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2014年10月

2014年10月31日 (金)

ぶたぶた図書館 (矢崎存美)

ぶたぶた図書館 (光文社文庫) ぶたぶた図書館』は、山崎ぶたぶたという名のぬいぐるみがさらっと活躍するシリーズの第11弾(だと思う)。先日初めて読んだ『ぶたぶたの本屋さん』は第14弾。この2冊しか知らないのですが、気軽に読める、ハートウォーミングなお話です。

なにが面白いって、豚のぬいぐるみが動くのを見た人たちの反応。そこに尽きます。ありえないものを見た驚きと、本人がなにも疑問をもっていない自然な振る舞いとのギャップが愉快。書いている作者も楽しいだろうな。(締切は苦しいだろうけど)

現実には、そんなぬいぐるみが存在したらマスコミの取材攻撃を受けた挙句、研究所で解剖されそうですが、そこはライトファンタジー。軽く流すのがお約束。

今回は市立図書館での「ぬいぐるみおとまり会」を実施しようとする、本が大好きな中学生・雪音と、司書の寿美子、そして元カメラマンの間宮、寿美子の姉・彩子と娘の美帆。彼らがうまく絡み合って、ひとつの物語を作っていきます。構成がなかなか上手いです。

図書館が舞台だけに、いろんな本が紹介されています。『こんとあき 』なんてそのまんまだし『ぐりとぐら 』『いやいやえん 』『100万回生きたねこ 』『トマシーナ 』に『御家人斬九郎 』『月長石 』『うろんな客 』と盛りだくさん。

本に関する2冊を読んだので、今度は食べ物に関するものを読んでみようかな。

お勧め度:★★★★★

2014年10月29日 (水)

ぶたぶたの本屋さん (矢崎存美)

ぶたぶたの本屋さん (光文社文庫) ぶたぶたの本屋さん』は「ぶたぶたシリーズ」の最新刊。このシリーズは初めて読みます。
  1. 明日が待ち遠しい
  2. ぬいぐるみの本屋さん
  3. 優しい嘘
  4. 死ぬまでいい人

以上、4編の連作短編集。異なる主人公がぶたぶたさんとの交流を描いています。

ぶたぶたさんは豚のぬいぐるみであって着ぐるみではないらしい。彼は「ブックス・カフェやまざき」という、本が読めるし買えるカフェを営んでいるという。おまけに妻子持ちだというから「紅の豚にちがいない!」。そう、呪いのせいで豚のぬいぐるみになってしまったのです。

ぶたぶたの不思議感もあって、ほんわかした癒し系フィクション。気持ちが和みます。小説には「味」があって、苦い『満願』を読んでいたので、甘い本書で口直しできました。いってみれば「スイーツ本」?

本書のなかで紹介された『林檎の庭の秘密 』と『影踏み 』は、機会があったら読んでみます。

お勧め度:★★★★★

2014年10月27日 (月)

神様のご用人 (浅羽なつ)

                         
神様の御用人 (メディアワークス文庫)         『神様の御用人』は30歳フリーターの良彦が、神様の「パシリ」になるお話。方位神の権化・狐神の「黄金」に案内されつつ、宣言之書(のりとごとのしょ)で指定された神様の元へ赴き、御用を承り、解決できれば印を頂いて帰る、の繰り返し。
       
             
  1. 狐と抹茶パフェ
  2.          
  3. 名言スランプ
  4.          
  5. 龍神の恋
  6.          
  7. ゆく年くる年
  8.        
       

京都が舞台なので、1章の抹茶パフェは辻利(都路里)かな。と想像する楽しみもありますが、いまひとつ京都の空気感が希薄。(取材不足?)

ラノベではありますが萌え要素は皆無。神様の立場から物を見るのが興味深い。「そうだよなぁ。神様もつらいよな」と思わず頷いている自分がいます。人間臭い神様たちが愉快です。(罰当たり?)
       
