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2013年10月

2013年10月31日 (木)

嘆きのサイレン 〜 クラッシュ・ブレイズ 1 (茅田 砂胡)

クラッシュ・プレイズ 嘆きのサイレン (C・NOVELSファンタジア) あとがきによると「クラッシュ・ブレイズ」は Crash Blaze、ぶつかり合う炎といった意味でしょうか。なにがぶつかり合うのかって?

一応「新シリーズ」と謳っていますが、登場人物は『デルフィニア戦記』と『スカーレット・ウィザード』から来ています。『デルフィニア戦記』を読んでいたときは、リィが生まれ育った世界は「スターウォーズ」のエイリアンたちが跋扈するようなところなのだろうと想像していたのですが、まるで地球の未来のようで、至って人間らしく?暮らしているので拍子抜けしました。

ということで、世界観がちぐはぐなのを、無理矢理『暁の天使たち』で全員集合させた状態が続いています。だから、まったく新作だという気がしません。

タイトルの「サイレン」はギリシャ語の「セイレーン」の英語読み。船乗りを惑わす海の魔物。調査に乗り出したケリーとジャスミンがピンチに陥ってルゥに助けを求めて大騒ぎ、といういつものパターン。それで一冊書いてしまうのですからスゴい。

ただ、ひとつ気になったのが、自律航行型駆逐艦が「逃げ出した」という下り。ロボットや機械を作る場合、暴走したときのため、緊急停止回路を組み込むはず。ましてや「武器」なのですから、なにがどうなっても、いつでも人間の意思で止めることができなければ危険です。

ケリーは、ダイアナを止める奥の手を持っているのでしょうか。

お勧め度:★★★☆☆

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2013年10月29日 (火)

この空のまもり (芝村裕吏)

この空のまもり (ハヤカワ文庫JA) 少子化が進み、多くの移民(外国人)を受入れ、何事にも無策な日本政府。先日読んだ『歌うクジラ』(村上龍)を思い出します。でも、あそこまで陰惨ではありません。

スマートフォンの次に現れた「強化現実眼鏡」をかければ、現実にプラスして、様々な情報(飲食店の口コミ情報や城趾公園に天守閣など)が見えるのですが、Googleが提供する世界では「仮想タグ」を使って「落書き」ができてしまうのです。これが迷惑至極。個人の背中に悪口雑言を書いた紙を貼付けることもできてしまう。ただ、それは眼鏡をかけるか、スマホを通してしか見えない。

周辺諸国の悪意満載の仮想タグが日本の空を覆っているのに、政府は「現実には実害はない」と無策なのに業を煮やしたニート田中翼が架空防衛軍を指揮して、日本の空を守るために密かに奮闘しているわけです。

出版社のコメントには「理性的愛国を実践する電脳国防青春SF」とありますが、とにかく世界観がわかりづらい。ニートの翼、大学生の三浦大輔、小学生の遠山翔と彼の担任教師らが順番に登場するのですが、テンポが悪いのかもしれません。状況がすこしずつわかってくるのではなく、全部読んでやっとわかる。

ほんとうは、翼は幼なじみの七海を守りたいだけで、七海の住む家、街、国を守るために活動しているというのは、わかりやすいけれど、戦争に出征する兵士の言葉として使い古されています。

本書を読み終えて現実に目を向けると、歩きながら、自転車に乗りながら、スマホを見ている人たちがたくさんいます。現実から目を背け、仮想世界に閉じ籠っているように見えます。「強化現実眼鏡」予備軍は、Googleの思うツボ。

テレビの中の世界は嘘っぱち。ネット世界も同様です。勘違いしないよう、ご用心!

お勧め度:★★★☆☆

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2013年10月27日 (日)

[iPad mini] Bluetooth ワイヤレスヘッドフォンが面白い!

