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2014年8月

2014年8月31日 (日)

新・御宿かわせみ 4〜蘭陵王の恋 (平岩弓枝)

蘭陵王の恋―新・御宿かわせみ 蘭陵王の恋―新・御宿かわせみ』は「新・御宿かわせみ」シリーズ第4弾。
  1. イギリスから来た娘
  2. 麻太郎の友人
  3. 姨捨山幻想
  4. 西から来た母娘
  5. 殺人鬼
  6. 松前屋の事件
  7. 蘭陵王の恋
バーンズ診療所で働く麻太郎ですが「かわせみ」にも部屋を用意してもらっているらしく、いつ顔を出しても歓迎され、食事もできる。るいは、麻太郎に東吾の面影を見ているのです。しかし、それにしても甘やかし過ぎ。なにかと源太郎の世話を焼く長助も同様。

東吾が生きた江戸時代は剣技が身を助ける世界でしたが、維新後は武器を持たずに悪と闘うことになったという事情はあります。
しかし、麻太郎、源太郎ともお人好しで、後先考えないところがあります。麻太郎は、ふらっと現れた旧友を千春に会わせるようなことをしたのか。あまりにお粗末です。

でも、そうしないと千春はいつまで経っても嫁に行けず、つまりは麻太郎も嫁をもらえない。それは困るのでしょう。(だれが?)

やはり東吾がいないと、麻太郎では役不足です。るいだって可哀相。行方不明ということは戻って来る可能性もあるわけですから、ぜひ!

お勧め度:★★★★☆

2014年8月30日 (土)

新・御宿かわせみ 3〜花世の立春 (平岩弓枝)

花世の立春―新・御宿かわせみ〈3〉 (文春文庫) 花世の立春―新・御宿かわせみ〈3〉』は「新・御宿かわせみ」シリーズ第3弾。
  1. 明石橋の殺人
  2. 俥宿の女房
  3. 花世の立春
  4. 糸屋の女たち
  5. 横浜不二山商会
  6. 抱卵の子

7日後の立春に、源太郎と結婚すると宣言した花世。あまりの無茶振りに周囲はおおわらわ。しかし、こんなはねっかえりのじゃじゃ馬を嫁にしたら苦労しますよ、源太郎くん。(余計なお世話?)

しかし、警察でもないのに殺人事件に巻き込まれる(首を突っ込む)麻太郎と源太郎(&花世)たち。金銭欲、物欲、名誉欲、愛欲、情欲…欲にまみれた者たちの殺し合いは見るに耐えません。時代は違っても、佐々木嬢の警察小説と変わりません。

それでも読みたいと思うのは、ひどい事件に裁きをつけ、収めていこうとする、まっすぐな登場人物がいるからです。

お勧め度:★★★★☆

2014年8月28日 (木)

新・御宿かわせみ 2 〜 華族夫人の忘れもの (平岩弓枝)

華族夫人の忘れもの―新・御宿かわせみ〈2〉 (文春文庫) 華族夫人の忘れもの―新・御宿かわせみ〈2〉』は『御宿かわせみ 』シリーズを34巻で終え、明治時代を描く新シリーズ第2弾。『新・御宿かわせみ 1 』は神林東吾が行方不明になったあとの「御宿かわせみ」が寂しく、どうもピンと来なかったのですが、久しぶりにココに戻ってくると、やはり心地いいんです。
  1. 華族夫人の忘れもの
  2. 士族の娘
  3. 牛鍋屋あんじゅ
  4. 麻太郎の休日
  5. 春風の殺人
  6. 西洋宿館の亡霊
見習い医師の神林麻太郎と、法律家志望の私立探偵・畝源太郎が、往診に出向いた先やら、花世に丸投げされたりしながら、巻き込まれた事件を解決していく物語。るいの娘・千春もすっかりかわせみの若女将が板についてきました。今後が楽しみです。

お勧め度:★★★★☆

2014年8月26日 (火)

遙か凍土のカナン 3 石室の天使 (芝村 裕吏)

