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2014年6月22日 (日)

ナニワ・モンスター (海堂尊)

ナニワ・モンスター (新潮文庫) ナニワ・モンスター』は『チーム・バチスタの栄光 』の海堂尊の作品。番外編ですが、他の作品と絡んでいるので、併せ読むと楽しめます。

村雨知事は当選当時、テレビの討論会で「浪速をギャンブルとお笑いの帝国にしたい」と言い放ち、旧空港を閉鎖、跡地にカジノを作り、その稼ぎで医療と介護の無料化を実現させようと物議をかもします。そこに、スカルムーシュ(大ボラ吹き)彦根が目をつけ、村雨に秘策を授けます。

現実の「大阪都構想」は市と府の行政が重複する無駄を省き、云々と言いますが、どこを目指しているのやら将来設計が見えないし、名古屋市長の「中京都構想」に至っては言葉だけが先走ってます。その点、彦根の提案は日本を変える、抜本的政策。それだけに抵抗が大きいことは容易に想像がつきます。だから小説とし て面白い。

新型インフルエンザ「キャメル」を利用した、浪速府に対する 霞ヶ関の陰謀。「そこまでやるか!?」という驚愕の政治フィクションかと思いきや、彦根が出てくると当然医療の話になって「あぁ、またか」と食傷気味なわけですが「死亡時画像診断」を追求する点が、すべての海堂作品の通奏低音として響いています。

元厚労省官僚の検疫官・喜国いわく「地球にとってウイルスのようなヒトを鎮圧するために、神は様々な実験をしている。抗ヒト薬剤開発のためのモルモットとしてトリやブタを選び、今回はラクダを仲介に選ぶ」。

ラストで村雨知事がぼそっと「何か新しいことをしようとすれば、最後はいつもひとりぼっちだ」。可哀相だけどトップの宿命かも。

物事を見るとき、小さな枠組み(地域、分野、立場など)にこだわらず、もっと広い視野で将来を俯瞰する大切さを教えてくれる作品でもあります。本書だけ読むよりは他の海堂作品を読んでからのほうが楽しめることは確かですが、この本は取っ掛かりとして面白いから息子たちにも勧めたいと思います。

お勧め度:★★★★★

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