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2012年5月17日 (木)

マンチュリアン・リポート (浅田次郎)

『中原の虹』の主人公・張作霖が乗った列車は昭和3年6月4日未明、関東軍によって爆破されました。その暴挙に激怒した昭和天皇は張作霖爆殺事件の真相を調査して報告するよう、獄中から連れ出した志津中尉に命じたのです。天皇の密命を帯びた中尉が満州から送った「満州報告書」です。

目次には「満州報告書 第一信」「鋼鉄の独白1」が6組続いたあとに「終章」「満州報告書 第七信」とあります。「鋼鉄の独白」の鋼鉄とは西太后が一度だけ乗った御料車を引く英国生まれの蒸気機関車。この機関車が爆破されるので事件の証人なのです。モノローグ形式は『珍妃の井戸』で馴れましたが、鉄の塊にしゃべらせるとは意表を突かれました。しかも、張作霖は鉄が好きです。

この1冊だけでも独立した小説として楽しめるはずですが、できれば『蒼穹の昴』『中原の虹』から読んでほしい。最後に『蒼穹の昴』の春児にも会えます。

満州における関東軍の暴走を、天皇はなぜ止められなかったのか。況や、その後の太平洋戦争は…。天皇の権威を逆手に取って、勝手に事を進める軍部と政府のやり口がすこしわかったような気がします。

いちばん面白かったのは「満州報告書 第七信」。読み応えのある小説をお探しの方は、この機会にぜひ浅田次郎の中国シリーズを読んでみてください。

お勧め度:★★★★★

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