        お勧め度:★★★★☆       

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2014年10月25日 (土)

お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂 (似鳥航一)

お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂 (メディアワークス文庫) お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂』は、浅草の和菓子店「栗丸堂」を継いだ栗田仁が、和菓子アドバイザー?の葵と出会い、認識を新たにしていく物語。

表紙絵の仁の隣に立っているのは、お店の手伝いをしている志保かと思ったら、ひょっとしてこれが葵? それはないでしょう。18歳の仁が年下だと思うくらいの美少女、なんですよね。それなのに…。ラノベのイラストは大事です。

内容は、豆大福、どら焼き、干菓子にまつわる3編。

豆大福といえば出町ふたば!じゃなくてもいいのですが、ライターの由加の仕掛けはちょっと強引。どら焼きはいいとしても「和三盆が嫌い」って意味がわからず悩みました。和三盆を知ってしまうと上白糖が味気なく感じます。

浅草の景観と人情を含めて、和菓子ストーリーにまとめたのは面白いと思いますが、結局は『ビブリア古書堂の事件手帖 』や『珈琲店タレーランの事件簿 』の二番煎じ、三番煎じ。出版社も「二匹目のどじょう」を狙い過ぎ。そんなことばかりやってると読者にそっぽ向かれます。

葵の出自が明らかにされていないから続編を出るのでしょうけれど、残念ながら食指が動きません。

お勧め度:★☆☆☆☆

2014年10月23日 (木)

わたしを離さないで (カズオ・イシグロ)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで [DVD]
わたしを離さないで』は日本生まれのイギリス人作家の手になる小説。介護人キャシーが提供者の世話をしているところから始まります。

そしてキャシーの回想が始まります。彼女はヘールシャムという寄宿学校のような施設で生まれ育ち、親友のルースやトムとの日々の交流が淡々と描かれます。授業は、絵画や工作、詩作などが重視され、教師は「保護官」と呼ばれます。生徒たちの両親の話がまったく出ないのもおかしい。年少組と年長組に分かれていて、まさか少年院ではないでしょうし、ここは一体どういう目的の施設なのでしょうか。

あとがきによると「細部まで抑制が利いた、入念に構成された」小説。読み進めていくと、すこしずつ真実がわかってきます。提供者が誰に何を提供するのか。保護官は生徒たちに何を教えようとしたのか。

タイトルの「わたしを離さないで」(Never Let Me Go) は、ジュディ・ブリッジウォーターのアルバム『夜に聞く歌』に収録された曲。ということになっていますが、実在しません。元になったジャズソングはあるとか。

キャシーは、ルースやトムと話したことは教えてくれますが、彼らにとって当たり前の、口にするまでもないことは語りません。だから、真相がなかなかわからないのです。でも、あくまで淡々としているのが怖い。

人間の尊厳って、生命って何なのか、どう扱うべきなのかを考えさせる、イギリスならではの、怖い小説です。映画化もされていますので、興味のある方はどうぞ。

お勧め度:★★★★★

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2014年10月21日 (火)

海王 (宮本昌孝)

海王 上 蒼波ノ太刀 (徳間文庫)

海王 中 潮流ノ太刀 (徳間文庫)

海王 下 解纜ノ太刀 (徳間文庫)
海王』は『剣豪将軍義輝』の続編。足利幕府第13代将軍足利義輝の遺児がいたという設定の時代小説。その名は「海王」(ハイワン)。明人メイファが母代わり、浮橋(フーチアオ)は従者として、ハイワンが武家に関わらぬよう、海の商人として育てます。九州の商家「神屋」のアゴ十郎とは幼なじみ。共に船で旅をして過ごしていたのですが…。

しばらくは商人としての海王を見られると思っていたのですが、いきなり武家社会に巻き込まれます。

本能寺で光秀が信長を討ち、光秀を討った秀吉が台頭、家康との暗闘が始まるなかで、海王は征夷大将軍となりうる「駒」として利用しようとされます。一方、義輝との真剣勝負を果たすことができなかった異形の剣士・熊鷹も海王を追ってきます。他にも、海賊崩れヂャオファロンや、仇討ち崩れ善鬼、南蛮剣士の魔怒など、主人公たちを引っ掻き回す悪役には事欠きません。