LOGICOOL ワイヤレスヘッドセット Blutooth対応 H800

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LOGICOOL H800というBluetoothワイヤレスヘッドセットを買いました。これは、iMacで使っていたUSBヘッドセットの右チャネルが接触不良のため聴こえなくなった(壊れた)ための買い替えです。

ステレオミニプラグをもつオーディオ用ヘッドフォンでは、物理的にジャックに差し込む必要があるため、スピーカーとヘッドフォンの切り替えが面倒。そこでUSBヘッドフォンにして、ソフト的に切り替えできるようにしたのです。しかし、安い(2千円代)USBヘッドセットは長持ちしません。ヘッドバンドが折れたり、接触不良を起こしたり。「あくまで間に合わせ」「試してみたいだけ」「半年持てばいい」というのでなければお勧めできません。

本当は、FOSTEX ボリュームコントローラー PC100USBを買って、そこに普通のヘッドフォンをつなごうと思ったのです。でも「そういえば、ワイヤレスヘッドフォンって試したことないな」。

H800には、小さなUSB送信モジュールが付属していて(紛失注意)、Bluetoothと切り替えて使えるようになっています。iMacにそのモジュールを差すと、拍子抜けするくらい、あっさり接続完了。MacOS X用SoundSourceという常駐アプリで「Logicool Wireless Headset」を選択すればOK。パソコンとUSBケーブル接続して充電します。もちろん充電しながらでも使えます。

パソコンに向かっているときに、部屋の反対側にある書類を取りたかったり、寒くなってきて1枚羽織るときなどワイヤレスはコードがないから便利。マンション内で隣の部屋までならば問題なし。2部屋離れるとプツプツと音が途切れてしまう。音質も件のUSBヘッドセットよりは良好。ただし、バッテリーが切れたらおしまい。3時間充電で6時間持つらしいけれど未検証。ヘビーユーザーは毎晩パソコンにつなぐようにすればいいでしょう。

さて、H800をiPad miniにBluetooth接続してみました。iPadの「設定」>「Bluetooth」で「H800 Logicool Headset」が表示されたと思ったら「接続されました」。あれ、自動ペアリングなの?

右側にあるPLAYボタンを押すと、iTunesに保存されている、お気に入りのアーティストが歌い始めます。手元(耳元)で音量調整とトラックの前後操作が可能なのに、iPadの画面にはなんの変化もないのが不思議。つまり、iPadを開かなくても、バッグに入れておくだけで、ヘッドフォンで音楽を聴くことができる。

バイクのヘルメットサイズがXL(特大)のわたしには、このヘッドセットの側圧はやや強め。だけど、パッドが柔らかいスポンジなので痛いほどではないし、これくらいのほうが寝転がっても外れません。(笑)

一応、折り畳むこともできるのでバッグに入れておくこともできます。今度、昼休みにカフェで使ってみようかな。

お勧め度:★★★★★

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2013年10月25日 (金)

天使たちの華劇 〜 暁の天使たち 外伝 2 (茅田 砂胡)

天使たちの華劇―暁の天使たち 外伝〈2〉 (C・NOVELSファンタジア) リィ、シェラ、ヴァンツァー、レティシアの4人が繰り広げる学園コメディ。しかし、以下、4本の中短編を収録。
  1. 一般市民のすすめ
  2. 常識の問題
  3. ヴァレンタイン卿の災難
  4. 趣味の時間

1.男色教授ブフナーに目をつけられたヴァンツァーが「単位を取得するために必要ならば一夜くらいは」というのをリィが怒って止めます。「それは犯罪だぞ」。まんまと罠にかかったブフナーさん、お気の毒。

2.寮対抗のアクションロッド大会にリィを引っ張り出そうと躍起になる寮長ハンス。困ったリィは自分が出場するのではなくハンスを鍛えることにしたのです。そして強敵には罠を…。さらっと腹黒い連中です。

