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2014年2月

2014年2月27日 (木)

TOKAGE 1 特殊遊撃捜査隊 (今野 敏)

TOKAGE 特殊遊撃捜査隊 (朝日文庫)

▼GSX400インパルス
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▼FZX750
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TOKAGE 特殊遊撃捜査隊』は、「隠蔽捜査」シリーズの今野 敏の別シリーズ。テロや誘拐事件を専門とする警視庁の遊撃部隊が主人公。バイクで極秘に、迅速に行動するというので、興味を持ちました。

大手都市銀行「ひので銀行」の行員3人が誘拐され、身代金要求額は10億円。身代金支払いを3日後まで引き延ばし、その間に容疑者を確保しようと捜査員を投入しますが…。

今野敏らしく、警察内部の確執や、銀行の無責任体質などを描き出す一方、誘拐事件のため報道規制がかかっているにもかかわらず取材を続ける東日新聞の湯浅を警察の対抗軸に置いています。

警視庁捜査一課特殊犯捜査係(通称SIT)の上野数馬巡査長はスズキGSX400インパルス、特殊犯係の先輩女性捜査員・白石涼子はヤマハFZX750が愛車。たしかに、都内を走り回るにはクルマよりバイクのほうが速いでしょう。

しかし、バイク自体にはさほど重きを置いておらず、バイクに関する記述はモデル名以外ほとんどなくて、バイク好きとしてはガッカリ。だから逆に、バイクは気にせず、ふつうの警察小説としてお楽しみください。

お勧め度:★★★☆☆

2014年2月25日 (火)

転迷—隠蔽捜査 4 (今野敏)

転迷―隠蔽捜査〈4〉 転迷―隠蔽捜査〈4〉は「隠蔽捜査」シリーズ第5弾。前巻が3.5というスピンオフ集だったので5巻目になります。

隣接署管内で起きた殺人事件と、大森署管内での轢き逃げ事件。どちらも被害者は外務省の職員。伊丹刑事部長のところには公安から圧力がかかるし、竜崎大森警察署長には厚生省の麻薬取締官が怒鳴り込んでくる。縦割り行政ゆえの省庁の壁は厚く、捜査は混乱する。そこで伊丹は、竜崎にあることを依頼します。

「フロスト警部」シリーズは人間臭さ、泥臭さが魅力ですが、この「隠蔽捜査」シリーズは、竜崎の割り切りの良さが魅力でしょう。事件捜査に伴う泥臭さを感じさせない、あっさりした展開が心地よいのです。ジグソーパズルと格闘するというよりも、広げた風呂敷をパタン、パタンと手際良く畳んでしまう感じ。伊丹がいうところの「魔法」です。

竜崎はいつまで大森署にいるのでしょうか。警察庁の官僚に戻るよりは現場に近いところにいたほうが面白そう。まだまだ目が離せません。

お勧め度:★★★★☆

2014年2月23日 (日)

初陣—隠蔽捜査 3.5 (今野敏)

初陣: 隠蔽捜査3.5 (新潮文庫) 初陣: 隠蔽捜査3.5 は「隠蔽捜査」シリーズ第4弾。3.5になっているのはスピンオフ集だから。いつもは脇役の警視庁刑事部長の伊丹が主人公。彼の視点から見る竜崎が新鮮です。3巻まで読んだ方には是非お勧めします。
  1. 指揮
  2. 初陣
  3. 休暇
  4. 懲戒
  5. 病欠
  6. 冤罪
  7. 試練
  8. 静観
とくに最後の2章が面白かった。「試練」では、3巻で竜崎を悩ませた女性の事情が語られますし、「静観」では、いかにも竜崎らしい達観ぶりが見られます。いつか竜崎が警視総監や警察庁長官になる日が来るのでしょうか。楽しみです。

お勧め度:★★★★☆

2014年2月21日 (金)

疑心—隠蔽捜査 3 (今野敏)

疑心: 隠蔽捜査3 (新潮文庫) 東京大森警察署長・竜崎伸也は、アメリカ大統領来日時の第二方面警備本部本部長に任命されます。通常ではありえない人事ゆえ、竜崎を陥れる罠かもと疑心暗鬼。その際の秘書として、かつての後輩である美人キャリア・畠山が派遣されてきたところ、なんと堅物の竜崎が一目惚れ!?

