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2012年6月 7日 (木)

シェエラザード (上) (浅田次郎)

実際の「阿波丸事件」を題材にした小説。「シェエラザード」とは、アラビアンナイトに登場する女性であり、リムスキー・コルサコフの交響組曲。豪華客船・弥勒丸をシェエラザードになぞらえました。ただ、アラビアンナイトとちがって、こちらの「彼女」はアメリカの潜水艦に沈められてしまいましたが…。

台湾の宋英明という老人から「昭和20年に台湾沖で沈没した弥勒丸を引き揚げたいから100億円貸してほしい」という依頼を受けた栄光興産の軽部社長と日比野専務。それは表の顔で、実態は共道会のヤクザ。他に、政界ルート(衆議院議員・高松貞彦の第一秘書)と財界ルート(九洋物産の財務部長)にも同様の依頼をしたという。軽部は依頼の裏を取ろうと、昔別れた恋人・久光律子に相談すると、彼女は新聞社をやめて仲間に加わってきた。3人で調査しているうちに、政界ルートと財界ルートの担当者が次々と自殺に見せかけて殺されてしまう。お尻に火がついた軽部、日比野、久光はボスに相談するのですが…。

宋英明とは何者なのか。なぜ殺人を犯してまで弥勒丸にこだわるのか。そして、なぜ弥勒丸は沈められたのか。これらが明かされるべき謎です。

小説は、軽部たちの「いま」と、弥勒丸に乗船した人間たちの「当時」が交互に語られます。宮部みゆきは『蒲生邸事件』に寄せて「歴史をあとから批判するのはフェアじゃない」と言っていますが、そういう意味でも『シェエラザード』は登場人物がその場でなにを思い、どう行動したかを綴ってあるのが興味深い。フィクションではありますが「ひょっとしたら事実はこうだったのかも」と思わせてくれます。

お勧め度:★★★★☆

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