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2012年7月

2012年7月31日 (火)

マイ・ブルー・ヘブン 〜 東京バンドワゴン 4 (小路幸也)

「東京バンドワゴン」の語り手、いまは亡き(幽霊の)サチが堀田家に嫁ぐことになったいきさつが明かされます。なんとサチは華族・五条辻家の一人娘・咲智子18歳。終戦直後、父から重要な文書の入った箱を浜松まで届けるように言われて出かけた上野駅で米兵に捕まりそうになったところを堀田勘一少年に救われたのです。
  1. On The Sunny Side Of The Street
  2. Tokyo Bandwagon
  3. My Blue Heaven

古本屋「東京バンドワゴン」の店主は勘一の父・草平。新聞社を起こそうとしただけあって博学です。意外だったのが勘一。彼は医学生で、英語が堪能で、芸術にも通じている点。1巻から読んできて違和感がないのは語り手が同じサチだからでしょう。それにしても華族のお嬢さんだったとは!

サチを勘一の嫁として堀田家にかくまったものの、サチの両親の無事を確かめたい。堀田家は仲間を総動員して占領軍に対して仕掛けます。堀田家のおせっかいは家訓によるものらしいけれど「おせっかい、ここに極まれり」ですね。

4巻は「東京バンドワゴン」シリーズで一番気に入りました。

お勧め度:★★★★★

2012年7月29日 (日)

スタンド・バイ・ミー 〜 東京バンドワゴン 3 (小路幸也)

「東京バンドワゴン」シリーズ第3弾。いつものように4章が四季に対応し1年を描きます。
  1. (秋)あなたのおなまえなんてぇの
  2. (冬)冬に稲妻春遠からじ
  3. (春)研人とメリーちゃんの羊が笑う
  4. (夏)スタンド・バイ・ミー

1冊ずつ登場人物も年を取っていくわけですが、去る人よりも来る人のほうが多いので、巻頭の「登場人物相関図」は必須です。

1話は、持ち込まれた古本の裏表紙に子供の字で「ほったこん ひとごろし」。これって紺のこと? 2話は、アメリカから届いた古本10箱のなかに、なにやら大変価値ある日記が隠されているらしく、それを狙うバイヤーが勘一に直談判するのですが…。3話は、研人の同級生・芽莉依(めりい)ちゃんは東京バンドワゴンで本を読んで過ごすことが多いのですが、羊に追われているとか…。4話は、青の母親が女優・池沢百合枝であることを雑誌に載せようとする木島記者を止めることはできるのか?

堀田家では本当にいろんな騒動が起こるので退屈しません。最初に面食らったのが朝食のシーン。みんな同時にしゃべるものだから、時系列にしか読めない小説の限界を感じます。そして、そのシーンがすべてを象徴していて、いろんな話が錯綜するのです。

今回とくにおもしろかったのは2カ所。ひとつは、3話でのすずみさんの啖呵。「てやんでぇべらぼうめぇ!!」。『居眠り磐音 江戸双紙』の(磐音に)嫁ぐ前の「おこん」を思い出しました。威勢のいいお嬢さんは大好きです。もうひとつ、4話での藤島社長の金の使い方が痛快無比!

お勧め度:★★★★★

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2012年7月27日 (金)

シー・ラブズ・ユー 〜 東京バンドワゴン 2 (小路幸也)

「東京バンドワゴン」シリーズ第2弾。今回も東京・下町の古本屋&カフェ「東京バンドワゴン」を営む堀田家4世代、8人が織りなす人情物語の始まり、はじまりぃ〜!
  1. (冬)百科事典は赤ちゃんと共に
  2. (春)恋の沙汰も神頼み
  3. (夏)幽霊の正体見たり夏休み
  4. (秋)SHE LOVES YOU

というわけで、今回も面白かった。去年から今年にかけては『みをつくし料理帖』シリーズと並ぶマイ・ヒットです。え、わたしは人情ものが好きだったの!?