一方、米大統領暗殺の動きを察知したシークレットサービスが2名乗り込んできて(防犯カメラの映像から)羽田空港に怪しい人物が出入りしているから「ただちに空港を閉鎖して調査しろ」と言い出す始末。上からは「閉鎖はできない」と回答された竜崎はなんとか納得させようとするのですが、相手は大統領を守るためなら手段を問わないプロフェッショナル。言うことに筋は通っているため竜崎も四苦八苦。

今回の見所は、原理原則を重んじる竜崎の上を行くシークレットサービスとの共闘と、「唐変木」竜崎が恋に落ちちゃった?という2点。竜崎はこれらの試練を乗り越えることができるのか!

「おいおい、そいつが犯人だろ」というのは早い段階でわかってしまうのですが、その間、竜崎の狼狽ぶりを楽しむことができます。このシリーズはひょっとしたら「竜崎いじめ」がテーマなのかしらん。

お勧め度:★★★★☆

2014年2月19日 (水)

[iPad mini] アクションアドベンチャー The Cave

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運命の洞窟 THE CAVE』は、生きている洞窟が自己紹介し、冒険者たちを受け入れ、ユーモアと皮肉を交えながらナビゲートしてくれます。英語で語られますが、字幕は日本語化されているのでご安心を。

さて、ゲームは洞窟前広場でのキャンプファイア(写真2)から始まります。ここで Monk(僧侶), Adventurer(冒険者), Hillbilly(村人), Scientist(科学者), Twins(双子), Knight(騎士), Time Traveller(時間旅行者) の7人のキャラクターから3人でパーティを組んで挑みます。2Dスクロールゲームなのですが、コミカルなキャラが上下左右に走り回る様子はなかなかリアル。わたしは洞窟探検というと、テキストアドベンチャー"Zork"を思い出すのですが、表現方法としては対極にある作品です。

わたしは Knight, Adventurer, Twins でスタート。手に入れたバールでバリケードを破って洞窟に侵入。敵に撃たれたり、高いところから落ちたりすると死んでしまうのですが、洞窟内では死ぬことができず、すぐに復活してしまいます。アクションが苦手な私も気軽にプレイできるのはうれしいけれど、チート(インチキ)してるみたいで後ろめたい気分が付きまといます。

洞窟を進んでいくと Gift Shop (みやげ物店、写真4)に着きます。先に進むには店主に扉を開けてもらわねばなりません。店主いわく、店に並べる商品(みやげ物)を3つ持ってくればゲートを開けてやるとのこと。ちなみに、ひとり同時に1個しかアイテムが持てないので、各自1個ずつ持って来なければなりません。しかし、こんなところに観光客が来るのだろうか?

壊れた井戸や、電源の入っていない自動販売機(写真5)などを動くようにしたり、怪獣(写真6)を回避しながら先に進んでいきます。3人のキャラクターは別々に動かすことができますが、別のエリアに誰かが移動すると、他の2人も勝手についてきます。つまり、同一エリア内であえれば、3人は個別に移動できます。ただし、画面左下のキャラクターボタンで切り替えて、ひとりずつ順番に。

エリア内を隈なく探検し、お宝を3つ持ち帰り、店主に渡せばミッションコンプリート! 次に進むことができます。

次のエリアは The Castle。ここでは騎士が活躍します。各キャラクターはそれぞれ特殊能力を備えていて、騎士のそれは「守護天使」。無敵状態になることができ、敵の攻撃も効きませんし、高いところから飛び降りることもできます。が、その間、思うように動くことはできません。炎が噴き出す縦穴(写真7)を下りるには騎士でなければ無理でしょう。

城の王様に会うと、岩に刺さっているエクスカリバーを抜く機会を得たければ姫に会い、愛の印のアミュレット(護符)を手に入れて来るよう言われます。(写真8)

姫に会いに行くと、ドラゴンの宝(金貨)を取って来るよう言われます(写真9)。しかし、ドラゴンに近づくと黒焦げにされてしまいます(写真10)。騎士の「守護天使」を使えばなんとかなるでしょうか。

