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2012年7月 7日 (土)

おまえさん (下) (宮部みゆき)

父親が殺され、瓶屋を仕切ることになった一人娘の史乃。気丈に振る舞う彼女を信之輔は気にかけていた。一方、新兵衛の奉公先だった生薬問屋の当主から明か された二十年前の因縁と隠された罪。正は負に通じ、負はころりと正に変わる。平四郎の甥っ子・弓之助は絡まった人間関係を解きほぐすことができるのか。 『ぼんくら』『日暮らし』に続くシリーズ第3作。

「ぼんくら」「日暮らし」に続く、ぼんくら同心・筒井平四郎シリーズ第3弾の下巻です。上巻で飛び火した事件が解決に向けて動き出します。
  1. おまえさん (19-21)
  2. 残り柿
  3. 転び神
  4. 磯の蚫
  5. 犬おどし

身元不明の男と、瓶屋の主人・新兵衛を斬り殺した下手人の「居場所がわかった」と2、3、4章と同じ終わり方をして5章で結びとなる構成がユニーク。

「おまえさん」を通じた見所をご紹介しておきましょう。

まず、同心・間島信之輔。彼は、刃物を振り回す大男をあっさり取り押さえる十手術の遣い手。つまり仕事はできる。だけど若い娘たちが振り返ることはない。それは顔が拙い、だって。小説ならではの悪戯に思わず吹き出してしまいました。お役目大事の堅物が恋をするとどうなるか見物です。

下巻で登場する弓之助の兄・淳三郎。軽いノリの遊び人で、なにかというと弓之助に説教されるのですが、本人の持ち味を生かした活躍の場が与えられます。

そして、信之輔の大叔父・源右衛門。捕り物の記録に詳しいのですが、話が噛み合ず、正気なのか惚けているのかわかりません。間島家の居候で肩身が狭いならと、お徳は…。

最後に、そんな人たちを温かく見守るのが主人公・平四郎です。事件の推理は弓之助任せ、実際の捜査は政五郎と手下任せ、捕り物は信之輔頼み、女心の相談相手は奥様(山の神)、町人の世話はお徳に限る、というように、八丁堀の旦那としては頼りない。だから自分でも「ぼんくら」だというのですが、なかなかどうして人情という点では「明るい」のではないでしょうか。能はなくても味のある旦那です。

お勧め度:★★★★★

「ぼんくら」シリーズもいいけれど、宮部みゆきの時代小説のなかでは「あかんべえ」がいちばん好きです。

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