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2013年4月29日 (月)

時生 (東野 圭吾)

宮本拓実、23歳、無職。幼くして養子に出され、父親はどこの誰かも知らない。自分が養子であることを知って以来、養父母とうまくいかなくなり家を出たものの「自分は親に捨てられた」「いつかでっかいことをしてやる」と嘯いては、人にタバコをせがむ日々。定職にもつかず、恋人・千鶴にも愛想を尽かされたところへ、自称「親戚みたいなもの」というトキオなる青年が現れる。事件に巻き込まれた千鶴を追って、拓実とトキオは大阪へ向かうのだが…。

拓実は、ほんとにどうしようもない奴です。性根が腐ってる。トキオにしてみれば、これが父親だとは思いたくないでしょう。読んでて不快なので何度本を閉じようと思ったことか。トキオは拓実を「更正」させようと時間を遡ってきたのでしょうが「過去は変えられない」とすれば、トキオのしたことは無意味なのでは、という疑問を抱えながら最後まで読みました。

私事で恐縮ですが、先日、母を亡くしたもので、ちょっと堪えました。親が先に逝くのはやむをえないとしても、息子を亡くすなんてまっぴらです。息子たちには「絶対に先に死んではいけない」と厳命してあります。

千鶴にしても、ましてや拓実、トキオにしても、まったく無関係の事件に巻き込まれたわけで、そのどさくさ紛れにトキオが拓実を肉親に会わせようとするわけです。3分の1が、拓実のぐたぐた話、もう3分の1が迷惑な事件の話、残り3分の1がトキオって何なの?という話です。

子供には、自分がどんな親の元に生まれたのか、そのときの様子を含めて話しておく必要があります。望もうと望むまいと、父と母の血を引いているのです。大人になれば、それぞれの家系についても知るべきです。命はつながっています。遺伝情報だけでなく、価値観や人生観も伝えておきたい。

そもそも親子が同じ時を生きることができる時間は限られています。それでも、息子たちはおばあちゃんと一緒に過ごす時間を持つことができました。その思い出を大事にして生きていってほしい。

そんなことを思うきっかけになった一冊でした。

お勧め度:★★★☆☆

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