遙か凍土のカナン3 石室の天使 (星海社FICTIONS) 遙か凍土のカナン3 石室の天使』はシリーズ第3弾。毎回表紙絵の「お姫様」が変わります。

良造とオレーナは、旅の仲間グレンと、村の移転先を探すジニと共に砂漠を往く。ふと立ち寄った砂漠の谷間に豊かな緑を発見し、ジニの村をここに移転すべきかどうか相談するために村の者を連れて来るとジニとグレンは去って行き、良造はオレーナとふたりきり残ります。

良造は釣りが大好き。釣りのついでにあたりを調べていた良造は、山の上に石室を発見。そこには女がひとりで暮らしているらしい。が、まったく言葉が通じず、女を怯えさせてしまった詫びに魚を置いて帰る。そんなことを繰り返しているうちに女に好かれてしまう、というラノベ展開。しかも、彼女は「ジブリール」(天使)と名乗ったのです。

完結済『マージナル・オペレーション 』の主人公「アラタ」が、良造の孫だとしたら、ここで登場するジニとジブリールは世代としては祖母!? さて、ジブリールも旅の仲間に加わるのでしょうか…。

本の帯には「寄り道の終わり」とありましたが、かなり強引に終わらせた感じ。でも、ぐたぐた引っ張っても仕方ありません。次巻が楽しみです。

お勧め度:★★★★☆

2014年8月25日 (月)

遥か凍土のカナン 1 (芝村裕吏)

遙か凍土のカナン1 公女将軍のお付き (星海社FICTIONS) 遙か凍土のカナン1 公女将軍のお付き』は『マージナル・オペレーション』の作者の最新作。

日露戦争に従軍した騎兵中尉(のちに大尉)新田良造は、ロシア人将校クロパトキンに紹介されたというウクライナ・コサックの公女オレーナと共に旅をすることになります。

前半は塹壕でのロシア兵との生々しい戦闘シーンが続きますが、中盤に金髪碧眼の美少女オレーナが登場してパッと明るくなります。彼女は良造と結婚するつもり で日本までやって来たようですが、良造は「オレーナを幸せにする」ために協力するつもりが、それがなぜか対ロシアの極秘任務となってしまったのです。

明治時代の日本へやって来たオレーナは、周囲の好奇の目に晒され、木と紙の家にカルチャーショックを受け、それでも次第に良造に惹かれていきます。「ツンデレ」口調は『大日本サムライガール 』の日毬そっくり。このあたりはラノベらしさを満喫できます。女心がわからない良造にとって、拗ねたオレーナは「可愛い意味 不明」。明治の軍人らしい朴訥さです。しかし、蕎麦を食べようかというときに(蕎麦とは)「枕にもするし、食べるし、お茶にもする」なんて説明は大雑把すぎ。おかげでオレーナは大混乱。(笑)

2人と1頭と1匹は、横浜から船に乗りマルセーユを目指しますが、途中上海に寄港した際に…。

2巻が楽しみです。

お勧め度:★★★★★

2014年8月24日 (日)

河原町ルヴォワール (円居挽)

                         
河原町ルヴォワール (講談社BOX)河原町ルヴォワール』は「ルヴォワール」シリーズ第4弾、完結編です。
      
      賀茂川と高野川が合流して鴨川となる中州「鴨川デルタ」で、龍樹落花がある人物と会ったのち濁流に流され水死体で発見された。って、えええぇ〜、落花が死んだ!?
      
      ショックです。落花が死ぬなんて…殺されても死なないと思ってたのに…。(どんなだ?)
      
      警察は事故として処理しましたが、落花の妹・撫子は、最後に落花と会っていた兄・大和を犯人として私的裁判・双龍会に告発。大和の弁護人は城坂論語。撫子の元カレが敵に回るとは、なんとも気の重い話です。
      
      前巻『今出川ルヴォワール 』から時間が経って、かつての登場人物の記憶が曖昧で困りました。全4巻で完結したので、これから読む方はできるだけ続けて読まれたほうがよろしいかと。ただ、双龍会は「言ったもん勝ち」「事実はどうあれ説得力があればいい」という世界なので、ドンデン返しの連続です。慌てず、じっくり楽しみながら読んでください。
      
      今回、双龍会を仕切ってきた、京都一の権力者・黄昏卿の秘密も暴かれます。さて、黄昏卿とは一体何者なのか?
      