架空の人物「海王」を歴史の舞台に放ったらどうなるか。戦乱の世に人の運命とはどう転がっていくのか。なかなか興味深い小説です。

剣豪将軍義輝』の序盤で、初陣の義輝が出会った熊鷹が最後にどうなるのかは、この『海王』で明らかになります。

櫛挽道守』の主人公・登勢は、幼くして亡くなった弟が、自らの手による絵草紙で、実際の木曽の民話とは異なる、ハッピーエンドに書き換えていたことを「なぜ弟はそんなことをしたのか」。歴史は残酷です。本作同様、そうしないと救われないからではなかったのでしょうか。

お勧め度:★★★★☆

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2014年10月19日 (日)

野望の憑依者 (伊東潤)

野望の憑依者 (文芸書) 野望の憑依者』は、鎌倉時代末期、足利家の家宰・高師直が主・足利高氏(尊氏)をして天下を取らしめようと「野心に生き、野心に死す」物語。

剣豪将軍義輝』で、室町幕府第13代将軍足利義輝を読み、室町幕府の黎明期を描いた本書に興味を持った次第。

「野望の憑依者」とは高師直のこと。源氏の嫡流である大将を立てつつ、実権は家宰(執権)が握っている時代。高氏の弟・直義と反目しながら天下取りに向かう師直を描いています。

しかし、室町時代というのも乱世ですね。天皇が南北に分かれるなんて正に前代未聞、空前絶後。結局、錦旗が欲しい武家たちが皇族を担ぎ出すだけのこと。その他多くの中小諸侯は日和見を決め込み、勝ち馬に乗ろうと必死。傍目には「なんだかなぁ」。テンションが上がりません。

高氏は戦わせれば強いが躁鬱気質。直義は頭が固く保守的。師直は野心の塊。悪い奴です。政治の世界では悪い奴ほど出世するのは今も昔も変わらないようです。

お勧め度:★★★☆☆

2014年10月17日 (金)

櫛引道守 (木内昇)

櫛挽道守 櫛挽道守』は、幕末、木曽の山奥でひっそり暮らす櫛職人の一家の物語。わたしがこれまで読んだ時代小説のなかでベスト3に入る佳作です。

櫛引の名人と讃えられる父をもつ長女登勢は櫛づくりが大好き。父を尊敬し、仕事場である板場から離れようとしません。母と妹は家の仕事を手伝うように言うのですが駄目。登勢よりも才能があった弟が早くに亡くなり、娘ふたりを嫁がせるのか、婿を取るのか、穏やかな暮らしのなかに、悩みと葛藤があり、京や江戸の不穏な空気も伝わってくる。

黒船襲来から大政奉還まで、政治の表舞台ではなく、信州の村の櫛職人一家を描いた作品は、淡々として、必死で切なく、懸命で微笑ましく、頼もしくも哀しい。結末が知りたくて「読み飛ばす」のではなく、ずっとその世界に浸っていたくてページを繰っていました。わたしがこれまで読んだなかでいちばん「心地よい」時代小説です。

お勧め度:★★★★★

2014年10月16日 (木)

剣豪将軍義輝 (下) 流星ノ太刀 (宮本昌孝)

剣豪将軍義輝 下 流星ノ太刀<新装版> (徳間文庫) 剣豪将軍義輝 下 流星ノ太刀』まで一気に読んできました。この勢いではすぐに読み終わってしまうので、一息入れてペースダウン。それにしても松永久秀ってひどい奴だ。許せん!

