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2014年9月

2014年9月30日 (火)

銀漢の賦 (葉室凛)

銀漢の賦 (文春文庫) 銀漢の賦』は、西国の月ヶ瀬藩に生まれた3人の男たちの物語。郡方・日下部源五、家老にまで出世した松浦将監、百姓の十蔵。源五と将監の物語だと思われがちですが十蔵は外せません。

重い年貢に苦しむ百姓を代表して一揆を企てた罪で命を落とした十蔵。友を見捨てた将監に対して源五は絶縁状を送りつけ、その後行き来は絶えてしまいました。

が、源五が20年ぶりに出会った将監は病を抱えており、政治的にも肉体的にも先は永くないと悟っており、源五にとんでもないことを頼んできたのです。

複雑な藩の事情がすこしずつ語られ、3人の男たちの立場が鮮明になってきます。まるで天の川(銀漢)を見上げると、そこにくっきりと星座が見えるように。

切ない物語なのですが、源五の娘婿・伊織はひょうきんで面白い。各々がしっかり生き、各々の役割をしっかり果たした時代小説。そんな印象を受けました。

お勧め度:★★★★★

2014年9月29日 (月)

ラバーソウル (井上夢人)

ラバー・ソウル (講談社文庫) ラバー・ソウル』は新宿東口の紀伊国屋書店で平積みされていたのが眼に留まり、ビートルズの曲名が各章のタイトルになっていることに惹かれたのです。ただ、ビートルズが下敷きになっているだけで直接的な記述はほとんどありません。ビートルズファンは過渡に期待なさいませんよう。

しかも、主人公は引きこもりの、気持ち悪いストーカーじゃないですか。親が金持ちで、お抱え運転手が頼めばなんでもやってくれるから余計にたちが悪い。しかも、警察の事情聴取のような一人称の語りで進んでいく。すべてが終わったあとで思わせぶりな話を聞かされるのは、わたし苦手(嫌い)なんです。

でも「驚愕のラスト、切ない純愛、覆る価値観」という帯の宣伝文句につられて、なんとか最後までページを繰りました。

結果、見事に嵌められました。オセロで最後にコーナーを取られて負けた気分。悔しいけれど(価値観は覆らなかったので)この長編をもう一度読み返す気にはなれませんでした。

お勧め度:★☆☆☆☆

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2014年9月28日 (日)

地下鉄に乗って (浅田次郎)

地下鉄に乗って (講談社文庫) 地下鉄に乗って』はは『鉄道員(ぽっぽや) 』の浅田次郎の小説。そういえば、どちらも鉄道が舞台で、どちらもちょっと不思議なことが起きます。

父親に反発し、家を出た主人公が、戦前、戦中の父に再会するタイムトリップミステリー。地下鉄の駅の階段を上がると、そこは30年前の東京。出征を見送る人々だったり、戦後の闇市だったりするのですが、電話だけは現代にかかります。

サイエンスフィクションではないのでタイムスリップの理屈はどうでもよくて、主人公が自殺した兄に出会ったとき「兄はなぜ自殺したのか」を知りたくて、あとを追うのですが…。

昔の銀座線を知る方にはなつかしいことでしょう。

お勧め度:★★★☆☆

2014年9月26日 (金)

コップクラフト 3 (賀東招二)

コップクラフト 3 (ガガガ文庫) コップクラフト 3』はシリーズ第3弾。今回はティラナが高校生として潜入捜査。ふつう20歳にもなって制服着ると似合わないのですが、表紙絵では似合い過ぎてて怖い。グリーンの長いケースには剣が入っている模様。

裕福な家庭の子女が通うシャーウッド高校の女生徒が死体で発見され、麻薬の使用が疑われたのです。そこで潜入したティラナは、おなじセマーニ人であるナイアスと出会います。彼は友人のノルネが最近学校に来ないことを心配しているのですが、まさか殺されたとも言えず…。

ティラナがサンテレサ市警と地球の常識に馴染んできたために、当初の違和感は和らいだものの、ぶっ飛んだ存在感が薄れて寂しい。無いものねだりとはわかっていますが。

このシリーズはまだ続くのでしょうか。

お勧め度:★★★☆☆

2014年9月24日 (水)

コップクラフト 2 (賀東招二)

コップクラフト2 (ガガガ文庫) コップクラフト2』はシリーズ第2弾。宇宙人美少女騎士ティラナは、なぜかサンテレサ市警の刑事として採用され、ケイ・マトバの相棒となったのです。しかも、住む場所のないティラナは、倉庫街にあるケイの住まいに居候。ひとりと一匹と暮らすことになったのでした。

今回は、エロ本窃盗団を捕まえろ!

