまじビジネスラノベなので、実際の経験に照らして「そんなにうまくいくわけないだろ!」とツッコミたくなりますが、そこはフィクションということで。

お勧め度:★★★☆☆

2014年11月23日 (日)

なれるSE! 2 基礎から学ぶ?運用構築 (夏海公司)

なれる!SE (2) 基礎から学ぶ?運用構築 (電撃文庫) なれる!SE (2) 基礎から学ぶ?運用構築』はシリーズ第2弾。

主人公の工兵が配属されたのは「SE部」、システム構築だったのですが、今回登場する表紙絵の少女は「OS部」、運用サポート。おなじ会社の仲間なのですが、上司の立華とは犬猿の仲。寄ると触ると大喧嘩を始めてしまいます。ところが、喧嘩をしている場合ではなくなってきて、工兵が仲裁することに…。

質問! わたしの勤めていた会社では構築、納入後、運用を別チームに任せるということはありませんでした。トラブル時の対応は、開発に携わったSEが出ていけばいい。まったく別部門に任せるとしたら、たしかに詳細なドキュメントが必要になるでしょうが、ユーザーに提出した書類以上のものを社内向けに作るなんて無駄です。

というわけで、今回のお話はわたしにはピンと来なかったのですが、立華のセリフが釘宮理恵の声で聞こえてきました。愉快なスラップスティックです。

お勧め度:★★★★☆

2014年11月22日 (土)

なれるSE! 2週間でわかる?SE入門 (夏海公司)

なれる!SE 2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫) なれる!SE 2週間でわかる?SE入門』は、就職活動に挫折してた桜坂工兵を拾ったIT企業はブラック企業だった!?というお話。以前から気になってはいたのですが、以前ソフトウエア会社に勤めていたので「笑えないのでは?」と避けていました。

わたしが勤めていた会社ではとんでもない残業とか、無謀な納期なんてことはなく、のびのびと働くことができました。主人公・工兵の上司(先輩)室見立華同様、ネットワーク構築を担当していて、思わず「Teratermだって、なつかしい〜!」。Ciscoルータの設定も最初は戸惑いましたっけ。わたしもコンピュータ同士が通信できるのが面白くてはまりました。TPケーブルも自作したし、サーバーのセットアップ、クライアントの設置まで全部やらせてもらいました。一方、本書の社長は、顧客に安請け合いするわ、社員には無茶な納期を押し付けるわ、こんなことしてたら、顧客の信用を失い、部下はいなくなり、会社はつぶれます。そういう意味ではありえない話。だとわたしは思います。

ド新人にCiscoのconfigを書けというのは無謀だし、室見がやれば30分で終わるはず。工兵が「わかるはずがない」といえば、室見は「ググれば?」っていうけど、ネットの情報は整理されていないうえ、100%信用はできません。IT企業なら入門書くらい転がってるだろうに…などと、心のなかでツッコミながら、楽しく読ませてもらいました。

ヒロインのひとり室見立華は、どう見ても中学生にしか見えない小柄な美少女なのですが、而してその実体は「鬼軍曹」。これは2巻以降も読まずばなりますまい!

お勧め度:★★★★★

2014年11月20日 (木)

蜩ノ記 (葉室 鱗)

蜩ノ記 (祥伝社文庫) 蜩ノ記』は、九州の小藩の元郡奉行戸田秋谷が前藩主の側室との密通を疑われ、家譜編纂を終えたなら十年後に切腹するよう命じられ、向山村で幽閉の身。そこへ、城内で刃傷沙汰を起こした檀野庄三郎が秋谷の監視および家譜編纂の手伝いとしてやって来る。ともに過ごすうちに庄三郎は秋谷の誠実な人柄に惹かれ、無実の罪に甘んじているのではないかと疑うようになるのでした。

まず思い出したのが『銀漢の賦』。武士(もののふ)の誇りと覚悟がどうあるべきかを見せてくれます。また、秋谷を陥れた家老と、その背景にあるものが、家譜編纂という流れのなかで明かされていくミステリー仕立てにもなっています。秋谷が寡黙な安楽椅子探偵ならば庄三郎が助手といったところ。