義輝が塚原卜伝から学び得た剣の極意とは「生もなく、死もない。おのれの存在すらない。剣士がその無念無想の境地に立ち得たとき、人も剣も天地自然の一つとなる 」。よくわからんがカッコいい。

下巻はもう謀略渦巻く、なにが起こるかわからない世界。いやだなぁ、こういうの。ラストを読みたくなかったんだけど、悲劇で終わらせない配慮がありました。

いわば戦国時代のヒロイックファンタジー。読み応え抜群の歴史小説です。

お勧め度:★★★☆☆

2014年10月15日 (水)

剣豪将軍義輝 (中) 孤雲ノ太刀 (宮本昌孝)

剣豪将軍義輝 中 孤雲ノ太刀<新装版> (徳間文庫) 剣豪将軍義輝 中 孤雲ノ太刀』は上中下3巻のうちの2冊目。義輝は霞新十郎として修行の旅に出ます。目的は鹿島の塚原卜伝に教えを請うこと。

それにしても将軍が旅に出るなんてことできるの!? 代役を立てたようですが、それでなんとかなってしまうくらい将軍って影が薄いのですね。(かわいそう)

以前にちらっと登場しただけの人物がおおきく取り上げられたり、ひとりひとりが丁寧に描かれています。なかには気に入らない奴もいますが。(苦笑)

義輝も斎藤道三、織田信長らと出会い、心身ともにたくましくなってきました。彼がどこまで行けるのか、楽しみです。(歴史的な最後はわかっていても、ね)

お勧め度:★★★★★

2014年10月13日 (月)

剣豪将軍義輝 (上) 風雛ノ太刀 (宮本昌孝)

剣豪将軍義輝 上 鳳雛ノ太刀<新装版> (徳間文庫) 剣豪将軍義輝 上 鳳雛ノ太刀』は室町幕府第13代将軍足利義輝を描いた力作。2014年9月13日付日経新聞の「プラス1」で紹介されていたのを見て図書館で借りてきました。

時代小説というよりは歴史小説なのでしょう。足利幕府に関する小説を読むのは初めて。歴代将軍の数字だけみると徳川幕府とおなじ15代で終焉を迎え、3代将軍の評価が高い。足利義満といえば金閣寺を(当初は別邸として)建立したことで有名ですね。

南北朝時代は終わったものの戦乱の世。下克上、裏切り、暗殺など珍しくもない。そんな中で将軍の座についた義輝(当時は義藤)は、自らの兵も持たず、実力諸侯の傀儡として、飾り物でしかなかったのです。それが悔しくて義輝は剣技を磨き、漢を磨き、戦乱の世を終わらせるべく奔走します。

文庫で上中下の3巻に分かれた長編小説なので「つまらなかったらどうしよう?」と心配だったのですが杞憂でした。これは面白い! 歴史小説なので、随所に解説が入りますが、和田竜ほどには気になりません。面倒なら斜め読みしても話はつながります。

お勧め度:★★★★★

2014年10月11日 (土)

銀翼のイカロス (池井戸潤)

銀翼のイカロス 銀翼のイカロス』は「倍返し」でおなじみの「半沢直樹シリーズ」の『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』に続く第4弾、最新作。

今回、第2営業部次長の半沢は、経営再建中の帝国航空の担当を命じられます。これは日本航空のことですね。山崎豊子の『沈まぬ太陽』を思い出しますが、実際の再建に取りかかる前段階のお話です。

いきなり遺書から始めるのは勘弁してほしい。また心臓に悪そうな予感…。

折しも政権交代により国交大臣に任命された女性議員・白井は、帝国航空の再建策を白紙撤回し、自らタスクフォースを送り込み、東京中央銀行に7割の債券放棄を要求してきます。なんと総額500億円!

自力再建が可能だと考える半沢は「借りたお金は返すのが当然」と債券放棄を断固拒否するのですが、政治家、官僚、役員などから圧力、妨害を受けます。

どうも「まっとうなバンカーで居続けるためには戦い続けなければならない」ようです。長いものに巻かれたほうが楽なのですが、そうすると腐っていくわけです。

どきどき、ハラハラの連続。途中、敵の詰めの甘さが気になるところもありましたが、経済エンターテイメントとしてはよくできています。

これは現代の経済社会における「時代小説」。半沢は札差の番頭というよりは、東銀藩勘定方といったところか。否、上役に歯向かうからには脱藩藩士? 刀は持たずとも、心意気はサムライ。

お勧め度:★★★★★

2014年10月10日 (金)

満願 (米澤穂信)

