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2014年10月23日 (木)

わたしを離さないで (カズオ・イシグロ)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで [DVD]
わたしを離さないで』は日本生まれのイギリス人作家の手になる小説。介護人キャシーが提供者の世話をしているところから始まります。

そしてキャシーの回想が始まります。彼女はヘールシャムという寄宿学校のような施設で生まれ育ち、親友のルースやトムとの日々の交流が淡々と描かれます。授業は、絵画や工作、詩作などが重視され、教師は「保護官」と呼ばれます。生徒たちの両親の話がまったく出ないのもおかしい。年少組と年長組に分かれていて、まさか少年院ではないでしょうし、ここは一体どういう目的の施設なのでしょうか。

あとがきによると「細部まで抑制が利いた、入念に構成された」小説。読み進めていくと、すこしずつ真実がわかってきます。提供者が誰に何を提供するのか。保護官は生徒たちに何を教えようとしたのか。

タイトルの「わたしを離さないで」(Never Let Me Go) は、ジュディ・ブリッジウォーターのアルバム『夜に聞く歌』に収録された曲。ということになっていますが、実在しません。元になったジャズソングはあるとか。

キャシーは、ルースやトムと話したことは教えてくれますが、彼らにとって当たり前の、口にするまでもないことは語りません。だから、真相がなかなかわからないのです。でも、あくまで淡々としているのが怖い。

人間の尊厳って、生命って何なのか、どう扱うべきなのかを考えさせる、イギリスならではの、怖い小説です。映画化もされていますので、興味のある方はどうぞ。

お勧め度:★★★★★

イギリスならでは、と感じたのは、ドリーのことを思い出したからです。

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