1話はカフェに赤ちゃんが置き去りにされ、2話は持ち込んだ50冊を1冊ずつ買い戻す老人がいたり、3話は小学生の孫と折り合いの悪いあばあさんの相談を受けたり、4話は藍子をめぐる三角関係の結末はどうなるのか、いろんな話が交錯して騒々しく、愉快に、しんみりと、幽霊のサチばあちゃんが語ってくれます。

今回、亡くなった秋実さん(我南人の奥さん)の話が出てきて『四十九日のレシピ』(伊吹有喜)を思い出しました。一家の「太陽」を失うと男は駄目みたいですね。

お勧め度:★★★★★


2012年7月25日 (水)

東京バンドワゴン (小路幸也)

大学1年の次男の本棚から借りてきたのですが、久々に楽しい本に出会いました。4世代同居のふる〜い古書店+カフェを舞台に、ひと癖ある登場人物たちの周囲で起こるドタバタを、2年前に亡くなった曾祖母の幽霊が語ってくれます。読み始めると昭和のホームドラマが目に浮かんできます。
  1. (春)百科事典はなぜ消える
  2. (夏)お嫁さんはなぜ泣くの
  3. (秋)犬とネズミとブローチと
  4. (冬)愛こそすべて

「文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決」という家訓を守って暮らす堀田家の人々は、毎朝書棚に百科事典が2冊置かれて、夕方には消える謎や、青の嫁候補としてみすずが押し掛けてきた謎、旅館で古本の鑑定をした翌朝、古本もご主人も消えていた謎、青とみすずは12月に結婚予定なのに神主さんが水を差す謎など、さりげなく、ごく自然にミステリー仕立てになっています。

以下、第7弾まで刊行されています。ビートルズの曲のタイトルというのもいいですね。ただし、第4弾"My Blue Heaven"は1927年にジーン・オースティンがヒットさせたポップスのスタンダードナンバー。夕暮れ時の我が家の幸福を歌った曲ですから「東京バンドワゴン」にぴったり。テーマ曲といってもいいでしょう。

  1. 東京バンドワゴン
  2. シー・ラブズ・ユー
  3. スタンド・バイ・ミー
  4. マイ・ブルー・ヘブン(番外編)
  5. オール・マイ・ラビング
  6. オブ・ラ・ディ オブ・ラ・ダ
  7. レディ・マドンナ

まさに、読むホームドラマ。興味のある方はぜひ!

お勧め度:★★★★★


2012年7月23日 (月)

GOSICK III (桜庭一樹)

1巻と2巻では、ヴィクトリカと一弥がふたりで事件に立ち向かったのですが、この3巻ではヴィクトリカが風邪を引いてしまい、一弥がひとりでソヴュール王国の首都ソヴレムに出向きます。ヴィクトリカは安楽椅子探偵ならぬ「ベッド(で寝込む)探偵」です。

国宝「青い薔薇」に似せた、ガラス製ペーパーウェイトを買おうと、ソヴレムの高級デパート「ジャンタン」に入った一弥は…。

余談ですが、風邪引きヴィクトリカは迷宮庭園の奥にある家に住んでいます。一弥ですら迷宮を抜けるには疲れる様子。馬車で送迎もできないようなところにヴィクトリカが住めるのでしょうか。あるいは、ヴィクトリカだけが知る抜け道があるのかな。

お勧め度:★★★☆☆

2012年7月21日 (土)

GOSICK II (桜庭一樹)

「灰色狼」の血を引くヴィクトリカは、幼い頃から恐れられ軟禁状態。ところが、聖マルグリッド学園に東洋人の久城一弥がやってきて、ヴィクトリカに初めて友人ができたのです。

彼は無愛想で口の悪いヴィクトリカに立腹しつつも、彼女を喜ばそうと一生懸命。第1巻では幽霊船に連れ出し、今回、ふたりは山奥の小さな村にやってきたのです。そこでヴィクトリカは、母コルデリアの無実を晴らそうと、母が巻き込まれた殺人事件について調査をはじめます。

