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2014年6月21日 (土)

モルフェウスの領域 (海堂尊)

モルフェウスの領域 (角川文庫) モルフェウスの領域』は『チーム・バチスタの栄光 』シリーズの海堂尊による、コールドスリープ(人工凍眠)をテーマにした小説です。この人の小説は面白いと思うのですが、全体に暗いのが難点。医療が「死」に近いからでしょう。読んでいて気持ちがどんどん沈んでいくのです。

おなじみ桜宮市の未来医学探究センターの地下で、特効薬を待つ5年間をコールドスリープして待つことにしたのが9歳の佐々木アツシ。彼は『ナイチンゲールの沈黙』で片目を失い、その後レティノ(眼の癌)が転移し、このままでは、もう一方の眼も失ってしまうのです。

アツシを見守るのは、父親の海外勤務により、多くの言語を習得し、医学の心得もある日比野涼子。彼女は5年間、ずっとアツシを見守り、目覚めたあとも彼を守ろうとします。

事前にコールドスリーパーに関する法律が制定され、その土台になったのがゲーム理論の第一人者・曾根崎教授による「凍眠八則」。坂本龍馬の「船中八策」にひっかけたものですね。
  1. 凍眠は本人の意志によってのみ決定される。
  2. 凍眠選択者の公民権、市民権に関しては、凍眠中はこれを停止する。
  3. 第二項に付随し、凍眠選択者の個人情報は国家の管理統制下に置く。
  4. 凍眠選択者は覚醒後、一月の猶予期間を経て、いずれかを選択する。以前の自分と連続した生活。もしくは他人としての新たな生活。
  5. 凍眠選択者が過去と別の属性を選択した場合、以前の属性は凍眠開始時に遡り、死亡宣告される。
  6. 以前と連続性を持つ属性に復帰した場合、凍眠事実の社会への公開を要す。
  7. 凍眠選択者は凍眠中に起こった事象を中立的に知る権利を有する。
  8. その際、入手可能な情報がすべて提供される。この特権は猶予期間内に限定される。
涼子はここに問題点を発見し、密かに曾根崎教授に反論する機会を窺っていたのです。前半は「ことば遊び」で退屈。凍眠から目覚めたあとのほうが面白い。コールドスリープ中も身体は成長し14歳相応になっているけれど、精神年齢は9歳のまま、とか。

海堂尊の小説には共通の場所と人物が使い回されていて、どの本だったか忘れたのですが、アツシの年齢の計算が合わないと思ったことがあります。その理由がコールドスリープだったのか、と感心していたら、あとがきによると、ミスの帳尻合わせだったとか。感心して損した。(笑)

お勧め度:★★★☆☆

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