秋谷の妻と息子、娘は、なんとか切腹を免れることを願っていて、いつしか庄三郎も秋谷の助命を願う己に気づくのです。ただ、自身の運命をセミ(蜩)にたとえた秋谷は最後まで武士としての筋目を通そうとします。

これは単純にかっこいいとか潔いとか言えるものではありません。現代人からみれば命を軽んじる屁理屈であって、正義なんてどこにもありません。小説としては大変面白かったのですが、主人公の生き方には共感できませんでした。

お勧め度:★★★☆☆

2014年11月18日 (火)

顔 FACE (横山秀夫)

顔 FACE (徳間文庫) 顔 FACE』は、横山秀夫のD県警シリーズ第3弾。D県警本部の平野瑞穂巡査が主人公です。
  1. 魔女狩り
  2. 決別の春
  3. 疑惑のデッサン
  4. 共犯者
  5. 心の銃口

1話は、鑑識から秘書課広報公聴係に異動した瑞穂は、一社だけ続けて特ダネをすっぱ抜く新聞社に誰かが情報を漏らしているのでは、と彼女なりに調べてみると…。2話では、犯罪被害者支援対策課の相談受付係。若い女性から受けた電話が気になって…。3話は、似顔絵描きは後輩に譲ったものの、絵を描くのが好きな瑞穂は、行きつけの画廊にお気に入りの絵があって…。4話は、銀行強盗訓練に臨んだ銀行で、訓練開始5分後に、別の銀行が強盗に襲われた。応援に立ち会っていた瑞穂は訓練直前に遭った人物を追っていくと…。5話は、拳銃嫌いの瑞穂が、奪われた拳銃を取り戻すべく立ち向かうのですが…。

例によって、平野瑞穂は満身創痍。なんでこの娘にここまでやらせるのか理解できません。痛々しいというより「イタイ」。

横山秀夫の警察小説は評価が高いようですが、わたしは、今野敏の「隠蔽捜査シリーズ」と佐々木嬢の「北海道警シリーズ」のほうが好きです。

お勧め度:★★★☆☆

2014年11月17日 (月)

動機 (横山秀夫)

動機 (文春文庫) 動機』は、横山秀夫のD県警シリーズ第3弾。
  1. 動機
  2. 逆転の夏
  3. ネタ元
  4. 密室の人

1話は、警察署内で保管していた30冊の警察手帳が盗まれた。警察内部の反抗が疑われたが動機がわからない。一体が誰が何のために?

2話は、強姦殺人の罪で服役した男が働きながら、別れた妻と顔も見たことのない我が子に仕送りしているところへ、とんでもない依頼が…。

3話は、ジリ貧の地方新聞の女性記者が、周囲からの重圧に苦しみながら新しいネタを探しまわっていると…。

4話は、ある裁判官が公判中に居眠りをしてしまい、このままではマスコミに叩かれてキャリアを失ってしまう。

1話を除いて読むのが辛かった。人間不信に陥ります。

お勧め度:★☆☆☆☆

2014年11月15日 (土)

天地雷動 (伊東潤)

天地雷動 (単行本) 天地雷動』は、1575年の長篠の戦いを描いた歴史小説。

武田信玄亡き後、古参の宿老たちの抵抗に遭いながらも、勝頼率いる武田軍は、宿敵織田信長を討つべく、信長・家康連合軍に立ち向かったのですが、3,000丁もの鉄砲のまえに無惨にも敗退したというもの。

アメリカのテレビドラマよろしく、勝頼、信長、秀吉、家康、そして武田軍の前線に立つ宮下帯刀と、ころころと視点が切り替わりながら物語は進んでいきます。最初は読みづらかったのですが、中盤には馴れてきました。

歴史の授業では「信長の鉄砲隊の三段撃ちの前に武田騎馬隊も惨敗した」という認識しかなかったのですが、じつに様々な要素が絡み合い、将の強い意思が兵を動かし、危うい均衡が、結果として信長の勝利に傾いたようです。

そもそも鉄砲の国産化に取りかかったばかりの段階で3,000もの鉄砲と必要な弾薬を揃えるなど容易ではなかったでしょう。戦乱の世だったから仕方ないのかもしれませんが、鉄砲とみると人殺しの道具(武器)として活用し、刀、槍、弓矢よりも殺傷能力が高く、大量殺人を繰り広げていったのは、人間の悲しい性というべきでしょうか。実際、その行き着く先は核兵器。使ったが最後、人類滅亡につながるという、愚かな道具。