ストーリーは面白かったのですが、やはり角川文庫版は愛想がないので、古書店で富士見ミステリー文庫版を買い直しました。こちらのほうが表紙も口絵もラノベらしい。

お勧め度:★★★★☆

2012年7月19日 (木)

GOSICK (桜庭一樹)

アニメが面白かったので原作を読んでみることにしました。人形みたいな金髪「緑」眼の少女なんて『ダンタリアンの書架』のダリアンを思い出します。ダリアンは黒髪だし、人間でもありませんが「美少女+無愛想+食いしん坊」という点は共通しています。

現在は角川文庫から出ているのですが、古書店であえて富士見ミステリー文庫版を買ってきました。こちらのほうが表紙はもちろん巻頭にもカラーイラストがあるからラノベらしくていい。一方、角川文庫は装丁からラノベ色は一掃されてしまいました。先にアニメを見た方はぜひ富士見版を探してください!

やはりアニメのほうがヴィクトリカの容姿や風変わりな様子はよくわかります。その点、原作は地味に感じます。ほんとうは文章から想像力を膨らませるのが読書の楽しみなのですが、ラノベはコミックやアニメから入ることもあるため、楽しみ方も多様です。

時は第一次世界大戦後、場所は西欧の小国ソビュール。聖マルグリッド学園の図書館の最上階にある植物園に幽閉されている少女ヴィクトリカが主人公。相棒は日本からの留学生・久城一弥。今回はふたりが幽霊船の殺人事件に巻き込まれるという、1巻からハードな展開。一体なにが起こるのかは読んでみてのお楽しみ。

お勧め度:★★★★☆

2012年7月17日 (火)

ザ・万歩計 (万城目 学)

『鴨川ホルモー』でデビューした万城目 学が書いたエッセイ集なのですが、これが「ものすごいつまらない」。冒頭で、高2の授業で「風が吹けば花屋が儲かる」という発想飛びの宿題が出たというので、さぞかし愉快な発想を披露してくれるのだろうと期待したら明後日の方向へ期待ハズレ。「阿呆な話」という意味では、森見登美彦のほうが面白い。どうもこの作者は笑いのピントがビミョーというか、多少ずれてるみたいです。

ただ、最後の「はるかなるモンゴル」という旅行記は面白かった。モンゴルの遊牧民の自給自足の生活に憧れて10日ほどタイガで暮らした作者の夢や憧れは見事に砕け散りました。一日のほとんどを食べるために費やしているというのは、昔の日本もそうだったのではないでしょうか。

しかし、わたしが好きな第2作『鹿男あをによし』が、モンゴルでのトナカイとの出会いがきっかけになっていたとは初耳です。奈良が舞台だから鹿になっただけかと思ってた。「はるかなるモンゴル」を読むために、この本を買うかどうか悩むところです。

お勧め度:★★★☆☆

2012年7月15日 (日)

ヒア・カムズ・ザ・サン (有川浩)

真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた…。

上記のあらすじから有川浩が書き上げた小説が『ヒア・カムズ・ザ・サン』です。演劇とのコラボ云々という話には興味はなく、あくまで1編の小説として楽しませてもらいます。

冒頭、文芸雑誌の編集者・真也が、以前担当していた作家から校正刷りが送られてきて…というシーンは、有川が作家としての経験を踏まえていることがアリアリとわかる。小説の透かしのように顔が見えるのです。ほら、本のページを太陽に透かしてみれば…。

「何だかものすごくナチュラルに家庭内のディープな事情をぶん投げられたような気がするのは気のせいか」なんて愉快な言い回しは有川らしい。主人公が真也ではなく女性のほうが似合うような気がするのは気のせいか。

1冊で1本の物語かと思ったら、半分で「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」に変わりました。冒頭の設定のまま、パラレルワールドのように異なる物語を書いたようです。前半が「かっこいいバージョン」だとしたら、こちらの後半は「かっこ悪いバージョン」。誰が、といえば父親が。真也が、というなら逆転します。でも、わたしは前半が好き。こちらをもうすこし突っ込んで書いてほしかった。