このゲームの作者は "Monkey Island","Maniac Mansion" の Ron Gilbert。ユーモアといってもブラックなのが多くて、洞窟の不気味さとキャラクターのコミカルさが絶妙なバランスで配合されています。

また、洞窟のあちらこちらに「壁画」が隠されていて、それを集めることで各キャラクターの物語が見えてきます。

ただ、ゲーム全体を貫くストーリーがあるのかどうかは疑わしい。個性的なキャラクターとステージを用意しただけ、かも。それは最後までプレイしてのお楽しみ。



お勧め度:★★★★★

2014年2月17日 (月)

ジェノサイド (高野和明)

ジェノサイド 上 (角川文庫)

ジェノサイド 下 (角川文庫)
物騒なタイトルゆえ敬遠していたのですが面白かったのでご紹介します。超大国アメリカのエゴが人類の存続を危うくする、という大迫力のエンターテイメント小説。その背景にあるのが、かつて発表された「ハイズマンレポート」。これは、現世人類が絶滅する原因をまとめたもの。
  1. 宇宙規模の災害
  2. 地球規模の環境変動
  3. 核戦争
  4. 疫病、ウイルスの脅威及び生物兵器
  5. 人類の進化
1から4まではわかりますが、5がなぜ人類絶滅につながるのか。そこがこの小説のポイントです。レポートをまとめたハイズマンが後年語った言葉が印象的。

ハイズマン「現政権だけじゃない。私は権力者が嫌いだ。あいつらはいわば必要悪だが、それにしても度が過ぎている。もっと言えば、私は人間という生物が嫌いなんだ」
聞き手「なぜです?」
ハイズマン「すべての生物種の中で、人間だけが同種間の大量殺戮を行なう唯一の動物だからだ。それがヒトという生き物の定義だよ。人間性とは、残虐性なのさ。かつて地球上にいた別種の人類、原人やネアンデルタール人も、現世人類によって滅ぼされたと私は見ている」(中略)
ハイズマン「現在、地球上に生きている65億の人間は、およそ100年後には全員が死に絶える。なのに、なぜ今、殺し合わなければならないんだろうな?」

怒りに任せて核ミサイルのスイッチを押しかねないアメリカ大統領が手玉に取られるところは痛快無比。人間は、地球を破壊しかねない、どうしようもなく愚かな生き物かもしれないけれど、「ジェノサイド」を乗り越えて精一杯生きていこうと思わせてくれる一冊。わたしは面白かったけれど、 ある意味、理系礼賛小説なので好みが分かれると思います。

お勧め度:★★★★★

2014年2月15日 (土)

文楽にアクセス (松平盟子)

文楽にアクセス (劇場に行こう) 三浦しをんの『あやつられ文楽鑑賞』にも紹介された本書は、文楽入門ガイド。『仏果を得ず』(三浦しをん)を読んで文楽に興味を持って「どこで見れるんだろう」とネットで調べたところ、国立劇場と国立文楽劇場がある。東京と大阪にあるのか。

大阪で3月に観たいと思ったのですがやってません。名古屋にも来ることがあるらしいけれど昨年は10月だったようで、いつ、どこで観ることができるのか判然としません。そんなときに本書は心強い味方。大阪の国立文楽劇場では、毎年1月、4月、7月末〜8月初、11月に、東京の国立劇場では、毎年2月、5月、9月、12月に本公演が行われるそうです。

チケットはネット予約もできますが、劇場に直接電話予約を勧めています。座席指定はできませんが、先着順に見やすい席から取ってくれるとか。三浦しをんによると、飛行機のエコノミーシートのように狭い座席で何時間も我慢できるかどうか、その点がわたしは心配です。

内容は「初めて観るならこの演目がおすすめ」から、文楽の基礎(太夫、三味線、人形遣いの三業と歴史)、舞台のしくみや、人形の説明、「劇場必携 演目ダイジェスト24」など、カラー写真を用いて紹介してあるので退屈しません。

三浦しをんを読んで文楽に興味を持ったら、ネットで調べようとせずに、まずこのようなガイドブックをごらんになることをお勧めします。

お勧め度:★★★★☆

2014年2月13日 (木)

[iPad mini] アドベンチャーゲーム The Room Two

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"The Room" の続編。前作同様、3Dグラフィックが素晴らしい。木や石、金属の質感がうまく表現されていて、それがクルクル回るのです。