本書で趣深いのは、長篠の戦いが終わったあとの各々の思いです。

勝頼はほとんどの宿老と多くの兵を失い、自分でも意識していなかった罪に愕然とし、家康は信長に対して戦々恐々としながら必死で領国を守ろうとしてきたけれど、考え方を変えれば、これは好機かもしれないと気付き、秀吉は、信長に命じられる無理難題を命懸けで実現してきたことが自信と奢りにつながり、帯刀はもう戦さはまっぴらだと思う。

全体に駆け足になっていて、多少物足りない気もしますが、予想以上に面白かった。このあとの勝頼の話は『武田家滅亡 』に続くそうなのでいずれ読んでみようと思います。

お勧め度:★★★★★

2014年11月13日 (木)

69 sixty nine (村上龍)

69 sixty nine (文春文庫) 69 sixty nine』は村上龍の青春小説。1969年、学生運動と反戦運動、アポロとロックに揺れる時代に僕は佐世保北高を「バリ封」した。誰に媚びることなく、楽しく奔放に生きた記録。

作者は楽しく書いたそうですが、わたしは読んでいて楽しくはありませんでした。自分の高校生活がいかに退屈なものだったかを思い出してしまった。いずれにせよ、彼らのノリにはついていけませんけど。

いちばん面白かったのは作者のあとがき。1969年の物語を1987年に書いたわけだから、当時高校生だった人たちに読んでほしいとあります。しかし、2007年の文庫版あとがきでは<若者の特権は「時間という資源」だけだと肝に銘じて、成熟社会をサバイバルしてもらいたい>と言っています。

お勧め度:★★☆☆☆

2014年11月11日 (火)

限界集落株式会社 (黒野伸一)

限界集落株式会社 (小学館文庫) 限界集落株式会社』は、このままではいずれ消えてしまう過疎の村を再生しようと立ち上がった男、多岐川優の物語。銀行とIT企業に勤めたエリートが、退職を機に、BMW7シリーズに乗って、止村(とどめむら)にある祖父の住んでいた古民家にやってきたのです。

農業は天候や病気、害虫、害獣などのリスクが大きく、収入が不安定。出荷、販売も農協に依存していては儲からない。米よりも儲かる野菜を効率よく育て、独自の販路を切り開いていくしかありません。

日本の農業が抱えている問題点もわかってくる、お得な小説。ただ、ストーリーは出来上がっていて、それを登場人物たちがなぞっているだけという印象を受けます。あっさり、どんどん話が進んでいくのです。

それでもトレンディーなテーマは面白い。続編が、小学館の月刊STORY BOX 2014/11号から連載開始されています。興味のある方はこちらからどうぞ。

お勧め度:★★★☆☆

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2014年11月 9日 (日)

生徒会探偵キリカ 4 (杉井光)

生徒会探偵キリカ4 (講談社ラノベ文庫) 生徒会探偵キリカ4』はシリーズ第4弾。8000人が通うマンモス校・白樹台学園の体育祭が開かれます。体育科が赤組で、それ以外が白組。毎年赤組の圧勝。つまり、生徒会の力をもってしても勝てない。勝てば、運営権を生徒会が奪うことができるのですが…。

そんな事情はおかまいなく、ひかげ(人間)は体育祭のルール変更を提案します。それは生徒全員が楽しめる体育祭にするためのルール。

いまさらですが『神様のメモ帳』と設定がそっくり。「引きこもり才女と天然ヤクザな高校生」のペア。ひかげも鳴海も、普段は頼りにならないけれど、いざとなると裏技で事態を解決してしまう詐欺師。騎馬戦でのどんでん返しには驚いたけれど、明らかにムリがある。それを強引に読者に納得させるのだから、たいした詐欺師です。文章に向かって読者は言い返せない。

ストーリーにはひっかかる個所がいくつかあって納得できませんが、キリカが可愛いのと、ひかげのツッコミが愉快なので好きです。

お勧め度:★★★☆☆

2014年11月 8日 (土)

陰の季節 (横山秀夫)