お勧め度:★★★★★

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2012年7月13日 (金)

虚無への供物 (下) (中井英夫)

紅司、橙二郎が相次いで不審死。久生、亜利夫らが探偵気取りで推理を展開するのですが「何者か」「誰か」が登場し、そんなことを言い出したら解けない事件なんてないことになってしまいます。しかし、あとになって、その何者かが実在していたことがわかるというご都合主義。殺人事件が連鎖反応を起こして、最後にはほぼ全員が犯人になってしまいます。
  1. 顔のない顔
  2. 瞋(いか)る者の死
  3. 閉された扉
  4. オイディプスの末裔
  5. 殺人日暦
  6. 第四次元の断面
  7. 放火日暦
  8. タイム・マシンに乗って(亜利夫の日記 II)
  9. ゴーレムの正体
  10. 犯罪函数方程式
  11. 白い手の持主
  12. 第三の薔薇園
  13. 死体エレベーター
  14. 痴れ者の死
  15. 密室でない密室
  16. ワンダランドへの誘い
  17. 薔薇と経文
  18. 三枚のレコード
  19. 童子変相図
  20. ”驚くべき真相”
  21. 非誕生日の贈り物
  22. 夜の蓑虫(久生の告発)
  23. 仮面の人(藍ちゃんの告発)
  24. 黒と白(亜利夫の告発)
  25. 非現実の鞭
  26. 幸福な殺人者(藤木田老の告発)
  27. 鉄格子の内そと(蒼司の告発)
  28. 五月は喪服の季
  29. 壁画の前で
  30. 飛び立つ凶鳥

推理小説をほとんど読んだことのない私にはちっとも面白くなくて、どこが「傑作」なのかわかりませんでした。出直してきます。

2012年7月11日 (水)

虚無への供物 (上) (中井英夫)

氷沼家の連続殺人事件を、駆け出し歌手・奈々村久生が推理する。素人探偵が大勢登場して大騒ぎ!?

三浦しをんがエッセイの中で「推理小説の傑作」と書いていたので読んでみることにしました。
  1. サロメの夜
  2. 牧羊神のむれ
  3. 月の夜の散歩
  4. 蛇神伝説
  5. ザ・ヒヌマ・マーダー
  6. 燐光の館
  7. 未来の犯人
  8. 被害者のリスト
  9. 井戸の底で
  10. 『凶鳥の黒影』前編
  11. 第一の死者
  12. 十字架と鞠
  13. 『凶鳥の黒影』後編
  14. 透明人間の呟き
  15. 五つの棺(亜利夫の推理)
  16. 薔薇のお告げ(久生の推理)
  17. 第三の業(久生の推理・続き)
  18. 密室と供物殿(藍ちゃんの推理)
  19. ハムレットの死(藤木田老の推理)
  20. ”虚無への供物”
  21. 黒月の呪い
  22. 死人の誕生日
  23. 犯人たちの合唱
  24. 好ましくない容疑者(亜利夫の日記 I)
  25. 皺だらけの眼
  26. 算術の問題
  27. 予言者の帰国
  28. 殺人問答
  29. ギニョールふうな死
  30. 畸形な月

しかし、いきなり新宿のゲイバーから始まるもので、誰が男だか女だか…。

いろんな推理小説が引き合いに出されるのですが、推理には必ずしも証拠の裏付けがあるわけではなく「こういう人物がいるはずだ」といった仮定も含まれているので説得力に欠けます。

まだ上巻を読み終えたところですが、これが最後には「傑作」になるのでしょうか?

お勧め度:?????