      秘密を抱えているのは黄昏卿だけではなく、いま読み終えて胸を撫で下ろしているところです。よかったね、撫子ちゃん!
      
      お勧め度:★★★★★

2014年8月22日 (金)

植物図鑑 (有川浩)

植物図鑑 (幻冬舎文庫) 植物図鑑』は、野草摘みと料理のお話。問題は、その設定。「天空の城のラピュタ」で、少女が空から降ってくるなら、行き倒れたイケメンを拾ってもいいだろうって、なんじゃそりゃ!?

「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。噛みません。躾のできた良い子です」

「図書館戦争」のベタ甘を期待したわけではないのだけれど、26歳の独身OLと、野草フェチの料理上手な家政夫が同居するなら、これは恋愛ものでしょう。でも、どうにもあざとい感じがする。いかにも「こういうのがいいのでしょう?」みたいな。

それと「料理する」を「料る」っていうんです。それなら「調理する」は「調る」、「管理する」は「管る」、「審理する」は「審る」?

野草を「狩って」食べてみたい方にお勧めします。

お勧め度:★★☆☆☆

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2014年8月21日 (木)

前世への冒険〜ルネサンスの天才彫刻家を追って (森下典子)

前世への冒険 ルネサンスの天才彫刻家を追って (知恵の森文庫) 前世への冒険 ルネサンスの天才彫刻家を追って』は、小説家・森下典子が「あなたの前世はルネサンス期に活躍したデジデリオという美貌の青年彫刻家です」と告げられ、その真偽を確かめるルポルタージュです。

本人も「騙されてるのでは?」と疑いつつ調査を進め、最後はイタリアとポルトガルに向かいます。その行動力には頭が下がりますが、それだけ気になったのでしょう。「でたらめではないらしい」とわかれば、こうしてネタにもなるわけですし。

しかし、筆者の性格なのか、あまりに真面目なのです。もうすこしユーモアを交えて、おもしろおかしく書いてもらえたら楽しめたかも。

輪廻転生を信じる方にお勧めします。

お勧め度:★★☆☆☆

2014年8月19日 (火)

すかたん (朝日まかて)

すかたん (講談社文庫) すかたん』は、東京で公務員と結婚した娘が、大阪転勤後、夫を亡くし、不慣れな土地で婚家からも追い出され、途方に暮れる物語…を江戸時代風にアレンジした小説。

始終喧嘩してるくせに野菜と食べ物に対する愛という点だけでは一致する、青物問屋河内屋の若旦那・清太郎と、江戸の未亡人・知里のドタバタ人情物語。

主人公の名前が知里(ちさと)と現代でも通用する名前だということもあって、どうも江戸時代の話だと思えません。侍言葉だと時代を感じますが、町人、商人たちばかりなので大阪弁といっても、これが現代小説だとしても通用する言葉遣いなのです。

「すかたん」なんて聞いたの、すごく久しぶり。遠回しに「ドジ、まぬけ!」って言われたようなものだから、書名としてはインパクトがあります。

大阪弁を文字にすると平仮名が多くなって読みにくくなることが多いのですが『すかたん』は上手い! 読んでいると大阪弁のイントネーションが戻ってきます。

文章も上手なら、話のまとめ方も上手い。大阪を舞台にした、よく出来た「時代小説」です。

お勧め度:★★★★★

2014年8月18日 (月)

宣戦布告 (麻生幾)

加筆完全版 宣戦布告 上 (講談社文庫) 加筆完全版 宣戦布告 上』は、北朝鮮の工作員が密入国し「すわ戦争勃発か!?」という事態に日本政府がオタオタするという小説。

面白そうだと思って鶴舞図書館で借りてきたのですが、冒頭、2枚の写真の人物が同一人物だと判断できるというだけのことを、科捜研の博士が延々しゃべる下りで挫折。うしろのほうのページをぱらぱら繰ると、霞ヶ関の役人たちが「それは無理だ」「うちでは対応できない」と逃げ腰、弱腰、責任逃れに終始している様子。あきれ果てて本を閉じました。日本は戦争したら負けます。やめたほうがいいです。