陰の季節 (文春文庫) 陰の季節』は、D県警シリーズ第1弾。その前に『等伯』を読んでいたもので、あまりのギャップに戸惑い、警察の天下りだの人事だのといった泥臭さに閉口して本を閉じかけたのですが、しばらく読み進めるうちに面白くなってきました。
  1. 陰の季節
  2. 地の声
  3. 黒い線

表題作「陰の季節」では、警察OBの尾坂部が天下り先の会社を辞めようとしない。なんと見苦しい真似を、と思っていたら、衝撃の事実が…。

いちばん面白かったのは「黒い線」。「地の声」は笑えず「鞄」はなんとも陰湿。警察にお勤めの方は「ありそうな話」だと思うのでしょうか。

警察小説ではありますが、事件捜査ではなく、警察本部の管理組織が主人公。そこで起きる事件は不祥事と呼ばれます。その真相を解明し、いかに解決する(もみ消す)かが腕の見せ所。人事権者が絶大な力をもつ点は銀行とおなじみたい。どちらも「お役所」なのでしょう。

凹んでいるときは避け、元気なときに読みましょう。

お勧め度:★★★★★

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2014年11月 6日 (木)

等伯 (安部龍太郎)

等伯 〈上〉

等伯 〈下〉
等伯』とは、安土桃山時代から江戸初期にかけて、乱世を生きた絵師・長谷川等伯。先日ご紹介した『櫛挽道守』のように、武家でも公家でもない、懸命に生きる人たちの視点から見る時代は新鮮です。

等伯は幼い頃、絵仏師の長谷川家に養子に出され、そこの娘・静子と結婚します。養父母に可愛がられ、絵の腕も上げていくにつれ、京に出て絵の修行に専念したいと思うようになります。そんな折、ある事件をきっかけに養父母を失い、故郷を追われます。

途中、信長による比叡山の焼き討ちに巻き込まれ、幼子を抱いた僧が信忠の兵に囲まれたところに出合い、思わず武器を奮ってしまい、織田方から敵認定されてしまいます。その後、日蓮宗の寺院など、伝手を頼って、かくまってもらい、絵を描きながら、なんとか暮らしていくわけです。

それにしても、等伯の目から見た信長は鬼を通り越して魔王と呼ぶべきもの。これはたしかにやり過ぎです。世の中が全勢力を傾けて排除しようとしても不思議ではありません。

一方の等伯は、僧の自画像を依頼され、その姿形だけでなく、その信仰心、悟りの程度まで写し取るようにと言われ苦悩します。しかし、見事に描ききった等伯の名声は徐々に広がっていくのでした。

武家に生まれ、幼い頃は剣の修練に明け暮れ、絵仏師の家に入って以来、努力と艱難辛苦の末に絵師としての名声を得たことはよくわかるのですが、人としてはとん でもなく臆病な俗物なのです。対する狩野永徳も絵師としては一流でも、等伯を見下し、散々邪魔だてをし、人としては三流かと。本書からそんな印象を受けました。ただ、後世の人間としては、残された作品から等伯や永徳の人となりを偲びたいと思います。

お勧め度:★★★★★

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2014年11月 5日 (水)

キッチンぶたぶた (矢崎存美)

キッチンぶたぶた (光文社文庫) キッチンぶたぶた』は、ぶたぶたシリーズ第7弾、だと思ってたのですが、あとがきによると12冊目だとか。光文社文庫だけかと思ってたら徳間文庫からも出てるんですね。失礼しました。
  1. ぶたぶた(徳間)
  2. 刑事ぶたぶた(徳間)
  3. ぶたぶたの休日(徳間)
  4. クリスマスのぶたぶた(徳間)
  5. ぶたぶた日記【光文社】
  6. ぶたぶたの食卓【光文社】
  7. ぶたぶたのいる場所【光文社】
  8. 夏の日のぶたぶた(徳間)
  9. ぶたぶたと秘密のアップルパイ【光文社】
  10. 訪問者ぶたぶた【光文社】
  11. 再びのぶたぶた【光文社】
  12. キッチンぶたぶた【光文社】
  13. ぶたぶたさん【光文社】
  14. ぶたぶたは見た【光文社】
  15. ぶたぶたカフェ【光文社】
  16. ぶたぶた図書館【光文社】
  17. ぶたぶたの休日(徳間)
  18. ぶたぶた洋菓子店【光文社】
  19. ぶたぶたのお医者さん【光文社】
  20. ぶたぶたの本屋さん【光文社】