薄暗い部屋の丸テーブル上に箱が載ってる。そのカラクリを解きながら出口を出現させ、次の部屋へ移って行くのが目的。全部で6章あります。

序盤はチュートリアルとして基本操作を説明してくれます。拡大縮小を2本指のピンチで行うので、手袋してるとゲームできないのがちょっと不便。 手紙やメモがあったらダブルタップして読みます。ゲーム中は、誰にも会わずひとりぼっちなので、それが唯一の「人の気配」です。ひと言でいえばシンプルな「脱出ゲーム」なのですが、非常にレベルが高い。もうすこしストーリー性が加わわれば良いゲームになるでしょう。

フタや扉など開きそうなところを何とかして開ける。スライドしたり、回したり、押したり、引いたりしながら、鍵穴に合う鍵を探します。ただ、鍵などのアイテ ムを変形させてから使う場合もあるのでよく観察しましょう。また前作同様、特殊なメガネが用意されていて、それをかけると秘密の文字や映像が見えることが あります。わたしはそのメガネが気に入ってます。

もし行き詰まったら、画面左上の?マークをタップ してください。ヒントが表示されます。それほど意地悪な謎はないので、ヒントがあれば進めることができるはず。移動には制限があって、遠くに見えている窓 や壁に近づくことはできませんし、一度開けたり、使ったものはロックされていきます。あまり自由度が高いと混乱するので、親切設計だと言えるでしょう。

前作でプラネタリウムが気に入ったのですが、今作では帆船模型とタイプライターがお気に入り。わたしは1時間もプレイすると続きは翌日以降になってしまうので、終了まで3日以上かかりましたが、長男は持ち前の集中力で一気に片を付けてしまったようです。長く楽しんだほうがお得。(負け惜しみ)



お勧め度:★★★★★

2014年2月11日 (火)

たまさか人形堂物語 (津原泰水)

たまさか人形堂物語 (文春文庫) 小さな人形店を継ぐことになってしまった澪は「だめなら店を閉めればいいや」と思っていたのですが「諦めてしまっている人形も修理します」という看板を上げたらぽつぽつとお客さんが見えるようになって、人形職人・師村さん、人形マニアの冨永くんと3人で今日も店を切り盛りしています。

顔だけ潰された超美形人形の謎、テディベアばらばら事件、女子中学生ラブドール、新潟県村上市の町屋の人形さま巡り、謎の職人・師村さんの過去にまつわる話など、人形にまつわる物語が収められています。

三浦しをんの『仏果を得ず』『あやつられ文楽鑑賞』に続けて読んだのは偶然だったのですが、人形浄瑠璃の話題も出てきてびっくり。ほんとうはリアルな人形って苦手。ちょっと怖いのです。蝋人形館なんてゼッタイ願い下げ。でも子供の頃にTVで観た『ひょっこりひょうたん島』は楽しかったなぁ。

『たまさか人形堂それから』という続編も出ています。

お勧め度:★★★☆☆

2014年2月 9日 (日)

あやつられ文楽鑑賞 (三浦しをん)

あやつられ文楽鑑賞 (双葉文庫) 人形浄瑠璃の一派である文楽に興味を持って、三浦しをんの小説『仏果を得ず』を読んだら面白かったので、こちらも手に取ってみました。これは小説ではなく、取材や体験を交えた、とっても軽い文楽解説書です。

第1〜2章は三味線と人形遣いの方へのインタビュー。三浦のテンションが高すぎてついていけず、ツツぅーっと飛ばし読みしましたが、第6章「『仮名手本忠臣蔵』を見る」は面白かった。三浦の解説によると「この物語は「結局は当事者みんな死なねばならなかった赤穂浪士事件とは、いったいなんだったのか。もはや忠義を発揮しようもないようなバカ殿にも、武士であるならば忠義を尽くさねばならない。そういう武士とはなんであるのか。忠義を尽くしたと言われる人々、そしてその周辺の人々の、心のなかの葛藤に光を当てよう」というのがテーマなのだ。」 その後の解説が笑えます。

