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2012年6月 1日 (金)

天切り松 闇がたり3〜初湯千両 (浅田次郎)

大晦日の夜、松蔵と湯屋に向かった寅は、湯銭を落として泣いているイサオに五銭をくれてやった。聞くと、父親はシベリアで戦死、母とふたり暮らしだという。湯から出てイサオを長屋まで送っていくと、気丈な母親は生活に困ってなどいないというのですが…。

寅自身、二百三高地で地獄を見たもので放ってはおけない。撤退を進言したのに、非情な突撃を命じた当時の上官は陸軍大臣に出世しているのが許せない。寅は真夜中に忍び込み、二百三高地東堡塁に一番乗りしてもらった功四級勲章を置いて「お代は千円、おしいただいて受け取りやがれってんだ」。ク〜、カッコいい!

千円の上に有り金はたいて、イサオの長屋に放り込んでしまった寅は正月からスカンピン。初湯の祝儀に千円出すのかと思ったら「初湯にまつわる千円のご祝儀」でした。不条理を許さず、情け深く、粋な盗人たち…というと、妙な感じがしますが、それをいうなら『プリズンホテル』に登場するヤクザ、いや任侠たちもそうでした。江戸の粋(意気)を大正ロマン風味に、愉快、痛快に語り聞かせてくれる闇語り第3弾でした。

他に「共犯者」「宵待草」「大楠公の太刀」「道化の恋文」「銀次蔭盃」の全6話を収録。「大楠公の太刀」もよかった。肺を病む幼なじみの宮子、小龍姐さんに、その名の由来となった小龍景光という名刀を見せてやりたくて英治は安吉親分に相談します。伊藤博文が名付けた小龍という名が重くて仕方ないという小龍を不憫に思った英治は「赤坂の小龍からただの宮子に戻して、冥土に送ってやりてえんだ」。しかし、小龍景光は天皇家の宝物。まさか皇居から盗み出すわけにいきません。そこで安吉親分が相談した相手が森林太郎大臣、森鴎外です。

人と人が心の奥底で深く結びついているのは、時代なのか、人なのか。世の中、便利になったけれど、その代わりに失ったものを「闇がたり」に聞いているような気がします。

お勧め度:★★★★★

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