ただ、気になるので機会をあらためて読んでみようと思います。

2014年8月17日 (日)

いとしいたべもの (森下典子)

いとしいたべもの (文春文庫) いとしいたべもの』は懐かしい食べ物エッセイ集。素朴なイラストもいい。作者と同年代なので「そうそう!」と、楽しく読ませていただきました。
  1. オムライス世代
  2. くさやとパンデラス
  3. わが人生のサッポロ一番みそラーメン
  4. カステラに溺れて
  5. ブルドックソース、ちょうだい!
  6. 端っこの恍惚
  7. 水羊羹のエロス
  8. カレー進化論
  9. 父と舟和の芋ようかん
  10. 今年もやっぱり、秋がきた…。
  11. それは日曜の朝、やってきた
  12. 夜更けのどん兵衛
  13. 漆黒の伝統
  14. 黄色い初恋
  15. 茄子の機微
  16. 七歳の得意料理
  17. 鯛焼きのおこげ
  18. カレーパンの余白
  19. かなしきおこわ
  20. 幸せの配分
  21. この世で一番うまいもの

舟和の芋ようかんは東京駅のキオスクで見たことがあるのですが、前回東京に行ったときに買いそびれてしまったのです。次こそは!(笑)

お勧め度:★★★☆☆

2014年8月16日 (土)

萩を揺らす雨〜紅雲町珈琲屋こよみ (吉永南央)

萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫) 萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ』は、杉浦草というおばあちゃんが営む、珈琲豆と和食器のお店「小蔵屋」を舞台に、なにげない日常のなかで、お草さんが謎を解決していくお話。

上越新幹線沿線で、丘の上に白い観音様が立っているということは、群馬県高崎市でしょうか。

息子を3歳で亡くし、身体は無理が効かないらしく、複雑な思いを抱え、リアルなのはよいのですが、重たいのです。楽しむために読んでいる本でどんより暗くなっては意味がありません。私の好みには合いませんでした。(残念)

2014年8月14日 (木)

フェッセンデンの宇宙 (エドモンド・ハミルトン)

フェッセンデンの宇宙 (河出文庫) フェッセンデンの宇宙』は有名なSF短篇小説、らしいので読んでみました。以下、12編を収録。
  1. フェッセンデンの宇宙
  2. 風の子供
  3. 向こうはどんなところだい?
  4. 帰ってきた男
  5. 凶運の彗星
  6. 追放者
  7. 翼を持つ男
  8. 太陽の炎
  9. 夢見る者の世界
  10. 世界の外のはたごや
  11. 漂流者
  12. フェッセンデンの宇宙(1950年版)
鏡に映る自分は、ふつう虚像だと思っています。その虚像を見ている自分が実体だと認識しているわけです。でも、本当にそうでしょうか? というところからSFは始まります。第一印象は、星新一のショートショート。ブラックユーモアが効いています。

表題作「フェッセンデンの宇宙」は、自宅に引きこもって大学に出て来なくなった同僚の研究者を訪ねた主人公は、研究室内に作り上げたという疑似宇宙を見せられます。望遠鏡(顕微鏡?)を覗くと、そこには惑星上の生物の営みが見えるのです。そこへ友人はレーザー光線でちょっかいを出して…。

途中でオチがわかってしまうものもありますが、なにが幸せなのか考えてしまうお話もちらほら。気軽に読める短編集ですので、機会があれば是非手に取ってみてください。

お勧め度:★★★★☆

2014年8月12日 (火)

天の梯〜みをつくし料理帖 10 (高田郁)

天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-12 時代小説文庫) 天の梯 みをつくし料理帖』(そらのかけはし)は「みをつくし料理帖」シリーズ第10弾、完結編です。楽しみにしていたのですが、終わってしまうのは寂しい。
  1. 結び草〜葛尽くし
  2. 張出大関〜親父泣かせ
  3. 明日香風〜心許り(こころばかり)
  4. 天の梯〜恋し粟おこし
故郷の大坂で大水害に遭い、両親を失い、料理屋に拾われ、ご寮さんと江戸暮らし。幼なじみの野江が吉原に売られたことを知って苦悶しつつも料理人として精進してきた澪。