9章では、文楽を見ながら寝てしまう話。『仏果を得ず』の主人公が高校時代に文楽を見たときのことは自身の経験談だったみたいです。文楽と同じ演目が歌舞伎にもあったり、落語にも取り上げられたりしていることを紹介して、文楽にまつわる物事をいろんな方面から取り上げている、副読本のような一冊。「文楽エッセイ」みたいで結構たのしい。『仮名手本忠臣蔵』の舞台はいつか見てみたいと思わせてくれました。

本書の中で参考資料として紹介されていた『近松浄瑠璃集(下)』(新日本古典文学大系92)を鶴舞図書館で見てみました。「女殺油地獄」の冒頭はつぎのとおり。
船は新造の乗り心。君と。船と。われと君とは。図に乗った乗って来た。しつとんとん しつとんとん しととん しととん。しつとと逢瀬の波枕。盃はどこ行た。君が盃いつも。飲みたや武蔵野の。月の。月の夜すがら戯れ遊べ。はやし立たる大騒ぎ。

北の新地の。料理茶屋の。主なれど咲く花や。後家のおかめが請込んで。客の替名は蝋九とて生れは陸奥会津とて名代流さぬ銀遣ひ。此比難波此里へのぼり詰めたよ天王寺屋。小ぎくを思ひ。思はれたさに。

鯰川よりゆらゆらと。野崎参りの屋形船。卯月中ばの初暑さ末の。閨に追繰りてまだ肌寒き川風を。酒にしのぎてそそり行。
原文は縦書きでルビが振ってあります。詩歌のように、五七五で韻を踏んでいたりと「音」として、そして「文字」としては理解できるのですが意味がよくわからん。(苦笑)

『劇場に行こう 文楽にアクセス』という入門ガイドブックも借りてきたので、こちらも後日ご紹介します。

お勧め度:★★★★☆

2014年2月 7日 (金)

震える牛 (相場英雄)

震える牛 (小学館文庫) 市販の安いハンバーグやソーセージが怖くて食べられなくなります。ましてや子供には食べさせたくない。

「震える牛」というのはBSEの初期症状を指します。精肉店から始めて、全国有数の大手ショッピングセンターとなったオックスマートを舞台に、食の安全を脅かす事件が起きます。

2年前、東京中野の居酒屋で強盗殺人事件が起き、2名が死亡。ひとりは仙台の獣医、もうひとりは地元の産廃業者。ところが犯人を逮捕できないまま2年が経過し、警視庁捜査一課継続捜査班の田川信一に再捜査が指示されたのです。

捜査を進めるうちに、すこしずつ手掛かりが増えてくるけれど、謎はまだまだ残っていて…という状態で推移していくのがリアル。ただ、政治の横槍や警察の腐敗もあってモヤモヤ。あらためて『隠蔽捜査』シリーズの存在意義を実感しました。「シロはシロ、クロはクロ」と言って憚らず、そのまま押し通してしまうなんて、実際にはなかなかできることじゃない。

全国チェーンのショッピングセンターやレストランよりも、地元の商店街が好きだという田川と、ネットメディアの記者・鶴田の口を借りて、社会のあり方に疑問を投げかけている点も興味深い。

この本は、そもそも小学館の月刊文芸誌 "STORY BOX"のバックナンバーで見かけて、面白そうだったから単行本を手に取ったのです。以前は文庫サイズだったのが、現在ではA5サイズに変わり、図書館に置かれなくなったので定期購読を申込みました。面白そうな話をつまみ食いできるのが「おやつ」感覚で楽しいけれど、1話からすべて読もうとすると何冊にも股がるので面倒。小説を先取りできるのがメリットでしょう。

お勧め度:★★★☆☆

2014年2月 5日 (水)

果断—隠蔽捜査 2 (今野敏)

果断―隠蔽捜査〈2〉 (新潮文庫) 警察庁のエリート官僚・竜崎伸也は、長男がヘロインを吸ったことで、大森警察署長に降格されます。竜崎は潔癖すぎて薄気味悪い。宇宙人です。警察官はもとより、こんな人間いません。いくら小説はフィクションとはいえ、これではSFです。

というのは言い過ぎで、竜崎だって家族の問題には心を痛めるらしく、人間らしいところもあるらしいことが「隠蔽捜査」シリーズ第2巻でわかりました。原理原則に忠実な合理主義者。警察署の慣習だろうと、管理官だろうと「自分は間違ったことはしていない」と思えば、決して筋を曲げない頑固者。

時代劇に出てきますね、こういう武士って。身分は高いんだけど、そのことを鼻にかけず、おかしいと思えば上役にでも噛み付く。そうして、文句を言いたくても言えなかった者たち、虐げられていた者たちが溜飲を下げる、と。

今回は、強盗犯の立てこもり事件が起き、竜崎の判断でSATが突入、犯人が射殺されます。しかも、犯人の銃には実弾が残っていなかったことがわかってマスコミが大騒ぎ。警察は攻撃され、竜崎がスケープゴートに…!?

