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2012年10月 3日 (水)

猫を抱いて象と泳ぐ (小川洋子)

作者を知らずに読み始めたら村上春樹かと思うところでした。それくらい「文学」してます。小川洋子は「博士が愛した数式」しか知らないから、ちょっと意外でした。「博士」が数学なら「猫象」はチェス。チェスの知識がなくても楽しめますが、チェスがお好きなら一層楽しいことでしょう。

「大きくなること、それは悲劇である」。百貨店の屋上に連れて来られた子象は、大きくなりすぎてエレベーターでも階段でも下りることができなくなって、一生を屋上で過ごしたというエピソードに始まり、隣家との隙間がわずかしかない自宅との壁に挟まって死んでしまった少女がいるとか、廃バスに済む「マスター」(チェスの指南役)は太り過ぎて外へ出ることができなくなったり、主人公は「大きくなること」に恐怖心を抱きつつ、チェス盤の下に潜ってチェスを指すのでした。

対戦相手と向かい合ってチェスを指すのではなく、チェス盤の下や、からくり人形の中に隠れて指すのが好きだし、集中できるという、一風変わった少年です。単に勝てばいいというチェスではなく「最強の手ではなく、最前の手を打つ」のを信条とし、チェスを芸術の域まで高めていくのでした。

コンピューターチェスとは対極にある世界を見せてくれたように思います。

お勧め度:★★★★☆

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