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2012年10月29日 (月)

しゃべれどもしゃべれども (佐藤多佳子)

落語家・今昔亭三つ葉は前座よりひとつ上の二ツ目の26歳。テニススクールでインストラクターをしている従兄弟の良が吃音が再発して困って「噺家だろ。僕に話し方を教えてくれよ」。そこに、無愛想で人付き合いが苦手な十河五月(通称・黒猫)、元野球選手・湯河原太一、頑固ないじめられっ子の小学5年生・村林優が加わって、三つ葉の落語教室が始まります。

先入観なく、気軽に手に取った1冊。さすが噺家が主人公。テンポよく軽快な語り口が気持ちいい。短気で鈍感なのも江戸っ子らしくていい。これはいい。久しぶりに泣いて笑って楽しめる小説を読ませてもらいました。400ページを超える長編小説ですが一気読みです。

村林くんは大阪から東京へ転校してきても大阪弁で通していて、クラスのボス宮田に目をつけられイジメに遭います。それでも「これは喧嘩だ」といって一歩も引かない村林。体育で野球があるので、宮田の球を打とうと湯河原にバッティングを習う村林。最後は上方落語版「まんじゅうこわい」を、宮田たちを呼んで聞かせようという話になります。

小学生が関西から東京へ転校すると、東京言葉はきつく聞こえるので、みんな意地悪に感じてしまいます。ただ、なにかひとつでいいから「お、あいつもなかなかやるじゃん」と思わせるものがあれば、すっと懐に入ることができるのです。誰かひとりでもいいから認めてもらうことができれば、自分に自信を持つことができる。それは生きる上でとても大切なこと。

ラストシーンは井の頭公園での恋の予感。ぶきっちょな二人の人生に幸あれ!

お勧め度:★★★★★

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