« 虚無への供物 (下) (中井英夫) | トップページ | ザ・万歩計 (万城目 学) »

2012年7月15日 (日)

ヒア・カムズ・ザ・サン (有川浩)

真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた…。

上記のあらすじから有川浩が書き上げた小説が『ヒア・カムズ・ザ・サン』です。演劇とのコラボ云々という話には興味はなく、あくまで1編の小説として楽しませてもらいます。

冒頭、文芸雑誌の編集者・真也が、以前担当していた作家から校正刷りが送られてきて…というシーンは、有川が作家としての経験を踏まえていることがアリアリとわかる。小説の透かしのように顔が見えるのです。ほら、本のページを太陽に透かしてみれば…。

「何だかものすごくナチュラルに家庭内のディープな事情をぶん投げられたような気がするのは気のせいか」なんて愉快な言い回しは有川らしい。主人公が真也ではなく女性のほうが似合うような気がするのは気のせいか。

1冊で1本の物語かと思ったら、半分で「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」に変わりました。冒頭の設定のまま、パラレルワールドのように異なる物語を書いたようです。前半が「かっこいいバージョン」だとしたら、こちらの後半は「かっこ悪いバージョン」。誰が、といえば父親が。真也が、というなら逆転します。でも、わたしは前半が好き。こちらをもうすこし突っ込んで書いてほしかった。

お勧め度:★★★★★

物に残る人の想いを感じ取ることができる真也は、編集者より刑事か探偵になったほうが役に立つのでは? でも、殺された被害者の遺留品に触れたらショックで倒れちゃうかもね。

« 虚無への供物 (下) (中井英夫) | トップページ | ザ・万歩計 (万城目 学) »

現代小説」カテゴリの記事