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2012年6月 3日 (日)

天切り松 闇がたり4〜昭和侠盗伝 (浅田次郎)

それまでの大正から昭和に時代が移り、関東大震災からの復興は進んだものの、いきなり昭和大恐慌で、資源を求めて帝国陸軍(関東軍)は満州へ進出。

いちばん印象的だったのが第1話「昭和侠盗伝」。第3巻で寅が湯屋の銭を与えたイサオを実の息子のようにずっと可愛がってきたのだけど、イサオの元へ赤紙が届いた。徴兵を防ぐことはできずとも、盗人にしかできないことがあるはず…。これがまたカッコいいのです。それと、松蔵に「天切り松」という二つ名を与えた人物が、とんでもない大物なのです。是非読んでみてください。
  1. 昭和侠盗伝
  2. 日輪の刺客
  3. 惜別の譜
  4. 王妃のワルツ
  5. 尾張町暮色

第4話は、中国(満州)の王子と結婚させられる嵯峨公爵家のお姫様は、じつは黄不動・英治のファン。なんとかして会いたい。会ったらわたしを盗んでもらおう。

満州の話は『中原の虹』とだぶります。小説はフィクションだけど、登場人物の語る歴史観や戦争観は作者の影響を受けるはず。作中で天切り松はこう言います。

「関東軍は関東平野って意味じゃあねえ、万里の長城は山海関の東にいるから関東軍てえのがその名の由来さ。その当座、不況にあえぐ日本にとっちゃ、資源豊かな満州は生命線、いずれは朝鮮同様に乗っ取っちまおうてえのが関東軍の肚だった。満州事変、上海事変のどさくさまぎれに、天津で不遇をかこっていた元清国皇帝愛新覚羅溥儀をかっさらい、大清復辟の餌をちらつかせて満州国をこさえたのが昭和7年。(中略)つまるところは、国を挙げての盗っ人稼業さ。」「戦争は外交手段のひとつ」などと嘯く政治家や軍人はくたばりやがれ!

やせ我慢の美学。それがこのシリーズの魅力でしょう。

お勧め度:★★★★★

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