« 剣豪将軍義輝 (下) 流星ノ太刀 (宮本昌孝) | トップページ | 野望の憑依者 (伊東潤) »

2014年10月17日 (金)

櫛引道守 (木内昇)

櫛挽道守 櫛挽道守』は、幕末、木曽の山奥でひっそり暮らす櫛職人の一家の物語。わたしがこれまで読んだ時代小説のなかでベスト3に入る佳作です。

櫛引の名人と讃えられる父をもつ長女登勢は櫛づくりが大好き。父を尊敬し、仕事場である板場から離れようとしません。母と妹は家の仕事を手伝うように言うのですが駄目。登勢よりも才能があった弟が早くに亡くなり、娘ふたりを嫁がせるのか、婿を取るのか、穏やかな暮らしのなかに、悩みと葛藤があり、京や江戸の不穏な空気も伝わってくる。

黒船襲来から大政奉還まで、政治の表舞台ではなく、信州の村の櫛職人一家を描いた作品は、淡々として、必死で切なく、懸命で微笑ましく、頼もしくも哀しい。結末が知りたくて「読み飛ばす」のではなく、ずっとその世界に浸っていたくてページを繰っていました。わたしがこれまで読んだなかでいちばん「心地よい」時代小説です。

お勧め度:★★★★★

« 剣豪将軍義輝 (下) 流星ノ太刀 (宮本昌孝) | トップページ | 野望の憑依者 (伊東潤) »

時代小説」カテゴリの記事