満願 満願』は『氷菓 』シリーズの作者によるミステリー短編集。下記の6編を収録しています。以前、中日新聞で紹介されたので読んでみることにしました。
  1. 夜警
  2. 死人宿
  3. 柘榴
  4. 万灯
  5. 関守
  6. 満願

「夜警」は交番勤務の警察官、「死人宿」は山奥の温泉宿を訪れる、自殺願望をもつ客、「柘榴」は両親が離婚しようとしている美しい姉妹、「万灯」は海外天然ガス採掘に命を賭ける商社マン、「関守」は転落死亡事故が多い峠の茶店のお婆さん、「満願」はかつての下宿先の奥さんを弁護する弁護士、が主人公のミステリー、というよりホラーサスペンスです。わたし、こういうの苦手なんです。あぁ、怖かった…。

お好きな方は、寝苦しい夏の夜にどうぞ!

お勧め度:★★★☆☆

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2014年10月 9日 (木)

まんまこと (畠中恵)

まんまこと (文春文庫) まんまこと』は『しゃばけ』の作者による別シリーズ。基本的に幽霊(妖)は出てこないようです。

主人公の麻之助は神田の町名主の跡取り息子。町名主というのは簡易裁判所というか仲裁所みたいなところ。つまり、名主は裁判官あるいは調停官。なかなか責任の重い役職なのですが、麻之助はいたって暢気でお調子者。悪友の清十郎といつも遊び歩いています。
  1. まんまこと
  2. 柿の実を半分
  3. 万年、青いやつ
  4. 吾が子か、他の子か、誰の子か
  5. こけ未練
  6. 静心なく

もめ事が持ち込まれる町名主ですからネタには事欠きません。深刻な問題もゆるゆると解決に導くというか、なんとかなってしまうというか、なんともゆるーい時代小説です。

本シリーズは『こいしり』『こいわすれ』『ときぐすり』と続きます。

お勧め度:★★★☆☆

2014年10月 7日 (火)

午前三時のルースター (垣根涼介)

午前三時のルースター (文春文庫) 午前三時のルースター』はベトナムで失踪した父親を探しに向かう16歳の少年の物語。宝飾店を経営する祖父は、娘婿の父は死んだものとあきらめ、経営の安定のために娘を政略結婚させようと企む。父が生きていると信じている孫の慎一郎は、父の居場所がなくなるまえに父に会って話がしたいと、祖父に高校入学祝いにベトナム旅行をねだったのです。

ヒートアイランド 』は暴力に閉口して序盤で挫折しましたが、これは面白かった。

慎一郎を案内するのは、祖父の会社に出入りする旅行代理店の営業担当・長瀬。ベトナムに着くなりトラブルの連続。ブルーバード510(改)を駆るタクシードライバーと女性通訳ガイドを雇ったものの、怪しげな連中に付け回されるは、脅迫されるわ、身の危険を感じます。それでも「どうしても父に会いたい」という慎一郎の強い意志に背中を押されて裏社会の闇に足を踏み入れていくと…。

途中でオチは想像がつくのですが、現実を前に大人になるしかない慎一郎がかわいそう。逃げ場が用意されても彼は逃げることはないのでしょう。

お勧め度:★★★★★

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2014年10月 5日 (日)

光秀の定理 (垣根涼介)

光秀の定理 (単行本) 光秀の定理』は(タイトルどおり)ちょっぴり数学のエッセンスを加味した時代小説。若き日の明智光秀、十兵衛が京でふたりの男と出会う物語。

おなじ作者の『ヒートアイランド 』を読み始めたら気分が悪くなったので目先を変えてみました。

兵法者・新九郎と、博打で糊口をしのぐ坊主・愚息。4つの椀を伏せた中のどれかひとつに石を入れ、それがどこにあるかを賭けさせる。最初にふたつの空の椀を開け、相手が賭けた椀か、残りの椀のいずれかに石がある状態で「変えなくていいか」と問う。変えても変えなくても確率は五分五分。と思って何度も賭けを繰り返すと…?

