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2012年4月

2012年4月29日 (日)

蒼穹の昴 2 (浅田次郎)

『蒼穹の昴』上下巻を文庫では4巻に分けたので、この2は上巻の後半にあたります。1が中途半端なところで終わるので間があくと興ざめします。文庫の1と2は続けて読みましょう。

さて、文秀は予言どおり着々と官吏として昇進し政治の中枢に近づいていきます。一方、春児は後宮へ取り立ててもらえるよう芝居の修行に明け暮れていました。先王の側室だった西太后の専横を許し、清は疲弊、腐敗し、列強の脅威に晒されていました。その中で文秀は、西太后の甥にあたる光緒帝への権力委譲を迫る帝派に、春児は西太后を擁護する后派に加わります。さて、ふたりの運命は?

自らの野望に向かって邁進する者、天命に従う者もいれば、自らの利益と保身のみに終始する者や気に入らない人間を陥れようとする者もいます。国や民を食い物にする連中というのは、いつの時代、どの国にもいるようです。

様々な人間模様を描きながら物語は進むのですが、スケールの大きさの割にテンポは速いので退屈することはありません。

お勧め度:★★★★★

2012年4月27日 (金)

蒼穹の昴 1 (浅田次郎)

浅田次郎は「クレイジーソルト」という調味料に似ています。独特の匂いを嫌うむきもあるけれど、食すとこれがじつに旨い。『プリズンホテル』『きんぴか』『天切り松 闇がたり』同様、『蒼穹の昴』も読みかけては、なにやら胡散臭さが鼻について一度は棚に戻しました。それでも、読む本がなくなったときに思い出すのが「あのとき手に取った浅田次郎」なのです。

浅田次郎というと『鉄道員』(ぽっぽや)が有名ですが、考えてみれば、あの話にしても十分胡散臭い。つまり、この臭いが浅田次郎らしさなのでしょう。というわけで『蒼穹の昴』も「第1章 科挙登第」の1項を読み通しさえすれば「臭い」にも馴れるはず。そこからは科挙に挑む文秀と、死んだ親友の弟・春児の冒険を楽しみましょう。

中国を舞台にした歴史大河小説。文庫版は4巻まであるというからあと3巻楽しみがあります。絶対に面白いから、騙されたと思って鼻をつまんで(?)読んでみてください。『蒼穹の昴』のあとは番外編『珍妃の井戸』、満州に舞台を移して『中原の虹』、『マンチュリアン・リポート』と続きます。

お勧め度:★★★★★

2012年4月25日 (水)

愚者のエンドロール (米沢穂信)

「氷菓」シリーズ第2弾なので、『氷菓』から読むことをお勧めします。そのほうがすんなり入れます。

古典部のメンバーは、文化祭に出展する予定の自主制作ミステリー映画を見せられるのですが、ある少年が密室で腕を切られて死んでいる場面で終わっていたのです。ミステリーにあまり詳しくない生徒が脚本を担当し、そこまで書いて(過労で?)ダウンしたとか。このままでは尻切れとんぼで終わってしまうので、古典部にこのミステリーの謎解き、即ち脚本の続きを考えてほしいようです。

例によって千反田が食いついて、折木奉太郎が巻き込まれるパターン。ロケ現場まで出向いて、スタッフ3人の話を聞いて「本郷さんはこうするつもりだったのでは?」という仮説を立てるのですが…。

前巻でも気になったのですが、問題の答えを知っている(はずの)人間がいるのに、その情報源を遮断して自分たちであれこれ調査、思案させるというのはエネルギーの浪費。高校生の部活であれば無駄も大いに結構なのですが「わたし、気になります」。いくらダウンしたって脚本担当者に「誰が犯人で、どう謎解きするつもりだったの?」と訊くことくらいできるはず。その点、やや展開に無理を感じました。

それでも、ノックスの十戒、ヴァン・ダインの二十則、チャンドラー九つの命題といった推理小説を書くうえでのルールが紹介されていて興味深かった。このシリーズは、所々高校生らしからぬ深い部分があって面白いです。

お勧め度:★★★★☆

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2012年4月23日 (月)

陽だまりの彼女 (越谷オサム)

中学の同級生・真緒は当時、とことん勉強ができず、いじめられていた。そんな真緒に勉強を教えているうちに懐かれ、いっしょに帰宅するようになったのだけど、高校進学と同時に僕が引っ越してそれきり…。そんな彼女に取引先との打ち合わせでバッタリ再会!「できる女」に変身していたのです。

最近、浅田次郎に凝ってまして、ラノベとか甘い小説とは疎遠だったもので、意表を突かれました。真緒は幼い頃の記憶がないと聞いてから、その理由をあれこれ思案しながら読んだのですが、まさかそんな結末だったとは。