「食は、人の天なり」。健康に良いものを、おいしく、気軽に食べてもらいたい。それが澪の目指す料理道。

しかし、野江を身請けするには4千両が必要。ちまちま料理を作って売っていたのでは何年かかることやら。本書の後半に入っても解決策がまったく見えなくてやきもきしましたが、どうかご安心を。最終コーナーでぶっちぎり、ハッピーエンドとなります。どういう展開になるのかは読んでのお楽しみ。

巻末には、約10年後の料理番付が綴じ込んであって「ほんとうによかったなぁ」としみじみ。文句無しの5つ星です。

お勧め度:★★★★★

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2014年8月11日 (月)

忍びの国 (和田竜)

忍びの国 (新潮文庫) 忍びの国』は、織田信長の次男・信雄軍と、百地三太夫の伊賀軍団との戦いを描いたエンターテイメント歴史小説。

しかし「伊賀軍団」というよりは「金のためなら何でもやる、人情を解さない連中」。そんな中でも飛び抜けた腕前を持つ忍び「無門」は敵地から美貌の妻女「お国」を連れ帰ってきたものの、稼ぎが悪く「約束がちがう」と家(祖末な百姓家)から追い出される始末。それでも無門はお国の機嫌を取ろうと必死で金を稼ぐ。

伊賀者がどんな技を持っていたかは知りませんが「無門はプレデターか!?」と思うほど、ありえない戦いぶり。

万城目学の『とっぴんぱらりの風太郎 』の主人公・風太郎も伊賀ものですけど、人の心は持っていますし、いざというときにはがんばります。フィクションとしては面白いのですが、伊賀ものをここまで悪し様に書いた本は初めてなので面食らいました。

お勧め度:★★★☆☆

2014年8月10日 (日)

水の城 いまだ落城せず (風野真知雄)

水の城―いまだ落城せず 新装版 (祥伝社文庫) 水の城―いまだ落城せず』は『のぼうの城 』(和田竜)同様、石田三成にも落とせなかった忍城(おしじょう)を描いた時代小説。

5万の大軍勢を相手に、城の周囲の領民たちを含め、たった3千人で城を守った驚異。よほど優れた城代がいたのだろう、と思いきや、成田長親はどう見ても凡庸な人物。これは一体どういうことなのだろう?という疑問から書かれた小説です。

対する『のぼうの城 』は長親を百姓にも「(でく)のぼう様」と呼ばれるとぼけた人物として描いています。風野真知雄のほうが真面目でわかりやすいけれど、和田竜のほうが面白い、とわたしは思います。

お勧め度:★★★☆☆

2014年8月 9日 (土)

のぼうの城 (和田竜)

のぼうの城 上 (小学館文庫)

のぼうの城 下 (小学館文庫)
のぼうの城 』は『村上海賊の娘 』の和田竜の作品。

成田長親は農作業が好きで、領地に出かけては手伝おうとするのだが、不器用で要領が悪く、逆に農民の足を引っ張ってしまう。おかげで「でく・のぼう」の「のぼう様」と呼ばれる始末。

そこへ豊臣秀吉の北条攻めが始まり、のぼう様の忍城にも石田三成の軍勢が攻めてくる。それを正木丹波、柴崎和泉、酒巻靱負ら、勇猛な家臣らが押し返すが、三成はとんでもない作戦に打って出る。

出版社は「戦国エンターテインメント小説」としていますが、多くの資料にあたり、取材を重ねた結果(解説)があちこちに挿入されているため、歴史小説の色合いが濃い。そのため「エンターテイメント」が途中で腰を折られることもしばしば。NHKの大河小説の「語り」くらいに抑えてもらえればよかったのですが。

それでも、単なる馬鹿なのか、器がでかいのか、底の知れない「のぼう様」は興味深い。一体どんな人物なのか知りたくて最後まで読んでしまいました。

お勧め度:★★★★☆

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2014年8月 7日 (木)

折れた竜骨 (米澤穂信)

折れた竜骨 上 (創元推理文庫)