3.表紙絵のリィとシェラのメイド服姿は文化祭の一幕。こんな「息子」の姿を見た父親(ヴァレンタイン卿)の心中やいかに。しかも、災難はそれだけに留まらず…。

4.いくらシェラの得意分野とはいえ「裁縫大会」は無理があるでしょう。それをいうならファッションショーです。

これで「暁の天使たち」シリーズも完結です。

お勧め度:★★★☆☆


2013年10月23日 (水)

舞闘会の華麗なる終演 〜 暁の天使たち 外伝 (茅田 砂胡)

舞闘会の華麗なる終演―暁の天使たち 外伝〈1〉 (C・NOVELSファンタジア) 外伝というより、前作「天使の舞闘会」で、ルゥの暴走を止めたあとの脱出を描いた『嵐の後』と、ダンの息子ジェムが母と慕うルゥと再会する『宇宙一不幸な男』が収められています。

甘いものが苦手なリィが、クッキーとキャラメルを作るシーンがあって、それを前にしたシェラ、レティシア、ヴァンツァーが「これ、食っても大丈夫なのか?」と怯えるのが、毎度おなじみのパターン。可笑しいことは可笑しいのですが、さすがに食傷気味かな。

お勧め度:★★☆☆☆

2013年10月21日 (月)

天使の舞闘会 〜 暁の天使たち 6 (茅田 砂胡)

天使の舞闘会―暁の天使たち〈6〉 (C・NOVELSファンタジア) 3年前、リィを脅迫して拉致し、人体実験を行った連邦情報室。リィを傷つけられたルゥは怒り、リィから採取したデータ、サンプル等の一切を破棄すると約束した連邦主席だったのですが…。

連邦情報室の本部「ダイダロス・ワン」で、あってはならないものを見てしまったルゥ。原因不明の異常事態が発生。このままでは3日以内にセントラルの太陽が爆発する!?

今回は、ルゥの暴走をリィが命懸けで止める。そういうお話です。

ついでに、ジャスミンとケリーが生き返ったことを知らされていなかったジンジャーにも伝えます。結局、過去の多くの登場人物たちを同じ舞台に集めるために「暁の天使たち」シリーズがあったようです。

お勧め度:★★☆☆☆

2013年10月19日 (土)

女王と海賊 〜 暁の天使たち 5 (茅田 砂胡)

女王と海賊―暁の天使たち〈5〉 (C・NOVELSファンタジア) 前巻で『二人の眠り姫』が目覚め、彼女たちは共に「海賊」(ケリー)に会いに行きます。

その様子を、ルゥはリィ、シェラ、ダンといっしょに(連邦大学惑星から)見守ります。ケリーが捕えられている<ダイダロス・ワン>の近くまで来たジャスミンはダイアナの指示で格納庫へ向かうと、そこには懐かしい愛機クインビーが…。

小惑星帯で見事な操縦を披露するジャスミンを見て驚いたのは連邦の戦闘機乗りたちだけでなく、ダンも「あかい ひこうき」を思い出していました。つまり、アレは自分の母親!?

読者には既知の事実を、それを知らない登場人物に知らせると、当然、本人は驚く。その反応を読者が楽しむ。特に本巻は、そのパターンの繰り返しです。

外伝を除くと、本シリーズもあと1巻。一体どこに話を落とすつもりなのやら。ケリーとジャスミンがダイアナに乗って宇宙に旅立っておしまい? それだとフツーすぎる…。悩むより読んだほうが早いですね。

お勧め度:★★★☆☆

2013年10月17日 (木)

二人の眠り姫 〜 暁の天使たち 4 (茅田 砂胡)

二人の眠り姫 暁の天使たち4 (C★NOVELS) 前巻『海賊王の帰還』でも、「海賊」が帰還したのは最後の最後。作者によると、1冊に収まる分量を超えた長文になってしまいがちだとか。たしかに説明が長い。