文庫だけ挙げましたが、これでいいのかな。べつに発行順に読まなくても問題ないようです。本書の内容は以下のとおり。

  1. 初めてのお一人様
  2. 鼻が臭い
  3. プリンのキゲン
  4. 初めてのバイト

1話は、身体に悪いものが食べたい。そう思った由良は入院先の病院を抜け出して「キッチンやまざき」でナポリタンを注文します。病院食は残していた彼女が、ひとりでこっそり冒険に出て、ぶたぶたさんに出会うというのがいい。「ありえない+日常」という相反する状況が本シリーズの魅力です。

2話は、鼻が悪いせいか、味がよくわからない会社員の話。3話は、プリン大好き少女が「キッチンやまざき」のプリンが美味しいという噂を聞きつけてくる話。4話は、従姉妹に頼まれた、初めてのバイトがぶたぶたさんの手伝いで…という話。

4話では、ぶたぶたさんに会ったことのない主人公が、誘拐されたぶたぶたさんを探す手伝いをすることになり、周囲の会話が理解できず苦悩する様子が可笑しい。たしかに、自転車で大人を誘拐するのはむずかしいですよね。誘拐される人間の協力が必要です。で、わけがわからなくなっていく、と。(笑)

食べ物の話では、作者の食いしん坊ぶりがよくわかって楽しいです。

お勧め度:★★★★☆

2014年11月 3日 (月)

ぶたぶたカフェ (矢崎存美)

ぶたぶたカフェ (光文社文庫) ぶたぶたカフェ』はシリーズ第10弾。いまは食べ物シリーズを逆に辿っています。作者が食いしん坊なので、山崎ぶたぶたさんが美味しそうなものをたくさん作ってくれます。

カフェ「こむぎ」は早朝から夕方までがカフェで、夜はバーになる。カフェの店長はぶたぶたさんで、バーの店長は綿貫さん。優等生の目黒泰隆は不眠症に悩まされ、会社勤めを突然辞めます。そして、綿貫に誘われてバーを手伝うことになりました。そこでぶたぶたさんに接近遭遇というわけ。

泰隆のややこしい家庭事情を知っても、ぶたぶたさんはあくまで「やさしい傍観者」。さりげなくアドバイスはしても、説教くさいことは言わないから、話を聞いてもらうだけで気が楽になる。まずもって、その外観に癒されるわけですが、中身はおじさんとはいえ温厚な性格が周囲を温かく包みます。

図書館で何冊かまとめて(予約して)借りるときには、ぶたぶたシリーズを1冊加えています。すると、他はちょっと内容が重い本にも挑戦できるのです。この本を読むと、気持ちが楽になります。

お勧め度:★★★★★

2014年11月 1日 (土)

ぶたぶた洋菓子店 (矢崎存美)

ぶたぶた洋菓子店 (光文社文庫) ぶたぶた洋菓子店』は、ぶたぶたシリーズ第12弾。『ぶたぶた図書館』と『ぶたぶたの本屋さん』の「本(Books)シリーズ」に続いて「食べ物シリーズ」を読んでみるつもりです。

このシリーズの経験値はまだ3(冊)ですが、主人公の山崎ぶたぶたさんは毎回職業というか立ち位置が異なるようです。また、各章は異なる主人公の視点で語られ、連作短編集の形を採っています。

今回のぶたぶたさんはパティシエ。お店の名前は「コション」。フランス語で「ぶた」。そのまんまです。ぶたのぬいぐるみが小麦粉まみれになってケーキを作っている様子を想像すると可笑しいというか、微笑ましい。ファンタジーです。

アルバイトのお姉さんやら「スイーツコンペ」に参加したい男子高校生3人組とか、もうすぐ結婚するふたりとか、東京で仕事に疲れ果てて実家に帰ってきたアラサーとか、いろんな人が絡んできますが、ぶたぶたさんは淡々と優しく包んでくれます。いい人ぶったところがなく、ただのやさしい中年男性がぶたのぬいぐるみに詰まってる感じ?

人生に疲れた方、スイーツ好きの方にお勧めです。

お勧め度:★★★★☆

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