中学時代の出会いから始まっていますが、実際には26歳という大人の恋のお話。捨てる神あれば、拾う神あり。たまにはこういう小説もいいものです。

お勧め度:★★★★☆

2012年4月21日 (土)

まほろ駅前番外地 (三浦しをん)

『まほろ駅前多田便利軒』の続編スピンアウト小説です。前作を読んでから時間が経っていたので「これ、誰だっけ?」という問題もありましたが、ほのぼの、どたばた、とぼけてて面白かった。
  1. 光る石
  2. 星良一の優雅な日常
  3. 思い出の銀幕
  4. 岡夫人は観察する
  5. 由良公は運が悪い
  6. 逃げる男
  7. なごりの月

汚れた部屋の掃除、老人の見舞い、庭掃除にに遺品整理、料理に子守り。力仕事はともかく、多田と行天の高校同級生コンビに料理や子守りができるのか? それは読んでのお楽しみ!

お勧め度:★★★★☆

2012年4月19日 (木)

氷菓 (米澤穂信)

主人公は神谷高校1年の折木奉太郎。彼は無駄なエネルギーを使わない「省エネ」少年。理屈っぽくて冷めた奴です。「帰宅部」を決め込んでいた彼が、海外の姉からの手紙で「私が所属していた古典部が部員不足で廃部になりそうだから入りなさい」と言われ、入部届けを出して部室に行くと、そこにいたのが豪農のお嬢様・千反田える。好奇心旺盛な彼女が「わたし、気になります」と言い出したら止まりません。

学校で起きるささやかな謎を解きつつ、千反田の叔父・関谷純が33年前、古典部部長だった当時のことを調べることになります。ミステリーというほど大げさなものではないけれど、この小説のもつ雰囲気というか空気は好きです。

4月から「京都アニメーション」制作でアニメになると聞いて原作本を読んでみました。わたしが読んだ角川文庫の表紙は学校の階段の踊り場を写した写真でしたが、いまはヒロイン「千反田える」のイラストになっているようです。

お勧め度:★★★★★

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2012年4月17日 (火)

ゼルダの伝説 スカイウォードソード

『ゼルダの伝説 スカイウォード・ソード』は、Nintendo Wii 版としては『トワイライト・プリンセス』に続いて2作目。より細かい操作を可能にするWiiモーションプラス対応。待ちに待った新作です。

まだゼルダを追いかけている途中ですが、とてもよくできています。プレイヤーにやさしい親切設計がうれしい。導入部も自然だし、ヒントも豊富。そうそう、モラルも向上しました。他人の部屋のクロゼットを開けたり、人前で壷を割ると叱られます。

旅のお供はファイというロボット妖精。謎解きも、落ち着いて周囲を見回せば解決できるものがほとんどだし、ボス敵も、坂のてっぺんにいれば襲われる心配がなかったり、ふつうに走っていれば追いつかれなかったり、落ち着いて時間を稼ぎつつ敵の弱点を探れば、アクションが苦手なわたしでもなんとかなります。おかげで攻略サイト要らず。谷底に落ちてもハートが減らないのが(スーパーマリオとちがって)有り難いし、セーブポイントも要所に配置されているから安心。

Wiiモーションプラスのおかげで、細かい剣さばきが可能になっていますが、適当に振り回していてもそのうちやっつけることができます。ゲームを進めるコツは「前進あるのみ」。マップを見ながら未知のルートへ進んでいけばストーリーも進みます。扉が開かない、橋を渡れない、流砂に飲み込まれるといった謎を解く手掛かりは直近に入手したアイテムと、その場に用意されています。

先に始めたのに、次男にあっさり追い越されてしまいました。競争しているわけではないので、じっくり楽しませてもらいます。

お勧め度:★★★★★


2012年4月15日 (日)

Welcome to Macintosh [DVD] (ロバート・ベイカ)

アップル社の創業から Apple II、Macintosh、iMac、iPod までの開発秘話などを関係者へのインタビューによって構成した約80分のドキュメンタリービデオです。制作当時、スティーブ・ジョブスは存命でしたが、インタビューに応じることはありませんでした。

かつて Apple IIe で憧れのアップルを手に入れました。アメリカのゲームソフトはオリジナリティに溢れ、刺激的。英語と格闘しながら日夜楽しんでいました。アップル仲間には医師、翻訳家、放送作家等、ユニークな人たちが多く、ゲーム攻略本などなかったので「ウィザードリィ」で地下何階まで進んだかなんていう情報は仲間に教えてもらったり、教えてくれなったり、そんなやりとりが楽しかった。