タイトル『二人の眠り姫』を見て「二人?」。ひとりは表紙絵どおりジャスミンでしょう。それはわかるのですが、もうひとりの「姫」とは? あまり気にせず読み進めて最後にわかったものの、同列に「二人」と語るのは無理があるような…。

無理があるといえば、連邦情報局本部<ダイダロス・ワン>に乗り込んだケリーがリィとシェラを乗せて脱出する際「緊急事態だから自動操縦を切れ」という命令を「感応頭脳」(人工知能)が承諾する理屈。

つまり「本体が最高機密なら、搭載されている感応頭脳も、一般に使われているものとは大きく性格を異にしていた。特に、任務のためには時として安全を犠牲にすることもやむを得ないと刷り込まれていた。しかも、常に単独で任務にあたり性質が災いして、自分を追跡して攻撃しているのが自分の同胞であることも認識していなかった。」って、最後の部分は変です。絶対におかしい。相討ちを回避するのは戦闘の基本でしょう。それに目覚めたジャスミンがケリーを怒るのは筋違いでは? ツッコミはじめるとキリがありません。

ジャスミンにケリー、ルゥにリィにシェラ、それにダイアナ。主要メンバーは掟破りの無茶をする連中ばかり。元々、別の物語だった登場人物を一カ所に集めてしまったものだから、人口過多で収拾がついてません。

しかし、常識にとらわれた「目立たない一般人」よりは、常識破りな連中のほうが愉快ではあります。理屈も理論も投げ捨てて、とことんやってください。

お勧め度:★★★☆☆

2013年10月15日 (火)

銀二貫 (高田郁)

銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫) わたしが好きな『みをつくし料理帖』シリーズの作者・高田郁の作品。

大坂天満の寒天問屋の主・和助が、仇討ちに出くわし、斬られた侍の子を救うべく、仇討ちを銀二貫で買い取ったのです。つまり、銀二貫で仇討ちのことは忘れてもらおうというわけ。銀二貫とは33両ですから大金です。これは火事で焼けた天満宮再建のための寄進になるはずだったお金。引き取られた鶴之輔改め末吉は、伏見の天場(寒天工場)に修行に出され、1ヶ月の間、懸命に働き、井川屋の丁稚となったのです。

しかし、松吉は銀二貫の借金を負っているようなもの。一日も早く天満宮へ寄進したい番頭の善次郎には冷たい目で見られ、お勤めは楽ではありません。しかし、良いこともあります。料理屋・真帆家の嬢さん真帆に懐かれ、主・嘉平に目をかけてもらい、寒天のこと、料理のことを学んでいきます。

ところが、大火に見舞われ、真帆家は消失、一家は行方不明になってしまいます。松吉と真帆はいずれ結ばれるのだろうとは思うものの、そう簡単には問屋(作者)が卸してくれません。「おいおい、まだ引っ張るの」とばかり延々と苦難が続きます。

普段あまり意識しない寒天ですが、あんみつや羊羹に入ってますね。寒天そのものは味がないのが味、なのでしょうか。ごくあたりまえの食材にも歴史があり、先人たちの苦労が現代の食を支えていることがわかります。

お勧め度:★★★★☆

2013年10月12日 (土)

トッカン the 3rd おばけなんてないさ (高殿円)

トッカン the 3rd: おばけなんてないさ 『トッカン』シリーズ第3弾。主人公「ぐー子」こと、鈴宮深樹も(3巻目になって)ずいぶん成長しました。上司である特別国税徴収官(略してトッカン)の鏡雅愛の付き人ではなく、結構ひとりで仕事を進めているのにビックリ!