ティラナの世界には写真がないのでエロ本もありません。だから、大量に持ち込んで大儲けしようという輩も出るわけ。生まれて初めてそんなものを見たティラナは…?

ケイの新しい愛車は黒いマセラティ・クーペ。いいですねぇ。どっかんターボのビトゥルボあたりが理想ですが、かっこいいから許します。しかし「長持ちしないだろうな」と思っていたら…。

お勧め度:★★☆☆☆

2014年9月22日 (月)

コップクラフト 1 (賀東招二)

コップクラフト (ガガガ文庫) コップクラフト』は『フルメタル・パニック!』の賀東招二が書いたということで興味がありました。

表紙絵は『タラ・ダンカン』でもおなじみの村田蓮爾。彼が女性を描くと、幼女っぽくなってしまうようですが、ティラナの設定にはぴったり、かも。

そのティラナ・エクセディリカは宇宙人。異世界とつながったゲートを通ってきたとか。向こう側から「誘拐」された妖精を連れ戻すため、サンテレサ市警の刑事ケイ・マトバと協力して捜査することになったのですが…。

マトバはフィリップ・マーロウをイメージしたのか、猫を飼っているのですが、じつは猫アレルギーだとか。だったらムリに猫を出さなくてもいいのに。どうにも世界観がちぐはぐ。

エドマクベインの「87分署シリーズ」のように、都会のダウンタウンやスラムを舞台にしながら、そこへ異世界の美少女騎士を放り込んだものだから違和感がハンパない。これに慣れる(麻痺する?)ことができるかどうかが問題です。

ただ、マトバの愛車がMINI COOPER Sの(ATではなく)MTなのはうれしい! でも、どうせなら同じBMWでも、1980年代のM6をMTで乗ってほしかったなぁ。

お勧め度:★★☆☆☆

2014年9月20日 (土)

神様のメモ帳 9 (杉井光)

神様のメモ帳 (9) (電撃文庫) 神様のメモ帳 (9)』はシリーズ最終巻。ついにアリスの秘密が明かされます。

アリスの本名は紫苑寺有子。姉の紫苑寺茉梨が鳴海に接触してきて、紫苑寺の遺産相続問題に巻き込まれます。

当主である、祖父の光厳が亡くなると、甥の光紀(アリスの父)が相続するのですが、光紀は植物状態。アリスも茉梨も相続権は放棄するから放っておいてほしいと主張するのですが、自由にはさせてもらえません。光厳の命はもって明日までということで鳴海も病院から帰してもらえず、アリスとも離ればなれになっているうちに殺人事件が…。

読んでいるうちに「神メモ」の雰囲気を思い出してきました。テツ、ヒロ、少佐、四代目、ミンさん、彩夏らは相変わらず。鳴海のグダグタ、ウダウダ、泣き言も「あぁ、こういう奴だった」。ちょっとイライラしつつも、アリスがかわいいから許します。

お勧め度:★★★★★

2014年9月18日 (木)

ひなこまち (畠中恵)

ひなこまち ひなこまち』は「しゃばけ」シリーズ第11弾。
  1. ろくでなしの船箪笥
  2. ばくのふだ
  3. ひなこまち
  4. さくらがり
  5. 河童の秘薬

「助けてください」と書かれた木札を手に入れた若旦那が、その困っている人(妖?)を助けようと思案、奔走する連作短編集。

お勧め度:★★★☆☆

2014年9月16日 (火)

やなりいなり (畠中恵)

やなりいなり (新潮文庫) やなりいなり 』は「しゃばけ」シリーズ第10弾。
  1. こいしくて
  2. やなりいなり
  3. からかみなり
  4. 長崎屋のたまご
  5. あましょう

各章にひとつずつレシピがついています。小豆粥、やなり稲荷(寿司)、栄吉の揚出し芋、長崎屋特製ゆでたまご、お酒大好き妖の味噌漬け豆腐。なんだか「みをつくし料理帖」みたい。

ひさしぶりの「しゃばけ」シリーズは、とってものんびり、ほのぼの系時代小説。刺激を求めるのではなく、くつろぎたいときに向いています。

怖くない妖怪に会いたいときに読んでみてください。

お勧め度:★★★☆☆

2014年9月14日 (日)