初代Macintosh 128Kは日本語が使えず、しばらく様子を見て Macintosh SE を買いました。MacDraw というグラフィックソフトに図版と文章を並べて会報を作ったり ImageWriter というモノクロのドットインパクトプリンタと組み合わせて「印刷機」として使ってました。わたしにとって Macintosh はなにかを創るための道具だったのです。

今はアップルの株価が高値を更新中のようですが、過去「アップルが○○に買収されるらしい」という噂を何度耳にしたことやら。この先もアップルが順調に発展するという保証はありませんが、今後も世界をアッと言わせる素晴らしい製品を作り出してくれることを願っています。

お勧め度:★★★★☆

2012年4月13日 (金)

憑神 (浅田次郎)

貧乏御家人・別所彦四郎は婿入先から離縁され実家に戻り肩身の狭い暮らしをしています。蕎麦一杯の小遣いすら母親の紙入れを借りねばならないほど不運、不幸、不遇を絵に描いたような御仁。それがある日、河原の雑草に埋もれたお社に手を合わせた途端、神が憑いたのです。しかも、とんでもない神、貧乏神に…。

幕末の江戸、大政奉還や鳥羽伏見の戦いの頃。幕府は事実上崩壊しているけれど、御家人たちには戸惑いがあった時代。彦四郎も徳川家に仕えてきた矜持があり、根が生真面目なため、易きに流れることができません。律儀で不器用な人間が貧乏神相手にどう渡り合うのか。

浅田次郎だからあたりまえの時代小説では終わらないだろうと思っていたら、貧乏神だけでは終わりませんでしたし、読み終えてからも「そう来たか…」と、しばらく考え込んでしまいました。

畠中恵の「しゃばけ」シリーズでも人と妖は価値観が異なるとありますが、ここでも人と神の価値観が異なるいちばんの原因は「限りある命」。限りがあるからこそ輝く命。いや、輝かせねばならぬ命を授かったのが人。輝かせ方は時代によって異なるかもしれない。彦四郎の場合はこうだったということ。

お勧め度:★★★★☆

2012年4月11日 (水)

一矢の秋 ~ 居眠り磐音 江戸双紙 37(佐伯 泰英)

姥捨の里で生まれた坂崎空也もすくすく育って2歳。田沼意次の妾おすなが放った刺客・雹田平らとの決戦のときが近づいていました。一方、江戸では品川柳次郎とお有夫妻が、尚武館道場が解体されるところを目撃。どういうことかと敷地に入ったところを田沼の用心棒たちに絡まれ…。

ついに磐音が動きます。江戸へ戻るためには雹田平を倒さねばなりません。江戸、京、名古屋と連絡を取りながら準備を進めているところへ、なにを思ったか「おすな」が江戸から船を仕立てて高野山詣。女人禁制を田沼意次の代参と称して押し切ろうというのか。おすなが動けば手下の雹も動く。というわけでクライマックスへ!

空也が生まれて磐音もおこんも急に老成してしまい、つまらなく思っていたのですが、磐音のまわりには頼りになる人も、ならない人もいて賑やか。時代小説というと江戸が舞台なので、江戸以外を舞台にもっと活躍してほしかったのですが、姥捨の里では猟や野良仕事しかないので、最後は江戸に戻って尚武館道場を再興しないと収まりがつかないのでしょう。

お勧め度:★★★★☆

2012年4月 9日 (月)

夏天の虹〜 みをつくし料理帖 7 (高田郁)

待望の新刊「みをつくし料理帖」シリーズ第7弾『夏天の虹』です。大好きな和菓子をすこしずつ食べるように、じっくり読ませていただきました。甘いと思ったらしょっぱい塩饅頭でした。
  1. 冬の雲雀〜滋味重湯
  2. 忘れ貝〜牡蠣の宝船
  3. 一陽来復〜鯛の福探し
  4. 夏天の虹〜哀し柚べし

町人の澪が武家の小松原と添う道を周囲が用意してくれたものの、料理人としての道を捨てることができず澪は悩みます。自分の気持ちを小松原に伝えると「すべて俺に任せろ」と言って去ります。うわ〜、こいつぁいけねぇ。

そのショックからか、急に匂いと味がわからなくなった澪。料理人としては致命傷。そのピンチを救ってくれたのが吉原は扇家の料理人・又次。澪の幼なじみ野江を守ることに命を賭ける又次はなんと…。

帯に<非涙>の第7弾とありましたが、まさに涙なくして読めません。澪はつらい時期を乗り越えれば幸せになれる(雲外蒼天)というのですが、それにしてもイジメすぎでは?と心配になります。

巻末に「みをつくし瓦版」という質問コーナーがあるのですが、そこに作者から「年2冊ペースでしたが次回は1年後」とのお知らせ。それこそ<非涙>です。

お勧め度:★★★★★


2012年4月 7日 (土)

