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2012年6月 9日 (土)

シェエラザード (下) (浅田次郎)

当時弥勒丸に乗り組んでいたベーカー(パン焼き職人)やシンガポール駐在の特務機関員らが50年以上経って重い口を開き、過去がすこしずつ明らかになっていきます。なぜ2千人以上が犠牲にならなければならなかったのか。多くの一般人が乗っていることは承知していたはずなのにアメリカ潜水艦はなぜ客船に魚雷を打ち込んだのか。

引き揚げるのは台湾や中国、アメリカではいけないのか。宋英明は「弥勒丸を沈めたアメリカではなく、日本人が引き揚げるべき」と譲りません。どうも船と共に沈んだ金塊だけが目的ではないようです。

結局、人命軽視の理不尽な戦争がいけないのです。満州に留まっていればよいものを、引き時を見失った帝国陸軍はどんどん南方まで戦線を拡大し、日本を道連れに自滅します。非情に重い話なので、読んでいても暗くなりがちですが、元気のいい3人に救われます。

本書の紹介文に「日本人の尊厳を問う、感動巨編」とありますが「日本人の」ではなく「人間の」でしょう。戦後、後悔と苦悩を抱えながら生きてきた者と、戦後生まれの者とが見せてくれる、戦争が生んだ亡霊の物語です。

お勧め度:★★★★☆

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