折れた竜骨 下 (創元推理文庫)
折れた竜骨 』はライトノベル『氷菓 』シリーズの作者の手によるファンタジックミステリー。

十字軍遠征下の欧州。ロンドンから3日ほど北海を進んだあたりに浮かぶソロン諸島が舞台。ここはヴァイキングのデーン人の土地だったのを奪い取ったもので、それを「呪われたデーン人」が取り戻しに来るといい、領主は傭兵を雇い入れようとしていた矢先に殺され…。

その殺人の前日、領主に暗殺騎士の危険を知らせにやってきたのが、聖アンブロジウス病院兄弟団の騎士ファルク・フィッツジョンと小柄な従者ニコラ・パゴ。ファルクいわく、暗殺騎士に「走狗」の呪いをかけられた人間が無自覚に領主を殺して忘れてしまったのだろうと、領主の娘アミーナに告げます。彼らは暗殺騎士を倒すことが使命であり、走狗は放置しておくと数ヶ月で死んでしまうため、その命を救うことも使命のうちとのこと。そこで、アミーナは父の仇である走狗を捕えることをファルクに依頼するのです。

つまり、父親を殺された娘が探偵を雇ったわけです。

そう考えるとすっきりして読みやすくなります。中盤までは聞き込みばかりで退屈。戦闘を含む終盤が見所。最後はサプライズが待っています。

呪われたデーン人といえばヴァイキング。宿敵の魔術師が世に仇為すとき蘇って戦うヴァイキングたちが主人公の『疾風魔法大戦』は、あっけらかんと愉快な作品でした。それに対して今作でのデーン人はまるでゾンビです。

もうすこし短くまとめていただけると読みやすかったかな、と。

お勧め度:★★★☆☆

2014年8月 6日 (水)

ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 外伝南海漂流編 (柳井たくみ)

ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 外伝南海漂流編 ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 外伝南海漂流編』は『ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり』3部作の外伝その1。

異世界と銀座をつなぐ「門」(ゲート)が封鎖されて5ヶ月。帝国は日本との戦争により弱体化し、各地で紛争が起こっていました。いずれ帝国の女王(女帝)となるピニャ、ハミルトンらと、菅原、伊丹ら日本使節団は海路トゥマレンへ向かったのですが、途中、座礁し、ピニャと伊丹が救命艇で流され行方不明になってしまい…。

なぜか人魚たちに救われる、というファンタジックなストーリー。伊丹が行方不明との連絡を受け、アルヌスで留守番していたロゥリィ、テュカ、レレイ、ヤオらは救助ヘリに飛び乗って伊丹の捜索に加わります。

しかし、ラノベのお約束とはいえ、あまりパッとしない伊丹が異界の美女たちにこうも熱烈に好意を持たれるというのは納得できません。どうやってオチをつけるのでしょうか。「ハーレム」オチしかないと思わせておくのがオチなのかも。

この外伝ではとくに物語の進展はありません。あくまで「こぼれ話」ですし(本編同様)政治向きの話題は緊迫感に欠けていて退屈。政治絡みのラノベとしては『大日本サムライガール 』が面白い。

「ゲート」の世界が好きで、その後の伊丹たちの様子を覗いてみたい方にお勧めします。

お勧め度:★★★☆☆

2014年8月 5日 (火)

輝天炎上 (海堂尊)

輝天炎上 (角川文庫) 輝天炎上』は『螺鈿迷宮』の続編。そして『ケルベロスの肖像』をダブル留年医学生・天馬大吉から見たお話。う〜ん、暗い!

碧翠院桜宮病院が全焼し、桜宮一族は東城大学病院に対して恨みを残して死んだ…はずだったのですが、小百合かすみれのどちらかが生きている可能性がある。すみれと浅からぬ縁がある天馬は、ゼミの課題として「日本の死因究明制度」を調べるため関係者に取材を行っていくうちに核心に迫るのです。

天馬とコンビを組む優等生美少女・冷泉深雪が可愛い。天馬の幼なじみ・別宮葉子が登場すると怪しい空気が漂いますが、果たして恋に発展するのか。そして、
小百合は生きているのか!? 天馬はどうだっていいです。

後半になると『ケルベロスの肖像』と合流するので新鮮味はありません。新作というより「再放送」を見ているような既視感があって、つい飛ばし読みしてしまいます。

海堂尊はほぼ制覇したので、しばらく休みます。

お勧め度:★★☆☆☆

2014年8月 4日 (月)