さくら荘のペットな彼女 7 (鴨志田一)

仁と美咲が卒業して、さくら荘の部屋がふたつ空いたのですが、はうはうの弟・姫宮伊織と、ストレスが溜まるとパンツを脱いでしまう長谷栞奈(かんな)がさくら荘に住むことになり早速満員御礼! さらに、入試に落ちたはずの空太の妹・優子がなぜか制服を着て空太のベッドで眠りこけてて…そこへましろが入ってきて「誰、この女?」。

6巻はつまらなかったけれど7巻は調子が戻って面白かった。空太とましろのつっこみ漫才も健在です。しかし、新たにさくら荘に加わった変態2名。真に指弾されるべき変態は作者だと思います。女性ファンなくしてません?

それにしても、ましろも成長したものです。まだ生活力はないけれど、もう「ペット」とはいえません。空太はましろと七海のどちらを選ぶのか。ふつに考えたら七海のほうが「ふつうの彼氏彼女」になれる。ましろを選ぶと苦労するに決まってる。でも、恋は損得勘定じゃない。

空太たちが高校卒業まであと1年。最後まで付き合ってみようと思います。

お勧め度:★★★★☆

2012年7月 9日 (月)

さくら荘のペットな彼女 6 (鴨志田一)

さくら荘が取り壊される!? 理事会は「老朽化のため」としているけれど、実はましろを寮から出すのが目的。さくら荘の面々は校則に則り、生徒の3分の2以上の署名を集めて、さくら荘取り壊しを阻止しようとするのですが…。

久しぶりの「ペットな彼女」なので、楽しみだったのですが…わたしはひねくれているのか「さくら荘がなくなるわけないじゃん。もしなくなったらタイトル変えないといけないじゃないか」。おまけに、相変わらずぐだぐたの空太にテンションが急降下。斜め読みで強制終了。彼女(ましろ)も「ペット」でなくなってきてつまらないし、やっぱり5.5で終わってました。

でも、ラストの美咲には意表をつかれました。変な女です。次男が7巻を貸してくれたので読んでみます。

お勧め度:★☆☆☆☆

2012年7月 7日 (土)

おまえさん (下) (宮部みゆき)

父親が殺され、瓶屋を仕切ることになった一人娘の史乃。気丈に振る舞う彼女を信之輔は気にかけていた。一方、新兵衛の奉公先だった生薬問屋の当主から明か された二十年前の因縁と隠された罪。正は負に通じ、負はころりと正に変わる。平四郎の甥っ子・弓之助は絡まった人間関係を解きほぐすことができるのか。 『ぼんくら』『日暮らし』に続くシリーズ第3作。

「ぼんくら」「日暮らし」に続く、ぼんくら同心・筒井平四郎シリーズ第3弾の下巻です。上巻で飛び火した事件が解決に向けて動き出します。
  1. おまえさん (19-21)
  2. 残り柿
  3. 転び神
  4. 磯の蚫
  5. 犬おどし

身元不明の男と、瓶屋の主人・新兵衛を斬り殺した下手人の「居場所がわかった」と2、3、4章と同じ終わり方をして5章で結びとなる構成がユニーク。

「おまえさん」を通じた見所をご紹介しておきましょう。

まず、同心・間島信之輔。彼は、刃物を振り回す大男をあっさり取り押さえる十手術の遣い手。つまり仕事はできる。だけど若い娘たちが振り返ることはない。それは顔が拙い、だって。小説ならではの悪戯に思わず吹き出してしまいました。お役目大事の堅物が恋をするとどうなるか見物です。

下巻で登場する弓之助の兄・淳三郎。軽いノリの遊び人で、なにかというと弓之助に説教されるのですが、本人の持ち味を生かした活躍の場が与えられます。

そして、信之輔の大叔父・源右衛門。捕り物の記録に詳しいのですが、話が噛み合ず、正気なのか惚けているのかわかりません。間島家の居候で肩身が狭いならと、お徳は…。

最後に、そんな人たちを温かく見守るのが主人公・平四郎です。事件の推理は弓之助任せ、実際の捜査は政五郎と手下任せ、捕り物は信之輔頼み、女心の相談相手は奥様(山の神)、町人の世話はお徳に限る、というように、八丁堀の旦那としては頼りない。だから自分でも「ぼんくら」だというのですが、なかなかどうして人情という点では「明るい」のではないでしょうか。能はなくても味のある旦那です。