登場人物は、信長を含めて決して善人とはいえず、アクの強い連中だが、なぜか憎めない。それどころかカッコいいかも。男も女もカッコいいのです。そう、そこが『ヒートアイランド 』とちがいます。

物語は、光秀が織田家に取り立てられ出世するところまで。本能寺の変は描かれていないのがいい。いまさら、ですから。

エピローグで「光秀の定理」が明かされます。ぜひ!

お勧め度:★★★★★

2014年10月 3日 (金)

タラ・ダンカン 11 宇宙戦争 (ソフィー・オドゥワン=マミコニアン)

タラ・ダンカン11 宇宙戦争 上

タラ・ダンカン11 宇宙戦争 下
タラ・ダンカン11 宇宙戦争』はシリーズ第11弾。いつものように上下2巻に分かれての刊行です。当初は10巻で完結予定だったのが12巻までの延長戦となり、今回はなんと「宇宙戦争」。なんだか収拾がつかなくなりそうで心配です。

シリーズの最新刊が出るのを待って読むのも楽しいですが、シリーズ完結後、一気読みしたほうが、物語の流れや人物名を忘れずに済むというメリットがあります。これまでに登場した人物や出来事の伏線を拾い、宇宙にぶちまけて(風呂敷を)畳んでいくつもりなのでしょうが「これ、誰?」ということが多々あって苦労します。各巻の冒頭に「おもな登場人物」や「これまでのあらすじ」が載っているので、そこを読めば大体はわかります。

魔法が使えない地球が存在する宇宙とは別に「別世界」(オートルモンド)と呼ばれる魔法世界があり、そこが物語の中心。また別に悪魔たちの宇宙があって、そこから6つの惑星が「別世界」の近くに突然ワープしてきたのです。すわ、総攻撃かと慌てたタラたちですが、悪魔たちは攻撃してくる気配がありません。なぜ?

しかし、悪魔たちは裏でしっかり悪巧みをしています。話を聞いていると「ひどい、悪魔だ!」。(笑)

その悪魔に向かってタラいわく「人間はかしこいんですよ。悪賢いともいえますがね。腹黒くて、誠実で、裏切り者で、そして高慢で。ええ、人間はありとあらゆる欠点を備えていると同時に、ありとあらゆる美点ももっているんですよ。愛や友情を大切にするという長所もね。だから、あなた方悪魔は決して人間に勝つことはできません。ドラゴンとあなた方はよく似てるわ。どちらも権力ばかり追い求めている。人間はもっと複雑で、もっとさまざまな価値をこの世界に求めています」。あくまで比較の問題ですけどね。

そもそも悪魔たちが「こちら側」に逃げてきた理由が問題。太陽が不安定になったからと言っていますが、それとは別になにかを恐れているようです。真相を探るべくタラたち魔法ギャング団は敵地に潜入するのですが…。

次巻で完結。といっても来年かぁ。(ため息)

お勧め度:★★★★☆

2014年10月 1日 (水)

警官の条件 (佐々木譲)

警官の条件 (新潮文庫) 警官の条件』は長編警察小説『警官の血』の続編。

戦後の混乱期に警察官となった祖父、父、そして息子の安城和也は「悪徳警官」加賀谷仁の内偵のため、彼の部下となり、上司を売った。加賀谷は覚醒剤所持の容疑で起訴され、その後三浦半島に引きこもって9年…。

安城和也は警部に昇進し、組織犯罪対策部第一課の係長に抜擢され、覚醒剤の流通ルート解明に奔走するが、捜査員に犠牲が出てしまう。そして、成果を求める上層部は加賀谷を復職させたのです。

かつて自分を嵌めて追い払った警視庁の身勝手な頼みをなぜ加賀谷は聞いたのか。彼は安城和也に対してどういう思いを抱いていたのか。彼の心中を思いつつ読むと、加賀谷が男らしく、かっこよく見えてきます。

長い小説ですが、彼が復帰した後半が面白い。「警官の条件」とはなにか、考えながら読んでみてください。

お勧め度:★★★★☆

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