第1巻の中盤までは、警察官僚たちの保身や出世欲に嫌気が差したのですが、2巻で所轄が舞台となって雰囲気が変わりました。現場では、竜崎の変人ぶりがより鮮明になっておもしろい。一気に読めました。

お勧め度:★★★★★


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2014年2月 3日 (月)

隠蔽捜査 (今野敏)

隠蔽捜査 (新潮文庫) 警察と警察官僚の「保身」の物語。警察官が犯人だったら隠蔽して迷宮入りさせてしまうなんて、いかにもありそうな話なので、途中で嫌気が差しながらもなんとか読了。

主人公は警察庁のエリート官僚・竜崎伸也。対照的な人物が、竜崎の幼なじみである警視庁刑事部長・伊丹。竜崎は小学生の頃、伊丹のグループに苛めを受け、今でも恨んでるけど、伊丹は覚えていないという、一方的な確執がある。

竜崎は良くも悪くも「官僚の鑑」。自分は国家を守り、家庭は妻が守るものと信じて疑わない石頭。国家公務員としては「大学は東大か京大」であって、有名私立大に合格した長男に浪人させ東大を目指させるのですが、竜崎の運命を変える事態に…。

『隠蔽捜査』ってシリーズものだったんですね。
  1. 隠蔽捜査
  2. 果断―隠蔽捜査2
  3. 疑心―隠蔽捜査3
  4. 初陣―隠蔽捜査3.5
  5. 転迷―隠蔽捜査4
  6. 宰領―隠蔽捜査5
現場の刑事とキャリアの違いはあるけれど、先日読んだ『クリスマスのフロスト』 (R.D.ウィングフィールド) と、主人公の性格や考え方が対照的。ただ、これはこれでアリかな、と。

読後の感想—「報道の自由」は大事。

お勧め度:★★★☆☆

2014年2月 1日 (土)

クリスマスのフロスト (R.D.ウィングフィールド)

クリスマスのフロスト (創元推理文庫) フロストはとにかく下品だというから不安だったのですが、この警察小説はおもしろい! 一見無関係の事件、出来事、証言などの諸々を上手くまとめてあって『ソフロニア嬢、空賊に秘宝を探る』よりも強く引き込まれました。

フロストはたしかに上品とはいえませんが(見方によっては)じつに人間味あふれる刑事です。思ったことをなんでも口に出すから顰蹙を買うけれど、部下の新任若手刑事クライヴだって色っぽい女性をまえに同じことを考えてるわけ。フロストは言葉にも態度にも服装にも、およそ体裁というものを気にしない。それだけの違いです。クライヴはフロストを見下しているけれど、デントン警察署内では意外に信頼されています。ただし、問題ばかり起こすフロストを放逐したくて仕方ないマレット署長を除いて。

舞台となるのは「ロンドンから70マイル離れた田舎町デントン」。架空の町だということですが、Denton は実在します。ロンドンからM1とM6を乗り継いで北へ200マイル、マンチェスターのすぐ東。のんびりした小さな田舎町が開発によって荒れたという設定になっていて、そのおかげで警察も忙しいみたい。もうすぐクリスマスだというのに、次から次へと事件が起きて、フロスト警部は忙殺されます。

ショッキングなオープニングから、4日前、日曜学校を出た8歳の少女トレーシー・アップヒルが行方不明になった事件を軸に物語は進み、警察官、浮浪者、馬券屋、娼婦、司祭、銀行家、占い師らが引き起こすゴタゴタが次第に収束していく様は見事です。

フロストは運がいいのか悪いのか、続編が出ているので死ぬことはなさそうです。

お勧め度:★★★★☆

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