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2012年10月31日 (水)

黄色い目の魚 (佐藤多佳子)

「しゃべれどもしゃべれども」が面白かったので、佐藤多佳子の2冊目として「黄色い目の魚」を手に取ってみました。この人は心理描写が上手い。子供から大人への過渡期、気持ちが揺れ動き、人との関わりの中で少しずつ変わっていく様子を巧に描いて見せてくれます。

「好き嫌いが激しい」という言葉があるけれど、村田みのりは「好き」がなくて「嫌い」ばかり。高校でも、なにもかも、誰も彼も気に入らなくて絶交してばかり。自宅にも居場所がなくて、唯一くつろげるのが、イラストレーターの叔父の自宅兼アトリエ。一方、同級生の木島悟は、サッカー部のゴールキーパーを務める傍ら、授業中も絵を描いている変わり者。悟は父親を知らずに育ち、10歳のときに初めて逢って、絵を描くのが好きだったことを知り、その後死別。ある日、美術の授業で、悟がみのりの顔を描いたことがきっかけで互いに惹かれていったのです。

悟は人物画を描くのが好きなのですが、それは似顔絵ではありません。顔を似せるのではなく、その人物像というかキャラクターの輪郭を読み取ろうとするのです。みのりは特に美人ではないけれど、まっすぐな気性が絵に現れると「きれいな人」になるのです。

しかし、悟は早熟なのか、10歳でひとりで父親に会いに新宿まで出かけていくし、高校では当たり前のように酒を飲むし、そのうえ…。

ふたりの若者が出会ったことで、自分たちを縛っていた大人から解き放たれ、自らも大人へと成長していく物語。大学生の息子たちにも勧めたい1冊です。

お勧め度:★★★★★

この本は、サッカーとイラストが好きな次男にプレゼントしました。

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