今回は、鏡の故郷・栃木への出張があったり、鏡の元妻と接近遭遇したり、占い師の滞納金を差し押さえようと追っていったら、なんと○○でいたり…。神戸から出て来て東京で一人暮らしのぐー子の毎日は何気に波瀾万丈なのです。

国家公務員法の守秘義務の厳しさを知りました。業務上、違法行為や犯罪を知ったとしても、国税局の職員はそのことを警察に通報できないというのです。そうはいっても、国家公務員であるまえに一市民としてどうなの? というわけで裏技はあるようです。それは読んでのお楽しみ。

「お金の警察」といえばカッコいいけど、税務署や国税局だといえば、ものすごく嫌われるみたい。つまり、感謝されることがない。徴収官なんて、仕事だと割り切らないとやってられないでしょう。

池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』『ロスジェネの逆襲』などの反骨経済小説も面白いけれど、この『トッカン』シリーズも負けていません。お勧めです!

お勧め度:★★★★★

2013年10月11日 (金)

海賊王の帰還 〜 暁の天使たち 3 (茅田 砂胡)

海賊王の帰還 暁の天使たち3 (C★NOVELS) タイトルからわかるように、『スカーレット・ウィザード』 のケリーが復活します。しかし、そこにたどり着くまでの前置きが長い。あとがきにもあるように登場人物が多く、過去2作品に書いた説明を繰り返していたりするので、冗長な部分はスキップ。

ケリーはすなわちダンの父親。死んだはずの父親が生き返るなどダンには信じられないし、望んでもいません。しかも、ルゥの魔法ではなく、科学によって復活させるらしい。つまり、本人のDNAから作った身体に、すべての記憶を戻すというのです。ここでダンも気にしているのが「記憶が戻っても人格はどうなる?」という点。たしかに、人を人たらしめているものは記憶だけではないでしょう。

ここでは「不老不死」がひとつのテーマ。人間の欲望の終着点。それを「神」によって実現するのであれば、細かい点は見過ごしてもらえますが(笑)「科学」で実現するとなると、厳しいツッコミを覚悟せねばなりません。ただ、この作者に厳密な説明を求めてはいけません。雰囲気を感じ取ってあげましょう。それが、本シリーズをストレスなく楽しく読むコツです。

でも、ケリーが復活するのは、ジャスミンの遺伝子障害が治療できたときだったはず。しかし、ジャスミンはいまだ人工冬眠器のなか。ケリーは荒れるぞ。どうなることやら、楽しみです。

お勧め度:★★★☆☆

2013年10月 9日 (水)

神々の憂鬱 〜 暁の天使たち 2 (茅田 砂胡)

神々の憂鬱 暁の天使たち2 (C★NOVELS) 私たちの感覚でいえば、中世から未来に突然飛び込んだようなシェラには「一般常識」が欠如しています。魔法ではなく科学が不思議なことを実現し、人はスポーツあるいは遊びとして戦いを演じている。シェラには理解できないことばかり。このまま学校に通うのは不必要に目立ってしまって危険です。だから、リィが機械の使い方など、あれこれ指南したわけですが、一朝一夕にどうにかなるとは思えません。

目立つなといっても、金髪のリィと銀髪のシェラが並ぶと、それだけで女生徒たちの注目の的。しかも、ふたりともデルフィニアにいる間に6年も余計に年を取ってしまったので「こちら」に戻るときに19歳から13歳に戻したのです。どうやったのかはルゥに訊いてください。

外見は13歳(中学生)だけど、中身は大学生。リィはどちらにしろ、ぶっきらぼうな話し方だから目立たないけれど、シェラは思慮深く丁寧な言葉遣いなので余計に目立ちます。ちなみに、デルフィニアでのリィは女性の身体でしたが、ここでは男性です。『デルフィニア戦記』から感じていたことですが、表紙絵からして「これはBL本か」と訝しいのです。表紙が恥ずかしい方は文庫版を買いましょう。

お勧め度:★★★☆☆

2013年10月 7日 (月)

暁の天使たち 1 (茅田 砂胡)

暁の天使たち (C・NOVELSファンタジア) これは『デルフィニア戦記』、『スカーレット・ウィザード』に続く作品なのですが、過去2作品の続編のような内容になっています。つまり、『スカーレット・ウィザード』の宇宙に『デルフィニア戦記』の登場人物たちが乱入してきたのです。

