« 村上春樹の『1Q84』を読み解く (村上春樹研究会) | トップページ | さよならドビュッシー (中山 七里) »

2013年6月 3日 (月)

伏(ふせ) 贋作・里見八犬伝 (桜庭 一樹)



「南総里見八犬伝」は、滝沢馬琴が江戸時代後期(1814-1842年)に著した読本。何層里見家の伏姫と、白犬八房の因縁は同様ですが、関八州各地に生まれた八犬士が活躍するわけではありません。「贋作・里見八犬伝」というのは、作中で滝沢馬琴の息子・冥土がひそかに調査して書いている本。その贋作の贋作が本作というわけ。(ややこしい)

人と犬の間に生まれた「伏」は、江戸の町にそれと知られずに暮らしていた世界。凶暴な伏を狩れば幕府から報奨金が出ることもあって、14歳の猟師・浜路は腹違いの兄を頼って江戸に出てきて、伏の臭いを嗅ぎ取る鼻とでっかい鉄砲を武器に「伏狩り」に励むのでした。

伏の寿命は約20年。そこは犬とおなじ。見た目は人なのですが、身体能力は人間以上。欲望に忠実で、盗むは犯すは殺すは、暴れ出すと手をつけられない。「ブレードランナー」のレプリカントを思い出します。自分の因(はじまり)はどこにあるのか疑問を抱くわけです。

「八犬伝」は勧善懲悪の物語なのですが「伏」では伏自体が悪にされています。つまり、伏を狩る浜路たちが善。要するに宇宙人扱い。ただ、伏のことを知るにつけ「ほんとうにそうなのかな?」というのが本作のテーマ。

人とそうでないもの。人を害するものは徹底的に攻撃、排除する社会がほんとうに幸せな、豊かな社会だといえるのかどうか?

お勧め度:★★★★☆

アニメ映画「伏 鉄砲娘の捕物帳」になりました。

« 村上春樹の『1Q84』を読み解く (村上春樹研究会) | トップページ | さよならドビュッシー (中山 七里) »

時代小説」カテゴリの記事