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2012年6月13日 (水)

烏丸ルヴォワール (円居晩)

                         
『丸太町ルヴォワール』の続編。目次のつぎのページに京都の概略地図が載っていて、京都気分が盛り上がります。ほぼ中央を南北に走るのが烏丸通、東西に走るのが丸太町通。双龍神社は架空でも、京都御所西側のKBS京都、京都ブライトンホテルは実在します。烏丸御池を下ると、大垣書店、スターバックス三条烏丸店、新風館もあるから、実際の京都の街にフィクションを盛り込んだ地図といえます。
      
      今回は「黄母衣内記」という稀覯本をめぐる殺人?事件について私的裁判「双龍会」が開かれます。美術教師の綾織耕作が所有する「黄母衣内記」を狙って、弟で綾織紡績社長の綾織文郎が、兄のポルシェのブレーキに細工をして、下り坂の先の壁に激突して事故死というのが、ひとつの筋書きです。ただし、双龍会は警察も検察も関与しない「お芝居」ですから、もっともらしい理屈を押し通した者が勝ち。そのためにはでっち上げ、嘘、証拠捏造もなんでもアリ。つまり観客を楽しませたほうが勝ちなのですが、敗者は京都にいられなくなるなど、実際に不利な状況に追い込まれるので必死です。
      
      前回(丸太町ルヴォワール)で活躍した城坂論語と撫子はとくに親しくなったようには見えず、あくまで龍樹家の一員として動きます。龍樹家当主・落花が不在ということで、御堂達也を加えた3人で双龍会に臨むことになります。対戦相手は「ささめきの山月」という謎の怪人。彼は瓶賀流を取り込み、龍樹家を裏切らせます。
      
      京都という碁盤のうえの囲碁対局。「ルヴォワール」シリーズの「双龍会」はそんなふうに見えます。相手をはめたつもりが見事はめられることもあるわけで…。
      
      双龍会での瓶賀流(みつる)は、凡才が天才に挑む図であり、かなり無様なのですが、論語や達也とは異なるキャラクターということで確固たるポジションを得ています。
      
      自分の主張を通すために武器を持ち出す小説が多いなか、この「ルヴォワール」シリーズはあくまで「ことば」で戦うところがおもしろいのです。
      
      お勧め度:★★★★★

ポルシェによる事故死について5点ほど疑問があります。ここでいうポルシェはおそらく911(997)でしょう。

1.アクセルが戻らなくなって壁に激突したのならともかく、下り坂でブレーキが抜けただけでドライバーが死亡するとは考えにくい。

2.事故を起こしたポルシェは、専門店で「車検を通したばかりだから」整備不良は考えられないとありますが、それは甘い。高年式のポルシェの車検を通すだけであれば整備など最低限で済みます。ブレーキパッドとローターの摩耗が規定範囲内で、計測する瞬間だけブレーキが効けばいいのですから、車検直後でも整備不良はありえます。

3.ポルシェを入れ替えるにはエンジン型式が同一だとしてもナンバープレートと車台番号を替えなければならず「10分で」車台番号まで変えるのはむずかしいと思います。

4.同型ポルシェの中古車をブレーキに細工した新車と入れ替えたという仮定も不自然です。しかも新車同様と3年落ちであれば他人が見ても違うはず。同年式だとしても自分のクルマが入れ替えられたら、室内やトランクに置いてある物やルームミラーの向き、キーや車内外の傷や汚れなど、ちょっとした変化に気づくはず。

5.ポルシェのリアシートで達也が眠ったとありますが、911は大柄な男性には狭くて、とても眠れるとは思えません。

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