ルゥ(闇)、リィ(太陽)、シェラ(月)の3人がキーパーソンで、他に(死んだはずの)ヴァンツァー、レティシア、黒い馬だったグライアまで登場します。そして『スカーレット・ウィザード』の主人公ジャスミンとケリーの息子ダニエル(ダン)がルゥを通じて他の人物たちともつながっていきます。

本シリーズの3巻まで読んでみて、このレビューを書いているのですが、白状すると1巻で投げ出すところでした。死んだ人間は蘇るわ、時空の壁も平気で超えるわ「なんでもあり」にも程があります。こんな無茶苦茶な小説、読んでられるか!

でも、ちょっと待てよ。無茶苦茶なのは今に始まったことじゃない。リィの荒唐無稽ぶりが愉快だった。過去2作品のことは一旦忘れることにして、新しい話として読んでみようと考え直した次第。幸い、軽く読めますし。

さて、場所は惑星ベルトラン。リィには生みの親と育ての親がいまして、リィは育ての親を愛しています。生みの親のことは単に生物学上のつながりとしか考えていないのです。納得がいかないのが生みの父親アーサー・ヴァレンタイン。たまたま「生家」に顔を出したリィとも口論ばかり。デルフィニアから連れてきたシェラの後見人になってもらえればそれでいい。なぜ? リィ、シェラ、ルゥで学校に通いたいというのです。それはアーサーとしても反対できません。

なに、学園もの!? 想像がつかん。すごく嫌な予感がする…。

お勧め度:★★★☆☆

2013年10月 5日 (土)

史上最強の大臣 (室積 光)

史上最強の大臣: THE CABINET2 『史上最強の内閣』の続編。北朝鮮の核ミサイル問題を見事に収めて京都御所に戻った二条内閣に、大阪府知事が教育改革の相談にやって来たのです。その存在が国民に広く知られた二条内閣を望む声が多く、おもしろくないのは現政権。忍者が暗躍する情報戦の様相を呈してきます。

大阪府に派遣された新門(元)大臣は、まず教師探しを始めます。作文であれば「事実を書くこと」を徹底指導。子供たちの家庭の実態が見えてきます。しかし、マスコミは「子供たちを兵隊にしようとしている」「軍国主義の復活を狙っている」と批判します。そうして、前作同様、ああだの、こうだのが続くわけですが、思わず膝を打ったセリフがあります。

「価値観が硬直したままだと、人生において効率よく金銭を得て、楽しようする輩が出てくる。たまにひっくり返すことが重要なんだ。(中略)人間にとって必要な知識、技術はたくさんある。だが、これで十分というものはない。『これで十分』ということはいつまでたってもない。価値観をひっくり返すのが、戦争や災害であれば不幸なことだけれども、意図的にひっくり返す、改革するのであればいいだろう?」

前作を含めて、ストーリーはあまり印象に残らないのですが、キラッと光る言葉が隠されています。あなたにとっての箴言を見つけてください。

お勧め度:★★★☆☆

2013年10月 3日 (木)

歌うクジラ (下)(村上龍)

歌うクジラ 下 『歌うクジラ』を読み始めて、近未来の管理社会を描いた小説という意味では、あさのあつこの『レベル6』とジョージ・オーウェルの『1984』を思い出しました。また、為政者の思惑による文化の破壊という意味では「文化大革命」を連想するのです。 しかし、この『歌うクジラ』の世界はいずれとも異質です。

さて、タナカアキラの旅は、最高権力者による「実験」らしいことがわかってきます。目次をみると、最後は宇宙にまで行くようです。
  1. 水路
  2. 隔離施設 その1
  3. 隔離施設 その2
  4. 隔離施設 その3
  5. 理想村
  6. 安息の洞窟
  7. 廃墟
  8. 地球港19号岸壁
  9. 宇宙へ
  10. 第三レジデンス
  11. 入場審査室
  12. BD最左翼35号棟
  13. 35号棟F その1
  14. 35号棟F その2
  15. 35号棟F その3
  16. 35号棟F その4
  17. Eポッド