お勧め度:★★★★★

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2012年7月 5日 (木)

おまえさん (上) (宮部みゆき)

「ぼんくら」「日暮らし」に続く、ぼんくら同心・筒井平四郎シリーズ第3弾。お役目にはあまり熱心とは言えない平四郎ですが、甥っ子弓之助、十手持ちの政五郎らに助けられ、今日も江戸の治安を守って…いるのかなぁ?

「王疹膏」というかゆみ止めの薬で有名な瓶屋の主人・新兵衛が斬殺された。その切り口を見た八丁堀のご隠居・源右衛門が、お徳屋の近くで斬り殺された男の切り傷と同じだというのです。しかも、その太刀筋は「遺恨じゃ」。その身元不明の男と生薬屋の主人とのつながりは…?

文庫上下巻とも約600ページという大作。伏線なんだか、余談なんだかわからない話があれこれ。風呂敷を広げるだけ広げたのが上巻。下巻に入ると一旦まとめにかかります。だから上巻は江戸の与太話だと思って気軽に流しましょう。ちょっぴり成長した弓之助と三太郎(おでこ)の活躍も見所です。

お勧め度:★★★☆☆

2012年7月 3日 (火)

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (三上延)

次男が発売と同時に買ってきたのを借りました。

『ビブリア古書堂の事件手帖』といっても、1〜2巻では事件と呼べるのは栞子が足を怪我した件くらいで物足りなかったのですが、今回は栞子の母親・篠川智恵子の影がちらついて怪しげな展開になってきました。そうそう、このほうが面白い!
  1. プロローグ『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)
  2. 第1話 ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)
  3. 第2話 『タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの』
  4. 第3話 宮沢賢治『春と修羅』(関根書店)
  5. エピローグ『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)II

ヒロインの人生に母親が影を落とすというのは『GOSICK』(桜庭一樹)と似ています。栞子は母親に似て美人。しかも昔、母親がやっていた「古書探偵」のようなことも始めたようで、今後が楽しみになってきました。

『たんぽぽ娘』は名古屋市図書館にあるので借りてみようと思います。第2話の絵本は公式サイトがあるので、書名がわかったら検索してみてください。『春と修羅』はネットで読むこともできます。

お勧め度:★★★★★

2012年7月 1日 (日)

真夜中のパン屋さん 〜 午前1時の恋泥棒 (大沼紀子)

『真夜中のパン屋さん』(まよパン)第2弾。夜が舞台だけあって、怪しげな人物が登場するのですが、おっとり暮林と喧嘩っ早い弘基コンビにかかっては毒気を抜かれてしまうようで…。

しかし、今回は危ない雰囲気が漂っています。弘基が生まれ育った土地は不景気で荒んでいたらしく、当時の友人たちはいまも這い上がることができずにもがいてる。中学時代の元カノ・佳乃が弘基を頼って転がり込んできます。ボストンバッグいっぱいの現金を隠し持って。

やくざやストーカーの影もちらついて、雰囲気は『神様のメモ帳』(杉井光)。探偵ではないけれど、人肌脱ごうとする弘基と暮林、そして希美です。「まよパン」の魅力は、おいしそうなパンと予想外の展開、そして希美のツッコミ!

いまは亡き美和子は「誰かの傘になれるような店」を作りたかったという最終章はヨカッタ。人を救う、人に救われるとはどういうことなのか。神ではない人が、人を救うことができるのか。堕ちるところまで堕ちてしまった佳乃を救うために弘基が考えた方法は…。

途中、ちょっと暗いのでどうしようかと思ったけれど、ラストで見事に取り返してくれました。いま思うと前巻は「まよパン」物語の序章。ここからが始まりです。「午前0時のレシピ」が気に入った方はぜひ!

お勧め度:★★★★★

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