彼女は戦争妖精 9 (嬉野秋彦)

『彼女は戦争妖精』 第9巻、最終巻となりました。

シリーズ前半では、世界観がよくわからなかったのですが、要するに、世の中には生と死があって、死者の魂が集まって生まれたのがウォーライク(戦争妖精)。ウォーライク同士で戦い、勝者が敗者の魂を取り込んで強くなっていき、最後に楽園にたどり着くことで、死が成就され、輪廻の輪へとつながっていく。ところが「妖精の書」を手にした、最強のウォーライクが楽園を目指さなくなると、死者の魂が還る場所を失い、世界は崩壊する、と。だから、監視者であるはずのミンストレルたちが伊織とクリスを排除しようとしていたわけです。

8巻で常葉はリリオーヌと共に(ウォーライクとしての)記憶を失い、ふつうの恋する乙女になりました。伊織は(姪っ子という設定の)クリスや(叔父さんにイギリスからついてきた)ルテティアと同居しているわけですから、常葉は心穏やかではありません。

伊織とクリスは最後の、避けられない戦いに挑みます。さて、ふたりは生き残ることができるのでしょうか。

退屈するまえに次章へ場面転換するなど、テンポよく気持ちよく読めました。楽しませてもらいましたが、あとがきを読むと、行き当たりばったりの部分があったことがわかります。エンターテイメントとしては結果オーライなのですが、最近、詰めの甘さや強引なストーリー展開が見られるとテンションが下がってしまいます。これは単にわたし自身の好みの変化でしょう。フレンチレストランとハンバーガーショップ。どちらもおいしいし人気もある。好みに合わせて選べるのがシアワセなのです。

お勧め度:★★★★☆

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2012年4月 5日 (木)

彼女は戦争妖精 8 (嬉野秋彦)

「妖精の書」を手に入れた伊織とクリスは自ら戦いを仕掛けることはなくとも、降り掛かる火の粉は払って連戦連勝。しかしミンストレルたちの言うとおりウォーライク同士で戦い続けることを拒否し我が道を進みます。それをイソウドは気に入らない。一方、常葉とリリオーヌ、薬子とエルクドゥーンはそれぞれ思うところがある様子。また新手のミンストレル(吟遊詩人)が現れたと思ったらそれはなんと…。

ようやくウォーライクとは何かが明かされます。と同時に、避けて通れない戦いが始まります。クリスは「楽園に行かなくていい。ずっとあの家で暮らしていたい」。健気な大喰らい少女を守ろうとする伊織に明日はあるのか?

今回、ラストシーンでは「え゛ぇぇぇぇぇ〜っ! そんなぁ〜!!」。

次の9巻で完結するそうです。

お勧め度:★★★★☆

2012年4月 3日 (火)

古い腕時計〜きのう逢えたら (蘇部健一)

時間を戻して昨日をやり直すことができる不思議な腕時計にまつわる7編の物語。この本は次男に借りました。どんな本が好きかでわかることがあるから、彼の好みが知りたいから、時々「面白い本ある?」と訊ねるのです。
  1. 片想いの結末
  2. 四番打者は逆転ホームランを打ったか?
  3. 最後の舞台
  4. 起死回生の大穴
  5. おばあちゃんとの約束
  6. 明日に架ける橋
  7. 運命の予感
  8. エピローグ

ブラックユーモアが効いた捻り方は星新一のショートショートを思い出します。各話はバッドエンドだったりするのですが、最後はうまくオチがついているので安心して読んでください。

お勧め度:★★★☆☆

2012年4月 1日 (日)

しゃばけ読本 (畠中恵)

「しゃばけ」シリーズのナビゲートブック。「しゃばけ」ファンは必携です。
  • ドラマ「しゃばけ」ロケ現場潜入ルポ
  • 対談 手越祐也×畠中恵
  • 畠中さんにロングインタビュー
  • 「しゃばけ」から「ちんぷんかん」まで物語紹介
  • しゃばけシリーズ 登場人物解説
  • 柴田ゆう 蔵出しあやかしギャラリー
  • しゃばけ登場人物たちにインタビュー
  • 根付制作現場を見に行こう!
  • 対談 北森鴻×畠中恵
  • 選り抜き「あじゃれ」よみうり
  • 名古屋造形芸術大学 母校で夢のトークセッション
  • おこぐの奉公日記

時代小説に出てくる四つだの五つだの、わかりづらい時刻、長さ、重さ、通貨、布団のサイズなどについて用語解説もありますし、長崎屋の間取り図も載っています。 「しゃばけ」シリーズは時代小説入門にぴったり!

お勧め度:★★★☆☆

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