極端な少子高齢化と労働力不足から積極的に移民を受け入れてきた後の世界を描いているわけですから、これは100年後の日本の姿かもしれないのです。

「二度の内乱とその鎮圧のあとで、理想社会の第一歩である棲み分けが進みつつあって、社会は、最上層、上層、中間層、下層に区分けされはじめていた。個人情報の集約的管理、警備ロボットの性能の飛躍的向上による治安維持コストの低下、メディアの管理、情報および交通遮断システムの完成によって、社会は分断 されていったが、その過程で、性的な倒錯と犯罪が無視できない規模で増加した」

それにしても「クジラ」の話が出て来ない。なぜクジラなのか。SW遺伝子とは実際なんなのか。詳しく語られることなく終わってしまうのでしょうか。

「生きる上で意味を持つのは、他人との出会いだけだ。そして、移動しなければ出会いはない。移動が、すべてを生み出すのだ」

そうなのかも、と思わせてくれる至言でした。

お勧め度:★★★★☆


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2013年10月 1日 (火)

歌うクジラ (上)(村上龍)

歌うクジラ 上 大学2年の次男から借りて読み始めて驚いた。性表現、残酷シーン満載の、陰々滅々とした(ユートピア=桃源郷ならぬ)ディストピア(暗黒郷)小説。作者は一体なにが書きたいんだろう?

あらためて帯をみると「22世紀の『オイディプス王』『神曲』『夜の果てへの旅』を書きたかった」とあります。 帯裏には「2022年のクリスマスイブ、ハワイの海底で、グレゴリオ聖歌を正確に繰り返し歌うザトウグジラが発見された…。そして100年後の日本、不老不死の遺伝子を巡り、ある少年の冒険の旅が始まる。」

つまり、舞台は2122年の日本。九州北部の「新出島」には、大量に流入した移民や貧民層が隔離されており、その一方で、SW(Singing Whale)遺伝子を注入された、再富裕層がいたのです。

主人公タナカアキラは、父に託されたデータチップを本土の老人施設に届けるために新出島を脱出。彼がたどる道筋がそのまま章立てになっています。
  1. 新出島
  2. 食品モール
  3. トンネル
  4. 制限区域
  5. スタジアム その1
  6. スタジアム その2
  7. スタジアム その3
  8. 歓楽街 その1
  9. 歓楽街 その2
  10. ネギダールの飛行
  11. 羊バス その1
  12. 羊バス その2
  13. 羊バス その3

警察に追われながらの逃避行と、様々な人たちとの出会いと別れ。壊れた社会と文化と精神と日本語。抑圧された状態に馴らされた少年は、何者かに導かれるように淡々と行程をこなしていきます。

主人公は父親の影響で「敬語」を話すことができるのですが、世の中ではすでに「死語」。「文化経済効率運動」とやらの影響で敬語は使わなくなったとか。おまけに移民の子孫たちは助詞がうまく使えない。というか、社会に反抗するため、故意にまちがった使い方をしている部分もあるらしい。これが恐ろしく読みづらい。まさに日本語の崩壊。
「お前、何が笑ってるんだ」
「おれたちがお前は信頼するから絶対おれたちを嘘が言うな」
話し言葉ならある程度許容できても、活字でこれをやられたらたまりません。一字一句追っていたら頭が変になりそうなので助詞を読み飛ばすことにしました。それでも文脈から意味は取れます。

「わたしたち人間が言語を中心とする複雑な文化を生み出した背景には、発情期の喪失、そして長期の未熟性という犠牲が伴っていて、その補完には社会化しかなかったということになる。」

その社会化の結果、どうなったかというと…。(下巻へつづく)

お勧め度:★★★☆☆

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