米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす (マシュー・アムスタ・バートン)

米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす 米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』は、シアトルから妻と娘といっしょに東京・中野のアパートで一ヶ月暮らした、食にまつわる体験記。

これは日本人が読むことを想定しておらず、あくまで米国人に「東京という街を知ってほしい」と書いたことがよくわかります。アメリカ人らしいユーモアが、いかにも翻訳調で伝わってきて笑えます。
  1. お茶
  2. 中野
  3. ラーメン
  4. 世界一のスーパー
  5. 朝ご飯
  6. 豆腐
  7. 東京のアメリカンガール
  8. ラッシュアワー
  9. 焼き鳥
  10. ほっとする街
  11. 天ぷら
  12. チェーン店
  13. うどんとそば
  14. カタカナ
  15. 鍋物
  16. お風呂
  17. 餃子と小籠包
  18. お好み焼き
  19. 居酒屋
  20. たこ焼き
  21. 洋菓子
  22. うなぎ
  23. 浅草
  24. 帰国する

娘のアイリスは緑茶が苦手らしい。わたしが青汁を勧められた感覚と似ているかもしれません。(笑)

「小麦でできた細い麺を使ってさえいれば、なんでもラーメンと呼ぶことができる」って、たしかにそうなんだけどと苦笑したり、ラーメン屋の券売機では意味がわからなくて困るだろうなと同情したり、と退屈しません。

アメリカ人から見た東京って新鮮。しかも、これだけ(パチンコ屋を除いて)好意的に書いてもらえると日本人として嬉しい。東京でひとり暮らしを始めた長男に送ってやるつもりです。

今度東京へ行ったら中野を探検してみようと思います。

お勧め度:★★★★★

2014年9月12日 (金)

生徒会探偵キリカ 3 (杉井光)

生徒会探偵キリカ3 (講談社ラノベ文庫) 生徒会探偵キリカ3』はシリーズ第3弾。1〜2巻は次男に借りて読んでずいぶん時間が経ってしまいましたが、図書館で見つけて懐かしくて借りてきました。

巨大学園を牛耳る生徒会役員として、ひと癖ある美少女たちに囲まれた主人公が振り回される学園ラブコメ。なんといってもツッコミが愉快。

実際は、引きこもり会計担当キリカが「生徒会探偵」として活躍するお話なのですが、それよりもツッコミどころ満載のキャラたちと主人公ひかげのツッコミが面白い。あ、今回の事件は「カンニング疑惑」と「プールにスク水ぶっちゃけ事件」です。

久々に楽しませてくれたラノベでした。

お勧め度:★★★★☆

2014年9月10日 (水)

ジウ 3 〜新世界秩序 (誉田哲也)

ジウ〈3〉新世界秩序 (中公文庫) ジウ〈3〉新世界秩序』は「ジウ」シリーズ第3弾、完結編。

ジウたちは街頭演説中の総理大臣を拉致し、封鎖した歌舞伎町における治外法権を求める。その拉致に協力したのがSATだった…って、これ、警察庁長官の辞任どころじゃ済みません。

ジウとは何者なのか。殺人を認める「新世界秩序」とは一体なんなのかが、本シリーズで明かされるべき謎だったのですが、幼い子供を何度も誘拐し、大勢殺しておきながら、結末がぬるい。ぬるすぎる。とても納得できません。

いくらフィクションでも何をやっても許されるわけではないと思います。納得できない理不尽は忘れられません。『万能鑑定士Qの事件簿』『船に乗れ!』とあわせて、お勧めできない本の3冊(シリーズ)目となりました。(ただし、これはあくまでわたしの個人的な感想です。)

2014年9月 8日 (月)

ジウ 2 〜警視庁特殊急襲部隊 (誉田哲也)

ジウ〈2〉―警視庁特殊急襲部隊 (中公文庫) ジウ〈2〉―警視庁特殊急襲部隊』は『疾風ガール 』や『武士道シックスティーン 』の作者の手になる警察小説、かと思いきや、これはホラーサスペンスです。暴力と狂気の世界。心臓の弱い人は避けたほうがいい。

冒頭から語り手不明の昔語りが挿入されます。麻薬漬けの無法な村で育った少年の追想らしいのですが、これがもう悪夢の世界。胸が悪くなります。なんでこんなものを書いたのだろう?

