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2012年5月 5日 (土)

珍妃の井戸 (浅田次郎)

『蒼穹の昴』にもチラっと登場した高緒帝の側室・珍妃が王宮の井戸に投げ込まれて殺された事件を描く続編(番外編)です。1900年の義和団事件で、英仏独日等の列強諸国は北京を蹂躙し、略奪・暴行の限りを尽くします。その調査の名目で清を訪れたイギリスのソールズベリー提督を筆頭に、ドイツの情報将校シュミット大佐、露清銀行のベトロヴィッチ総裁、東京帝大教授の松平忠永子爵の4名が「探偵」役。中国時代ミステリーにワクワクします。

ソールズベリーたちが珍妃の殺害にこだわったのは「立憲君主制の危機」が理由だとか。王宮内で皇帝の側室が殺されたということは皇帝の命も危ない。これは看過できないというのですが、提督がミセス・チャンに誘導された観もなきしもあらず。

アメリカ人新聞記者トーマス・バートン、かつての万歳宮付太監・蘭琴、袁世凱将軍、実姉・瑾妃、永和宮太監・劉蓮焦、愛新覚羅・溥儁の6名の独白を聴いていくのですが、みんな言うことがちがうので、最後は、畏れ多くも光緒帝である愛新覚羅·載湉に謁見して事情を伺うことに…。

珍妃の井戸は実在しており、石臼のようにちいさなもの。インターネットで画像検索するか、『浅田次郎とめぐる中国の旅』という本をごらんください。この本は『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』『中原の虹』の世界を紹介していて、小説のリアリティが増すこと請け合いです。

清朝が崩壊したのは、西太后の専横や失政のせいではなく、列強諸国の暴虐によるというのが浅田次郎の見解。珍妃が死ぬことになった直接の原因はわからずとも、遠因は同様だといえるでしょう。

お勧め度:★★★★☆

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