人質 (佐々木譲)

人質 (ハルキ文庫 さ) 人質』は『笑う警官』『警察庁から来た男』『警官の紋章』『巡査の休日』『密売人』に続く「北海道警シリーズ」第6弾。

小島百合は巡査部長に昇進し、村瀬香里とワインバーへ行くことになった。ところがそこへ2人の男がやって来て、人質立てこもり事件に巻き込まれることに…。

犯人の中島喜美夫は、強姦殺人の冤罪で4年間服役。当時の捜査責任者である富山県警本部長に謝罪を求めて、その娘がいる店にやって来て「お父さんにここに来て謝罪するようお願いしてください」という。

すべては「お願い」であって、強制はしない。携帯電話の使用も認める。トイレに行ってもいいし、武器も持っていない。表向きは穏やかだが「それじゃ私はこれで失礼します」とは言えない雰囲気。このままでは起訴しても執行猶予か? という裁判で有罪に持ち込むことを意識して捜査するあたりがリアルです。

事件の発生を受けて、津久井が現場に張り付く。佐伯は、もうひとりの犯人・瀬戸口の動機に不審を抱きます。刑務所で中島に同情しただけで、また刑務所に逆戻りの片棒を担ぐのはおかしい。彼にはなにか裏の狙いがあるのでは?

事件の裏側をあぶり出すのが佐伯の役割のようで、いつもギリギリで解決に導いてくれます。傍目にはあまりパッとしない親父のようですが、小島百合に気があるのやらないのやら、得体の知れないところが興味深い。

お勧め度:★★★☆☆

2014年8月 3日 (日)

密売人 (佐々木譲)

密売人 (ハルキ文庫 さ 9-6) 密売人』は『笑う警官』『警察庁から来た男』『警官の紋章』『巡査の休日』に続く「北海道警シリーズ」第5弾。

釧路港で水死、函館で転落死、小樽で焼死と立て続けに3件の事故。かと思ったら小樽の焼死はクルマの助手席で手錠を掛けて焼き殺されたことが判明。一方、小学校の前で女子児童がクルマで連れ去られたという通報を受けて小島百合巡査が調査を開始。

例によって、なんの脈絡もなく事件が発生し、佐伯、津久井、小島が個々に捜査していくうちにつながりが見えてくるのです。絵柄の見えないジグソーパズルを組んでいくみたいでワクワクします。「密売人」というから麻薬かと思ったらそうではなくて…。

佐伯は「警察内探偵」みたいなところがあって、組織を離れて捜査するクセがあります。そうして、最後に密売人を追いつめたシーンがすごくかっこいいのです! 痺れました。

警察官の仕事って、そんなにかっこいいものではないと思うのですが、せめて小説のなかでは「まっとうな警察官」でいてほしい。

お勧め度:★★★★★

2014年8月 1日 (金)

巡査の休日 (佐々木嬢)

巡査の休日 (ハルキ文庫 さ 9-5) 巡査の休日』は『笑う警官』『警察庁から来た男』『警官の紋章』に続く「北海道警シリーズ」第4弾。

村瀬香里のストーカー鎌田が、彼女のアパートに侵入したところを小島百合巡査に撃たれて現行犯逮捕。入院中に脱走して指名手配されたまま1年が経過。札幌はよさこいソーラン祭りで賑わい、踊り手として参加していた村瀬香里あてに鎌田からと思われる脅迫メールが…。

「巡査の休日」というのは「小島百合巡査の休日」だと思われますが、彼女は休日もなく働きます。今回も、佐伯、津久井も含めた3人がそれぞれ捜査を行ううちに無関係だと思われていた個々の事件がつながっていくというモジュラー型警察小説。場面があっちこっちに飛ぶので、はじめは戸惑いますが、慣れて来ると「この端役の姓名をここではっきり出すということは伏線?」などと穿った読み方をしている自分を発見できます。

シリーズ第1弾『笑う警官』から続いて来た「郡司事件」に関する佐伯のわだかまりも彼なりの決着をみます。

お勧め度:★★★★☆

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