ふたりの女性警察官、美咲と基子が極端に対照的。あまりに女の子らしい美咲と、狂気の殺人マシーン基子。残酷な描写は読んでいて気分が悪くなります。それでも結末を知りたいので完結編の3巻までがんばります。

2014年9月 6日 (土)

ジウ 1 〜警視庁特殊犯捜査係 (誉田哲也)

ジウ〈1〉―警視庁特殊犯捜査係 (中公文庫) ジウ〈1〉―警視庁特殊犯捜査係』は「武士道シリーズ」(『武士道シックスティーン 』『武士道セブンティーン 』『武士道エイティーン 』)の誉田哲也の警察小説。

「ジウ」というのは誘拐犯人の通称。国籍不明、正体不明。誘拐事件で人質の子供は戻ったものの、身代金5千万円は失われた。その後、発生した人質篭城事件で門倉美咲巡査を差し入れ役および説得役として投入したのは、ムリがあるよなぁ。不自然です。実際死にかけてるし…。

「武士道シリーズ」は女子剣道のライバルふたりを描く小説。こちらは大好き。のんびり屋の西荻早苗が門倉美咲巡査で、武道オタクの磯山香織が、戦闘バカの伊崎基子巡査。正反対の女子キャラふたりが反発しつつも、影響しあって進んでいくという構図に惹かれます。

しかし、そこは学生剣道の世界ではなく、容赦ない暴力の世界。えげつない描写もあります。あまり人を殺さないでほしい。(だったら読まなければいいか…)

3巻まであります。

お勧め度:★★★☆☆

2014年9月 4日 (木)

親鸞 激動編 (五木寛之)

親鸞 激動篇(上) (講談社文庫)

親鸞 激動篇(下) (講談社文庫)
親鸞 激動篇』は『親鸞 』に続く第2部。

『親鸞』を読んでから、京都に遊びに行ったときに比叡山に登ってみました。もっと早く「激動編」を読もうと思いつつ先延ばしにしていました。わたしにとって「親鸞」は重かったのです。

ところが、実際に「激動編」を手に取ると「おもしろい!」。自分でも意外でした。

世俗にまみれ、悩んだ挙句にたどり着いた念仏。恵信という妻を娶り、京から越後に流されても、1年間淡々と刑に服し、気取らず、奢らず、時に無茶をする。親鸞の人柄に惹かれる部分も大きいものの、安心して読める文章がいい。ラノベも好きだけど、イライラすることも多々あって、今回は五木寛之がオアシスとなりました。

越後で出会った外道院金剛は、乞食、病者などの穢れを厭わず、共に河原で暮らし、風呂にも入る。そこに郡司と守護代との確執が絡み、政治的対立に巻き込まれた親鸞は…。

波乱万丈で読み応えがありました。『親鸞 』を読まれた方はぜひ!

お勧め度:★★★★★

2014年9月 2日 (火)

黒書院の六兵衛 (浅田次郎)

黒書院の六兵衛 (上)

黒書院の六兵衛 (下)
黒書院の六兵衛』は、大政奉還後の江戸城が不戦開城と決したなかで、ただひとり御書院番士・的矢六兵衛が、西の丸御殿に無言の居座り続ける話。

物語の案内役は、尾張徳川家 御徒組頭 加倉井隼人。勝安房守からは、西郷隆盛との約束で、城内での乱暴は厳禁とのこと。六兵衛を無理矢理追い出すことができず、東奔西走する羽目になります。

上巻の29ページで、主人公の「六兵衛」が登場し、いつまで経っても六兵衛の正体は判然とせず憶測が飛び交うばかり。どう見ても「座り込み」なのですが、プラカードもシュプレヒコールもないので意図が不明。京都から天子様が江戸城に移られるまでには六兵衛に出て行ってもらおうとするのですが…。

何人もの「証人」が、六兵衛に関して知るところを語る独白が挿入されていて、これは小説として読むよりも舞台にしたら面白そう。タイトルは 「もうひとりのラストサムライ」。

ひとつの時代が崩れ去り、大混乱のなか、舞台裏でこんな、ささやかなドタバタがあったかもしれない。それぞれの立場で、それぞれの思いがあり、苦悩があり、矜持があり、その中で六兵衛は彼なりの思いを通そうとします。さて、六兵衛の正体は?

顛末はご自身でお確かめください。

お勧め度:★★★☆☆

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